君と見た黄昏の夕焼け

霧野新庄

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3年C組の厄災

弔い

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『暗い…暗いよ…誰か』

『誰?暗くて、見えなくて、怖いよ、誰、誰なの?』

「茜!おい茜!目を覚ましてくれ!茜」

『眩しい…ああ優しい…ひかり…』

「…あれ…?真司…私…」

「あぁ…茜…良かった…ほんとに…いきなり倒れちゃうんだもん」

「ごめんね…大丈夫だよ…」

「でも…ごめん…どこまで話したかな」

「厄災が起こった…青木陽菜と狂ってしまった2人のクラスメイト」

「そっか…そうだったね…」

「その時はまだ良かったの…まだ…」

茜は躊躇しているようだった。

「茜…俺なら覚悟しているから気にしないで。俺なら大丈夫。一緒に力を合わせて厄災を終わらせよう」

「真司…私の方こそごめん…覚悟が足りなかったね」

「彼女…青木陽菜の死体が見つかってから3日が経った頃。あの二人のうちの一人、浅田魅音が3階の階段から転落事故を起こしたの。幸い、命に別状は無かったんだけど…脳に大きな傷を負ってしまって…未だに意識は戻らないの」

茜は日が沈んだ海を見つめ、寂しそうな目を浮かべるだけだった。

「その事故があってから、それは青木陽菜の呪いだという噂が広がり、この島から1人、まあ1人と出て行ったわ。でも、私たち、クラスメイトだけは逃げられない。私のクラスメイトも何人も何人もこの島から出ようとしたけど、その度に定期船が事故を起こし、彼らだけが命を落とすの」

「そんな…それじゃあまるでこの島は牢獄じゃないか!!」

「そう。決して脱出不可能な牢獄。だから私たちはこの島で生きていくしかないの。毎日、いつ殺されるのか分からないような怯え続ける生活の中で、私たちの唯一の生き甲斐は、あなたから毎週送られてくる手紙と、ここで愁平と見る夕焼けだけだった」

『…茜が!愁平がそんな目に遭わされているのに俺は!呑気に暮らしてたのか!!』

真司はふつふつと湧いてくる己に対する怒りが今にも爆発しそうだった。

「…」

そんな真司を茜はただ…悲しい虚ろな目で見ていた。

「ある日、愁平が厄災の餌食になったの。中学2年生の冬だったかしら。心も体も冷え切っていたのをよく覚えてる。
彼が植物状態になってからは生きる価値を見失った気がしたわ。あなたからの手紙も返事をする元気がなくて…毎日毎日死ぬことばかり考えていた。何度自殺を図ったか分からない。でも、まるで、そんな私を嘲笑うかのように、生きてしまうの、愁平がいないこの世界に生きる価値などないのにね」

「茜…愁平は生き返るよ」

「…え?真司…怒るよ…私がどんな気持ちでこの2年を生きてきたと思うの!?あなたに分かる?大切な人を!…愁平を失った気持ち、この絶望…目の前が真っ暗になるんだ」

「…だ…」

「愁平が言ったんだ!!俺は生きて、生きてお前らに会うんだ!!って言ったんだよ!!」

「ほんとに…ほんとに…愁、愁平は意識を取り戻すの!!どうすれば良いの!」

「この厄災を終わらせる。そうすればあいつは愁平は戻ってくるんだ…ただ、どうすれば良いのか…」

「それなら分かるわ。厄災を終わらせる方法。それは、青木陽菜の魂を空へ返してあげるの。ただ…彼女は私たちへ強い憎しみを抱えている。私たちにそれが受け止め切れるか…」

「できるよ。俺たちなら!俺の心には愁平もいるんだ。俺たちの強い絆が彼女の憎悪に負けるわけないさ」

「ふ、ふふ、ははは」

『茜が笑った!笑顔を見せた』

真司にはそれがとてつもなく嬉しかった。

「何年ぶりかしら、こんなに素直な気持ちで笑ったのは」

「あっ、茜、見て、綺麗だなぁ」

「そうねー」

江戸崎の空には一面小さな星空が散りばめられていた。真司には全て上手くいくような気がしたのだった。

「真司、決行日は3日後の4月23日、青木陽菜の月命日よ」

「分かった!最高に弔ってやろうぜ、じゃあまた明日学校でな」

「全く…真司は…ウッ…」

『バタン』

【させない、私を、私を成仏なんて、絶対させない。殺してやる、お前ら全員、殺してやる】
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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霧野新庄
2021.09.17 霧野新庄

ありがとうございます!今丁度連載を書いている途中なので良かったら見て下さい。所々かなり改変しているので、初めから読まれた方が良いかも知れませんが、絶対面白いです!!

解除

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