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第14章 FOREVER FRIENDS
コンサート前夜/怪盗前夜
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ホームルーム前の教室で、
「明日の準備は万全なのです」
委員長はギターをつま弾いてみせる。
ユーモラスなおばけを象ったギター。
彼女の母親が遺した伝説のギター、ブラックゴーストを。
明日はいよいよ金曜日。
委員長は馴染みのライブハウス『Joker』でコンサートを行う。
KASCに奪われかけた母親の歌――ファイブカードの新曲を取り戻すため。
彼女は以前にも『Joker』でライブを行った。
その時にも委員長は皆の手を借りて会場へと辿り着いた。
舞奈は柄にもなくウィアードテールの扮装などした。
だが今回はライブの場繋ぎに歌うだけじゃない。
ロックの定番ファイブカードの新曲の著作権、そして広義には音楽業界の進退を賭けた、KASCのアーティストとの一騎打ちだ。
それでも委員長の不敵な笑みは以前のそれと変わらない。
何故なら彼女は常に全力だから。
アーティストとして最高のパフォーマンスを発揮すべく、日々の習練を欠かさない。
だからいつも唐突な彼女のギターは、歌は、聴衆の心を虜にする。
「志門さん、安倍さん、よろしくなのです」
委員長はペコリと頭を下げる。
「ああ、まかせときな」
舞奈はニヤリと笑みを返す。
側で明日香も頷く。
今回の彼女に反対しているのは、ただ音楽に理解がないだけの父親じゃない。
KASCだ。
人の世界から音楽を消し去り、醜い利権に変えようとする怪異の組織だ。
この下種な奴らは、野望の障害となる彼女を阻止するために手段を選ばないだろう。
そんな中、彼女は賢明にも舞奈と明日香に警護を依頼した。
KASCの実態、そして2人が最強の仕事人【掃除屋】であるとは知らぬまま。
それに今回は【メメント・モリ】も力を貸してくれる。
委員長を守る……というより、彼女を狙ってあらわれるであろう宿敵を討つために。
「すごいよね! 委員長。アイドルみたい!」
「うんうん。明日のライブ、楽しみにしてるね」
「ありがとうなのです! がんばるのです!」
チャビーと園香も満面の笑みで応援する。
委員長も答えるようにギターをつま弾いてみせる。
心なしか顔が赤いのは上気しているからか。
園香もチャビーも、委員長と歌を取り巻く裏の事情など知らない。
だが委員長の友人として、なにより委員長の歌に魅了された聴衆のひとりとして週末のライブを心待ちにしている。
いわば委員長の歌は、舞奈たちの戦いは、巡り巡って彼女たちのものでもある。
「桜の美声を披露できないのが残念なのー」
「いや、おまえは大人しく座ってろ」
くねくねと踊る桜の妄言を切って捨て、
「わたしと舞奈と委員長は警備上の手続きがあるから、皆は先に会場に行ってて」
「はーい」
「うん、明日香ちゃんたちも頑張ってね」
明日香が何食わぬ顔で別行動を促す。
皆の安全を保証するために、明日香もまた余念がない。
「キョー」
少し離れた場所ではみゃー子が両腕を突っ張って謎の動作をしている。
これでも彼女なりの表現で、委員長を応援してるのだろう。
理解したくもないのに何となくわかる。
さらに少し離れた自席から、テックも皆の様子を見やって笑う。
皆が週末のライブを楽しみにしている。
何故なら美しい歌は、アートは人々の心を癒し、鼓舞する。
それはプラスの魔力となって世に満ち、人間社会をより良いものにする。
だから舞奈も全力で委員長を守る。
歌を、人を、守る。
人の世界を妬み、穢そうとする輩から。
委員長自身と同じ、弛まぬ鍛錬で培った普段通りの全力で。
そう心に決めた。
だから給食後の昼休憩、舞奈は6年生の教室に赴いた。
「よっ鷹乃ちゃん」
「なんだ、そなたか」
ドアの陰に隠れて鷹乃を呼び出し、
「そっちの様子はどうだ?」
問いかける。
だが小さな6年生の先輩は、難しい顔で首を横に振る。
彼女の友人、張梓――双葉あずさは歌えない。
先日に開催されたサイン会の会場に死塚不幸三の暴走自動車が突っこんだからだ。
あの忌まわしい事件で死傷者が出て、大事な人も傷ついた。
だからショックで歌えなくなった。
何故ならあずさの歌は、梓自身の優しさと無垢さの発露でもあるから。
もちろん鷹乃も友人を励まそうと粉骨砕身している。
もうひとりの双葉あずさである作詞担当の支倉美穂も同様だろう。
だが心の問題を解決できるのは自分自身だけだ。
それでも――否、だからこそ、
「2人にこいつを渡してやっちゃあくれないか?」
何食わぬ表情で、舞奈は鷹乃にチケットを手渡す。
週末のライブのチケットが2枚。
残念ながら鷹乃の分はない。
当日、彼女には他に重要な仕事がある。
鷹乃は理解していた。
今の梓にとって最も大事な役割は癒され、励まされることだと。
普段の彼女がファンに対してしているように。
何故なら彼女自身が皆の笑顔を願っているように、皆も彼女の回復を待っている。
それは舞奈も同じだ。
加えて委員長の歌には、それを成しえる力があると思った。だから、
「うむ、承知した」
鷹乃も真面目くさった顔で、2枚のチケットを受け取った。
「キョー」
少し離れた廊下の隅で、みゃー子が天井にぶらさがっていた。
……何の真似なのか少し気になった。
だが尋ねても理解できないことだけはわかっていたので礼儀正しく無視した。
そして放課後。
舞奈がひとり帰路についていると、
「こんばんは、舞奈君。帰りかね?」
「あ、親父さん。ばんわっすー」
会社帰りの園香父と出くわした。
思わずベティみたいな挨拶を返す。
普段より少し早めの帰宅な気がする。
だが、まあ、いつもいつも遅くまで会議してる訳じゃないだろうと思いなおす。
「明日は皆でコンサートに行くそうだね。娘を頼む」
「わかってますって」
「……それと、くれぐれも羽目を外しすぎないように」
「わ、わかってますって……」
険しい表情で念を押され、舞奈は珍しく縮こまる。
彼は舞奈を、手癖の悪い問題児だと考えている。それは事実だ。
舞奈自身がこれまでの行いで、それを証明し続けていた。そして、
「君と明日香君は、娘たちとは別行動をとるそうだね」
そう言って父は舞奈を――娘と同い年の小学生を真摯に見やり、
「……くれぐれも怪我の無いようにしなさい」
真面目くさった表情で言った。
もちろん彼は娘と同様、舞奈や明日香、委員長や歌を取り巻く事情など知らない。
だが薄々とは気づいているのだろう。
舞奈が何処か自分たちが知らぬ場所で、誰かを守るために危険を冒すつもりだと。
彼は舞奈が、側にいる誰かを身を挺して守る人間だと知っている。
そして何食わぬ顔で笑うのだと。
舞奈はこれまでの行いで、それを証明し続けていた。だから、
「ああ! わかってますって!」
舞奈は力強く宣言した。
そう。誰ひとり傷つけることなく歌を守り、悪党どもを打倒してみせると。
その後、統零町の限りなく新開発よりのゴーストタウンの一角。
ネオン文字の横棒が消えかけた『画廊・ケリー』の看板の下。
「おーいスミス! いるか?」
舞奈はスミスの店を訪れていた。
返事も待たずに我が物顔で入店する舞奈の前に、
「しもんだ! メガネのおねえちゃんは、ぶじか?」
「おう、リコか」
店の奥からバードテールの幼女が飛んできた。
「きのうスミスとみまいにいったら、いなかったんだ!!」
リコは焦った様子で言い募る。
自分たちをかばってくれた年上の友人の安否が、子供なりに気がかりなのだ。
そう。
幼いリコもまた、善良な心を持った舞奈の友人のひとりだ。だから、
「安心しろ、怪我ひとつなくてピンピンしてた」
「そうか! よかった!」
「大体、病院にいないってことは、用がなくなったってことだぞ」
舞奈の答えにリコはニッコリ笑顔になって、
「……おねえちゃんにケガさせた、わるものはどうなった?」
表情を少し強張らせて低い声で問いかける。
リコは幼く善良だから、善人は救われるものだと無邪気に信じている。
そして悪は正されるものだと。
だが凄惨な暴走事件を引き起こした死塚不幸三は、今ものうのうと生きている。
あろうことか、無辜の人々が善を救い悪を正すと信じている警察に守られて。
そんな事実を無邪気な彼女に、今は話したくなかったから、
「この前、眼鏡におさげのお姉ちゃんと、スマートな姉ちゃんがいたろ? ほら一緒にテーブル出してメシ食って、スミスの話してた」
「きんピカのおねえちゃんたちか?」
「金ピカの……。ああ、金ピカの姉ちゃんたちだ」
楓と紅葉に対するリコの認識に苦笑しつつも、
「……そいつらが、悪い奴をやっつけた」
「やっつけたのか!」
「ああ。だが、あの野郎、懲りずにまた悪さしようとしてやがるから、今度はあたしがやっつけに行く」
「しもんがやっつけるのか!」
「ああ、コテンパンにな」
そして文字通り二度と悪さできないように。
不敵に笑う舞奈の表情に、リコも釣られて笑う。
悪は正され、そして善が虐げられることはもうないのだと信じることができたから。
何故なら舞奈が絡んだ厄介事は、今まですべてそうなってきた。だから、
「遊びに行ってくる!」
「おう! 気をつけてな!」
リコは安心しきった笑顔のまま、店から飛び出していった。
「まったく、元気な奴だ」
舞奈も口元に笑みを浮かべて養女を見送る。
明日、舞奈は彼女とした約束をも守るために戦場に赴く。
世界を彼女に見せたいような理想のそれに近づけるために。
いつか公安の魔道士たちが、子供たちのためにしようとしたように。そのために、
「例のものを受け取りに来た」
「ふふっ、メンテナンスは完璧よ」
遅ればせながら奥から出てきたスミスに振り返る。
「狙撃銃と同じ大口径のアサルトライフルの銃身を短機関銃並に縮めて無理やり近接専用にカスタムした、改造ライフル」
スミスは手にした銃を舞奈に手渡す。
舞奈はそれを不敵な笑みを浮かべて受け取る。
短機関銃に似て銃身も銃床も短い、一見するとコンパクトなカービン銃。
だが弾倉は箱型で大ぶりな大口径ライフル弾用のそれ。
至近距離から圧倒的な火力を浴びせ、高耐久の怪異を屠るための銃。
それを舞奈はじっと見やる。
1年前、滓田妖一を葬るために設えてもらった特注品だ。
そして先日も、魔獣マンティコアとの対決に使用した。
その際に高高度から落としてしまったのだが、スミスはそれを完璧に修理してメンテナンスまでしてくれた。
そして今回も、舞奈は完全体に転化する道士どもを倒すためにこの銃を使う。
5匹の怪異の人間の顔は、地位を悪用して人の世に仇成す5匹の悪党だ。
だが、そのうちひとり、蔓見雷人は元ファイブカードのメンバーだ。
すなわちスミスのかつての仲間だ。
その事実をスミスは知っているのだろうか? 知らないのだろうか?
舞奈にはそれを確かめる手段はない。
だから舞奈は、ただ不敵な笑みを浮かべて銃を受け取った。
同じ頃。
九杖邸の応接間。
縁側で小夜子を膝枕させながら、サチはのんびり庭を眺める。
そうしながら無意識に、小夜子の太ももに触れる。
小夜子はリラックスるするときに胎児のように丸まる。
そのことをサチは当然のように知っている。
そんな小夜子が少し身じろぎして、
「あっ、嫌だったらごめんなさい」
「ううん、嫌じゃないわ」
サチはあわてる。
こんなことをするのは、以前に勘違いして置換……もとい痴漢をして以来か。
庭の木の枝にとまった可愛らしい小さな鳥が、甲高い声でさえずる。
「あの鳥は何だかわかる?」
「あれは百舌鳥よ」
小鳥の名を問う小夜子に答える。
百舌鳥の隣に別の百舌鳥がとまり、くわえた何かを枝の先に刺す。
はやにえだ。
百舌鳥は獲物を枝に刺し、少しずつ食らう。
可愛らしい容姿に似合わず、なかなかに残酷な行動だ。
でもそれは、百舌鳥が生きるために必要なことだ。
野鳥や動物の世界が、見た目によらず過酷なことをサチは知っている。
……否。動物たちだけではない。
先日、サチは小夜子を守れず失いかけ、けど彼女は自力で復活した。
何もかもが元通りになった自分の世界。
けれどサチは気づいていた。
かつて幼馴染を失った小夜子の慟哭。
今なお力を求める彼女が感じている恐怖。
もう何も失いたくないという切望。
サチと小夜子がいる人間社会だって、動物たちの世界に劣らず過酷だ。
警戒を怠れば、たちまち危険な怪異どもに捕食され、侵略されてしまう。
だからサチも小夜子も戦わなければならない。
大切な人を、かけがえのない誰かが暮らすこの世界を守るために。
そんな2人が見守る前で、2匹の百舌鳥は寄り添ってさえずる。
過酷な生存競争の中、それでも小鳥は歌う。
その音色が、とても得難い素晴らしいものだと今は思う。
だから2人も互いに視線を向け合って、笑う。
苛烈な怪異との闘争の中の、つかの間の平穏を享受するように。
明日、2人は、この平穏を守るために死地へ赴く。
そして、駅前の商業地区の一角にあるマンションの一室。
「ただいま」
紅葉がドアを開けて帰ってくると、
「キョー」
部屋の真ん中で、姉の楓が両腕を突っ張って謎の動作をしていた。
「ナァ~?」
その側で、灰色猫のバーストが楓に奇異の視線を向けている。
猫は自由奔放だが知的な生き物だ。
共に暮らす人間がおかしな行動を始めれば、困惑することだってある。
「……姉さん、何をしてるんだい?」
紅葉も姉を見やって首を傾げる。
動物会話の術も使っていないのに猫の気持ちがわかる気がした。
部屋の片隅には、イーゼルに立てかけられた新しいキャンバス。
そこにスケッチされている、三つ編みおさげに眼鏡をかけたひとりの少女。
細い身体を手で隠した委員長だ。
彼女を護衛する参考にと、忙しい彼女に無理を言ってモデルになってもらったのだ。
以前に描いた園香とは異なり小学5年生相応に慎ましやかで華奢な身体。
生真面目で、余人に肌を晒したことなどないであろう彼女の恥じらい。
それでも要求にはこたえようとする誠実さ。
簡素なスケッチの中に、それらすべてが余すところなく表現されている。
それほどまでに細やかな観察眼、芸術的センス。
……そんな姉が、何故にこんなことになってしまっているのだろうか。
部屋の真ん中で奇行に勤しむ楓を見ながら紅葉は戸惑う。
そんな妹に顔を向け、
「ふふ、来るべき作戦に備えて鍛錬をと思いまして」
にこやかな笑顔で楓は答えた。
しかし紅葉は、何の鍛錬なのかと尋ねる気も起きない。
それほどまでに姉の行為は……何をしているのか訳がわからなかった。
その動作と力の入れ方じゃ何処の筋肉も鍛えられないし。
そんな紅葉を尻目に、姉は「キョー」と奇声を発しながら両腕を挙げて跳躍し……
……ズサッ!
平均台の上に落ちた。
跳び乗る算段だったのか?
しこたま背中を打ちつけたらしい。
仰向けで身もだえながら、ヘルプ! ヘールプ! みたいな顔でこっちを見てくる。
そんな姉を、紅葉はしばし無言で見下ろしてから、
「そうなんだ。まあその……頑張ってね」
何処か外出する用事はなかったかと考えながら、窓の外に目をやる。
バーストは「ナァー?」と不審げに鳴きつつ姉を猫パンチする。
……と、まあ、そのように桂木姉妹も明日に備えていた。
その夜。
当の委員長が住まう梨崎邸の一角で、
「紗羅、入っても構わないかね?」
「どうぞなのです」
ノックの音に、委員長はあわてて演奏を止めてギターを仕舞う。
明日に備えて練習中だったのだが。
ケージの中のエース君が不満そうに「キュ~」と鳴く。
ドアを開けて入ってきたのは父親だ。
父は黙って娘の側に立つ。
そして部屋の片隅のサイドテーブルの上に乗った、大きなケージを見やる。
エース君は飼い主に似た大人の男を見やって「キュイキュイ」と鳴く。
そんなハリネズミを見やって父は笑う。少し……寂しそうに。
「紗羅」
父の言葉に、思わず身を硬くする。
明日のコンサートのことを、実は父には話していない。
今度のライブは母親の歌を賭けた音楽勝負だ
以前のように出発前にトラブルにしたくなかった。
それでも父に気づかれていないはずはないと思っていた。
だから今夜、その件について何か言われるのだと思っていた。だが、
「……今日は早く寝なさい。メイドに何か温かいものを持たせよう」
「そうするのです。ありがとうなのです」
そう言って、父はそれ以上は何も言わずに部屋を出た。
その背を見送りながら、委員長は首を傾げた。
そして同じ頃。
新開発区の片隅に建つ古びたアパートの一室。
そこで舞奈は普段と同じように踊っていた。
ステージは天井と壁と床しかない殺風景な自室。
左右の手には、それぞれ拳銃と、改造拳銃。
引き締まった肢体を飾るはキュロットにブラウス。
その上に掛けられたショルダーホルスター。
銃を握った両腕を両翼の如く左右にピンと伸ばす。
次の瞬間、両腕を交差させる。
両手の銃を前に向けて構える。
研ぎ澄まされた動作は銃の撃鉄の様に鋭い。
ポーズは鋳抜かれた鉄のように正確で力強い。
舞奈の肌には玉の汗が浮かんでいる。
だが口元にあいまいな笑みすら浮かべた童顔には息の上がった様子はない。
静寂の中に、四肢が風を切る音と筋肉が軋む音、少女がたまに発する「はっ」という鋭い声だけが響き渡る。
そんな舞奈を、タンスの上から額縁が見守る。
収められた写真には、幼い舞奈とかつての仲間が写っている。
かつてピクシオンだった舞奈、美佳、一樹。
3人は可憐なドレスに身を包み、力を合わせて人々を鼓舞し、侵略者と戦った。
最後には大魔道士でもあったエンペラーをも討ち果たし、世界を救った。
何故なら3人は最強の魔法少女だったから。
そして明日、舞奈は数多の仲間と力を合わせて世界を救う。
悪党どもの魔手から歌を守るべくアーティストを相応しい場に送り届ける。
その後に守ったばかりの歌声を背に、人々の希望を賭けて巨悪を討つ。
5匹の悪党、その頂点でもある大魔道士にして伝説のロッカー、蔓見雷人を。
何故なら今は、舞奈が最強の仕事人なのだから。
「明日の準備は万全なのです」
委員長はギターをつま弾いてみせる。
ユーモラスなおばけを象ったギター。
彼女の母親が遺した伝説のギター、ブラックゴーストを。
明日はいよいよ金曜日。
委員長は馴染みのライブハウス『Joker』でコンサートを行う。
KASCに奪われかけた母親の歌――ファイブカードの新曲を取り戻すため。
彼女は以前にも『Joker』でライブを行った。
その時にも委員長は皆の手を借りて会場へと辿り着いた。
舞奈は柄にもなくウィアードテールの扮装などした。
だが今回はライブの場繋ぎに歌うだけじゃない。
ロックの定番ファイブカードの新曲の著作権、そして広義には音楽業界の進退を賭けた、KASCのアーティストとの一騎打ちだ。
それでも委員長の不敵な笑みは以前のそれと変わらない。
何故なら彼女は常に全力だから。
アーティストとして最高のパフォーマンスを発揮すべく、日々の習練を欠かさない。
だからいつも唐突な彼女のギターは、歌は、聴衆の心を虜にする。
「志門さん、安倍さん、よろしくなのです」
委員長はペコリと頭を下げる。
「ああ、まかせときな」
舞奈はニヤリと笑みを返す。
側で明日香も頷く。
今回の彼女に反対しているのは、ただ音楽に理解がないだけの父親じゃない。
KASCだ。
人の世界から音楽を消し去り、醜い利権に変えようとする怪異の組織だ。
この下種な奴らは、野望の障害となる彼女を阻止するために手段を選ばないだろう。
そんな中、彼女は賢明にも舞奈と明日香に警護を依頼した。
KASCの実態、そして2人が最強の仕事人【掃除屋】であるとは知らぬまま。
それに今回は【メメント・モリ】も力を貸してくれる。
委員長を守る……というより、彼女を狙ってあらわれるであろう宿敵を討つために。
「すごいよね! 委員長。アイドルみたい!」
「うんうん。明日のライブ、楽しみにしてるね」
「ありがとうなのです! がんばるのです!」
チャビーと園香も満面の笑みで応援する。
委員長も答えるようにギターをつま弾いてみせる。
心なしか顔が赤いのは上気しているからか。
園香もチャビーも、委員長と歌を取り巻く裏の事情など知らない。
だが委員長の友人として、なにより委員長の歌に魅了された聴衆のひとりとして週末のライブを心待ちにしている。
いわば委員長の歌は、舞奈たちの戦いは、巡り巡って彼女たちのものでもある。
「桜の美声を披露できないのが残念なのー」
「いや、おまえは大人しく座ってろ」
くねくねと踊る桜の妄言を切って捨て、
「わたしと舞奈と委員長は警備上の手続きがあるから、皆は先に会場に行ってて」
「はーい」
「うん、明日香ちゃんたちも頑張ってね」
明日香が何食わぬ顔で別行動を促す。
皆の安全を保証するために、明日香もまた余念がない。
「キョー」
少し離れた場所ではみゃー子が両腕を突っ張って謎の動作をしている。
これでも彼女なりの表現で、委員長を応援してるのだろう。
理解したくもないのに何となくわかる。
さらに少し離れた自席から、テックも皆の様子を見やって笑う。
皆が週末のライブを楽しみにしている。
何故なら美しい歌は、アートは人々の心を癒し、鼓舞する。
それはプラスの魔力となって世に満ち、人間社会をより良いものにする。
だから舞奈も全力で委員長を守る。
歌を、人を、守る。
人の世界を妬み、穢そうとする輩から。
委員長自身と同じ、弛まぬ鍛錬で培った普段通りの全力で。
そう心に決めた。
だから給食後の昼休憩、舞奈は6年生の教室に赴いた。
「よっ鷹乃ちゃん」
「なんだ、そなたか」
ドアの陰に隠れて鷹乃を呼び出し、
「そっちの様子はどうだ?」
問いかける。
だが小さな6年生の先輩は、難しい顔で首を横に振る。
彼女の友人、張梓――双葉あずさは歌えない。
先日に開催されたサイン会の会場に死塚不幸三の暴走自動車が突っこんだからだ。
あの忌まわしい事件で死傷者が出て、大事な人も傷ついた。
だからショックで歌えなくなった。
何故ならあずさの歌は、梓自身の優しさと無垢さの発露でもあるから。
もちろん鷹乃も友人を励まそうと粉骨砕身している。
もうひとりの双葉あずさである作詞担当の支倉美穂も同様だろう。
だが心の問題を解決できるのは自分自身だけだ。
それでも――否、だからこそ、
「2人にこいつを渡してやっちゃあくれないか?」
何食わぬ表情で、舞奈は鷹乃にチケットを手渡す。
週末のライブのチケットが2枚。
残念ながら鷹乃の分はない。
当日、彼女には他に重要な仕事がある。
鷹乃は理解していた。
今の梓にとって最も大事な役割は癒され、励まされることだと。
普段の彼女がファンに対してしているように。
何故なら彼女自身が皆の笑顔を願っているように、皆も彼女の回復を待っている。
それは舞奈も同じだ。
加えて委員長の歌には、それを成しえる力があると思った。だから、
「うむ、承知した」
鷹乃も真面目くさった顔で、2枚のチケットを受け取った。
「キョー」
少し離れた廊下の隅で、みゃー子が天井にぶらさがっていた。
……何の真似なのか少し気になった。
だが尋ねても理解できないことだけはわかっていたので礼儀正しく無視した。
そして放課後。
舞奈がひとり帰路についていると、
「こんばんは、舞奈君。帰りかね?」
「あ、親父さん。ばんわっすー」
会社帰りの園香父と出くわした。
思わずベティみたいな挨拶を返す。
普段より少し早めの帰宅な気がする。
だが、まあ、いつもいつも遅くまで会議してる訳じゃないだろうと思いなおす。
「明日は皆でコンサートに行くそうだね。娘を頼む」
「わかってますって」
「……それと、くれぐれも羽目を外しすぎないように」
「わ、わかってますって……」
険しい表情で念を押され、舞奈は珍しく縮こまる。
彼は舞奈を、手癖の悪い問題児だと考えている。それは事実だ。
舞奈自身がこれまでの行いで、それを証明し続けていた。そして、
「君と明日香君は、娘たちとは別行動をとるそうだね」
そう言って父は舞奈を――娘と同い年の小学生を真摯に見やり、
「……くれぐれも怪我の無いようにしなさい」
真面目くさった表情で言った。
もちろん彼は娘と同様、舞奈や明日香、委員長や歌を取り巻く事情など知らない。
だが薄々とは気づいているのだろう。
舞奈が何処か自分たちが知らぬ場所で、誰かを守るために危険を冒すつもりだと。
彼は舞奈が、側にいる誰かを身を挺して守る人間だと知っている。
そして何食わぬ顔で笑うのだと。
舞奈はこれまでの行いで、それを証明し続けていた。だから、
「ああ! わかってますって!」
舞奈は力強く宣言した。
そう。誰ひとり傷つけることなく歌を守り、悪党どもを打倒してみせると。
その後、統零町の限りなく新開発よりのゴーストタウンの一角。
ネオン文字の横棒が消えかけた『画廊・ケリー』の看板の下。
「おーいスミス! いるか?」
舞奈はスミスの店を訪れていた。
返事も待たずに我が物顔で入店する舞奈の前に、
「しもんだ! メガネのおねえちゃんは、ぶじか?」
「おう、リコか」
店の奥からバードテールの幼女が飛んできた。
「きのうスミスとみまいにいったら、いなかったんだ!!」
リコは焦った様子で言い募る。
自分たちをかばってくれた年上の友人の安否が、子供なりに気がかりなのだ。
そう。
幼いリコもまた、善良な心を持った舞奈の友人のひとりだ。だから、
「安心しろ、怪我ひとつなくてピンピンしてた」
「そうか! よかった!」
「大体、病院にいないってことは、用がなくなったってことだぞ」
舞奈の答えにリコはニッコリ笑顔になって、
「……おねえちゃんにケガさせた、わるものはどうなった?」
表情を少し強張らせて低い声で問いかける。
リコは幼く善良だから、善人は救われるものだと無邪気に信じている。
そして悪は正されるものだと。
だが凄惨な暴走事件を引き起こした死塚不幸三は、今ものうのうと生きている。
あろうことか、無辜の人々が善を救い悪を正すと信じている警察に守られて。
そんな事実を無邪気な彼女に、今は話したくなかったから、
「この前、眼鏡におさげのお姉ちゃんと、スマートな姉ちゃんがいたろ? ほら一緒にテーブル出してメシ食って、スミスの話してた」
「きんピカのおねえちゃんたちか?」
「金ピカの……。ああ、金ピカの姉ちゃんたちだ」
楓と紅葉に対するリコの認識に苦笑しつつも、
「……そいつらが、悪い奴をやっつけた」
「やっつけたのか!」
「ああ。だが、あの野郎、懲りずにまた悪さしようとしてやがるから、今度はあたしがやっつけに行く」
「しもんがやっつけるのか!」
「ああ、コテンパンにな」
そして文字通り二度と悪さできないように。
不敵に笑う舞奈の表情に、リコも釣られて笑う。
悪は正され、そして善が虐げられることはもうないのだと信じることができたから。
何故なら舞奈が絡んだ厄介事は、今まですべてそうなってきた。だから、
「遊びに行ってくる!」
「おう! 気をつけてな!」
リコは安心しきった笑顔のまま、店から飛び出していった。
「まったく、元気な奴だ」
舞奈も口元に笑みを浮かべて養女を見送る。
明日、舞奈は彼女とした約束をも守るために戦場に赴く。
世界を彼女に見せたいような理想のそれに近づけるために。
いつか公安の魔道士たちが、子供たちのためにしようとしたように。そのために、
「例のものを受け取りに来た」
「ふふっ、メンテナンスは完璧よ」
遅ればせながら奥から出てきたスミスに振り返る。
「狙撃銃と同じ大口径のアサルトライフルの銃身を短機関銃並に縮めて無理やり近接専用にカスタムした、改造ライフル」
スミスは手にした銃を舞奈に手渡す。
舞奈はそれを不敵な笑みを浮かべて受け取る。
短機関銃に似て銃身も銃床も短い、一見するとコンパクトなカービン銃。
だが弾倉は箱型で大ぶりな大口径ライフル弾用のそれ。
至近距離から圧倒的な火力を浴びせ、高耐久の怪異を屠るための銃。
それを舞奈はじっと見やる。
1年前、滓田妖一を葬るために設えてもらった特注品だ。
そして先日も、魔獣マンティコアとの対決に使用した。
その際に高高度から落としてしまったのだが、スミスはそれを完璧に修理してメンテナンスまでしてくれた。
そして今回も、舞奈は完全体に転化する道士どもを倒すためにこの銃を使う。
5匹の怪異の人間の顔は、地位を悪用して人の世に仇成す5匹の悪党だ。
だが、そのうちひとり、蔓見雷人は元ファイブカードのメンバーだ。
すなわちスミスのかつての仲間だ。
その事実をスミスは知っているのだろうか? 知らないのだろうか?
舞奈にはそれを確かめる手段はない。
だから舞奈は、ただ不敵な笑みを浮かべて銃を受け取った。
同じ頃。
九杖邸の応接間。
縁側で小夜子を膝枕させながら、サチはのんびり庭を眺める。
そうしながら無意識に、小夜子の太ももに触れる。
小夜子はリラックスるするときに胎児のように丸まる。
そのことをサチは当然のように知っている。
そんな小夜子が少し身じろぎして、
「あっ、嫌だったらごめんなさい」
「ううん、嫌じゃないわ」
サチはあわてる。
こんなことをするのは、以前に勘違いして置換……もとい痴漢をして以来か。
庭の木の枝にとまった可愛らしい小さな鳥が、甲高い声でさえずる。
「あの鳥は何だかわかる?」
「あれは百舌鳥よ」
小鳥の名を問う小夜子に答える。
百舌鳥の隣に別の百舌鳥がとまり、くわえた何かを枝の先に刺す。
はやにえだ。
百舌鳥は獲物を枝に刺し、少しずつ食らう。
可愛らしい容姿に似合わず、なかなかに残酷な行動だ。
でもそれは、百舌鳥が生きるために必要なことだ。
野鳥や動物の世界が、見た目によらず過酷なことをサチは知っている。
……否。動物たちだけではない。
先日、サチは小夜子を守れず失いかけ、けど彼女は自力で復活した。
何もかもが元通りになった自分の世界。
けれどサチは気づいていた。
かつて幼馴染を失った小夜子の慟哭。
今なお力を求める彼女が感じている恐怖。
もう何も失いたくないという切望。
サチと小夜子がいる人間社会だって、動物たちの世界に劣らず過酷だ。
警戒を怠れば、たちまち危険な怪異どもに捕食され、侵略されてしまう。
だからサチも小夜子も戦わなければならない。
大切な人を、かけがえのない誰かが暮らすこの世界を守るために。
そんな2人が見守る前で、2匹の百舌鳥は寄り添ってさえずる。
過酷な生存競争の中、それでも小鳥は歌う。
その音色が、とても得難い素晴らしいものだと今は思う。
だから2人も互いに視線を向け合って、笑う。
苛烈な怪異との闘争の中の、つかの間の平穏を享受するように。
明日、2人は、この平穏を守るために死地へ赴く。
そして、駅前の商業地区の一角にあるマンションの一室。
「ただいま」
紅葉がドアを開けて帰ってくると、
「キョー」
部屋の真ん中で、姉の楓が両腕を突っ張って謎の動作をしていた。
「ナァ~?」
その側で、灰色猫のバーストが楓に奇異の視線を向けている。
猫は自由奔放だが知的な生き物だ。
共に暮らす人間がおかしな行動を始めれば、困惑することだってある。
「……姉さん、何をしてるんだい?」
紅葉も姉を見やって首を傾げる。
動物会話の術も使っていないのに猫の気持ちがわかる気がした。
部屋の片隅には、イーゼルに立てかけられた新しいキャンバス。
そこにスケッチされている、三つ編みおさげに眼鏡をかけたひとりの少女。
細い身体を手で隠した委員長だ。
彼女を護衛する参考にと、忙しい彼女に無理を言ってモデルになってもらったのだ。
以前に描いた園香とは異なり小学5年生相応に慎ましやかで華奢な身体。
生真面目で、余人に肌を晒したことなどないであろう彼女の恥じらい。
それでも要求にはこたえようとする誠実さ。
簡素なスケッチの中に、それらすべてが余すところなく表現されている。
それほどまでに細やかな観察眼、芸術的センス。
……そんな姉が、何故にこんなことになってしまっているのだろうか。
部屋の真ん中で奇行に勤しむ楓を見ながら紅葉は戸惑う。
そんな妹に顔を向け、
「ふふ、来るべき作戦に備えて鍛錬をと思いまして」
にこやかな笑顔で楓は答えた。
しかし紅葉は、何の鍛錬なのかと尋ねる気も起きない。
それほどまでに姉の行為は……何をしているのか訳がわからなかった。
その動作と力の入れ方じゃ何処の筋肉も鍛えられないし。
そんな紅葉を尻目に、姉は「キョー」と奇声を発しながら両腕を挙げて跳躍し……
……ズサッ!
平均台の上に落ちた。
跳び乗る算段だったのか?
しこたま背中を打ちつけたらしい。
仰向けで身もだえながら、ヘルプ! ヘールプ! みたいな顔でこっちを見てくる。
そんな姉を、紅葉はしばし無言で見下ろしてから、
「そうなんだ。まあその……頑張ってね」
何処か外出する用事はなかったかと考えながら、窓の外に目をやる。
バーストは「ナァー?」と不審げに鳴きつつ姉を猫パンチする。
……と、まあ、そのように桂木姉妹も明日に備えていた。
その夜。
当の委員長が住まう梨崎邸の一角で、
「紗羅、入っても構わないかね?」
「どうぞなのです」
ノックの音に、委員長はあわてて演奏を止めてギターを仕舞う。
明日に備えて練習中だったのだが。
ケージの中のエース君が不満そうに「キュ~」と鳴く。
ドアを開けて入ってきたのは父親だ。
父は黙って娘の側に立つ。
そして部屋の片隅のサイドテーブルの上に乗った、大きなケージを見やる。
エース君は飼い主に似た大人の男を見やって「キュイキュイ」と鳴く。
そんなハリネズミを見やって父は笑う。少し……寂しそうに。
「紗羅」
父の言葉に、思わず身を硬くする。
明日のコンサートのことを、実は父には話していない。
今度のライブは母親の歌を賭けた音楽勝負だ
以前のように出発前にトラブルにしたくなかった。
それでも父に気づかれていないはずはないと思っていた。
だから今夜、その件について何か言われるのだと思っていた。だが、
「……今日は早く寝なさい。メイドに何か温かいものを持たせよう」
「そうするのです。ありがとうなのです」
そう言って、父はそれ以上は何も言わずに部屋を出た。
その背を見送りながら、委員長は首を傾げた。
そして同じ頃。
新開発区の片隅に建つ古びたアパートの一室。
そこで舞奈は普段と同じように踊っていた。
ステージは天井と壁と床しかない殺風景な自室。
左右の手には、それぞれ拳銃と、改造拳銃。
引き締まった肢体を飾るはキュロットにブラウス。
その上に掛けられたショルダーホルスター。
銃を握った両腕を両翼の如く左右にピンと伸ばす。
次の瞬間、両腕を交差させる。
両手の銃を前に向けて構える。
研ぎ澄まされた動作は銃の撃鉄の様に鋭い。
ポーズは鋳抜かれた鉄のように正確で力強い。
舞奈の肌には玉の汗が浮かんでいる。
だが口元にあいまいな笑みすら浮かべた童顔には息の上がった様子はない。
静寂の中に、四肢が風を切る音と筋肉が軋む音、少女がたまに発する「はっ」という鋭い声だけが響き渡る。
そんな舞奈を、タンスの上から額縁が見守る。
収められた写真には、幼い舞奈とかつての仲間が写っている。
かつてピクシオンだった舞奈、美佳、一樹。
3人は可憐なドレスに身を包み、力を合わせて人々を鼓舞し、侵略者と戦った。
最後には大魔道士でもあったエンペラーをも討ち果たし、世界を救った。
何故なら3人は最強の魔法少女だったから。
そして明日、舞奈は数多の仲間と力を合わせて世界を救う。
悪党どもの魔手から歌を守るべくアーティストを相応しい場に送り届ける。
その後に守ったばかりの歌声を背に、人々の希望を賭けて巨悪を討つ。
5匹の悪党、その頂点でもある大魔道士にして伝説のロッカー、蔓見雷人を。
何故なら今は、舞奈が最強の仕事人なのだから。
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