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第14章 FOREVER FRIENDS
空中戦2 ~合同攻撃部隊vs異能力
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上空からKASC支社ビルへの突入を試みた舞奈たちと、護衛の式神。
その前に立ちふさがる怪鳥の群。
式神たちは群を蹴散らす。
だが超巨大な大怪鳥が出現した。大規模転移の大魔法によって。
思わぬ強敵に怯む一行。
そのとき、戦場をレーザー光線が貫いた。
――退屈な日常も、ファンタジーと隣あわせ♪
――うつむいた視線上げたら、魔法の世界は、そこにあるよ♪
夜空に映るあずさの衣装が妖精の如くファンシーに変化する。
そして次なる曲を奏でる。
曲目は『HAPPY HAPPY FAIRY DAY』。
希望そのもののようなその歌声に呼応するように、射点が明るい星のように輝く。
そして紫電のように飛来したそれは、人間サイズのドローンだった。
機種は鷹乃のそれと同じF-15。
だが機体の上側に砂漠迷彩を施されたF-15I。通称、稲妻。
戦闘機は舞奈の目前で人型へと変じる。
エアインテークと胴体後部燃料タンクを内包する機体下部の外側が脚になる。
下部内側が腕になる。
機首が下を向いて胴になる。
機体後部に位置するエンジンと主翼、尾翼が折りたたまれて背になる。
「我が名はベリアル。第三機関が群馬支部、執行部に属するAランクである」
名乗りつつ、砂色の式神は虚空から黒いマントを取り出して身にまとった。
「ゴーレム越しの挨拶ですまぬ」
そう。彼女が操っているのは正確には式神ではない。
カバラ魔術【創神の御名】によって創造されるゴーレムだ。
腰には2丁の拳銃。
そして虚空から短機関銃を取り出す。
そのどれもに見覚えがある。
思いがけぬ増援に、舞奈の口元に笑みが浮かぶ。
だが、それだけではない。
――すり減ったクレヨンを杖にして、流れる雲をお供にして、冒険に出かけよう♪
――苦しいことも、大変なことも、いっぱいあるけれど♪
――くじけないでね、おそれないでね、前を向いて進もう♪
「待たせたな!」
怪鳥どもの頭上から、何かが落ちてきて襲いかかる。
ラフなTシャツとカーゴパンツを夜風にはためかせた屈強な尼僧。
元【機関】巣黒支部所属のAランク、仏術士の尊師ゴーガンだ。
他支部に転属したはずの彼女だが、以前にチャビー奪還に協力してくれたと聞いた。
今回も同様に、舞奈たちに手を貸してくれるらしい。
筋骨隆々とした2メートル強の巨躯を【持国天法】で強化した肉体の凶器。
そんなものが【迦楼羅天法】を併用して飛びかかってきたのだ。
敵にとっては災厄としか言いようがない。
気功で飛ぶ妖術は【増長天法】の発展形で、【鷲翼気功】と同等の術だ。
そんなグルゴーガンは急降下爆撃の如く落下しながら両腕で怪鳥どもを叩き潰す。
加えて手近な1匹の喉元をくわえてそのまま食いちぎる。
怪鳥どもの群の一角、尼僧が通り過ぎた後に空白のラインが出来上がった。さらに、
「盛り上がってマスね! 最高デース!」
何もない空間にいきなり、半裸のロシア美女が出現した。
白い肌を、全身に巻いたベルトに吊られた無数のドリル刃が隠している。
コードネーム【人体工作】。グルゴーガン同様に元巣黒支部のAランクだ。
微妙な部分を隠すドリルが風に吹かれ、あずさの曲に涼やかな音色を添える。
そんな彼女が修めた超精神工学。
それは内なる魔力を特殊な電磁波に変換することにより奇跡を成す妖術だ。
その御業によって彼女は自在に転移し、飛行することが可能。高高度でも同じだ。
同じ技術によって、プロートニクは身に着けたドリルのいくつかを投げる。
鋭いドリル刃は電磁波で誘導され、狙い違わず怪鳥たちを貫く。
そんな心強い、だが一部見た目がアレな他支部からの増援に加えて、
「間に合って良かったよ」
さらにアレな増援が転移してきた。
用いられた術は重力操作を応用した空間湾曲による『普通の』長距離転移。
即ち【転移門】。
高等魔術だ。……まあ、それはいい。
問題なのは、あらわれたのが全裸の女だということだ。
プロートニクと違って要所を隠す努力すらしてない。
舞奈の知人に高等魔術師は2人いるが、その片眼鏡のほう。
即ち【組合】の山崎ハニエルだ。
「なあ、いただろう? 全裸」
「今それどころじゃないでしょ」
「ちぇっ」
まあ今の状況でツッコんでも仕方がないのは確かだが……。
明日香にあしらわれて口元を歪める。
だが少しだけ楽しげに。
予想外の増援に心躍るのも事実だ。だから、
「……あれは良いのかよ? 男子いるんだぞ」
鷹乃も無視。
「ハハ、眼福ですよ」
代わりにポークが無難に答えて苦笑する。
……はしゃいでいると思われたかもしれない。
「だいたい戦闘中だぞ」
飛行の魔術【重力飛行】により側を飛ぶハニエルをジト目で見やる。
以前にマンティコアが用いた【重力浮遊】の上位に相当する術だ。
「本当に何も着てないってのはどういうことだよ? いや――」
苦笑する先で、何匹かの怪鳥が新手に突撃しながら異能力を放つ。
だが【火弾】【充電弾】に相当する火矢、稲妻は全裸に達せず散る。
逆に不意に吹き荒れた旋風が、怪鳥どもを吹き飛ばす。
全裸の胸に数珠つなぎに連なるペンタクルのひとつがキラリと光る。
「――【螺旋の装甲】って奴か」
ひとりごちたのは【大気の装甲】の上位に相当する術の名。
大気のバリアで防御しつつ【螺旋風】による旋風で反撃する。
全裸の両脇には輝くドレスに身を包んだ女性が飛んでいる。
高等魔術【南方の守護者の召喚】で召喚される大天使ミカエルだ。
式神や魔神、ゴーレムと同じく因果律の操作による創造物。
その中でもミカエルは悪魔術のベルフェゴール同様に炎とエネルギーを司る。
だから杖からの【火弾】【充電弾】で怪鳥を牽制し、あるいは撃墜する。
そんな輝く守護者をも操りながら、
「怪異は魔力の源となる美しいものを忌み嫌う。ならば僭越ながら我が裸体それ自体が奴らへの手痛い打撃になるとは思わないかい?」
「自分で言ってりゃ世話ないぜ」
ハニエルは笑う。
舞奈も頼もしい増援への高揚を誤魔化すように、軽口を返してみせる。
ハニエルの豊満でありながら形の良い乳房、なだらかな腰から尻へのラインと均整のとれた見事なプロポーションが美しいことは認めねばならない。
そして疣豚潤子のような醜悪な怪異どもが、大きく美しい乳を嫌うのも事実だ。
何故ならプラスの感情を喚起する美は、マイナスの感情を糧とする怪異の天敵だ。
つまり彼女のように若く美しい女性の裸体は、十字架や旭日旗、神社の柏手や除夜の鐘といった聖なるものと同等の効果を持つ。
そう考えるのは悪い気分じゃない。
そんな舞奈たちめがけ、群から離れた怪鳥の一団が強襲を仕掛ける。
だが直後に降り注いだ攻撃魔法の雨に薙ぎ払われる。
――勇者様なんていなくったって平気♪
――夢を広げたキャンパスに、魔法の杖をひとふりすれば♪
――どんな願いだって、叶うから♪
背後を見やると、空飛ぶほうきに乗った小柄な魔女が飛んでいた。
委員長と似た感じの三つ編みおさげが高高度の風に揺れる。
先程までより舞奈たちと近い。
歌う幻を維持するだけの傍観者ではいられない距離だ。
両隣に控えているのは燃え盛る炎の塊と、人間サイズの氷塊。
ケルト魔術【炎の精霊の召喚】で呼び出される炎のエレメンタル
そして【氷の精霊の召喚】による氷のエレメンタルだ。
スタイルの良い女性の形なのはハニエルの裸体のように魔除けの効果を期待してか。
その姿がどこか園香に……あるいは美佳に似ていて、思わず口元に笑みが浮かぶ。
そんな表情を誤魔化すように、
「あんたは仕掛けて大丈夫なのか?」
舞奈はもうひとりのSランクに問いかける。
以前に蔓見雷人を【ブリューナクの炎槍】で屠った彼女。
その能力を恐れられた彼女は上層部からの数多い制限のせいで動けない。
だからあずさの幻で皆を援護していたはずだ。だが、
「は、はい、その……この状況なら、わたしが加勢してもわからないから……」
「戦果を他人に肩代わりって訳か。そいつはすげぇぜ」
おどおどと返された答えに笑みを返す。
なるほど上層部の目も高高度までは及ばない。
彼女が少しばかり羽目を外そうが、他支部の魔術師や【組合】直属の術者がやったと言い張ればそれ以上の追及は不可能だ。
以前に舞奈は不心得なBランクに戦果を奪われて報酬をお釈迦にされた。
だがSランクは制限を逃れるために他人に戦果を押しつけるらしい。
なんとも贅沢な話だ。
そんな状況は魔力が更なる魔力を呼び、金が更なる金を呼ぶ世の理と似ていた。
充実した魔法戦力が、より強力な大魔道士の介入をも可能としたのだ。
そんな舞奈の想いを他所に、2体のエレメンタルは猛攻を加える。
ファイアエレメンタルがまとう炎と熱を利用した火球の呪術【変成火球】。
熱を奪われることで生まれた冷気を用いた氷の刃【鋭氷の斬刃】。
以前に大学生の萩山光もやってた、ちょっとお得な呪術の使い方もSランクが創造したエレメンタルの手にかかれば呪術による暴虐と化す。
機関砲のように掃射される元素の砲弾が、怪鳥どもを薙ぎ払う。
弾幕を浴びた哀れな怪異どもは紙切れみたいに一瞬で消える。
凄まじい数多の攻撃魔法に舞奈もポークも、そして明日香すら圧倒される。
――危険なモンスターだって、楽しいイベントに早変わり♪
――ウサギとおしゃべり♪
――子猫とお昼寝♪
――小鳥に乗って空のお散歩♪
――ここは素敵な、冒険の世界♪
舞奈と明日香を抱えて飛ぶポークの横に、黒マントのゴーレムが並んだ。
「この前はありがとう。あんたの得物のおかげで滓田の野郎どもを倒せた」
「あの程度、礼には及ばぬ」
ゴーレムは短機関銃で怪鳥どもを牽制しながら、ぶっきらぼうに答える。
鷹乃の式神と同型機のはずだが、こちらのほうがややマッシブだ。
だが口調こそ滑らかなものの、喋り方が似ている。
どちらかが影響を受けているのだろうか?
「……それに、借りがあるのは我々のほうだ」
既視感のある黒いマントが夜風に揺れる。
「魔術を極めた我らが使命を、年端もゆかぬ術すら使えぬ貴殿に押しつけたのだ。しかも我らより適任だという理由でな」
やや自嘲気味にも聞こえるその言葉の意味。
舞奈には、それが少しわかる気がした。
彼女(だと思う)も園香の父親と同じ。
負い目があるのだ。
舞奈に責務を負わせることに対して。
本来なら敵の大魔道士を討つという危険な役目は己がものだと自負があるのだろう。
超常の力を極めた魔道士のはしくれとして、そうでない者を守る責があると。
そういう気概がなければ術者にはなれない。
魔法の源となる魔力は、美しく高潔な心から生まれるものだから。
だが舞奈だって自分ができることをしているだけだ。
何故なら舞奈はSランクだから。
もちろん支部にはもうひとりのSランクがいる。
だが、数回とはいえ顔を合わせた舞奈にはわかる。
彼女に舞奈の代わりはできない。
上層部からかけられた制限だけが理由ではなく。
魔術と呪術を共に極めた彼女には、舞奈のように不可能を可能に変える力はない。
そんなものなくても最強だからだ。
だからこそ自身と同格の大魔道士との直接対決は分が悪い。
状況次第では【機関】はSランクを失うという最悪の事態すら有り得る。
だからこそ適任者は舞奈とそのパートナーである明日香しかいない。
舞奈は術すら使えぬ小学生でありながら、数多の術者に、魔獣に打ち勝ってきた。
それに舞奈にだって、感情を魔力の糧にできないなりに気概はある。
悪を討ち、自身の周りの人々の笑顔を守る。守り抜く。
でなければ過去に失ったものが本当に無になってしまう気がするし、舞奈も舞奈自身ではいられなくなると思う。だから、
「仕事なんだ。報酬分は働くさ」
普段と同じように不敵に笑う。
今回は【機関】から正規の報酬が出るのも本当だ。
それは今回の舞奈が協力を乞う立場じゃないことを示している。
舞奈こそが力なのだ。
最後の悪に撃ちこまれるべき最強の銃弾だ。だから、
「言うてくれるわ!」
黒マントのゴーレムは笑う。
――見なれた通学路も、ファンタジーへの通り道♪
――そっと手をのばしてみたら、貴女の隣に、仲間はいるよ♪
「ならば貴殿の花道、このベリアルが設えてみせようぞ!」
高らかに宣言しつつ空を駆け、怪鳥どもの群の前に躍り出る。
ちょうど鷹乃の式神が、錫杖から氷の弾丸を掃射して怪異を抑えているあたり。
即ち【自在天・氷矢法】。
ベリアルは短機関銃を腰のラックにマウントする。
代わりに2丁の拳銃を抜く。
銃身《バレル》の下側のレールにはメノラーがマウントされている。
アーチ状の支持架によって銃に設置された、7枝の燭台が星明りに光る。
その直後、メノラーから星の光を凌駕する閃光がのびた。
2条のレーザー光線はそれぞれ数多の怪鳥を貫きながら夜空を彩る。
即ち【硫黄の火】。
かつて滓田妖一との決戦で、束の間、舞奈に貸し与えられた力。
カバラ魔術師が誇る熱と光のアートにして暴虐。
「そういうことなら、わたしも少しは良いところを見せないとね」
ハニエルも光線を放つ。
こちらは高等魔術によって再現されたレーザー攻撃【熱光撃】。
少し離れた空ではグルゴーガンも金剛杵を手にして真言を唱える。
金剛杵の先から電撃が放たれて怪鳥を撃つ。
即ち【帝釈天法】。
次いで符を周囲にまき散らす。
符は一斉に燃え上がって火矢と化して焼き払う。
こちらは【不動火車法】。
Aランクの彼女は遍く仏術を修め、その上で屈強な巨躯による打撃をよくする。
接近戦だけが取り柄の異能力者とは異なる万能選手だ。
プロートニクも数多のドリルをまとめて放つ。
全周囲に放たれたドリルの群が、上下左右の怪鳥をまとめて血祭りにあげる。
――ステッキ持った貴女の隣、玩具のピストル握りしめ、一緒に歩きだすよ♪
――手ごわい敵も、難解なナゾも、いっぱいあるけれど♪
――貴女がそばに、いてくれたなら、何だってできるはず♪
それでも残る敵は数多い。
蔓見雷人が大魔法で呼びこんだ怪異の群は、それほどまでに強大だ。
だが……あるいは、だからこそ、
「……此ノ侭デハ埒ガ明カヌ。次デ片ヲ付ケヨウゾ」
鷹乃の言葉に皆が頷く。
そして鷹乃が舞奈たちを守るように氷塊の弾幕をばらまく側で、
「うむ、心得た」
「了解だ」
ベリアルと全裸は次なる術の詠唱を始める。
「ドーター全機に通達、奴らを殲滅する!」
「「了解!」」
号令とともに戦闘機、輸送機から人型に変じた式神たちが動く。
舞奈たちの上下左右5ヵ所に並ぶ。
まるで五芒星の頂点のように正確に。
そして各々が虚空から取り出した無数の符をばらまき、口訣。
次の瞬間、視界を荒れ狂う攻撃魔法が埋め尽くした。
視界の端で、無数に放たれた岩石の刃が怪鳥どもを叩きつぶす。
星明りに鈍く輝く鋼鉄の刃が切り裂く。
あるいは別の端では、水の刃が濁流のように荒れ狂う。
群れ成す木の杭が怪鳥どもを次々に貫く……というより粉砕する。
そして数多の火球が爆発して夜空に紅蓮の花を咲かせる。
即ち【大裳・勾陣・刃嵐法】。
即ち【大陰・白虎・刃嵐法】。
即ち【天后・玄武・刃嵐法】。
即ち【六合・青龍・亂杭法】。
即ち【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
いずれも五行のエレメントによる広範囲、高威力の魔法攻撃。
陰陽師たちは手始めに、凄まじい猛攻によって群れの半分を蹴散らした。
次いでハニエルたちの呪文も完成する。
全裸が連れていた2体のミカエルは魔力に還元され、その周囲でパチパチと放電しながら輝く数多の球体と化していた。
そして詠唱が進むにつれ雷球は数を増し、今やその数は無数。
それが一斉に解き放たれた。
凄まじいプラズマ砲弾の奔流が、五行の洗礼を逃れた怪異どもを容赦なく焼く。
即ち【電光の螺旋】。
明日香の【雷嵐】と同等の雷撃の嵐すら、高等魔術師は再現してみせる。
その側で、ベリアルも自身の周囲に生み出し蓄えていた光球を解き放つ。
熱と光のエネルギーを収束させた無数の球が、無数のレーザーと化して降り注ぐ。
その名も【硫黄と火の雨】。
以前にシスター・アイオスが用いた【神罰の嵐】に匹敵する光の洗礼。
カバラには、この術の上位に相当する【神意の嵐】という術すらあるらしい。
高等魔術には【雷電の嵐】という手札もある。
もちろん、どちらも大魔法だ。
だが、そんなものを無暗に使われては上空の怪異どころか下の街の存続が危うい。
なにせ旧約聖書の記述において街ひとつを焼き払った術だ。
なにより、この状況でそこまでする必要はなかった。
何故なら畏怖すべき攻撃魔法の猛攻が去った後、空から怪異の群は消えていた。
宣言通り、魔術師《ウィザード》たちは怪鳥の群の大半を瞬時に焼き払ったのだ。
――勇者様なんていなくったって平気♪
――仲間と手をつないでほら、魔法の呪文を唱えたなら♪
――どんな願いだって、叶うから♪
だがハニエルもベリアルも、すぐさま次なる呪文を準備する。
残る最後の砦、大怪鳥を屠るために。
ハニエルは重力操作を応用した空間操作で虚空から長杖を取り出す。
ベリアルの手の中にも、枝葉のついたアロンの杖があらわれる。
こちらは楓のウアブ魔術と同様【魔神の創造】技術を応用した収納術だ。
そして2人は同時に詠唱を開始する。
対する大怪鳥は最後の抵抗とばかりに雄叫びをあげる。
その巨大な身体から、表面に寄生していた数多の怪鳥が飛び立つ。
その前にプロートニクとグルゴーガンが躍り出る。
2人の執行人はドリル刃と鋼の肉体で怪鳥を蹴散らし、大怪鳥を怯ませる。
その隙に新たな呪文が完成した。
2人の執行人は射線から飛び退く。
同時に2人の魔術師《ウィザード》が怪鳥めがけて杖を突きだす。
その先端から光条が放たれ、夜空に2本の軌跡を描く。
離れていてすら眩しいほどの凄まじい光と熱。
高等魔術におけるそれは【断罪光】と呼ばれる。
そしてカバラにおいては【硫黄と火の杖】。
かつて完全体すら葬り去ったレーザー照射の魔術。
巨大な怪異が光の奔流に炙られて叫ぶ前で、
「みなさん、どうぞですぅ!」
五芒星の一角を担うドーター5から同胞めがけて何かが放たれる。大頭だ。
輸送機を象った彼女の式神は舞奈たちの護衛だけでなく、使い切りの魔道具を同胞のために運輸するという本来の用途をも担っていたのだ。
そして自らも大頭を手にする。
本来は仏術で用いられる大頭だが、陰陽術は道術と神術と仏術の集大成だ。
5体の式神は大頭を目前の虚空に据え置き、その周囲に数枚の符を設置する。
そして口訣。
5つの大頭は符を巻きこんで巨大な魔力の塊と化す。
強大な5つの魔力塊は5体の式神の中心前方へと飛び、ひとつに混ざり合う。
そして巨大な岩石のギロチン刃へと姿を変える。
即ち【泰山府君・岩法】。
陰陽師が誇る、五行を用いた大魔法のひとつ。
5体の式神は完全に同期したタイミングで大怪鳥を指し示す。
すると岩の巨刃は巨大な怪異めがけて飛ぶ。
焼けただれた大怪鳥が避ける間もなく、片方の翼を切断する。
だが大魔法はそれだけでは終わらない。
式神たちの口訣とともに岩の刃は同じ大きさをした鋼の、次いで流水の刃と化し、巨大な怪異のもう片方の翼と脚を切断する。
即ち【泰山府君・鉄法】。
即ち【泰山府君・水法】。
大怪鳥はたまらず雄叫びをあげる。
さらに鋭い水刃は大怪鳥の身体の奥深くに達する。
そこで5つの口訣により、怪異の魔力を吸収しながら光り輝く巨樹と化す。
即ち【泰山府君・神木法】。
全身を切り刻まれ、身体を構成する魔力すら吸われた大怪鳥の身体を、巨樹は巨大な木杭と化して貫く。
そして爆発。
即ち【泰山府君・焔法】。
ずたずたに割かれた巨大怪異を、夜闇を燃やすが如く巨大な炎塊が焼く。
その上さらに、鷹乃の大魔法が完成した。
長身の式神から不可視の何かが放たれ、大怪鳥を激しく打ち据える。
本来は仏術を極めた高僧のみが施術可能な、大元帥明王の力を借りた大魔法。
陰陽術において、それは【大元帥法】と呼ばれる。
空間を湾曲させることにより別の大陸を目標にした呪殺すら成しうる戦略魔術砲撃。
巨大な怪異の全身が、内側から打ち据えられたようにボコボコと歪む。
転移の基礎技術である空間湾曲によって巨躯の内側に直接に叩きこまれた損傷は、満身創痍の超巨大怪異に残された僅かな耐久力を削り取った。
だから次の瞬間、大怪鳥は塵と化し、驚くほど綺麗さっぱり消えた。
その圧倒的な術の威力にポークはもとより舞奈も、明日香までもが驚愕する。
残る敵は大怪鳥から飛び立った怪鳥の群のみだ。
奴らは統制を失った、文字通りの烏合の衆。だが、
「あ、あの! も、もう転移はないはずです! こ、これ以上の大魔法の行使は本来の目的の儀式に差し障るはずなので……」
「そいつは重畳」
Sランクの言葉に舞奈は口元を歪め、
「急いでくれポーク!」
「了解!」
速度を上げる。
彼女の言葉はこれ以上に敵の増援がないという吉報より、蔓見雷人が今ごろは儀式に専念しているであろうという凶報の意味合いが強い。
舞奈たちに時間的な余裕はあまりない。さらに、
「ビルまでこの距離ならば……。突っ切れますか?」
焦った調子の明日香の声。
次いで周囲に4枚の氷盾が再出現する。
見やると空自の式神たちの姿が薄れ、かすかに揺らめいている。
大規模魔術に大魔法まで行使し、構造の維持が限界に達しているのだ。
「やってみせます」
もはや悠長に怪鳥を殲滅している時間はない。
それに最大の脅威だった大怪鳥はもういない。
だからポークは舞奈と明日香を抱えたまま、ビルめがけて猛スピードで飛ぶ。
急な動きが目を引いたか、怪鳥たちが殺到する。
空自の式神たちは再び戦闘機、輸送機に変形し、ポークの上下左右を並走する。
魔力を節約して構造への負担を軽減しつつ、盾になる算段だろう。
周囲では増援たちが、近づく怪鳥を迎撃する。だが、
――おそろしいトラップだって、愉快なアイテムに早変わり♪
「ドーター2、被弾! 復元不能! 『離脱』します!」
「ドーター1、了解! 最後にでかい花火をあげてやんな!」
被弾した1体のドローンが無数の符へと変わる。
そして符のそれぞれが鋼鉄の刃と化して怪鳥どもに襲いかかり、粉砕する。
怪異の群の一角が消し去られた安堵の直後、
――木の実のスイーツ♪
「ですぅ!?」
数本の火矢をくらった輸送機が、こちらは無数の火球と化して別の一角を焼き払う。
そうやってボディーガードの数を減らしつつも、ポークはビルの上空に達する。
もはや空自の式神はいない。
その代わりを務めていた2機の戦闘機が舞奈たちから距離をとり、
――お花のドレスに♪
「着地の隙は我らが守ろうぞ!」
「抜カルデナイゾ!」
「ああ! まかせとけ!」
次の瞬間、ゴーレムと式神は無数のレーザー、火球と化して怪異どもを焼き尽くす。
その隙にポークは育児用肩紐のベルトを外し、舞奈と明日香を投下する。
割と無茶目な態勢から、2メートル下の屋上に舞奈は苦も無く、明日香も重力を操って着地する。
そして一挙道で立ち上がりつつ空を仰いだ舞奈の前、
「ご武運を」
敬礼して高度を上げた彼の背後で、
――魔法のほうきで夜空を飛ぶよ♪
「ポーク避けろ!」
間近に飛来した1羽の怪鳥が、口から稲妻の弾丸を吐き出した。
舞奈は拳銃を抜き、明日香は思わず目を見開き――
――未知の世界を、貴女と歩きたい♪
太った少年の姿が『消えた』。
正確には、一瞬だけ側に三つ編みおさげの少女が出現して、いっしょに転移した。
いきなり目標を喪失した魔弾がビルの屋上めがけて飛んでくる。
舞奈は慌てて明日香を抱えて屋上を転がりながら怪鳥を撃つ。
そして再び立ち上がった後、付近には誰もいなかった。
遠くでは戦火も終息しつつある。
「【空間跳躍】からの……タイムラグなしの【智慧の門】……」
虚空を見やりながら、明日香が呆然とひとりごちる。
どうやらSランクの彼女は、同僚が撃墜される直前に短距離転移で接触し、続けざまに長距離転移の大魔法で2人いっしょに撤収したということらしい。
流石は魔術と呪術を共に極めた大魔道士といったところか。
そういえば以前、マンティコアの奇襲から明日香を守ったのもその術だった。だが、
「……行くぞ」
「ええ」
明日香は素早く髪をほどき、つば付きの三角帽子をかぶる。
そして階段室のドアを素早く【雷弾・弐式】で破壊する。
それを舞奈が蹴り破る。
中に待ち伏せがいないと確認し、2人はビルの最上階へと侵入する。
今はそれよりやらなければいけないことがある。
Sランクの彼女と同じ……あるいはそれ以上の実力を持つ、蔓見雷人を倒すことだ。
その前に立ちふさがる怪鳥の群。
式神たちは群を蹴散らす。
だが超巨大な大怪鳥が出現した。大規模転移の大魔法によって。
思わぬ強敵に怯む一行。
そのとき、戦場をレーザー光線が貫いた。
――退屈な日常も、ファンタジーと隣あわせ♪
――うつむいた視線上げたら、魔法の世界は、そこにあるよ♪
夜空に映るあずさの衣装が妖精の如くファンシーに変化する。
そして次なる曲を奏でる。
曲目は『HAPPY HAPPY FAIRY DAY』。
希望そのもののようなその歌声に呼応するように、射点が明るい星のように輝く。
そして紫電のように飛来したそれは、人間サイズのドローンだった。
機種は鷹乃のそれと同じF-15。
だが機体の上側に砂漠迷彩を施されたF-15I。通称、稲妻。
戦闘機は舞奈の目前で人型へと変じる。
エアインテークと胴体後部燃料タンクを内包する機体下部の外側が脚になる。
下部内側が腕になる。
機首が下を向いて胴になる。
機体後部に位置するエンジンと主翼、尾翼が折りたたまれて背になる。
「我が名はベリアル。第三機関が群馬支部、執行部に属するAランクである」
名乗りつつ、砂色の式神は虚空から黒いマントを取り出して身にまとった。
「ゴーレム越しの挨拶ですまぬ」
そう。彼女が操っているのは正確には式神ではない。
カバラ魔術【創神の御名】によって創造されるゴーレムだ。
腰には2丁の拳銃。
そして虚空から短機関銃を取り出す。
そのどれもに見覚えがある。
思いがけぬ増援に、舞奈の口元に笑みが浮かぶ。
だが、それだけではない。
――すり減ったクレヨンを杖にして、流れる雲をお供にして、冒険に出かけよう♪
――苦しいことも、大変なことも、いっぱいあるけれど♪
――くじけないでね、おそれないでね、前を向いて進もう♪
「待たせたな!」
怪鳥どもの頭上から、何かが落ちてきて襲いかかる。
ラフなTシャツとカーゴパンツを夜風にはためかせた屈強な尼僧。
元【機関】巣黒支部所属のAランク、仏術士の尊師ゴーガンだ。
他支部に転属したはずの彼女だが、以前にチャビー奪還に協力してくれたと聞いた。
今回も同様に、舞奈たちに手を貸してくれるらしい。
筋骨隆々とした2メートル強の巨躯を【持国天法】で強化した肉体の凶器。
そんなものが【迦楼羅天法】を併用して飛びかかってきたのだ。
敵にとっては災厄としか言いようがない。
気功で飛ぶ妖術は【増長天法】の発展形で、【鷲翼気功】と同等の術だ。
そんなグルゴーガンは急降下爆撃の如く落下しながら両腕で怪鳥どもを叩き潰す。
加えて手近な1匹の喉元をくわえてそのまま食いちぎる。
怪鳥どもの群の一角、尼僧が通り過ぎた後に空白のラインが出来上がった。さらに、
「盛り上がってマスね! 最高デース!」
何もない空間にいきなり、半裸のロシア美女が出現した。
白い肌を、全身に巻いたベルトに吊られた無数のドリル刃が隠している。
コードネーム【人体工作】。グルゴーガン同様に元巣黒支部のAランクだ。
微妙な部分を隠すドリルが風に吹かれ、あずさの曲に涼やかな音色を添える。
そんな彼女が修めた超精神工学。
それは内なる魔力を特殊な電磁波に変換することにより奇跡を成す妖術だ。
その御業によって彼女は自在に転移し、飛行することが可能。高高度でも同じだ。
同じ技術によって、プロートニクは身に着けたドリルのいくつかを投げる。
鋭いドリル刃は電磁波で誘導され、狙い違わず怪鳥たちを貫く。
そんな心強い、だが一部見た目がアレな他支部からの増援に加えて、
「間に合って良かったよ」
さらにアレな増援が転移してきた。
用いられた術は重力操作を応用した空間湾曲による『普通の』長距離転移。
即ち【転移門】。
高等魔術だ。……まあ、それはいい。
問題なのは、あらわれたのが全裸の女だということだ。
プロートニクと違って要所を隠す努力すらしてない。
舞奈の知人に高等魔術師は2人いるが、その片眼鏡のほう。
即ち【組合】の山崎ハニエルだ。
「なあ、いただろう? 全裸」
「今それどころじゃないでしょ」
「ちぇっ」
まあ今の状況でツッコんでも仕方がないのは確かだが……。
明日香にあしらわれて口元を歪める。
だが少しだけ楽しげに。
予想外の増援に心躍るのも事実だ。だから、
「……あれは良いのかよ? 男子いるんだぞ」
鷹乃も無視。
「ハハ、眼福ですよ」
代わりにポークが無難に答えて苦笑する。
……はしゃいでいると思われたかもしれない。
「だいたい戦闘中だぞ」
飛行の魔術【重力飛行】により側を飛ぶハニエルをジト目で見やる。
以前にマンティコアが用いた【重力浮遊】の上位に相当する術だ。
「本当に何も着てないってのはどういうことだよ? いや――」
苦笑する先で、何匹かの怪鳥が新手に突撃しながら異能力を放つ。
だが【火弾】【充電弾】に相当する火矢、稲妻は全裸に達せず散る。
逆に不意に吹き荒れた旋風が、怪鳥どもを吹き飛ばす。
全裸の胸に数珠つなぎに連なるペンタクルのひとつがキラリと光る。
「――【螺旋の装甲】って奴か」
ひとりごちたのは【大気の装甲】の上位に相当する術の名。
大気のバリアで防御しつつ【螺旋風】による旋風で反撃する。
全裸の両脇には輝くドレスに身を包んだ女性が飛んでいる。
高等魔術【南方の守護者の召喚】で召喚される大天使ミカエルだ。
式神や魔神、ゴーレムと同じく因果律の操作による創造物。
その中でもミカエルは悪魔術のベルフェゴール同様に炎とエネルギーを司る。
だから杖からの【火弾】【充電弾】で怪鳥を牽制し、あるいは撃墜する。
そんな輝く守護者をも操りながら、
「怪異は魔力の源となる美しいものを忌み嫌う。ならば僭越ながら我が裸体それ自体が奴らへの手痛い打撃になるとは思わないかい?」
「自分で言ってりゃ世話ないぜ」
ハニエルは笑う。
舞奈も頼もしい増援への高揚を誤魔化すように、軽口を返してみせる。
ハニエルの豊満でありながら形の良い乳房、なだらかな腰から尻へのラインと均整のとれた見事なプロポーションが美しいことは認めねばならない。
そして疣豚潤子のような醜悪な怪異どもが、大きく美しい乳を嫌うのも事実だ。
何故ならプラスの感情を喚起する美は、マイナスの感情を糧とする怪異の天敵だ。
つまり彼女のように若く美しい女性の裸体は、十字架や旭日旗、神社の柏手や除夜の鐘といった聖なるものと同等の効果を持つ。
そう考えるのは悪い気分じゃない。
そんな舞奈たちめがけ、群から離れた怪鳥の一団が強襲を仕掛ける。
だが直後に降り注いだ攻撃魔法の雨に薙ぎ払われる。
――勇者様なんていなくったって平気♪
――夢を広げたキャンパスに、魔法の杖をひとふりすれば♪
――どんな願いだって、叶うから♪
背後を見やると、空飛ぶほうきに乗った小柄な魔女が飛んでいた。
委員長と似た感じの三つ編みおさげが高高度の風に揺れる。
先程までより舞奈たちと近い。
歌う幻を維持するだけの傍観者ではいられない距離だ。
両隣に控えているのは燃え盛る炎の塊と、人間サイズの氷塊。
ケルト魔術【炎の精霊の召喚】で呼び出される炎のエレメンタル
そして【氷の精霊の召喚】による氷のエレメンタルだ。
スタイルの良い女性の形なのはハニエルの裸体のように魔除けの効果を期待してか。
その姿がどこか園香に……あるいは美佳に似ていて、思わず口元に笑みが浮かぶ。
そんな表情を誤魔化すように、
「あんたは仕掛けて大丈夫なのか?」
舞奈はもうひとりのSランクに問いかける。
以前に蔓見雷人を【ブリューナクの炎槍】で屠った彼女。
その能力を恐れられた彼女は上層部からの数多い制限のせいで動けない。
だからあずさの幻で皆を援護していたはずだ。だが、
「は、はい、その……この状況なら、わたしが加勢してもわからないから……」
「戦果を他人に肩代わりって訳か。そいつはすげぇぜ」
おどおどと返された答えに笑みを返す。
なるほど上層部の目も高高度までは及ばない。
彼女が少しばかり羽目を外そうが、他支部の魔術師や【組合】直属の術者がやったと言い張ればそれ以上の追及は不可能だ。
以前に舞奈は不心得なBランクに戦果を奪われて報酬をお釈迦にされた。
だがSランクは制限を逃れるために他人に戦果を押しつけるらしい。
なんとも贅沢な話だ。
そんな状況は魔力が更なる魔力を呼び、金が更なる金を呼ぶ世の理と似ていた。
充実した魔法戦力が、より強力な大魔道士の介入をも可能としたのだ。
そんな舞奈の想いを他所に、2体のエレメンタルは猛攻を加える。
ファイアエレメンタルがまとう炎と熱を利用した火球の呪術【変成火球】。
熱を奪われることで生まれた冷気を用いた氷の刃【鋭氷の斬刃】。
以前に大学生の萩山光もやってた、ちょっとお得な呪術の使い方もSランクが創造したエレメンタルの手にかかれば呪術による暴虐と化す。
機関砲のように掃射される元素の砲弾が、怪鳥どもを薙ぎ払う。
弾幕を浴びた哀れな怪異どもは紙切れみたいに一瞬で消える。
凄まじい数多の攻撃魔法に舞奈もポークも、そして明日香すら圧倒される。
――危険なモンスターだって、楽しいイベントに早変わり♪
――ウサギとおしゃべり♪
――子猫とお昼寝♪
――小鳥に乗って空のお散歩♪
――ここは素敵な、冒険の世界♪
舞奈と明日香を抱えて飛ぶポークの横に、黒マントのゴーレムが並んだ。
「この前はありがとう。あんたの得物のおかげで滓田の野郎どもを倒せた」
「あの程度、礼には及ばぬ」
ゴーレムは短機関銃で怪鳥どもを牽制しながら、ぶっきらぼうに答える。
鷹乃の式神と同型機のはずだが、こちらのほうがややマッシブだ。
だが口調こそ滑らかなものの、喋り方が似ている。
どちらかが影響を受けているのだろうか?
「……それに、借りがあるのは我々のほうだ」
既視感のある黒いマントが夜風に揺れる。
「魔術を極めた我らが使命を、年端もゆかぬ術すら使えぬ貴殿に押しつけたのだ。しかも我らより適任だという理由でな」
やや自嘲気味にも聞こえるその言葉の意味。
舞奈には、それが少しわかる気がした。
彼女(だと思う)も園香の父親と同じ。
負い目があるのだ。
舞奈に責務を負わせることに対して。
本来なら敵の大魔道士を討つという危険な役目は己がものだと自負があるのだろう。
超常の力を極めた魔道士のはしくれとして、そうでない者を守る責があると。
そういう気概がなければ術者にはなれない。
魔法の源となる魔力は、美しく高潔な心から生まれるものだから。
だが舞奈だって自分ができることをしているだけだ。
何故なら舞奈はSランクだから。
もちろん支部にはもうひとりのSランクがいる。
だが、数回とはいえ顔を合わせた舞奈にはわかる。
彼女に舞奈の代わりはできない。
上層部からかけられた制限だけが理由ではなく。
魔術と呪術を共に極めた彼女には、舞奈のように不可能を可能に変える力はない。
そんなものなくても最強だからだ。
だからこそ自身と同格の大魔道士との直接対決は分が悪い。
状況次第では【機関】はSランクを失うという最悪の事態すら有り得る。
だからこそ適任者は舞奈とそのパートナーである明日香しかいない。
舞奈は術すら使えぬ小学生でありながら、数多の術者に、魔獣に打ち勝ってきた。
それに舞奈にだって、感情を魔力の糧にできないなりに気概はある。
悪を討ち、自身の周りの人々の笑顔を守る。守り抜く。
でなければ過去に失ったものが本当に無になってしまう気がするし、舞奈も舞奈自身ではいられなくなると思う。だから、
「仕事なんだ。報酬分は働くさ」
普段と同じように不敵に笑う。
今回は【機関】から正規の報酬が出るのも本当だ。
それは今回の舞奈が協力を乞う立場じゃないことを示している。
舞奈こそが力なのだ。
最後の悪に撃ちこまれるべき最強の銃弾だ。だから、
「言うてくれるわ!」
黒マントのゴーレムは笑う。
――見なれた通学路も、ファンタジーへの通り道♪
――そっと手をのばしてみたら、貴女の隣に、仲間はいるよ♪
「ならば貴殿の花道、このベリアルが設えてみせようぞ!」
高らかに宣言しつつ空を駆け、怪鳥どもの群の前に躍り出る。
ちょうど鷹乃の式神が、錫杖から氷の弾丸を掃射して怪異を抑えているあたり。
即ち【自在天・氷矢法】。
ベリアルは短機関銃を腰のラックにマウントする。
代わりに2丁の拳銃を抜く。
銃身《バレル》の下側のレールにはメノラーがマウントされている。
アーチ状の支持架によって銃に設置された、7枝の燭台が星明りに光る。
その直後、メノラーから星の光を凌駕する閃光がのびた。
2条のレーザー光線はそれぞれ数多の怪鳥を貫きながら夜空を彩る。
即ち【硫黄の火】。
かつて滓田妖一との決戦で、束の間、舞奈に貸し与えられた力。
カバラ魔術師が誇る熱と光のアートにして暴虐。
「そういうことなら、わたしも少しは良いところを見せないとね」
ハニエルも光線を放つ。
こちらは高等魔術によって再現されたレーザー攻撃【熱光撃】。
少し離れた空ではグルゴーガンも金剛杵を手にして真言を唱える。
金剛杵の先から電撃が放たれて怪鳥を撃つ。
即ち【帝釈天法】。
次いで符を周囲にまき散らす。
符は一斉に燃え上がって火矢と化して焼き払う。
こちらは【不動火車法】。
Aランクの彼女は遍く仏術を修め、その上で屈強な巨躯による打撃をよくする。
接近戦だけが取り柄の異能力者とは異なる万能選手だ。
プロートニクも数多のドリルをまとめて放つ。
全周囲に放たれたドリルの群が、上下左右の怪鳥をまとめて血祭りにあげる。
――ステッキ持った貴女の隣、玩具のピストル握りしめ、一緒に歩きだすよ♪
――手ごわい敵も、難解なナゾも、いっぱいあるけれど♪
――貴女がそばに、いてくれたなら、何だってできるはず♪
それでも残る敵は数多い。
蔓見雷人が大魔法で呼びこんだ怪異の群は、それほどまでに強大だ。
だが……あるいは、だからこそ、
「……此ノ侭デハ埒ガ明カヌ。次デ片ヲ付ケヨウゾ」
鷹乃の言葉に皆が頷く。
そして鷹乃が舞奈たちを守るように氷塊の弾幕をばらまく側で、
「うむ、心得た」
「了解だ」
ベリアルと全裸は次なる術の詠唱を始める。
「ドーター全機に通達、奴らを殲滅する!」
「「了解!」」
号令とともに戦闘機、輸送機から人型に変じた式神たちが動く。
舞奈たちの上下左右5ヵ所に並ぶ。
まるで五芒星の頂点のように正確に。
そして各々が虚空から取り出した無数の符をばらまき、口訣。
次の瞬間、視界を荒れ狂う攻撃魔法が埋め尽くした。
視界の端で、無数に放たれた岩石の刃が怪鳥どもを叩きつぶす。
星明りに鈍く輝く鋼鉄の刃が切り裂く。
あるいは別の端では、水の刃が濁流のように荒れ狂う。
群れ成す木の杭が怪鳥どもを次々に貫く……というより粉砕する。
そして数多の火球が爆発して夜空に紅蓮の花を咲かせる。
即ち【大裳・勾陣・刃嵐法】。
即ち【大陰・白虎・刃嵐法】。
即ち【天后・玄武・刃嵐法】。
即ち【六合・青龍・亂杭法】。
即ち【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
いずれも五行のエレメントによる広範囲、高威力の魔法攻撃。
陰陽師たちは手始めに、凄まじい猛攻によって群れの半分を蹴散らした。
次いでハニエルたちの呪文も完成する。
全裸が連れていた2体のミカエルは魔力に還元され、その周囲でパチパチと放電しながら輝く数多の球体と化していた。
そして詠唱が進むにつれ雷球は数を増し、今やその数は無数。
それが一斉に解き放たれた。
凄まじいプラズマ砲弾の奔流が、五行の洗礼を逃れた怪異どもを容赦なく焼く。
即ち【電光の螺旋】。
明日香の【雷嵐】と同等の雷撃の嵐すら、高等魔術師は再現してみせる。
その側で、ベリアルも自身の周囲に生み出し蓄えていた光球を解き放つ。
熱と光のエネルギーを収束させた無数の球が、無数のレーザーと化して降り注ぐ。
その名も【硫黄と火の雨】。
以前にシスター・アイオスが用いた【神罰の嵐】に匹敵する光の洗礼。
カバラには、この術の上位に相当する【神意の嵐】という術すらあるらしい。
高等魔術には【雷電の嵐】という手札もある。
もちろん、どちらも大魔法だ。
だが、そんなものを無暗に使われては上空の怪異どころか下の街の存続が危うい。
なにせ旧約聖書の記述において街ひとつを焼き払った術だ。
なにより、この状況でそこまでする必要はなかった。
何故なら畏怖すべき攻撃魔法の猛攻が去った後、空から怪異の群は消えていた。
宣言通り、魔術師《ウィザード》たちは怪鳥の群の大半を瞬時に焼き払ったのだ。
――勇者様なんていなくったって平気♪
――仲間と手をつないでほら、魔法の呪文を唱えたなら♪
――どんな願いだって、叶うから♪
だがハニエルもベリアルも、すぐさま次なる呪文を準備する。
残る最後の砦、大怪鳥を屠るために。
ハニエルは重力操作を応用した空間操作で虚空から長杖を取り出す。
ベリアルの手の中にも、枝葉のついたアロンの杖があらわれる。
こちらは楓のウアブ魔術と同様【魔神の創造】技術を応用した収納術だ。
そして2人は同時に詠唱を開始する。
対する大怪鳥は最後の抵抗とばかりに雄叫びをあげる。
その巨大な身体から、表面に寄生していた数多の怪鳥が飛び立つ。
その前にプロートニクとグルゴーガンが躍り出る。
2人の執行人はドリル刃と鋼の肉体で怪鳥を蹴散らし、大怪鳥を怯ませる。
その隙に新たな呪文が完成した。
2人の執行人は射線から飛び退く。
同時に2人の魔術師《ウィザード》が怪鳥めがけて杖を突きだす。
その先端から光条が放たれ、夜空に2本の軌跡を描く。
離れていてすら眩しいほどの凄まじい光と熱。
高等魔術におけるそれは【断罪光】と呼ばれる。
そしてカバラにおいては【硫黄と火の杖】。
かつて完全体すら葬り去ったレーザー照射の魔術。
巨大な怪異が光の奔流に炙られて叫ぶ前で、
「みなさん、どうぞですぅ!」
五芒星の一角を担うドーター5から同胞めがけて何かが放たれる。大頭だ。
輸送機を象った彼女の式神は舞奈たちの護衛だけでなく、使い切りの魔道具を同胞のために運輸するという本来の用途をも担っていたのだ。
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5体の式神は大頭を目前の虚空に据え置き、その周囲に数枚の符を設置する。
そして口訣。
5つの大頭は符を巻きこんで巨大な魔力の塊と化す。
強大な5つの魔力塊は5体の式神の中心前方へと飛び、ひとつに混ざり合う。
そして巨大な岩石のギロチン刃へと姿を変える。
即ち【泰山府君・岩法】。
陰陽師が誇る、五行を用いた大魔法のひとつ。
5体の式神は完全に同期したタイミングで大怪鳥を指し示す。
すると岩の巨刃は巨大な怪異めがけて飛ぶ。
焼けただれた大怪鳥が避ける間もなく、片方の翼を切断する。
だが大魔法はそれだけでは終わらない。
式神たちの口訣とともに岩の刃は同じ大きさをした鋼の、次いで流水の刃と化し、巨大な怪異のもう片方の翼と脚を切断する。
即ち【泰山府君・鉄法】。
即ち【泰山府君・水法】。
大怪鳥はたまらず雄叫びをあげる。
さらに鋭い水刃は大怪鳥の身体の奥深くに達する。
そこで5つの口訣により、怪異の魔力を吸収しながら光り輝く巨樹と化す。
即ち【泰山府君・神木法】。
全身を切り刻まれ、身体を構成する魔力すら吸われた大怪鳥の身体を、巨樹は巨大な木杭と化して貫く。
そして爆発。
即ち【泰山府君・焔法】。
ずたずたに割かれた巨大怪異を、夜闇を燃やすが如く巨大な炎塊が焼く。
その上さらに、鷹乃の大魔法が完成した。
長身の式神から不可視の何かが放たれ、大怪鳥を激しく打ち据える。
本来は仏術を極めた高僧のみが施術可能な、大元帥明王の力を借りた大魔法。
陰陽術において、それは【大元帥法】と呼ばれる。
空間を湾曲させることにより別の大陸を目標にした呪殺すら成しうる戦略魔術砲撃。
巨大な怪異の全身が、内側から打ち据えられたようにボコボコと歪む。
転移の基礎技術である空間湾曲によって巨躯の内側に直接に叩きこまれた損傷は、満身創痍の超巨大怪異に残された僅かな耐久力を削り取った。
だから次の瞬間、大怪鳥は塵と化し、驚くほど綺麗さっぱり消えた。
その圧倒的な術の威力にポークはもとより舞奈も、明日香までもが驚愕する。
残る敵は大怪鳥から飛び立った怪鳥の群のみだ。
奴らは統制を失った、文字通りの烏合の衆。だが、
「あ、あの! も、もう転移はないはずです! こ、これ以上の大魔法の行使は本来の目的の儀式に差し障るはずなので……」
「そいつは重畳」
Sランクの言葉に舞奈は口元を歪め、
「急いでくれポーク!」
「了解!」
速度を上げる。
彼女の言葉はこれ以上に敵の増援がないという吉報より、蔓見雷人が今ごろは儀式に専念しているであろうという凶報の意味合いが強い。
舞奈たちに時間的な余裕はあまりない。さらに、
「ビルまでこの距離ならば……。突っ切れますか?」
焦った調子の明日香の声。
次いで周囲に4枚の氷盾が再出現する。
見やると空自の式神たちの姿が薄れ、かすかに揺らめいている。
大規模魔術に大魔法まで行使し、構造の維持が限界に達しているのだ。
「やってみせます」
もはや悠長に怪鳥を殲滅している時間はない。
それに最大の脅威だった大怪鳥はもういない。
だからポークは舞奈と明日香を抱えたまま、ビルめがけて猛スピードで飛ぶ。
急な動きが目を引いたか、怪鳥たちが殺到する。
空自の式神たちは再び戦闘機、輸送機に変形し、ポークの上下左右を並走する。
魔力を節約して構造への負担を軽減しつつ、盾になる算段だろう。
周囲では増援たちが、近づく怪鳥を迎撃する。だが、
――おそろしいトラップだって、愉快なアイテムに早変わり♪
「ドーター2、被弾! 復元不能! 『離脱』します!」
「ドーター1、了解! 最後にでかい花火をあげてやんな!」
被弾した1体のドローンが無数の符へと変わる。
そして符のそれぞれが鋼鉄の刃と化して怪鳥どもに襲いかかり、粉砕する。
怪異の群の一角が消し去られた安堵の直後、
――木の実のスイーツ♪
「ですぅ!?」
数本の火矢をくらった輸送機が、こちらは無数の火球と化して別の一角を焼き払う。
そうやってボディーガードの数を減らしつつも、ポークはビルの上空に達する。
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その代わりを務めていた2機の戦闘機が舞奈たちから距離をとり、
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次の瞬間、ゴーレムと式神は無数のレーザー、火球と化して怪異どもを焼き尽くす。
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いきなり目標を喪失した魔弾がビルの屋上めがけて飛んでくる。
舞奈は慌てて明日香を抱えて屋上を転がりながら怪鳥を撃つ。
そして再び立ち上がった後、付近には誰もいなかった。
遠くでは戦火も終息しつつある。
「【空間跳躍】からの……タイムラグなしの【智慧の門】……」
虚空を見やりながら、明日香が呆然とひとりごちる。
どうやらSランクの彼女は、同僚が撃墜される直前に短距離転移で接触し、続けざまに長距離転移の大魔法で2人いっしょに撤収したということらしい。
流石は魔術と呪術を共に極めた大魔道士といったところか。
そういえば以前、マンティコアの奇襲から明日香を守ったのもその術だった。だが、
「……行くぞ」
「ええ」
明日香は素早く髪をほどき、つば付きの三角帽子をかぶる。
そして階段室のドアを素早く【雷弾・弐式】で破壊する。
それを舞奈が蹴り破る。
中に待ち伏せがいないと確認し、2人はビルの最上階へと侵入する。
今はそれよりやらなければいけないことがある。
Sランクの彼女と同じ……あるいはそれ以上の実力を持つ、蔓見雷人を倒すことだ。
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海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
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