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第15章 舞奈の長い日曜日

桜とケーキ屋とアメコミヒーロー

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 教会を後にし、どこもかしこも灰色な統零とうれ町の大通りを歩く。

 そうするうちに華やかな屋根が見え始める。

 もう少し歩くと、色とりどりの店が左右に並ぶようになってきた。
 亜葉露あばろ町の一角にある商店街だ。

「活気のある街だな。私の国では見ないものがたくさんある」
「へへっそうだろ?」
 アーガス氏は物珍しさを隠し切れない様子で立ち並ぶ店を、道行く人々を見渡す。
 そんな彼の言葉に舞奈も自慢げに笑い、

「ま、大聖堂が降ってくる様なトラブルもない平和な街だ。のんびりくつろいで――」
「――おおっと」
 路地から誰か跳び出してきてアーガス氏にぶつかった。
 薄汚い色の背広を着こんだ小男だ。

「……」
 舞奈は嫌そうにそいつを睨む。
 見やるまでもなく焦げた糞のような悪臭でわかった。
 よりによって、くわえ煙草の脂虫だ。

「こういう輩は我が国にもよくいる」
「そりゃどうも」
 微妙に舞奈に気遣いながら、アーガス氏は脂虫の頭をむんずとつかむ。
 そして虫が跳び出してきた細い路地へと引っぱっていく。
 舞奈も仕方なく後を追い、

「あっ舞奈ちゃん……」
「1匹、逃げてたぞ」
 チーズ牛丼みたいな面を揃えた執行人エージェントたちと出くわした。
 例によってヤニ狩りの獲物を取り逃がしそうになっていたようだ。
 何人かがもう1匹を袋詰めしてる最中なので、その隙をつかれたのだろう。

「【精神檻マインド・ケージ】で動けなくしておいたが長くはもたない。早急に処置したまえ」
「ありがとう! ミスター・イアソンに似た生え際の際どい御仁!」
 アーガス氏は手馴れた様子で、脂虫を少年のひとりに引き渡す。

 そして執行人エージェントたちに見送られながら2人は路地を後にする。

「……手間かけてスマン」
「気にしないでくれ」
 再び商店街を歩きつつ、舞奈は側のマッチョを見上げてボソリと言った。
 だがアーガス氏は気にせぬ様子で、

「それより私は感心している」
「感心?」
「ああ。この国では超能力サイオンを持つ若者たちが認可されてCarrierを狩っている」
「あんたの国では違うのか?」
「恥ずかしい話だが、我が国では貧民層がこっそり狩って関連組織に引き渡しているんだ。そのせいで反撃されたり、最悪の場合は命を落とすこともある」
「そっか……」
 先ほどのようにフォローが必要な状況が、日常茶飯事だった訳だ。
 彼の国は人も怪異も多すぎて、管理も対処も間に合わない。
 それに比べれば【機関】の執行人エージェントがヤニ狩りをするこの国は平和なのだろう。

 それでもなお、その平和の合間を縫うように犠牲になる者がいないわけじゃない。
 そもそも巣黒すぐろ支部でヤニ狩りをちゃんとするようになったのも、あの忘れもしない1年前に引き起こされた、忌まわしい事件と犠牲がきっかけだ――

「――ランチはここにするとしようか」
「ん? 構わんが、なんでまた『シロネン』で……」
 問いかけて、ふと気づいて誤魔化すように虚空に目をやる。

 舞奈がショーウィンドウのチョコレートケーキを見やっていたのに気づいたらしい。
 まったく変なところで目ざといマッチョだ。
 もっとも、その程度の目端も利かねば外国の超能力サイオンなど――異能力者の希望を担うヒーローなど務まらないのかもしれない。

 まあ舞奈的にはケーキが昼食の代わりになるかは微妙なところではある。
 だが話では『シロネン』にはランチのメニューもあるらしい。
 女子高生みたいにケーキ屋でおしゃれなランチも悪くない。

 なのでレディーファーストを気取ったつもりか自動ドアの前を踏んで開けてくれたアーガス氏とともに入店する。

 舞奈も数回ほど来たことのあるおしゃれな店内は、今日も女子で賑わっていた。
 黄色い声と、あふれる若さのせいで、私服にも関わらず中高生だと一目でわかる。
 そんな女子中高生たちの何人かは、アーガス氏と舞奈を見やって噂話を始める。

 まあ主食の代わりに肉食ってそうな中年マッチョが入る店ではないのは確かだ。
 だが声色に好意的なニュアンスが籠るのは、いちおう子供連れだからか。
 あるいは彫りの深い顔立ちと、生え際が派手に後退しているとはいえ金髪のせいか。

 戦場で鍛えられた聴覚が、黄色い声からいくつかの単語を拾う。
 曰く「外人かしら」「俳優?」「ミスター・イアソンに似てる」等々。
 紅葉が別段ミーハーだという訳ではなく、彼は本当に有名人らしい。

 ……ノープランでとりあえず顔を出せば子供の慰問になるだろうという見解も、あながち的外れではなかったという訳だ。本来なら。

 舞奈がちょっと口元を尖らせるうちに、金髪マッチョはテーブル席をキープする。
 店外が良く見える窓際の席だ。
 ひょっとして自国でそういう席に案内されることが多いのかもしれない。
 流石はヒーロー。姿は変えてもカリスマ性は隠せない。
 だが、そんな彼は、

「すまないが少し席を外させてもらう。好きなものを頼んでおいてくれ」
「おっ、ごちっす」
 言い残して去って行った。
 視界の端で広いスーツの背中を見やりつつ、舞奈はメニューを手に取る。
 張の店とは違った感じにおしゃれなメニューを広げる。
 フルーツケーキやアイスが乗ったチョコレートケーキを眺めつつ、聞き耳を立てる。

 先ほど彼の携帯のバイブが鳴っていたのに舞奈は気づいていた。
 まあ彼も仕事で来日した超能力サイオンのヒーローだ。
 急な仕事の連絡くらいは入るだろう。

 そんな彼は席から少し離れた観葉植物の陰を電話する場所に選んだようだ。
 SNS映えするポーズでも取っているのか、手癖の悪い何人かが写メしている。

 俳優似の金髪を肴にはしゃぐ黄色い声に混じって、低く深いアーガス氏の声。
 声を潜めているようだが、ヒーロー然とした良く通る声も良し悪しだ。

 声色に常時の洒落っ気がない。
 これが彼の素だろうか? あるいはトラブルか?

 小癪にも英語で話される会話の内容はわからない。
 だが苦々しい口調で頻出する「Villain」という単語が気になった。

 びらん?

 それが彼らの敵だろうか?
 そんなことを考えた途端――

「――ん?」
 視界の端で何かが動いた。
 仕方なく目を向けると、

「……おい」
 桜がいた。

 開放感のある大きな窓ごしに、未就学児の2人の妹といっしょに手を振っている。
 何やら喚いているようだが聞こえない。
 なにせ道側の壁一面を占めるガラスなのだから、相応に分厚く頑丈だ。

 大口開けた唇を読むこともできるが、別にその必要もない。
 中に入りたいのだ。
 女学生に人気の『シロネン』は、小学生には少し敷居の高いケーキ屋だ。
 そんな店の中に知人を見つけ、あわよくば友達面しておごらせようとの算段だろう。

 桜と妹たちは必死の笑顔で、ぶんぶん両手を振ってアピールする。

 舞奈も笑顔でばばばっと3人分の速さで手を振って答える。
 その程度、卓越した身体能力を誇る舞奈にとっては造作ない。

 3人はムキになって手を振りまくる。
 舞奈も超高速で手を振り返す。
 素人がそんなことをしたら椅子の背もたれに手をぶつけて少しばかり大変なことになるが、舞奈にそんな心配は不要だ。

 別に桜たちと張り合う理由は舞奈にはない。
 だが、偶然に見かけたという理由で他人におごらせようという性根が気に入らない。
 まあ舞奈もおごってもらっているのには違いないのだが。

 なので互いに不毛な手の振り合いを続けていると……

「……あ」
 窓の向こうにアーガス氏がやってきた。
 しゃがみこんで桜と目線を合わせて何事か話す。
 桜と妹たちは跳び上がって喜ぶ。

 そして4人は舞奈の視界から消え、反対側の店内の通路からやってきた。

「よう桜。こんなところで奇遇だな」
 舞奈は何食わぬ顔で挨拶しつつ、少しずれてアーガス氏の場所を作る。

「マイちゃんったら! 気づいてくれなくてヒドイのー!」
「ハハッ! すまんすまん」
 桜と妹たちは向かいに座り、舞奈が手渡したメニューにかぶりつく。

「……知人が迷惑かけてすまん」
「かまわないさ。元気で可愛らしいお友達じゃないか」
「そりゃ、あんたから見ればそうかもしれんが……」
 言いつつ桜を見やり、苦笑する。
 まあ自分より妹たちにメニューを見せる素振りに可愛げがあると思えなくもない。
 そんな舞奈に、

「hahaha。彼女のようにしたたかな女性は私の知人にもいる」
「いるのかよ」
「ああ、我が同志シャドウ・ザ・シャークがそうだ」
「そうか……」
 どこにでもいるんだなあ、そういう奴。
 それより、そいつヒーローチームの仲間だろ?
 こういう場所で名前出していいのか?
 そんなことを思った途端、

「えっ!? 桜が映画のシャドウ・ザ・シャークそっくりの美人に見えるの? そんな本当のことを言われたら照れるなのー」
「言ってねぇよ」
 舞奈の反応に構わず桜はメニュー表の、ケーキが乗っていないページを広げ、

「これが桜なのー……じゃなかった、シャドウ・ザ・シャークなのー」
「わざとらしく言い間違いやがったな」
「ねーちゃん、ケーキがみえないぞ」
「ケーキみせてー」
 見開きで掲載された映画の広告の一角を指さす。

 ページの上側に大きく描かれたタイトルは、教会で紅葉が語っていた映画のそれだ。
 数日前までタイアップのキャンペーンをやっていたようだ。
 そんな中、並んだ全身タイツのひとりがミスター・イアソンなのは見ればわかる。

 その側、桜が指さしたのは全身タイツの女だ。
 イアソンとは真逆にモノクロのカラーリングが大人っぽさを醸し出している。
 口元を覗かせたマスクの頭がサメの背びれみたいな装飾になっているのが印象的だ。
 だが、何より、

「おっこりゃ良い女だ」
 引き締まった細い身体の胸の部分には大きくて形がいい2つの膨らみ。
 地味な配色の全身タイツが女性らしい身体のラインを強調し、彼女の姿を芸術にまで昇華させる。そんな彼女に見惚れる舞奈に、

「えへへっ! マイちゃんは人を見る目があるなのー」
 桜がポーズをとってみせる。
 お前のことは褒めてない。
 興をそがれた舞奈は、

「……いいから飯を選べ」
「はーいなのー」
 やれやれと苦笑しつつ、再び桜と妹たちが見始めたケーキのメニューを覗きこむ。
 逆さになったメニュー表を読解する程度のことは造作ない。

 ランチとは言うものの、店に並んでいるケーキに割安のドリンクが付くだけらしい。
 まあケーキ屋なのだから当然か。
 朝からハードな運動をしてきたせいで舞奈は腹も減っているが、旧市街地に住むまっとうな女子中高生たち的には丁度いい量なのだろう。

 かといって、流石に小さなチョコレートケーキを腹が膨れるまで食うのは品がない。
 ホールケーキをまるごとひとつとかも。
 なので他と比較して腹にたまりそうなパンケーキに決める。
 チョコレートとバナナがトッピングされた、ちょっと豪華で高めの奴だ。
 抽象的で歯が浮いたような表現の商品解説を読むうちに、早くも食うのが楽しみになってきたのは明日香の影響だろうか。

 桜と妹たちは姦しく騒いだ挙句、女子力の高そうなタルトやミニケーキを注文する。
 仮にもアイドルを自称するだけあって、そういった情報は集めてるらしい。
 あるいは漫画雑誌の受け売りか?

 そんなこんなでメニューが決まると、アーガス氏が慣れた感じで注文してくれた。
 ちなみに本人はトッピングなしのホットケーキ。ただし枚数増量。
 なるほど、その手があったなあと感心する舞奈を尻目に店員は去っていく。

 そして、ほどなく人数分のケーキとドリンクをテーブルに並べた。

「おじさん、ありがとうなのー」
「なに、礼には及ばないさ」
「ママからもらったお金が豪華なランチになったなのー」
 桜は見よう見まねの作法でタルトを切り分けながらニコニコ笑ってみせる。
 妹たちもケーキで口元をべたべたにしながらニッコリ笑う。
 そんな彼女らを見やってアーガス氏も笑う。

「お礼に歌うなのー」
「いや歌わんでいい……」
 相変わらずの妄言に舞奈は苦笑する。

 そうしながら、自分のパンケーキに取り掛かる。
 ふんわり焼かれた生地の上にダイナミックに盛られた生クリームと、カットされて並べられたバナナ、それらを繊細にデコレートするチョコレートソースが目に楽しい。
 予想以上のボリュームに、思わず口元が緩むのを止められない。

 なので洒落たナイフとフォークを手にして形だけは上品に、バナナを口に放りこむ。
 果実の程よい柔らかさ、生クリームとチョコの上品な甘さが舌の上で踊る。

 次にふんわり焼きあげられた生地を大胆にカットして口に運ぶ。
 こってりとした素材の風味のおかげで、見た目以上に食べ応えがある。
 その後にバナナと生地を口に含み、ゆっくり租借しながらアンサンブルを楽しむ。

「よく見ると、おじさんもミスター・イアソンに似てるなのー」
「hahaha。よく言われるよ」
 桜はすっかりアーガス氏が気に入ったようだ。
 まったく、ちょっと金持ちなところを見せるとこれだ。

 だが、まあ桜のおかげで楽しいランチになったのは認めねばならない。
 日々の戦いの合間の平穏の中、彼女もまた舞奈にとって日常の象徴なのは事実だ。

 そういえば奈良坂はリコに昼飯も作るのだろうか?
 先ほど会った執行人エージェントたちは午前の労働の後、やはり支部の食堂でランチだろうか?
 そんなことを考えつつ、

「そういやあさっき、教会で委員長が歌ってたぞ」
 ふと思い出して言ってみた。

「そうなんだ! 後で桜たちも遊びに行くなのー」
「今もいるかは知らんがな」
「えへへー。委員長のおうちに遊びにいくと、おいしいお菓子をだしてくれるのー」
「ったく、人にたかることばっかり考えやがって」
 相変わらずの桜に肩をすくめつつ、それでも口元には笑みが浮かぶ。
 考えるのは委員長の父親である梨崎蔵人のこと。

 かつては娘の音楽活動に反対していた彼。
 それでも委員長は歌いたかった。歌は亡き母が彼女に遺したものだから。
 そんな確執の煽りをくらい、舞奈たちは公安やアイドル怪盗と戦う羽目になった。

 だが、そんな親子の心のすれ違いも、文化と音楽を衰退させんと企むKASCを巡る一連の事件のどさくさで解決したらしい。

 そんな事情を汲むような甲斐性は、残念ながら桜にはない。
 だが娘の友人をもてなす彼の家のありかたが、母を亡くした娘と妻を亡くした父が何かにふんぎりをつけられた証のように舞奈には思えた。

 なので舞奈たちも他愛のない世間話をしながら料理を平らげる。
 次いでデザート(おかわり?)のプリンを御馳走になって、店を後にした。

 会計のついでにアーガス氏は何かを買って舞奈と桜に手渡した。
 贈答用のキャンディらしい。
 可愛らしいイラストの描かれた缶に入った高級品だ。
 さすがはヒーロー。抜け目ない。

「ありがとうなの! お家でみんなで食べるなのー!」
 そんな風にして桜たちと別れ、再び2人で商店街を歩く。

「他に何か、見たいものとかあるか? まあ名所とかは特にないが……」
亜葉露あばろ町の公園というところに行ってみたいのだが」
「公園か? ならこっちだ」
 リクエストを聞きつつ角を曲がる。
 商店街のある亜葉露あばろ町は、他にも学校や公園といった健全な施設が多い。
 電話の後に具体的な地名が出てきたということは、誰かと待ち合わせだろうか?
 ふと、そんな疑問が脳裏をよぎり、

「ちょっと聞いていいか?」
「何かね?」
「ヴィランって何だ?」
 何気を装って問いかける。
 先ほどの会話を聞いていたことがモロバレである。
 だが彼も自分の良く通る声で、内緒話ができると本気で思ってないだろう。だから、

超能力サイオンの使い手の中には、残念ながら私利私欲のために市民を害する悪の道を選ぶ者もいる。それがVillainだ」
「こっちで言う怪人みたいなもんか」
 そんな奴らもいたなあ。
 何食わぬ調子のアーガス氏の答えに、舞奈は苦笑してみせる。

 そういう存在のことを、ここのところ舞奈はすっかり失念していた。
 ここ巣黒すぐろ市における執行人エージェントは、怪人より人ならぬ怪異と相対することが多い。
 怪異が湧き出す新開発区と隣接しているからだ。
 しかも最近は、人に化けた泥人間が立て続けに騒ぎを起こしていた。

 だが一般的には、異能による被害は悪に身を染めた異能力者がもたらすことが多い。
 そういった輩は怪人と呼ばれ、怪異同様に執行人エージェント仕事人トラブルシューターの討伐対象になる。

 怪異との違いは、怪人があくまで人間であること。
 だから、ただ倒すのではなく捕らえることが必要になる。

 かく言う舞奈たち【掃除屋】も、報奨目当てに怪人と相対したことも何度かある。
 直近は祓魔師エクソシストのシスター・アイオス。
 彼女とは園香を巡って争い、別の事件では共闘し、だが最終的に決着をつけることはできなかった。

 他に術者と戦った経験と言えば、桂木姉妹や萩山光が挙げられる。
 だが、どちらも【機関】からは怪人として認定されていない。
 公安の魔道士メイジやウィアードテールはほぼ舞奈たちの都合による私闘なので論外だ。

 それはともかくアーガス氏――ミスター・イアソンがこの国を訪れた理由。
 おそらく、それは彼の言うヴィランに関することだと考えて間違いない。
 まあ、舞奈の周りはいつもトラブルでいっぱいだ。
 別に海外からの客人がその例外だと期待する理由はない。

 そんな事を考えている最中――

「――先に行っててくれ。公園なら、そこの大通りをまっすぐ進めば見えてくる」
 不意に舞奈は立ち止まる。

「用事ならつき合うが?」
「すぐに済ませるさ」
「そうか。なら向こうで待っている」
 訝しむアーガス氏を、やや強引に送り出す。
 案外あっさり行ってくれたのは、こちらの事情を察したからか。

 そして逆三角形のマッチョな背中が小さくなるのを見送ってから、

「……何の用だ?」
 側の路地を、見やりもせずに問いかける。
 何者かが驚く気配。舞奈に気づかれたことに。

 だが、どんな巧みな尾行術も舞奈に対しては無意味。
 最強レベルの直感と感覚から隠れ通すことなどできない。

 だから舞奈はひとり相対する。
 そうしなければならない相手に。
 ミスター・イアソンに対するヴィランのように。
 舞奈に対するそれは――
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