12 / 12
3年C組の厄災
弔い
しおりを挟む
『暗い…暗いよ…誰か』
『誰?暗くて、見えなくて、怖いよ、誰、誰なの?』
「茜!おい茜!目を覚ましてくれ!茜」
『眩しい…ああ優しい…ひかり…』
「…あれ…?真司…私…」
「あぁ…茜…良かった…ほんとに…いきなり倒れちゃうんだもん」
「ごめんね…大丈夫だよ…」
「でも…ごめん…どこまで話したかな」
「厄災が起こった…青木陽菜と狂ってしまった2人のクラスメイト」
「そっか…そうだったね…」
「その時はまだ良かったの…まだ…」
茜は躊躇しているようだった。
「茜…俺なら覚悟しているから気にしないで。俺なら大丈夫。一緒に力を合わせて厄災を終わらせよう」
「真司…私の方こそごめん…覚悟が足りなかったね」
「彼女…青木陽菜の死体が見つかってから3日が経った頃。あの二人のうちの一人、浅田魅音が3階の階段から転落事故を起こしたの。幸い、命に別状は無かったんだけど…脳に大きな傷を負ってしまって…未だに意識は戻らないの」
茜は日が沈んだ海を見つめ、寂しそうな目を浮かべるだけだった。
「その事故があってから、それは青木陽菜の呪いだという噂が広がり、この島から1人、まあ1人と出て行ったわ。でも、私たち、クラスメイトだけは逃げられない。私のクラスメイトも何人も何人もこの島から出ようとしたけど、その度に定期船が事故を起こし、彼らだけが命を落とすの」
「そんな…それじゃあまるでこの島は牢獄じゃないか!!」
「そう。決して脱出不可能な牢獄。だから私たちはこの島で生きていくしかないの。毎日、いつ殺されるのか分からないような怯え続ける生活の中で、私たちの唯一の生き甲斐は、あなたから毎週送られてくる手紙と、ここで愁平と見る夕焼けだけだった」
『…茜が!愁平がそんな目に遭わされているのに俺は!呑気に暮らしてたのか!!』
真司はふつふつと湧いてくる己に対する怒りが今にも爆発しそうだった。
「…」
そんな真司を茜はただ…悲しい虚ろな目で見ていた。
「ある日、愁平が厄災の餌食になったの。中学2年生の冬だったかしら。心も体も冷え切っていたのをよく覚えてる。
彼が植物状態になってからは生きる価値を見失った気がしたわ。あなたからの手紙も返事をする元気がなくて…毎日毎日死ぬことばかり考えていた。何度自殺を図ったか分からない。でも、まるで、そんな私を嘲笑うかのように、生きてしまうの、愁平がいないこの世界に生きる価値などないのにね」
「茜…愁平は生き返るよ」
「…え?真司…怒るよ…私がどんな気持ちでこの2年を生きてきたと思うの!?あなたに分かる?大切な人を!…愁平を失った気持ち、この絶望…目の前が真っ暗になるんだ」
「…だ…」
「愁平が言ったんだ!!俺は生きて、生きてお前らに会うんだ!!って言ったんだよ!!」
「ほんとに…ほんとに…愁、愁平は意識を取り戻すの!!どうすれば良いの!」
「この厄災を終わらせる。そうすればあいつは愁平は戻ってくるんだ…ただ、どうすれば良いのか…」
「それなら分かるわ。厄災を終わらせる方法。それは、青木陽菜の魂を空へ返してあげるの。ただ…彼女は私たちへ強い憎しみを抱えている。私たちにそれが受け止め切れるか…」
「できるよ。俺たちなら!俺の心には愁平もいるんだ。俺たちの強い絆が彼女の憎悪に負けるわけないさ」
「ふ、ふふ、ははは」
『茜が笑った!笑顔を見せた』
真司にはそれがとてつもなく嬉しかった。
「何年ぶりかしら、こんなに素直な気持ちで笑ったのは」
「あっ、茜、見て、綺麗だなぁ」
「そうねー」
江戸崎の空には一面小さな星空が散りばめられていた。真司には全て上手くいくような気がしたのだった。
「真司、決行日は3日後の4月23日、青木陽菜の月命日よ」
「分かった!最高に弔ってやろうぜ、じゃあまた明日学校でな」
「全く…真司は…ウッ…」
『バタン』
【させない、私を、私を成仏なんて、絶対させない。殺してやる、お前ら全員、殺してやる】
『誰?暗くて、見えなくて、怖いよ、誰、誰なの?』
「茜!おい茜!目を覚ましてくれ!茜」
『眩しい…ああ優しい…ひかり…』
「…あれ…?真司…私…」
「あぁ…茜…良かった…ほんとに…いきなり倒れちゃうんだもん」
「ごめんね…大丈夫だよ…」
「でも…ごめん…どこまで話したかな」
「厄災が起こった…青木陽菜と狂ってしまった2人のクラスメイト」
「そっか…そうだったね…」
「その時はまだ良かったの…まだ…」
茜は躊躇しているようだった。
「茜…俺なら覚悟しているから気にしないで。俺なら大丈夫。一緒に力を合わせて厄災を終わらせよう」
「真司…私の方こそごめん…覚悟が足りなかったね」
「彼女…青木陽菜の死体が見つかってから3日が経った頃。あの二人のうちの一人、浅田魅音が3階の階段から転落事故を起こしたの。幸い、命に別状は無かったんだけど…脳に大きな傷を負ってしまって…未だに意識は戻らないの」
茜は日が沈んだ海を見つめ、寂しそうな目を浮かべるだけだった。
「その事故があってから、それは青木陽菜の呪いだという噂が広がり、この島から1人、まあ1人と出て行ったわ。でも、私たち、クラスメイトだけは逃げられない。私のクラスメイトも何人も何人もこの島から出ようとしたけど、その度に定期船が事故を起こし、彼らだけが命を落とすの」
「そんな…それじゃあまるでこの島は牢獄じゃないか!!」
「そう。決して脱出不可能な牢獄。だから私たちはこの島で生きていくしかないの。毎日、いつ殺されるのか分からないような怯え続ける生活の中で、私たちの唯一の生き甲斐は、あなたから毎週送られてくる手紙と、ここで愁平と見る夕焼けだけだった」
『…茜が!愁平がそんな目に遭わされているのに俺は!呑気に暮らしてたのか!!』
真司はふつふつと湧いてくる己に対する怒りが今にも爆発しそうだった。
「…」
そんな真司を茜はただ…悲しい虚ろな目で見ていた。
「ある日、愁平が厄災の餌食になったの。中学2年生の冬だったかしら。心も体も冷え切っていたのをよく覚えてる。
彼が植物状態になってからは生きる価値を見失った気がしたわ。あなたからの手紙も返事をする元気がなくて…毎日毎日死ぬことばかり考えていた。何度自殺を図ったか分からない。でも、まるで、そんな私を嘲笑うかのように、生きてしまうの、愁平がいないこの世界に生きる価値などないのにね」
「茜…愁平は生き返るよ」
「…え?真司…怒るよ…私がどんな気持ちでこの2年を生きてきたと思うの!?あなたに分かる?大切な人を!…愁平を失った気持ち、この絶望…目の前が真っ暗になるんだ」
「…だ…」
「愁平が言ったんだ!!俺は生きて、生きてお前らに会うんだ!!って言ったんだよ!!」
「ほんとに…ほんとに…愁、愁平は意識を取り戻すの!!どうすれば良いの!」
「この厄災を終わらせる。そうすればあいつは愁平は戻ってくるんだ…ただ、どうすれば良いのか…」
「それなら分かるわ。厄災を終わらせる方法。それは、青木陽菜の魂を空へ返してあげるの。ただ…彼女は私たちへ強い憎しみを抱えている。私たちにそれが受け止め切れるか…」
「できるよ。俺たちなら!俺の心には愁平もいるんだ。俺たちの強い絆が彼女の憎悪に負けるわけないさ」
「ふ、ふふ、ははは」
『茜が笑った!笑顔を見せた』
真司にはそれがとてつもなく嬉しかった。
「何年ぶりかしら、こんなに素直な気持ちで笑ったのは」
「あっ、茜、見て、綺麗だなぁ」
「そうねー」
江戸崎の空には一面小さな星空が散りばめられていた。真司には全て上手くいくような気がしたのだった。
「真司、決行日は3日後の4月23日、青木陽菜の月命日よ」
「分かった!最高に弔ってやろうぜ、じゃあまた明日学校でな」
「全く…真司は…ウッ…」
『バタン』
【させない、私を、私を成仏なんて、絶対させない。殺してやる、お前ら全員、殺してやる】
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
DQNの刺客とガチバトル 結果、親友ふたりできたんだが
JUNG2
青春
高校生高宮隼(たかみやしゅん)は、古武道「天法院流護法拳」の使い手。
学校の帰り、恐喝されていた同級生中村大地(なかむらだいち)を救ったことから、校内のDQNグループと、その依頼を受けた刺客との対決に発展してゆきます。
格闘アクション+青春小説です。
主人公や刺客、そしてその家族と触れ合うことで、封印されたような青春を送る少年が、明るく自由な心を獲得してゆきます。
バイオレンス(格闘シーン)や、性への言及などありますので、R15としました。
以前書いた怪獣小説「鬼神伝説オボロガミ」と世界観、登場人物を共有しています。
アッチの話!
初田ハツ
青春
大学生の会話の九割は下ネタである──と波多野愛実は思っている。
工学部機械工学科の仲良し3人組愛実、檸檬、冬人に加え、冬人の幼馴染みの大地、大地と同じ国際学部情報グローバル学科の映見、檸檬の憧れの先輩直哉……さまざまなセクシャリティに、さまざまな恋愛模様。
愛実が勧誘された学科のある「係」をめぐり、彼らは旧体制を変えようと動き出す。
そんな中、映見がネット上で中傷を受ける事件が起こる。
恋愛、セックス、ジェンダー、性差別、下ネタ……大学生活の「アッチの話」は尽きない。
My Angel -マイ・エンジェル-
甲斐てつろう
青春
逃げて、向き合って、そして始まる。
いくら頑張っても認めてもらえず全てを投げ出して現実逃避の旅に出る事を選んだ丈二。
道中で同じく現実に嫌気がさした麗奈と共に行く事になるが彼女は親に無断で家出をした未成年だった。
世間では誘拐事件と言われてしまい現実逃避の旅は過酷となって行く。
旅の果てに彼らの導く答えとは。
君にもらったもの 〜Future is yours〜
もぉるる
青春
弱小演劇部員三名(瑠華、沙綾、結衣)は文化祭に向け準備を進めていた。そのとき部長の瑠華は台本を書き上げるが先生に呼び出しを食らい…
コメディーもありつつシリアスな部分もありつつな脚本となっております!
早春の向日葵
千年砂漠
青春
中学三年生の高野美咲は父の不倫とそれを苦に自殺を計った母に悩み精神的に荒れて、通っていた中学校で友人との喧嘩による騒ぎを起こし、受験まで後三カ月に迫った一月に隣町に住む伯母の家に引き取られ転校した。
その中学で美咲は篠原太陽という、同じクラスの少し不思議な男子と出会う。彼は誰かがいる所では美咲に話しかけて来なかったが何かと助けてくれ、美咲は好意以上の思いを抱いた。が、彼には好きな子がいると彼自身の口から聞き、思いを告げられないでいた。
自分ではどうしようもない家庭の不和に傷ついた多感な少女に起こるファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます!今丁度連載を書いている途中なので良かったら見て下さい。所々かなり改変しているので、初めから読まれた方が良いかも知れませんが、絶対面白いです!!