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第21章 狂える土

捕獲作戦

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 埼玉の一角で、狂える土どもの間に蔓延している違法薬物。
 以前からトラブルの遠因として舞奈と明日香が関わってきた怪異のチップ。
 両者の関係性を確認すべく、舞奈の発案で禍我愚痴支部協力チームは薬物中毒者どもの捕獲を計画した。
 そんな訳で……

「……アポが取れましたよ。皆さん事務所にいらっしゃるそうです」
「いつも済まないわね、フランちゃん」
「いえいえ」
 早速、一行は自警団の事務所へ向かった。

 毎回の地味な仕事を労う冴子にフランがエヘヘと笑う。
 そんな様子を見やってザンが少し羨ましそうにフランを見やる。
 冴子の挙動が気になるらしい。
 だが舞奈はスルー。
 流石にこれは口を挟む事じゃないし。

 それはともかく、餅は餅屋。
 薬物中毒者どもを捕まえるなら、まずは居場所をつかむ必要がある。
 そして奴らのたまり場がないか知っている可能性が最も高いのは地元の人間だ。
 つまり今回も頼りになる情報源は自警団の面々だ。

 なので舞奈たちは先日に引き続いて事務所ビルにやって来た。
 とみに最近は足しげく通っている気がする。
 そう思いつつ、普段と違って人気のないビルの玄関付近を訝しみつつ……

「……皆さん応接室にいるそうですので、勝手に入ってくださいと」
「いつもの出迎えはセキュリティ対策じゃなかったのか……」
「やんすねー」
 確認のためにかけたのだろうか、携帯片手にフランが皆に伝える。
 舞奈はやれやれと苦笑する。
 言われてみれば今日は少し風が強い。

 なので顔認証すらなさそうな開け放しの玄関から、皆して我が物顔で入館。
 もはや勝手知ったる廊下を通って、

「ちーっす! 見張りが嫌なら警備員くらい雇ったほうが――」
 応接室のドアを開ける。
 途端――

「――ひゃっ。冷たいでやんす!」
「せいこう」
「ハハハ、今日はハカセさんですか」
「ビックリしますよね、それ」
 メリルのいたずらに歓迎された。
 背中に何か入れられたやんすが漫画みたいに飛び上がる。
 見ていたおっちゃんたちがにこやかに笑いかけてくる。

「あっさいもんさん。皆さんもいらっしゃい」
「こんにちは」
「やれやれ、最強のセキュリティじゃないか」
「さいきょう!」
 苦笑する舞奈の言葉尻にメリルが興奮する。
 舞奈自身がよく言われる言葉を自分が向けられたのが嬉しいらしい。

 強力な超能力者サイキックでもあるメリルは自身の超能力サイオン冷却能力クリオキネシス】で作った冷たいつぶてを人にぶつけて驚かせる遊びに夢中になっている。
 相変わらず元気なようで何よりだ。
 でもって、おっちゃんたちはひと通り洗礼を受けたのだろう。
 この前はザンや舞奈が標的になった。
 今回は別の面子を狙ったらしい。そして……

「……こっちはふせがれた。やるなー」
「ええ。やられるかなって思ってたから」
 言いつつメリルは冴子を見上げる。
 冴子は少し身をかがめて笑いかける、というか苦笑する。

 メリルは小さな雪玉を、今日は2つ同時に投げていた。
 前回はまんまと舞奈に受け止められたので、その対策のつもりか。
 遊びは子供にとっての訓練であり、工夫と成長の源流だ。
 別にそれが周りの大人が幼女を野放しにしてる理由という風でもなさそうだが。

 今回あえてフランに仕掛けなかったのは、本気で嫌がられそうなのを察したか。
 支部で占術士ディビナーを務める彼女は自身の振る舞いも他人への評価も常識的だ。
 そうした部分を敏感に察して地雷を避けられるのはなかなかのものだ。

 ……まあ単に順番が後回しなだけで次は狙う気なのかもしれないが。

 そして隙だらけのやんすは襟首に見事つぶてを投げこまれたが、冴子は目前に展開した不可視の何かで防いでいた。
 見たところ【身固・改みがため・かい】ではない。
 そこまで大層な術を事前に行使している素振りはなかった。
 斯様にアドリブもできて子供の粗相も許す度量のある冴子は……

「……【怪力くわいりき】の魔術よ。超能力サイオンで例えると【念動力サイコキネシス】に近いかしら?」
「まだある?」
「ええ。展開したままよ」
 身をかがめ、目を合わせて笑いかけつつメリルに答える。
 相手が幼いながら有能な超能力サイオンだからか。
 あるいは単に子供が好きなのか。

「ふんっ!」
 メリルが再び手元に作り出し、ぴょーんと放った雪玉を、冴子は掌の先に広げたまま維持しているとおぼしき見えない半円形の何かで弾いてみせる。
 その様子が面白いのだろう。
 メリルの手元から小さな氷弾が何度も飛ぶ。
 それらは冴子の手元で残らず弾かれ、虚空で溶けて消える。

「おー」
 そのように幼女に尊敬の眼差しを向けられる冴子に何かを感じたか、

「【身固・改みがため・かい】と同源の次元断層のフィールドを操るのでしたか」
「ええ。集中してないと長くはもたないのだけど、注連縄なしで施術できるから便利なのよ」
 横から口を挟んできた明日香の説明を冴子自身が捕捉する。

 同様の術を古神術や修験術で聞かないのは、冴子が修めた国家神術が創造した魔力を崇拝の対象ではなく純粋に力の源と見なしているからだろう。
 故に少しばかり不敬だが使いやすい形に改良して使う。
 巨大な力を、心ではなく理性によって利用するのだ。
 だからこそ理知的で大人な冴子は優れた国家神術士たりえる。

「流石は冴子さん! 凄いっす!」
 ザンが割と何も考えていない様子で感激する。
 例の件以来、妙に冴子を意識してるなあと舞奈は思う。
 だが、それを機に魔術に興味を持つのも彼のためかもしれないとも思いつつ……

「……その……子供、お好きなんすね」
「人並みよ。いちおう教員免許も持ってるし」
 そっちに食いついたザンに、冴子は少しはにかむように答える。
 それは子供好きなんじゃないかとと舞奈は内心でツッコミながら、

「子供もおっぱいは大好きだよ!」
 言ってみた。途端、

「えっ? 舞奈さん……」
「少しはわきまえて喋りなさいよ……」
 フランや明日香がジト目で見てきた。

 挙句、その場にいた全員から(うわぁ……)みたいな目で見られた。
 ザンにまで!
 メリルにまで!
 いつもフランがするような目つきで!
 そのように微妙に舞奈が傷ついていると……

「サィモン・マイナーだ。皆もこんちはー」
「大先生。おはようございます」
「あっこんにちはでやんす」
 くつろいだ様子のキャロルがやってきた。
 事務所の男たちが、やんすや皆が挨拶する。
 昼寝から起きたところだろうか?
 平和で何よりだ。

「あっメリル。他所の人を本気で困らせたらダメじゃない」
 キャロルが見やる先で、やんすは「ひ~」とか言いつつ背中に入った雪玉を取ろうと生白い背中をさらして悪戦苦闘していた。
 傍で見ていたおっちゃんたちが、そんな様子をほのぼのと見ていた。
 挙句に……

「……ごめんなさい」
「気にしてないでやんすよー。ちめたっ!?」
 保護者に諭されたメリルに取ってもらう。
 そんな様子を傍で見ている舞奈的には(もうおまえここに残れ)と少し言いたくなったが、ぐっと堪える。

「っていうか、今日も遊びに来たの?」
「遊びじゃなくて、こっちは仕事で来てるんだよ」
「今日は相談があって参ったでゴザルよ」
 寝ぼけたキャロルを舞奈が軽く睨みながら、ドルチェを中心にして事情を話す。

 そもそも今日の来訪の目的は銀髪幼女と遊ぶ事じゃない。
 薬物中毒者どものいそうな場所を知ってる奴がいないか聞きに来たのだ。
 その様な舞奈たちの事情を聞いて……

「……本当にトラブルが好きなのね。サィモン・マイナー」
「トラブルが好きなんじゃなくて、トラブルを未然に防ぐのが好きなんだよ」
 キャロルが真顔で言った。
 舞奈は口をへの字に曲げる。

「ちょっと座れ」
「ん? 何よやぶからぼうに」
「ったく、難しい日本語を覚えやがって」
 キャロルを無理やりにソファに座らせ、テーブルを挟んだ対面に座る。
 もちろん彼女の無軌道な言動を諭すための説教……とかではない。
 そうしたいのは山々だが。

「例のクスリについて、あんたにも知ってる事を聞いておこうと思ってな」
「じゃあ最初からそう言いなよ。ビックリするじゃない」
「今言ったろ。何を驚く事があるんだよ……」
 軽口を叩きつつ、少し脇に寄って隣にドルチェが座るスペースを作る。
 他の面子も同じ事を考えたか、今度は妙な表情とかせず両者の話に注視する。
 そんな周囲の状況を確認しつつ……

「……そもそも何なんだ? あれは」
「それ、こっちの警察に聞いた方が早いじゃん?」
「じゃあ例のチップの事でも構わないぜ。詳しい口ぶりだったじゃないか」
 何食わぬ口調で尋ねる。
 地元民の面々に薬物中毒者の居場所を尋ねるのと同じくらい、あるいは、それ以上に重要な問いだ。

 何故なら以前、蜘蛛のブラボーちゃんを探す際に彼女からチップの話を聞いた。
 あれが何かを魔獣に変えるものだと知る前に、彼女はチップが……というかチップを追跡するアプリが胡散臭いものだと知っていた。
 その際にこぼした話では、チップもアプリも米国で蔓延している代物らしい。
 そして、それはヴィランに関する代物らしい。

 その後の事件で後者については確証が持てた。
 Koboldの騎士たちが、ほぼ同じものを使って追加の異能を得ていたのだ。
 いわば簡易ヴィラン製造機だ。まったく迷惑この上ない。

 だから今、知りたいのは前者だ。
 あの迷惑グッズが何処から来て、どのように怪異に異能をもたらすのか?
 それは巷で流行の違法薬物と同じものなのか?
 そんな思惑を秘めた舞奈に――

「――あんたも、その2つが同じものだと思ってるんだ」
「違うのか?」
「知らないわよ。でも、あたしも同じ事を考えてたわ」
 そうキャロルは言った。
 仮定のひとつがあっさり肯定されて舞奈は口元に笑みを浮かべる。

「キャロルさん、お茶ですよー」
「舞奈ちゃんも、皆さんもどうぞ」
「おっサンキュッ」
「こいつは重畳」
 霧島姉妹がお茶とお茶菓子を持ってきてくれた。
 慣れた様子から、割といつも来ているのだろうと思った。

 キャロルも慣れた様子で茶をすする。
 すっかり日本の作法に慣れてしまっているらしい。
 舞奈も皆と一緒にずずっとお茶をいただく。

「お姉ちゃんたちも、よく遊びに来るのかい?」
「まあねー」
「最近はいろいろ物騒ですし……」
 何食わぬ問いに、姉妹は他の面々にもお茶を配りながら答える。

 それは的確な判断だと舞奈は思う。
 事務所には用心棒のキャロルとメリルがいる。
 2人とも性格こそこんなだが手練れのヴィランだ。
 その実力はディフェンダーズが苦戦するほど。
 燃えるほどの超スピードを誇るキャロルはもちろん、メリルが変じる巨大なイエティが味方にいるなら要塞に立てこもっているのと同じくらい安全だ。
 どうせならビルに部屋を借りて住めばいいのにとすら思う。

 それはともかく、ひとまず舞奈の直観は正しかったようだ。
 チップは詳しい人間から見ても違法薬物と同じ性質を持つ代物だ。

 だが、それを確認する必要はある。
 その上で、その両者を根絶やすなり無力化する算段を立てた方がいいだろう。

 あるいは舞奈たちが最終的に解決しなければいけない、禍我愚痴支部の管轄地域における狂える土どもの不穏な動きとやらも、その胡散臭いチップやクスリに関係しているのかもしれない。
 銃器を密輸入して、違法薬物で異能力者を増やして、暴動でも企んだか?
 ならば、その関係をあばいてしまえば一件落着だ。
 そいつを潰すのは【機関】の他の部署なり【組合C∴S∴C∴】なりの領分だ。

 そしてキャロルとメリルはファイヤーボールとイエティの中の人。
 つまりヴィランだ。
 チップについて知っている事を聞き出せれば話は早い。そう思った。
 だが……

「……ヴィ……奴らが一枚板じゃないって事は知ってるよね?」
「そりゃまあ」
 キャロルは少し言いづらそうに問いかける。
 微妙に言葉を選んでいるのは、自分たちがヴィランなのを自警団を始めとする周囲には内緒にしているからだろう。
 だが今はあえてそこにはツッコまない。
 話を進めたい以上に、実はその辺の事情について舞奈たちと彼女らは近しい。
 知っている情報も割と重複している。

 なので彼女の問いかけの意味もわかる。
 ヴィランとは米国で異能力を使って悪さをする存在を指す。
 つまり【機関】での基準で表現するなら怪人と怪異の総称だ。
 故にヴィランとひと口に言っても二種類の意味がある。
 片方はキャロルのような人間のヴィラン≒怪人。
 もう片方は、以前のヘルバッハとの決戦の際に複製されて大量発生とかしていたスピナーヘッドやファット・ザ・ブシドーみたいな正真正銘の怪異ども。

 そして例のチップは後者に属するものらしい。
 つまり……

「……つまり詳しくは知らない訳か」
「調べる必要なかったしー。でも胡散臭いのも、ヤバい代物なのも知ってるよ?」
「そりゃこっちでも知ってる」
 嫌というほどな。
 悪びれもしないキャロルの答えに思わず口をへの字に曲げる。
 思わせぶりな素振りをしていただけで、特に詳しいとかじゃなかったらしい。
 まったく。

「では、ディフェンダーズで何か調べていたりとかしませんか?」
 今度はソファの横でギャラリーと一緒に見ていた明日香が尋ねる。

 キャロルが警戒するような代物なら、ヒーロー達も存在は知っているだろう。
 そしてヴィランと違って米国の平和と治安維持への責任と、何より責任感がある彼らなら、それなりの調査をしているはずだと考えたのだろう。
 なるほど。舞奈もその考えには賛成だ。
 ミスター・イアソンことアーガス氏をはじめとするディフェンダーズの面子とも知らない仲じゃなく、あちらの性格はともかく秩序を愛する心と責任感は本物だ。
 だが、こちらも……

「……いや、あたしディフェンダーズの関係者じゃないしー」
「他人でもないだろ? 何か情報を漏らしたりとかしてないのか?」
「その情報を持ってたとして、それをあたしに漏らしたらバカじゃん」
 ぐうの音もなく言い返される。
 おめーはそのバカ以下だって自分で言ってるからな? という台詞を飲みこむ。

 隣で明日香も不満そうな顔をする、
 というか生真面目故に腹芸が徹底できない彼女は露骨に(使えねぇ……)みたいな表情をするので、地味にキャロルもショックを受けた顔をしている。

 メリルは関係ない表情で霧島姉妹の妹の方に抱っこされて甘えている。
 舞奈も生まれ変わったら幼女になりたいと少し思った。

「えっ大先生、ディフェンダーズの知り合いなんですか?」
「まあ、他人な訳じゃないんだけど……」
 舞奈たちの会話を半分しか聞いていなかったとおぼしきおっちゃんたちが、尊敬のまなざしをキャロルに向ける。

「こうてきしゅ」
「……好敵手!? もしや先生方も米国の平和維持組織の!?」
 メリルの嘘ではないが真実でもないフォローで明後日の方向に盛り上がる。
 まったく。
 舞奈はやれやれと肩をすくめる。

 明日香がツッコまないのは、まあ好敵手なのは嘘じゃないからだ。
 先の戦闘で舞奈とミスター・イアソンがファイヤーボールと戦っている間、明日香は他のディフェンダーズのメンバーと共闘して辛くもイエティを倒した。

 ……まあ、それはいい。

 問題なのは、チップの正体について彼女からの情報は実質ないという事実だ。
 結局、現物を調べるのが一番の近道だという事実に変わりはなかった。
 舞奈たちの目的が薬物中毒者の確保である事も変わらない。
 そいつを禍我愚痴支部で調査してもらって奴らの秘密を暴き、目的を暴くのだ。
 あえて言うなら、そいつが須黒で少しばかり調査できたチップと同じものだという確証が少し強まった事だ。
 そして不幸中の幸いにも……

「……皆様方は、例の薬物について調べておるのですかな?」
「ああ、そのつもりだが」
「それならワシに心当たりがありますじゃ」
「おおっ!? そいつは重畳」
「是非ともお話をうかがわせてくれぬでゴザルか」
 中毒者どもの居場所を知ってる人もいたようだ。
 名乗り出たのは最初の会合の際にリーダー氏と一緒にいた小さい爺ちゃんだ。
 ドルチェともども歓迎し、眼力でキャロルを横に寄らせて席を作る。

 ちなみにリーダーは仕事があるので平日の日中はあまり事務所にいない。
 会社の役員をしているのだそうな。

 だが見るからに定年を過ぎている爺ちゃんは、舞奈たちがいつ来てもテラスや窓際で野良猫と一緒に日向ぼっこをしていた。
 今日もそんな感じだったので、少し意表を突かれたのは事実だ。
 舞奈たちの会話を遠くで聞きながら、自分が知っている事を思い出した感じか。

「某どもは薬物の中毒者と接触を取りたいのでゴザルが、奴らがどの辺りにいるか知っているでゴザルか?」
「地図で言うとこの辺ですじゃ」
 ローテーブルの上にドルチェが広げた地図の一部を、爺ちゃんは指差す。
 その位置を皆で見やる。
 もちろん界隈の地理は舞奈も頭に入れている。
 そんな状況で示された、薬物中毒者どものたまり場は……

「……この前の場所の近くだな」
 前日に偵察した取引の場所から割と近い。
 トラックで運んできたクスリを現地で消費しているのだろうか。

「――そうなんですよ。実はわたしが自警団に入ったのも、そこで老師と会って、『最近いろいろ物騒になったね』って世間話をしたからで」
「そうでしたじゃ、そうでしたじゃ」」
「おう。そっか……」
 ギャラリーの中から顔を出した医者のおっちゃんが思い出話を始める。
 老師というのは、この小さい爺ちゃんの事らしい。
 特に何か凄い事ができるとかじゃなく、お爺ちゃんだから老師なのだろう。

「よろしければ近くまで案内しましょうかの?」
 爺ちゃんはさらに殊勝に申し出て、

「そりゃ重畳だが、大丈夫なのか?」
「今回は見に行くだけじゃなく、一戦やらかす予定でゴザルよ」
「そこら辺は、皆さんとご一緒なら問題ないと思うておりますじゃ」
「そりゃ篤く信頼してもらってどうも」
 思わず確認する舞奈とドルチェに柔和な笑みで答える。
 さらに――

「――トーマスさんの了解もとれました。捕獲の準備も明日にはできるそうです」
 フランが携帯を片手に吉報を伝えてくれる。
 舞奈たちが話しこんでいる間、状況を報告して判断を仰いだり協力を取りつけてくれていたらしい。なので、

「では明日、奴らの捕獲作戦を決行するででゴザル。老師殿もお頼み申す」
「こちらこそ、よろしくお願いしますじゃ」
 ドルチェが宣言し、明日の捕獲作戦が決定した。
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