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第21章 狂える土

日常1

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 卑藤悪夢と『Kobold』を巡る一連の騒動の余韻も抜けた頃。
 平和な平日の昼休憩。
 晴れ渡った空の下。
 初等部~高等部まで共用なのに微妙に手狭なグラウンドを兼ねた校庭で……

「……そりゃまあーこの前の勝負はお預けになってたが」
「そうだぞ! まさか有耶無耶になったなんて思ってないよな?」
 舞奈は6年生の男子と対峙していた。

 ガタイのいい6年生のリーダーの周囲には取り巻きたち。

 対する舞奈の横には明日香。
 背後には5年生のクラスメートたち。

 例によって食後のドッヂボールをしようとしていたところを絡まれたのだ。
 件の事件の初手も、こんな感じで勝負しよう睨み合っていたところ唐突にあらわれた武装した喫煙者に襲われたんだっけと思い出す。
 しかも実際は校門で1ダースあまりの暴徒を始末……もとい食い止めていたのだ。
 丁度その時も今と同じ配置だったなあと思いながら……

「……」
「どうした?」
「いや、何でもないっす……」
「トラウマになってるじゃねぇか……」
 舞奈はやれやれと苦笑する。
 取り巻の何人かが校門の方を気にしながら怯えているのに気づいたからだ。

 そりゃそうだろう。
 彼らのうち何人かは自分の倍ほど大きな目を血走らせた臭い汚い大人に襲われた。
 しかも手にした刃物で切りつけられそうになった。
 男子とはいえ、6年生とは言え、小学生にはあまりに辛い体験のはずだ。

 ……そんな暴徒が次の瞬間、ボールをぶつけられて首がへし折れたのは関係ない。

 そのボールをドッジボール勝負で自分が喰らうかもしれなかった事も。
 だいたい、あれは暴徒の凶刃から取り巻きを守るために仕方なく殺ったのだ。
 それに明日香だって凄い魔球で別の暴徒の内臓をすり潰した。

 ……そんな事を考えながら舞奈はさりげなく歩く。

 思わず身構える6年生を、できる限り刺激しないよう校門の方向に移動する。
 校門の方向からやってくる喫煙者から皆をかばうように。
 これで彼らも少しは怖くないだろう。
 あえて危険に尻を向け自分たちを見やって不敵に笑う舞奈を見やれば、その方向から来る恐ろしい何かが自分たちに達する事はないと、思わせられる自信はある。
 実際、以前と同じ脂虫に後ろから襲われても舞奈なら余裕で対処できる。

 そんな様子を見やってリーダーはむむっと唸る。
 同じ事をしたかったが出遅れたか、足がすくんだか。
 そんな自分を奮い立たせるように、

「だがな! 今回はお前に勝つ作戦を考えてきたんだ!」
「おっなんだ?」
 リーダーは吠える。
 答えた舞奈が勝負に興味を持ったと感じたか、

「こいつだよ!」
 ニヤリと笑いながら何かのパッケージを取り出す。

 小中学校と高校を兼ねる蔵乃巣くらのす学園は私物の規定が信じられないくらい甘い。
 それによる目立ったトラブルが無いからだ。
 つまり学校側が生徒を信頼している。
 普段の行いが良いと制限が減って、さらに気分よく良い子でいられる。
 堂々巡りだ。
 なのでDVDやゲームも普通に持ってこれる。
 もちろん授業の邪魔にならない暗黙の了解の上で。
 そのようにな信頼と良心が持ちこみを許したパッケージを一瞥し……

「……AVか? まだ昼間だぞ」
「ちげーよ」
 言った途端に取り巻きともどもリーダーに白い視線を向けられる。

「それで何の勝負をするつもりよ」
 しかも側の明日香まで冷たくツッコんできた。
 どっちの味方だよ。
 性格悪い奴だな……。
 口をへの字に曲げる舞奈の背後で、

「そ、それは発売されたばかりの……!」
「僕らが10年待ち焦がれた、あの伝説の……!」
「闘争を求める人類の本能が生み出したゲーム……!」
 背後から口々に羨望と驚愕の声が聞こえる。
 何人かの男子たちだ。

「……10年前に、おまえら何歳だったよ?」
 苦笑する舞奈の隣で、

「バーチャルギアの前身でもあるバーチャルボーイの対応ゲームソフトよ。内容は荒廃した未来世界を舞台に傭兵が操るロボット同士がバトルする対戦ゲーム。シリーズ化もされた名作だけど、10年前から新作のリリースが止まっていたのよ」
 明日香の説明を皮切りに、

「安倍の言う通りだぞ志門!」
「すげー面白そうなのに予約も店頭分も中高年に買い占められてて……」
「値段も微妙に高くて、おこずかいで買えないのぉ~」
 男子やモモカが口々に訴える。

 別に明日香はゲーマーじゃないが、知識を蓄えて披露する趣味はある。
 ゲームよりリアルな実際の戦闘や暗躍で役に立つ知識習得のスキルを使って、小学校でドヤれそうな情報を逐一チェックしていたのだろう。
 まったく平和で何よりだ。
 対して舞奈は……

「(……あるじゃねぇか。未来でロボットで戦うゲーム)」
 虚空を見やりながらひとりごちる。

 以前に10年後の夢の話をした際、皆に散々馬鹿にされた事を思い出したのだ。
 バーチャルギアの誤作動かと尋ねたら、そんなゲームはないと一蹴された。
 まあ当時はまだ発売されてなかったのだろうが。

 あれは確か、殴山一子と四国の一角を巡った作戦の前日の話だ。
 あの悲惨な作戦から相当に時間は経っている。
 舞奈もヘルバッハを倒し、蜘蛛のブラボーちゃんと、イレブンナイツと戦った。
 その間に新作ゲームの1本や2本は出るだろう。

 それはともかく、どうやら希少で持ってる事そのものがステータスな代物らしい。
 クラスの男子の全員が金髪王女やAV女優に御執心な訳じゃない。
 ゲームとかしている男子も多々いる。
 女子もいる。
 健全で何よりだ。

 そんな背後に構わず舞奈は笑う。
 なるほど舞奈は驚異的な身体能力を持っている。
 それも未来予知する剣術の達人と拮抗するレベルだ。
 その実力を。以前に相対した彼らも嫌と言うほど知っている。
 そんな舞奈に勝とうとするなら、身体能力は関係ないゲーム勝負は名案だ。
 まー確かに勝負の種類に制限なんて無いし。

「おまえらが勝ったら一週間こいつを貸してやるぜ」
「大きく出たな。いいのか? 出たばかりのゲームなんだろ?」
 申し出に少し驚く。
 対するリーダーはニヤリと笑い――

「――しっ志門! 聞いたか今の!?」
「一週間、遊び放題だと!?」
「マイちゃん! 絶対に勝ってね!」
「桜も遊びたいのー」
 背後のどよめきで舞奈は察した。

「マイ! みんなでゲームで遊ぶの?」
「楽しそうだね」
 チャビーと園香はニコニコ笑う。
 あまりゲームとかしない彼女らも、楽しそうな雰囲気だけは察したらしい。

「面白い事を考えるじゃない」
 隣の性格が悪い明日香も、園香たちとは違った意味合いで笑う。

 そう。これは舞奈を引けなくさせる策だ。
 なるほど舞奈はクラスの皆から妙に信頼されている。
 しかもきっぷが良い。
 それは何回か相対した彼らにはわかるはずだ。
 だから、クラスメートに期待されたら裏切れないと考えたのだろう。

 加えて勝負に使うのは景品も兼ねた希少な発売直後のゲーム。
 自分たちだけ先に攻略し、熟練する事もできる。

 そういう勝ちに貪欲な相手との勝負は嫌いじゃない。
 少なくとも命がかかってない限りは。
 だから舞奈もニヤリと笑い、

「そんで、あんたが勝ったらどうするんだ?」
「えっ? あ、そうだな……」
「どうしようでやんす……」
「えぇ、考えてなかったのか……」
 確認した途端にリーダーは困る。
 取り巻きたちも困る。
 舞奈も困る。

「さては、あたしが食いつく方策だけ考えて完璧な計画のつもりになってな……」
 素朴なうっかりに苦笑して、

「じゃーあんたが気に入らない奴ひとりを、この性格の悪い眼鏡が消す権利で」
「しないわよそんなこと」
「ばっ馬鹿野郎! 消したい奴なんかいねーよ!」
「そいつは何より」
 言ってみた提案に対するリーダーの答えに笑う。
 あんがい気の良い奴ではあるのだろう。
 だから、

「じゃー借りひとつって事で」
「それでいいぜ」
 ニヤリと笑いながら続けた言葉にリーダーも笑う。

 今の彼らは単に以前にしてやられた舞奈と戦って倒したいのだろう。
 だから他の報酬に興味なかったのだ。

 それが男子というものなのだろうか?
 同じように強者と戦うのが好きで、おそらく強者を攻略しようと日々鍛錬を続けていて、でも今はもう戦うこともできない男の事を思い出す。

 舞奈だって本気の勝負は嫌いじゃない。
 少なくとも命がかかってない限りは。
 だから、

「ルールとかはどうするんだ?」
「本体を2台持ってきたから対戦モードで勝負だ」
「オーケー」
 舞奈も相手の思惑とは無関係に乗り気になって話を進める。
 背後からも「頑張れ志門!」と口々に声があがり、

「前と同じ3本勝負でいいな?」
「いいぜ」
「じゃー一対一の3本勝負でやんす」
「そんじゃーひとりはあたしだな。あとは……」
「……!?」
「志門の他に……あと2人!?」
 次なる取り決めで、背中でも察せられるくらい男子たちの目の色が変わる。
 勝負っていう言葉を忘れてゲームを遊べる機会だと思ったらしい。
 まったく。

「お前らの中で一番ゲームが上手い奴でいいぞ」
「余裕だな」
「5年生を相手にするなら、そのくらいの甲斐性は見せないとな! それに俺たちはゲームも得意なんだ」
「何だよ文武両道か?」
 勝負に持ちこんだ時点で勝てる勝算でもあるのだろうか?
 余裕をぶっかますリーダーの言葉に、

「もうひとりはわたくしですわ!」
「麗華様……」
「ブレないンすね……」
 麗華様がしゃしゃり出て、デニスとジャネットが苦笑して、

「やめろ西園寺! 遊びじゃねぇんだ!」
「おまえのショーは嫌いじゃないが、今回はふざけてる場合じゃねぇ!」
「ああっわたくしの最高にゴージャスなメックとエンブレムを披露するチャンスが!」
 男子に取り押さえられる。
 我がクラスの男子も割と本気で勝ちに行く気になっているらしい。
 ゲームは遊びだと思うんだが……。

 そんな様子を見やって6年生たちは余裕の笑みを浮かべる。
 なので舞奈も少し彼らの鼻をあかしたくなってきた。

 あとゲームにも少し興味が出てきた。
 舞奈もあまりゲームはしないが、ロボット……装脚艇ランドポッドに乗った事がある。

 だが残りの2人はどうしよう?
 麗華様は当然ながら、男子どもも特に頼りになりそうな感じではない。
 ゲームに身体能力は必要ないが、慣れだけで相手を圧倒するくらい熟達しているのでなければ反射神経は必要だ。
 さりとて他に適任者もいないし。
 そんな風にほのぼのと勝負を始めようとしていると……

「……みんな、ドッヂボールしてたんじゃないの?」
「かつーおぶしぶし♪ かつおぶしー♪」
「あ…………」
 校舎の方からテックとみゃー子がのんびり歩いてきた。
 正確にはみゃー子は何かよくわからない手段で移動してきた。

 別にドッヂボールとか混ざる気のないテックは、いつも給食を食べた後のんびりしてから校庭に出てくる。
 みゃー子の行動パターンなんか誰も把握していない。

 ……という訳で一週間後。

「おっ鷹乃ちゃん、お久しぶり」
「む、志門舞奈ではないか。何じゃ?」
 舞奈は6年生の教室にやってきた。
 丁度よく見つけた鷹乃に気さくに挨拶する。
 そうしながら一緒にいるはずの巨乳の眼鏡の友人の姿を探して周囲を見渡し……

「……今日はひとりなんだな」
「美穂と梓はヤギの当番じゃ。……まったくそなたは見境がないのぉ」
「そうじゃなくて、今日はあんたんところの大将に用があってな」
「大将?」
「ほら、取り巻き連れた大柄な男子がいるだろう?」
「とうとう男にまで」
「そうでもねぇ」
「あやつら、何かしたのか?」
「いや、クラスの奴らがゲーム借りてたんで、返しに来たんだ」
「ほう。珍しい事もあるものじゃな。発売日を指折り数えておったのに……」
「……」
 そのように軽口を叩き合った後……

「……おまえら、ちょっと良いか?」
「どうしたんすか鷹乃さん……うわっおまえ!」
「借りてたゲーム、返しに来たぜ」
 リーダーにゲームのパッケージを手渡す。

「おっ返ってきた。よかった……」
「流石に失くしたら弁償するよ。金持ち連中が」
 苦笑する。

 とりあえず舞奈の知人(という事に何時の間にかなっていた)から借りたゲームを返しに行くのは舞奈の役目という事になったのだ。
 上級生のクラスに集団で押しかけないあたりは小学生なりの礼儀だ。
 明日香すら来ないのは単に薄情なだけだと思うが。
 出がけも素知らぬ顔で桜の猫の写真を見てたし……。

 それはともかく、皆で結構べたべた触っていた割にはパッケージも取説も、同封されてた葉書まで綺麗なままなのも彼らなりに気を使って扱っていたのだろう。
 小学生とはいえ高学年だ。
 そのくらいの社会性はある。

「でもって、こっちはクラスの奴らからだ」
「ん? 何だ?」
 ついでに預かってきた荷物を渡す。
 受け取ったリーダーは文房具屋の包装紙にくるまれたそれを取り出し……

「寄せ書きだと!?」
 少し驚く。

「あんた、クラスでちょっとしたヒーロー扱いになってるんだよ」
「しゃーねーなー」
 言葉とは裏腹にニヤニヤ笑う大将。
 気に入ってくれたようで何より。
 集まってきた取り巻きともども色紙を見やってドヤっている。

 クラス中でゲームを回し遊ぶ待ち時間、感動のあまり寄せ書きを書いていたのだ。
 義理堅いというより単にイベントが好きなだけだろうと舞奈は思う。
 彼らにとって、上級生から最新のゲームを借りたという事実そのものが祭なのだ。
 単にスーパーハッカー兼ゲーマー2人、本物のロボット乗り1人があまりに山も谷もなくあっさり勝ちすぎて勝負に勝った景品と言う意識が薄いという理由もある。
 十字キーとボタンに慣れれば装脚艇ランドポッドのおもちゃで遊んでる感覚で楽しかった。

「この『挑戦はいつでも受けるぜ!』って、テックさんの字じゃないよな?」
「男子の字っすね」
「……気が大きくなってるんだ。そこは大人になってやってくれ」
「いや、いいけどな」
 色紙を見ながら皆でツッコむ。

 ちなみに彼ら、対戦ゲームで6年生をコテンパンにのしたテックの名前を覚えて、さんづけで呼ぶようになってしまった。
 テックも家でネットゲームに没頭する程度にはゲーマーだ。
 しかも、このシリーズは過去作を遊びこんでいたらしい。
 みゃー子も腕前そのものはテックとタメだが意思疎通ができないから……。
 まあ、そんな些細なツッコミどころはさておいて、

「秘密基地に飾りたいっす」
「おっ! 良い案だな!」
 大将は取り巻きとそんな会話をしながら再びドヤり、

「秘密基地……」
「……場所は内緒だからな!」
「いや別に無理やり吐かせたりしないよ」
 思わずひとりごちた舞奈を睨んで身構える。
 舞奈はやれやれと苦笑する。

 けど危ない場所には行くな。
 そう無意識に言いかけて、あわてて飲みこむ。
 たぶん男子は女子にそういう事を言われたくないと思ったからだ。
 きっと男には身の安全より大事な事がある。
 今の舞奈はそれを知っている気がする。

 そんな風に思った理由は、他ならぬ彼らが実戦のプロに対戦ゲームで無謀な勝負を挑んできたからかもしれない。
 先日に剣鬼たちと戦ったからかもしれない。
 あるいは、もうずっと以前の事になってしまった四国の一角での仲間の顔が脳裏に浮かんだからかもしれない。
 トルソ。バーン。スプラ。ピアース。切丸。
 あの作戦で、ひょっとして明日香あたりが仕切って魔術による力技で進めば全員で目的地までたどり着けたのかもしれない。
 だが、そんな事をしても彼らは喜ばなかったと今は思いたい。
 男と言うのは、きっとそういうものだ。
 だから……

「……気が向いたら、面白い話でも聞かせてくれよ」
「しゃーねーな! 気が向いたらだぞ!」
 何食わぬ口調で言った舞奈にそう答え、男子たちは向こうで雑談を始める。
 楽しそうな上級生たちの様子を見やって舞奈も笑う。
 そして自分のクラスに帰ろうとして……

「……そういやあ鷹乃ちゃん、最近の調子はどうだい?」
 何となく側にいた鷹乃に問いかける。

 ふと気づいたからだ。
 そういえば『Kobold』騒ぎに鷹乃が関わった様子はなかった。
 いちおうは彼女も民間警備会社PMSC【安倍総合警備保障】の協力者だ。
 同業他社や魔術結社まで巻きこんだ警戒態勢の中で、手練れの陰陽師でもある鷹乃が駆り出されないのも不自然だ。
 そんな思惑に鷹乃自身も気づいたのだろう。

「実は他県がちと厄介な状況でな。そちらの調査に駆り出されておったんじゃ」
 何気な口調で答える。

「他県だと?」
「埼玉じゃ。禍我愚痴支部の管轄地域の治安が急激に悪化したらしくての」
「埼玉ねぇ……」
 続く言葉にふむとうなずく。

 今の舞奈にとって、他県という言葉のイメージは好悪半々。
 四国の一件ではあまり良いイメージはない。
 散々に苦労して、臭いゾンビと相対して……たくさんのものを守れなかったから。
 だがヘルビーストの本来の所属に、まあ興味が無いと言えば嘘になる。
 確か群馬支部だったか。
 いつか音々を連れて遊びに行ければ良いと思う。
 それより……

「……『埼玉』の『禍我愚痴支部』って事は、県の支部じゃないのか」
「そうじゃ。察しが良いの」
 訝しむ。

 通常、【機関】の支部は都道府県単位で存在する。
 だが例外がある。
 一般的な支部の戦力では荷が重い場合だ。
 怪異の勢力が特に強く危険な場所に、そこだけを管轄とした支部ができる。
 そこには怪異の群れに対抗し得る異能戦力が配置される。
 例えば新開発区――怪異が湧き出る廃墟の街と隣り合った巣黒支部とか。

 そんな特別な、そして成り立ちからして厄介な場所で厄介事。
 悪い予感しかしない。
 しかも困った事に、舞奈のこの手の悪い予感はよく当たる。
 なので……

「……その調査とやらの結果を聞いてもいいか?」
 仕方なく尋ねる。

 この手を問いを先延ばしにすると、寸どまりで最悪の結果を聞かされる。
 今までずっとそうだった。
 これまでの舞奈の長くもない人生の中で例外はなかった。
 それが証拠に今回も、

「本来は機密なのじゃが……まあ構わんじゃろう。近いうちに機密解除されないのであれば、直接そなたに話が行くじゃろうし」
「不安になるような事を言わんでくれ……」
 問いに対して鷹乃は嫌な前置きをして――

「――調査中の式神が何者かに撃破された。それも複数回じゃ」
 とびきり嫌な事実を告げた。
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