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第12章 GOOD BY FRIENDS
調査2
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「そういや、シスターのところに行くのも久しぶりだなあ」
「仕方ないわよ。最近はシスターの力を借りようもない状況ばかりだったんだもの」
そんな話をしながら、舞奈と明日香は寂れた通りを歩く。
教会へと続く道だ。
シスターの仕事場である小さな教会は、統零町の片隅にある。
「そりゃそうなんだがな」
もっともな明日香の言葉に苦笑する。
シスターは人当たりもよく、訪れる人たちに自家製の野菜など配っていたりする。
そのせいで意図せず情報通だ。
だが舞奈たちは、ここのところ立て続けに怪異の組織と敵対していた。
その前は魔獣とやりあっていた。
組織や魔獣の情報は近隣住民からは集まらない。
そんな相手について尋ねられても、シスターだって困るだろう。
だから直近にシスターの力を借りたのは、桂木姉妹と戦ったときか。
しかし今回のターゲットは、街中にいるハゲにまぎれた祓魔師だ。
そういう相手の特定には彼女の人脈は何よりの武器だ。
そんな彼女の仕事場である見なれた十字架を掲げた教会が、歩くうちに見えてきた。
2人は無意識に足を速める。
教会の隣は霊園になっていて、こぢんまりとした墓が並んでいる。
舞奈はそこに見慣れた人影を見つけ、
「おーい!」
呼びかけながら走る。
優れた感覚を持つ舞奈は背格好を視認できる距離も尋常でなく遠い。
「まったく、目だけは良いんだから」
苦笑しながら明日香も続く。
「マイだ! マーイー!」
霊園で、舞奈に気づいて手を振ってきたのはチャビーだった。
相も変わらず元気な幼女だ。そして、
「志門さん、教会でも会うなんて信心深いのです」
こちらは委員長が、普段と変わらぬ真面目くさった笑顔を向ける。
そう言うところは明日香と似ていると思う。
その明日香を置いて走ってきた舞奈だが、まあじきに追いついてくるだろう。
「おまえらこそ、珍しい組み合わせだな」
結構な距離を走ったのにも関わらず、息を切らせることもなく普通に笑う。
そんな舞奈の問いに、
「桜さんが教会に野菜を貰いに来たので、付き添いなのです」
委員長が真面目に答え、
「ゾマがシスターとお話したいっていうから、いっしょに来たんだ」
チャビーも元気に続く。
だが元気いっぱいなチャビーの視線は、無意識に墓のひとつに向かう。
彼女の兄が眠っている墓に。
そんなチャビーを委員長は見やり、何かの合点がいったような顔をした。
委員長はチャビーの兄のことを知らない。
執行人だった彼は、表向きには海外留学したことになっている。
チャビーも秘密を言いふらすタイプではない。
そういえば2人は舞奈が来るまでどんな話をしていたのだろう?
ふと思う舞奈を他所に、委員長はどこからともなくギターを取り出す。そして、
――夕暮れの街、君に会いたくて
――見慣れたコート、探して、目を凝らす
前触れもなく歌いだした。
それは静かなバラードだった。
――そこにいるはずなんてないこと、わかっているけど
――君のいた場所、いつまでも、見つめていた
なまじ普段の委員長を知っていると、らしくない突飛な行動に思える。
だが舞奈もなんとなくわかった。
学校での生真面目な言動以外に、感情を表現する最も効果的な手段が歌なのだろう。
舞奈にとっての銃。
それと同じように、彼女にとっては歌なのだ。
壊したり屠ったりに特化した舞奈からは、それは優雅で眩しい生き方に見えた。
――ふと振り返る
――そこには誰もいない
――けれど僕らが、来た道、確かにあるよ
この曲は、たしか以前に往生寺でも歌っていた。
好きな曲なんだろうか?
「(――ファイブカードの『GOOD BY FRIENDS』よ)」
不意に囁くような声。
明日香だ。
ようやく追いついてきたらしい。
――2人で歩いてきた道、間違ってなかったと
――確かめるように、口元、歪める
委員長は明日香を見やって笑顔を向ける。
歌う彼女に気を使ってか、チャビーも珍しく笑みだけむける。
――それが笑顔に見えたらいいな
――だって僕が笑うと
――君も微笑んで、くれたから
「(……ったく、高等魔術のことを覚えたばっかりだってのに)」
「(術じゃなくて、曲の名前よ)」
声を潜めた軽口に、明日香はやれやれと肩をすくめる。
戦闘に慣れたことによる数少ない利点のひとつだ。
命がかかってるのと同レベルの注意力で歌を聞きつつ、明日香と小声で雑談できる。
――この広い世界の中、ただ君が、いてくれるだけで
――光輝く、楽園だった
「(ファイブカードはアーティスト。『DEMON∵LOAD』と同じグループよ)」
「(委員長はそいつの追っかけなのかな)」
「(10年以上前のグループだって言ったでしょ? ロックの定番曲よ)」
「(そっか)」
雑談を適当に切り上げる。
その間ずっと委員長を見やっていたのは、戦場の集中力の賜物というだけではない。
――僕がここまで来られたのは、君がいたからだって
――何度でも伝えたいよ
歌が耳から離れなかった。
――君が何処にいても聞こえるように
――笑ってくれるように
――僕の気持ち、歌にして、送るよ
大事な誰かを失った何者かの歌。
その歌の詩を、舞奈はそう解釈した。
――天国でも、地獄でもない、この世界の中
――この道はまだ、ずっと先まで、続いてるけど
――ひとりで歩く道じゃないよ
――僕にはまだ歌が、あるから
だから自分と重ねて考えてしまう。
美佳への思慕。
一樹への信頼。
2人がいた頃の記憶。
戻ることのできない過去。
それをこういう風に静かに、けれど強く想えるのは良いことだなと舞奈は思った。
――2人で歩いた道
――2人で歌った歌
――絶対に、忘れやしない
委員長は以前と同じように、眼鏡をずらして鼻に乗せ、目を閉じて歌っている。
それが彼女が歌う時のスタイルらしい。
チャビーも遠い目をしながら歌に聞き入っている。
明日香も。
委員長はこの場所で、誰かを失ったチャビーのために、この曲を選んだのだろうか。
素顔の彼女は普段と違う一面を持っている。
だがそれは、普段の彼女が本当の彼女ではないと断ずる理由にはならない。
彼女はクラス委員長として、皆のことをよく見ていた。
――そうさ君は、歌になって
――吹き抜ける春の風になって
――僕の隣に、いるよ
そんなことを考えながら、ふと気づく。
明日香はこの曲がロックの定番曲だと言った。
それはつまり、この曲に心惹かれる誰かが大勢いるということだろうか。
舞奈の知らない何処かで、大事な何かを失った、誰かが。
――あの懐かしい歌になって
――まばゆい木漏れ日になって
――僕の隣に、いるよ
ギターの余韻を残して曲は終わった。
ふと気づき、手の甲で目元をぬぐう。
だが口元には不思議と穏やかな笑みが浮かんでいた。
美佳や一樹、洋介、悟。
かつて舞奈と笑いあった皆が、今でも側にいると思うのは悪い気分じゃない。
歌になって。
皆もそれぞれに歌の余韻に浸る。
小さなアーティストは照れたような表情で、眼鏡の位置を直して舞奈を見やる。
そしてニコリと笑った。
その笑顔の意味に思いを巡らせ、ひとつの言葉に思い当たる。
――あんがいホトケも、このくらいの方が退屈しなくて喜ぶかもしれんぞ。
そう往生寺で言った。
あの時、委員長は嬉しそうに笑っていた。
だから舞奈も笑みを返す。
何かを覆い隠す意図ではない。
あの些細な一言が、彼女を歌わせたのだとしたら嬉しかった。
そんなことを考えていると教会のドアが開き、
「あ! マイと安倍さんだ! みんなのアイドル桜だよ!」
「マイちゃんたちもシスターとお話しに来たの?」
桜と園香がやってきた。
相変わらず桜はかしましく、園香はしとやかで上品だ。そして、
「おー、しもんだ!」
「しもんだ」
「しもんだ!」
「……あ、安倍明日香と志門舞奈」
「なんだ、おまえらも一緒だったのか」
リコに桜の2人の妹、えり子までいる。
祭りの予定でもあったっけと表情には出さずに訝しむ。
「みんな、マイちゃんたちとお友達なんだね」
「うん! しもんとリコはともだちだ!」
言いつつリコは園香の前まで走って行って抱っこをねだる。
園香はリコを手際よく抱き上げる。
リコは気持ちよさそうに園香の胸を堪能する。一体、誰に似たんだか。
「たくさんヤサイをもらってきたぞ!」
「マコももらってきたぞ!」
2人の妹は、戦利品を桜に見せびらかす。
「こんなところで会うなんて、珍しいわね」
「別に。……ちょっと誘われたから」
明日香はややぎこちない様子で、えり子と話す。
「ふふ、委員長の歌、中まで聞こえてきたよ。シスターと皆で聞いてたの」
園香は微笑み、
「桜も歌いたかったー」
桜が口をとがらせる。
桜とリコ、えり子の手にはビニール袋。
いずれも歪な形に膨れている。
持参した肉と引き換えにシスターからもらった野菜が詰まっているのだ。
そんな皆を見やって、
「なら、もう一曲、歌ってけばいいじゃないか」
舞奈も笑う。
今度はもう少し楽しい歌を。
何も失っていない園香やリコ、えり子や桜や妹たちも楽しめる曲を。
流石に『DEMON∵LOAD』は如何なものかと思うが。
「じゃあ! 今度は桜も歌うー!」
「では次もファイブカードの『堕天使のINNOCENT∵WISH』行くのです!」
「……そのグループの歌は、そんなんばっかりなのか」
舞奈はやれやれと苦笑する。
「この後、皆でツチノコ探しに行くんだけど、マイちゃんたちもどうかな?」
「いやスマン。これから野暮用があるんだ」
園香の誘いを、苦笑しながら辞退する。
祭りの理由が判明した。
桜の奴、とうとう園香たちにまで誘いをかけたらしい。
えり子や妹たちやリコまでいるのは人海戦術を意識してのことか。
「あんまり無茶すんなよ」
言って思わず苦笑する。
だが、えり子がいれば、よほど何かあっても大丈夫だろう。
彼女はカタリ派の祓魔術を操る。
だから皆に背を向け、
「それじゃ、わたしたちもシスターと話してくるわ」
明日香を連れて教会に向かった。
そして、
「ふふ、舞奈さんも明日香さんも、何だか久しぶりですね」
ドアをくぐると、清楚で巨乳なシスターが出迎えた。
「ご無沙汰してスマン」
ぽりぽりと頭をかく舞奈に、シスターは普段と変わらぬ笑顔を向け、
「今日もお仕事なのですね。どんな相手を探してらっしゃるんですか?」
問いかけた。
「ええ……」
言いずらそうな明日香を制して、
「ハゲを探してる」
身も蓋もなくそう言った。
誤魔化しても仕方がないし。
開け放たれたステンドグラスの窓から、軽快な委員長の歌が聞こえてくる。
「その……ハゲですか……」
シスターは視線をそらす。
割と予想外の反応に、舞奈は不審に思って注視する。
シスターは肩を震わせていた。
よくよく見やると……笑いを堪えているようだ。
どうやらツボに入ったらしい。
「ここんとこのニュースで出てる猟奇事件なんだが、ハゲが毛を生やそうとして仕出かしたことらしい。心当たりを探してる」
話を進めようと言ってみた瞬間、失態を悟った。
「人を……その……しても……髪は生えてきませんよ……?」
シスターは腹を押さえて必死に答える。
ハゲという言葉がツボだったらしい。
「舞奈さん、笑ってはいけませんよ。いけません。殿方にとっては死活問題ですので」
「いえ、その……」
「あんたが言ってもな……」
笑いをこらえようと口走るシスターに、思わず明日香と顔を見合わせる。
普段のシスターらしからぬ酷い言動だ。
だが舞奈にしても、たいがい酷い話をした自覚はある。
そもそも今回の依頼そのものが酷いのだ。だから、
「そう思ってる奴がいるんだ」
あと喫煙者――臭くて邪悪な脂虫は人じゃない。
苦笑しつつも何食わぬ顔で言葉を続ける。
たぶん落ち着けとか下手に言うと、笑ってる自分に対して笑えて収集がつかない。
「いちおう本当に効果のある術があるらしい」
「くくっ……。ほ、本当に効果のある……ハ……」
「――いや術な、術。だから学があるか、その手の事情に詳しい……奴だと睨んでる」
努めて平静に事情を説明する。
発作に耐えるシスターに、ハゲという言葉を聞かせないよう留意しつつ。だが、
「そういうハ……男らしい殿方でしたら、舞奈さんの方が詳しいのでは?」
「心当たりはいろいろあたってみたんだがな……」
シスターにも心当たりはないらしい。
「ま、狙われてるのは脂虫だけだが、あんたもいちおう気をつけてくれ。相手がどんな奴だかわからないんだ」
「はい、かしこまりました」
微笑む――というかようやく発作が収まったようだ。
その後しばらく、シスターと情報交換を兼ねて雑談した。
だが犯人に繋がる手掛かりが見つかることはなかった。
結局、今日も収穫がないどころかシスターを困惑させただけだった。
彼女の意外な笑いのツボを見られたことだけが唯一の収穫か。
しかも、これまでの聞きこみで犯人の情報は皆無。
この調子では先が思いやられる。
調査を依頼したテックが首尾よくやってくれていればいいのだが。
そんな他人任せなことを考えながら建物を出ると、桜たちはいなかった。
そういえば、いつの間にか歌も聞こえなかった。
ずいぶん話しこんでしまったらしい。
8人とも、とうの昔にツチノコ探しに出かけたのだろう。
なので舞奈たちも教会の敷地を後にする。
そして人気のない統零町の裏路地を歩きながら、
「……あたしもハゲじゃなくて、ツチノコを探したかったな」
ふと舞奈はひとりごちる。
そしてお金持ちになりたかった。
そんな舞奈を、ブルジョアの明日香はふふっと鼻で笑う。
「ツチノコは発見者に魔法的な手段で財産をもたらすといわれているわ」
「らしいな」
「そして魔法にかかわる力は、同種の力に引きよせられる性質を持っている。例えば呪術によって魔力を操るには、術者は自力で少量の魔力を用意する必要があるわ」
「ああ」
明日香のいつものうんちくに、いつものように相槌を打つ。
その続きは舞奈も知っている。
術者が自前で準備できる魔力に比例して、操れる魔力も多くなる。
無理に少ない自分の魔力で大量の魔力を操ろうとすると、暴走する。
かつてのベティのように。
「……つまり、金も同じだって言いたいのか?」
横目で明日香を見やって問いかける。
その方面に舞奈も特に詳しくはない。
だが、金で身を崩す奴は金を持ちなれない奴だと話に聞いたことはある。
「ええ。少なくとも、複数の魔術結社が同じ見解を持っているわ」
明日香は何食わぬ顔で答えた。
その言葉に、舞奈は思わず口元をへの字に曲げる。
ということは、伊或町の桜やえり子や委員長は絶対にツチノコを見つけられない。
金に苦労しているからという理由で、富を得られるヘビに出会えない。
そう考えるのは面白くない。そう思って、ふと気づき、
「……あ、ちょっと待てよ」
「なによ?」
「今からおまえにまとまった額を借りたら、あたしにもツチノコが寄ってくるのか?」
そうドヤ顔で言ってみた。だが、
「楓さんたちだって、全財産を持ち歩いている訳じゃないでしょ?」
明日香はやれやれ肩をすくめ、子供に言い聞かせるような口調で答えた。
「それに借金はマイナスの財産よ」
言って冷たい視線を向け、
「借金と、増えた現金で差し引きゼロ。おまけに借金は10日で1割づつ増えるのよ」
冷徹な口調で言い放った。
「……当然みたいに十一で貸す算段しやがって」
舞奈がむくれて文句を言うと、
「だいたい貴女は『太賢飯店』に大量のツケがあるなじゃいの」
明日香は情け容赦なく追い打ちをかけてきた。
「少しばかり他所から融資されたって焼け石に水よ」
「うるせぇ」
口をへの字に曲げて足を速める。
そんな舞奈の背中に向かって、
「それに、あの8人を平均すれば、それなりに裕福よ」
明日香は普段と変わらぬ口調で言った。
「まあ、チャビーと園香はそうだが……」
舞奈も何食わぬ顔で相槌を打つ。
内心を見透かされた動揺を悟られぬように。
リコ……というかスミスの店の財政状況はよくわからない。
支部を相手に武器弾薬のブローカーをしてるのなら金に困ることはないだろうが。
「あと委員長もね」
「そうなのか? あそこらへんって金持ちでも住むんだな」
何気に答える。
伊或町の住人が皆、桜やえり子と同じように金に苦労していると考えるのも、ある意味で偏見だなあと、ふと思う。だが、
「そもそも彼女の家、伊或町じゃないわよ。この近くの、けっこう大きなお屋敷」
「どういうことだ?」
またしても明日香は、いつもの口調でやや驚きの事実を告げた。
あるいは単に知識を披露したかっただけなのかもしれない。
「たしか親御さんは流通関係の会社を経営してたはずよ」
「お嬢様だったのか……」
動揺を隠すのを諦め、遠い目をしてひとりごちる。
確かに委員長は、たまに明日香と一緒に学校に来ることもある。
そんな彼女が何故、いつも桜とつるんだり家の手伝いしたりしてるのだろうか?
ここから伊或町を経由して登校するとなると、けっこうな大回りになるはずだ。
委員長、わりと謎の多い人物である。
そんなことを考えながら――
「――気づいたか?」
舞奈は武骨な手袋――ワイヤーショットを左手にはめつつ立ち止まる。
「ええ」
答える明日香の肩には、いつの間にか黒いクロークがかけられている。
かっちりとしたデザインの戦闘クロークの胸元で、金属製の骸骨が鈍く光る。
そんな2人のまわりに空気からにじみ出るように幾つもの人影が出現した。
全員が【偏光隠蔽】、ないし同等の効果を持つ術を使えるらしい。
「……天使か?」
舞奈は口元に笑みを浮かべて問いを発する。
「……ケルト呪術で召喚された妖精にも見えるわね」
明日香もニヤリと笑いつつ答える。
2人を取り囲むようにあらわれたそれは、宙を舞う数多の少女だった。
「仕方ないわよ。最近はシスターの力を借りようもない状況ばかりだったんだもの」
そんな話をしながら、舞奈と明日香は寂れた通りを歩く。
教会へと続く道だ。
シスターの仕事場である小さな教会は、統零町の片隅にある。
「そりゃそうなんだがな」
もっともな明日香の言葉に苦笑する。
シスターは人当たりもよく、訪れる人たちに自家製の野菜など配っていたりする。
そのせいで意図せず情報通だ。
だが舞奈たちは、ここのところ立て続けに怪異の組織と敵対していた。
その前は魔獣とやりあっていた。
組織や魔獣の情報は近隣住民からは集まらない。
そんな相手について尋ねられても、シスターだって困るだろう。
だから直近にシスターの力を借りたのは、桂木姉妹と戦ったときか。
しかし今回のターゲットは、街中にいるハゲにまぎれた祓魔師だ。
そういう相手の特定には彼女の人脈は何よりの武器だ。
そんな彼女の仕事場である見なれた十字架を掲げた教会が、歩くうちに見えてきた。
2人は無意識に足を速める。
教会の隣は霊園になっていて、こぢんまりとした墓が並んでいる。
舞奈はそこに見慣れた人影を見つけ、
「おーい!」
呼びかけながら走る。
優れた感覚を持つ舞奈は背格好を視認できる距離も尋常でなく遠い。
「まったく、目だけは良いんだから」
苦笑しながら明日香も続く。
「マイだ! マーイー!」
霊園で、舞奈に気づいて手を振ってきたのはチャビーだった。
相も変わらず元気な幼女だ。そして、
「志門さん、教会でも会うなんて信心深いのです」
こちらは委員長が、普段と変わらぬ真面目くさった笑顔を向ける。
そう言うところは明日香と似ていると思う。
その明日香を置いて走ってきた舞奈だが、まあじきに追いついてくるだろう。
「おまえらこそ、珍しい組み合わせだな」
結構な距離を走ったのにも関わらず、息を切らせることもなく普通に笑う。
そんな舞奈の問いに、
「桜さんが教会に野菜を貰いに来たので、付き添いなのです」
委員長が真面目に答え、
「ゾマがシスターとお話したいっていうから、いっしょに来たんだ」
チャビーも元気に続く。
だが元気いっぱいなチャビーの視線は、無意識に墓のひとつに向かう。
彼女の兄が眠っている墓に。
そんなチャビーを委員長は見やり、何かの合点がいったような顔をした。
委員長はチャビーの兄のことを知らない。
執行人だった彼は、表向きには海外留学したことになっている。
チャビーも秘密を言いふらすタイプではない。
そういえば2人は舞奈が来るまでどんな話をしていたのだろう?
ふと思う舞奈を他所に、委員長はどこからともなくギターを取り出す。そして、
――夕暮れの街、君に会いたくて
――見慣れたコート、探して、目を凝らす
前触れもなく歌いだした。
それは静かなバラードだった。
――そこにいるはずなんてないこと、わかっているけど
――君のいた場所、いつまでも、見つめていた
なまじ普段の委員長を知っていると、らしくない突飛な行動に思える。
だが舞奈もなんとなくわかった。
学校での生真面目な言動以外に、感情を表現する最も効果的な手段が歌なのだろう。
舞奈にとっての銃。
それと同じように、彼女にとっては歌なのだ。
壊したり屠ったりに特化した舞奈からは、それは優雅で眩しい生き方に見えた。
――ふと振り返る
――そこには誰もいない
――けれど僕らが、来た道、確かにあるよ
この曲は、たしか以前に往生寺でも歌っていた。
好きな曲なんだろうか?
「(――ファイブカードの『GOOD BY FRIENDS』よ)」
不意に囁くような声。
明日香だ。
ようやく追いついてきたらしい。
――2人で歩いてきた道、間違ってなかったと
――確かめるように、口元、歪める
委員長は明日香を見やって笑顔を向ける。
歌う彼女に気を使ってか、チャビーも珍しく笑みだけむける。
――それが笑顔に見えたらいいな
――だって僕が笑うと
――君も微笑んで、くれたから
「(……ったく、高等魔術のことを覚えたばっかりだってのに)」
「(術じゃなくて、曲の名前よ)」
声を潜めた軽口に、明日香はやれやれと肩をすくめる。
戦闘に慣れたことによる数少ない利点のひとつだ。
命がかかってるのと同レベルの注意力で歌を聞きつつ、明日香と小声で雑談できる。
――この広い世界の中、ただ君が、いてくれるだけで
――光輝く、楽園だった
「(ファイブカードはアーティスト。『DEMON∵LOAD』と同じグループよ)」
「(委員長はそいつの追っかけなのかな)」
「(10年以上前のグループだって言ったでしょ? ロックの定番曲よ)」
「(そっか)」
雑談を適当に切り上げる。
その間ずっと委員長を見やっていたのは、戦場の集中力の賜物というだけではない。
――僕がここまで来られたのは、君がいたからだって
――何度でも伝えたいよ
歌が耳から離れなかった。
――君が何処にいても聞こえるように
――笑ってくれるように
――僕の気持ち、歌にして、送るよ
大事な誰かを失った何者かの歌。
その歌の詩を、舞奈はそう解釈した。
――天国でも、地獄でもない、この世界の中
――この道はまだ、ずっと先まで、続いてるけど
――ひとりで歩く道じゃないよ
――僕にはまだ歌が、あるから
だから自分と重ねて考えてしまう。
美佳への思慕。
一樹への信頼。
2人がいた頃の記憶。
戻ることのできない過去。
それをこういう風に静かに、けれど強く想えるのは良いことだなと舞奈は思った。
――2人で歩いた道
――2人で歌った歌
――絶対に、忘れやしない
委員長は以前と同じように、眼鏡をずらして鼻に乗せ、目を閉じて歌っている。
それが彼女が歌う時のスタイルらしい。
チャビーも遠い目をしながら歌に聞き入っている。
明日香も。
委員長はこの場所で、誰かを失ったチャビーのために、この曲を選んだのだろうか。
素顔の彼女は普段と違う一面を持っている。
だがそれは、普段の彼女が本当の彼女ではないと断ずる理由にはならない。
彼女はクラス委員長として、皆のことをよく見ていた。
――そうさ君は、歌になって
――吹き抜ける春の風になって
――僕の隣に、いるよ
そんなことを考えながら、ふと気づく。
明日香はこの曲がロックの定番曲だと言った。
それはつまり、この曲に心惹かれる誰かが大勢いるということだろうか。
舞奈の知らない何処かで、大事な何かを失った、誰かが。
――あの懐かしい歌になって
――まばゆい木漏れ日になって
――僕の隣に、いるよ
ギターの余韻を残して曲は終わった。
ふと気づき、手の甲で目元をぬぐう。
だが口元には不思議と穏やかな笑みが浮かんでいた。
美佳や一樹、洋介、悟。
かつて舞奈と笑いあった皆が、今でも側にいると思うのは悪い気分じゃない。
歌になって。
皆もそれぞれに歌の余韻に浸る。
小さなアーティストは照れたような表情で、眼鏡の位置を直して舞奈を見やる。
そしてニコリと笑った。
その笑顔の意味に思いを巡らせ、ひとつの言葉に思い当たる。
――あんがいホトケも、このくらいの方が退屈しなくて喜ぶかもしれんぞ。
そう往生寺で言った。
あの時、委員長は嬉しそうに笑っていた。
だから舞奈も笑みを返す。
何かを覆い隠す意図ではない。
あの些細な一言が、彼女を歌わせたのだとしたら嬉しかった。
そんなことを考えていると教会のドアが開き、
「あ! マイと安倍さんだ! みんなのアイドル桜だよ!」
「マイちゃんたちもシスターとお話しに来たの?」
桜と園香がやってきた。
相変わらず桜はかしましく、園香はしとやかで上品だ。そして、
「おー、しもんだ!」
「しもんだ」
「しもんだ!」
「……あ、安倍明日香と志門舞奈」
「なんだ、おまえらも一緒だったのか」
リコに桜の2人の妹、えり子までいる。
祭りの予定でもあったっけと表情には出さずに訝しむ。
「みんな、マイちゃんたちとお友達なんだね」
「うん! しもんとリコはともだちだ!」
言いつつリコは園香の前まで走って行って抱っこをねだる。
園香はリコを手際よく抱き上げる。
リコは気持ちよさそうに園香の胸を堪能する。一体、誰に似たんだか。
「たくさんヤサイをもらってきたぞ!」
「マコももらってきたぞ!」
2人の妹は、戦利品を桜に見せびらかす。
「こんなところで会うなんて、珍しいわね」
「別に。……ちょっと誘われたから」
明日香はややぎこちない様子で、えり子と話す。
「ふふ、委員長の歌、中まで聞こえてきたよ。シスターと皆で聞いてたの」
園香は微笑み、
「桜も歌いたかったー」
桜が口をとがらせる。
桜とリコ、えり子の手にはビニール袋。
いずれも歪な形に膨れている。
持参した肉と引き換えにシスターからもらった野菜が詰まっているのだ。
そんな皆を見やって、
「なら、もう一曲、歌ってけばいいじゃないか」
舞奈も笑う。
今度はもう少し楽しい歌を。
何も失っていない園香やリコ、えり子や桜や妹たちも楽しめる曲を。
流石に『DEMON∵LOAD』は如何なものかと思うが。
「じゃあ! 今度は桜も歌うー!」
「では次もファイブカードの『堕天使のINNOCENT∵WISH』行くのです!」
「……そのグループの歌は、そんなんばっかりなのか」
舞奈はやれやれと苦笑する。
「この後、皆でツチノコ探しに行くんだけど、マイちゃんたちもどうかな?」
「いやスマン。これから野暮用があるんだ」
園香の誘いを、苦笑しながら辞退する。
祭りの理由が判明した。
桜の奴、とうとう園香たちにまで誘いをかけたらしい。
えり子や妹たちやリコまでいるのは人海戦術を意識してのことか。
「あんまり無茶すんなよ」
言って思わず苦笑する。
だが、えり子がいれば、よほど何かあっても大丈夫だろう。
彼女はカタリ派の祓魔術を操る。
だから皆に背を向け、
「それじゃ、わたしたちもシスターと話してくるわ」
明日香を連れて教会に向かった。
そして、
「ふふ、舞奈さんも明日香さんも、何だか久しぶりですね」
ドアをくぐると、清楚で巨乳なシスターが出迎えた。
「ご無沙汰してスマン」
ぽりぽりと頭をかく舞奈に、シスターは普段と変わらぬ笑顔を向け、
「今日もお仕事なのですね。どんな相手を探してらっしゃるんですか?」
問いかけた。
「ええ……」
言いずらそうな明日香を制して、
「ハゲを探してる」
身も蓋もなくそう言った。
誤魔化しても仕方がないし。
開け放たれたステンドグラスの窓から、軽快な委員長の歌が聞こえてくる。
「その……ハゲですか……」
シスターは視線をそらす。
割と予想外の反応に、舞奈は不審に思って注視する。
シスターは肩を震わせていた。
よくよく見やると……笑いを堪えているようだ。
どうやらツボに入ったらしい。
「ここんとこのニュースで出てる猟奇事件なんだが、ハゲが毛を生やそうとして仕出かしたことらしい。心当たりを探してる」
話を進めようと言ってみた瞬間、失態を悟った。
「人を……その……しても……髪は生えてきませんよ……?」
シスターは腹を押さえて必死に答える。
ハゲという言葉がツボだったらしい。
「舞奈さん、笑ってはいけませんよ。いけません。殿方にとっては死活問題ですので」
「いえ、その……」
「あんたが言ってもな……」
笑いをこらえようと口走るシスターに、思わず明日香と顔を見合わせる。
普段のシスターらしからぬ酷い言動だ。
だが舞奈にしても、たいがい酷い話をした自覚はある。
そもそも今回の依頼そのものが酷いのだ。だから、
「そう思ってる奴がいるんだ」
あと喫煙者――臭くて邪悪な脂虫は人じゃない。
苦笑しつつも何食わぬ顔で言葉を続ける。
たぶん落ち着けとか下手に言うと、笑ってる自分に対して笑えて収集がつかない。
「いちおう本当に効果のある術があるらしい」
「くくっ……。ほ、本当に効果のある……ハ……」
「――いや術な、術。だから学があるか、その手の事情に詳しい……奴だと睨んでる」
努めて平静に事情を説明する。
発作に耐えるシスターに、ハゲという言葉を聞かせないよう留意しつつ。だが、
「そういうハ……男らしい殿方でしたら、舞奈さんの方が詳しいのでは?」
「心当たりはいろいろあたってみたんだがな……」
シスターにも心当たりはないらしい。
「ま、狙われてるのは脂虫だけだが、あんたもいちおう気をつけてくれ。相手がどんな奴だかわからないんだ」
「はい、かしこまりました」
微笑む――というかようやく発作が収まったようだ。
その後しばらく、シスターと情報交換を兼ねて雑談した。
だが犯人に繋がる手掛かりが見つかることはなかった。
結局、今日も収穫がないどころかシスターを困惑させただけだった。
彼女の意外な笑いのツボを見られたことだけが唯一の収穫か。
しかも、これまでの聞きこみで犯人の情報は皆無。
この調子では先が思いやられる。
調査を依頼したテックが首尾よくやってくれていればいいのだが。
そんな他人任せなことを考えながら建物を出ると、桜たちはいなかった。
そういえば、いつの間にか歌も聞こえなかった。
ずいぶん話しこんでしまったらしい。
8人とも、とうの昔にツチノコ探しに出かけたのだろう。
なので舞奈たちも教会の敷地を後にする。
そして人気のない統零町の裏路地を歩きながら、
「……あたしもハゲじゃなくて、ツチノコを探したかったな」
ふと舞奈はひとりごちる。
そしてお金持ちになりたかった。
そんな舞奈を、ブルジョアの明日香はふふっと鼻で笑う。
「ツチノコは発見者に魔法的な手段で財産をもたらすといわれているわ」
「らしいな」
「そして魔法にかかわる力は、同種の力に引きよせられる性質を持っている。例えば呪術によって魔力を操るには、術者は自力で少量の魔力を用意する必要があるわ」
「ああ」
明日香のいつものうんちくに、いつものように相槌を打つ。
その続きは舞奈も知っている。
術者が自前で準備できる魔力に比例して、操れる魔力も多くなる。
無理に少ない自分の魔力で大量の魔力を操ろうとすると、暴走する。
かつてのベティのように。
「……つまり、金も同じだって言いたいのか?」
横目で明日香を見やって問いかける。
その方面に舞奈も特に詳しくはない。
だが、金で身を崩す奴は金を持ちなれない奴だと話に聞いたことはある。
「ええ。少なくとも、複数の魔術結社が同じ見解を持っているわ」
明日香は何食わぬ顔で答えた。
その言葉に、舞奈は思わず口元をへの字に曲げる。
ということは、伊或町の桜やえり子や委員長は絶対にツチノコを見つけられない。
金に苦労しているからという理由で、富を得られるヘビに出会えない。
そう考えるのは面白くない。そう思って、ふと気づき、
「……あ、ちょっと待てよ」
「なによ?」
「今からおまえにまとまった額を借りたら、あたしにもツチノコが寄ってくるのか?」
そうドヤ顔で言ってみた。だが、
「楓さんたちだって、全財産を持ち歩いている訳じゃないでしょ?」
明日香はやれやれ肩をすくめ、子供に言い聞かせるような口調で答えた。
「それに借金はマイナスの財産よ」
言って冷たい視線を向け、
「借金と、増えた現金で差し引きゼロ。おまけに借金は10日で1割づつ増えるのよ」
冷徹な口調で言い放った。
「……当然みたいに十一で貸す算段しやがって」
舞奈がむくれて文句を言うと、
「だいたい貴女は『太賢飯店』に大量のツケがあるなじゃいの」
明日香は情け容赦なく追い打ちをかけてきた。
「少しばかり他所から融資されたって焼け石に水よ」
「うるせぇ」
口をへの字に曲げて足を速める。
そんな舞奈の背中に向かって、
「それに、あの8人を平均すれば、それなりに裕福よ」
明日香は普段と変わらぬ口調で言った。
「まあ、チャビーと園香はそうだが……」
舞奈も何食わぬ顔で相槌を打つ。
内心を見透かされた動揺を悟られぬように。
リコ……というかスミスの店の財政状況はよくわからない。
支部を相手に武器弾薬のブローカーをしてるのなら金に困ることはないだろうが。
「あと委員長もね」
「そうなのか? あそこらへんって金持ちでも住むんだな」
何気に答える。
伊或町の住人が皆、桜やえり子と同じように金に苦労していると考えるのも、ある意味で偏見だなあと、ふと思う。だが、
「そもそも彼女の家、伊或町じゃないわよ。この近くの、けっこう大きなお屋敷」
「どういうことだ?」
またしても明日香は、いつもの口調でやや驚きの事実を告げた。
あるいは単に知識を披露したかっただけなのかもしれない。
「たしか親御さんは流通関係の会社を経営してたはずよ」
「お嬢様だったのか……」
動揺を隠すのを諦め、遠い目をしてひとりごちる。
確かに委員長は、たまに明日香と一緒に学校に来ることもある。
そんな彼女が何故、いつも桜とつるんだり家の手伝いしたりしてるのだろうか?
ここから伊或町を経由して登校するとなると、けっこうな大回りになるはずだ。
委員長、わりと謎の多い人物である。
そんなことを考えながら――
「――気づいたか?」
舞奈は武骨な手袋――ワイヤーショットを左手にはめつつ立ち止まる。
「ええ」
答える明日香の肩には、いつの間にか黒いクロークがかけられている。
かっちりとしたデザインの戦闘クロークの胸元で、金属製の骸骨が鈍く光る。
そんな2人のまわりに空気からにじみ出るように幾つもの人影が出現した。
全員が【偏光隠蔽】、ないし同等の効果を持つ術を使えるらしい。
「……天使か?」
舞奈は口元に笑みを浮かべて問いを発する。
「……ケルト呪術で召喚された妖精にも見えるわね」
明日香もニヤリと笑いつつ答える。
2人を取り囲むようにあらわれたそれは、宙を舞う数多の少女だった。
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