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第12章 GOOD BY FRIENDS
日常2
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「じゃ、鍵はあたしが返してくるよ。ゾマはチャビーを見てやっててくれ」
「わーい! ウサギさんといっぱい遊べるね!」
チャビーはウサギ小屋の金網にへばりついて、ウサギを見ながらニコニコしている。
「マイちゃん、ありがとう」
園香はそんなチャビーを見やって微笑む。
小夜子の豪華な慰安旅行の翌日。
舞奈たち3人は、放課後のウサギ小屋の掃除をやり終えていた。
チャビーは子猫も好きだが、学校のウサギも大好きだ。
だからウサギ小屋の掃除が終わった後は、お待ちかねのウサギと遊ぶタイムだ。
人懐っこいウサギが鼻先を押しつけてくるのを構うのが楽しいらしい。
だから舞奈は鍵束を手に、用務員室を兼ねた警備員室に向かった。
無遠慮にドアを開けて部屋に入る。
「舞奈さん、ウサギ当番おつかれさまです」
事務椅子に腰かけたクレアが紅茶のカップを片手に出迎える。
生徒たちがまばらに下校するこの時間は、警備員たちはわりと暇だ。
「鍵当番をさせられたっすね」
「自発的に引き受けてきたんだよ」
ベティの軽口に、口をへの字に曲げて言い返す。
ここまでは普段と同じだ。そして、
「こんなところで、お前ら何やってるんだ?」
「あら、舞奈さん」
「ウサギ当番は終わったの?」
部屋の奥まった場所に、楓と紅葉に明日香がいた。
明日香と桂木姉妹という組み合わせは珍しい。
「……ああ、舞奈ちゃん」
一拍遅れて紅葉が何かのパンフレットから顔をあげる。
スポーツ少女な彼女のこの反応も妙だ。
いったい何を見ているのかと舞奈がパンフレットを見上げると、
「実は、わたしたち、めでたく銃器携帯/発砲許可証をいただけることになりまして」
楓が説明してくれた。
こちらも同じパンフレットを読んでいたようだ。
公共の往来で【機関】のライセンスの話は如何なものかと、ふと思った。
だがそれより、
「おまえら、実戦経験期間は足りてるのか?」
問いかける。
銃器携帯/発砲許可証は、現行法と抵触する銃器の携帯を【機関】の権威によって無理やりに許可するものだ。
だから取得には厳しい制限が課せられる。
A以上のランク、1年以上の実戦経験、その他諸々の資質だ。
「ええ、仕事人になる以前の活動期間も勘定に入れてくださいまして」
「……2人でヤニ狩りしてたころのか」
そう言われて思い出して、苦笑する。
かつて2人は脂虫連続殺害犯【メメント・モリ】として無軌道に脂虫を狩っていた。
それを問題視した【機関】は、【掃除屋】に調査と対処を依頼した。
その一件が、舞奈たちと桂木姉妹の馴れ初めだ。
「けど急にどういう風の吹き回しだ? 上層部の奴ら」
「【組合】から物言いがついたのよ。紅葉さんを丸腰で戦闘させるなって」
身もふたもない明日香の答えに、
「なるほどな」
納得する。
小夜子に続いてこちらもである。
魔道士と魔法の守護という【組合】の理念を全うするのも楽じゃない。
「はは、面目ない……」
紅葉は言って苦笑する。
実際、これまで紅葉は接近戦を挑んで負傷することが多かった。
それを彼女自身も気にしているのだろう。
どちらにせよ、舞奈も仕事人になってすぐに銃を持てた。
今思えば、ピクシオンだった期間が活動期間に入っていたのだろう。
なので人のことはとやかく言えない。
「で、明日香ちゃんの会社から銃を買って、ついでに管理も任せようと思ったんだ」
「なるほどな。そいつはそのカタログってわけか」
「そういうこと……あっ」
言いつつ舞奈は紅葉の手からカタログをパクり、
「……海外用のカタログじゃないか」
ペラペラめくって顔をしかめる。
解説がすべて英語なのだ。
だが舞奈だって素人じゃない。
写真を見れば何の銃だかはわかる。
数字を見れば、だいたい何を示してるのかくらいはわかる。
それに国内向けのパンフレットなんか作っても銃を売れるはずもないこともわかる。
この国で合法的に銃を――しかも拳銃なんて持てるのは執行機関の公僕と、超法規機関である【機関】の関係者だけだ。それにしても、
「これかこれか、これなんていいと思うのですが、どうでしょう? 特にこちらなど揃いの拳銃と弾丸を共有できるらしいですし」
楓が自分のカタログを見せてくる。
つけられた付箋を見やった舞奈は、
「F2000にP90に……クリスベクターだと? これだからブルジョワ様は」
どれも高価な最新型の銃に、舞奈はやれやれと苦笑し、
「っていうかこの本、高価な銃しか載ってないぞ。トカレフやカラシニコフは、お前ん家じゃ銃とは呼ばないのか?」
言って明日香にジト目を向ける。すると、
「世界中全ての銃を、一社で網羅できるわけないでしょ」
明日香も面白くなさそうに言い返してきた。
「ロシア製は専門外よ。扱いがないか、できても割高になるわ。あと中東のもね」
「そうかい」
気のない返事を返す舞奈を、明日香はちらりと一瞥する。
舞奈の拳銃はイスラエル製。
つまり【安倍総合警備保障】では扱いの難しい品ということになる。
明日香の微妙な視線はひとまず無視し、そんなものかと納得しつつ、
「……あれ? 奈良坂さんがトカレフ撃ってなかったか?」
ふと支部の射撃場での出来事を思い出して、首をかしげる。
「【機関】だって、1社に武器の納入をすべて任せるほど馬鹿じゃないわ。各支部毎に独自のルートもあるし……巣黒支部は個人のブローカーと契約してるはずよ」
「ふぅん」
説明に、再び気のない返事を返す。
だが内心で、舞奈たちや執行人のために武器や弾薬を都合してくれている多くの人たちの苦労を垣間見た気がして、思わず感謝していた。
兵站を維持するのも楽じゃない。
それはいつの時代でも、どこの国でも同じだ。
そんなことを考えていると、
「あ! マイ! 安倍さんもいる」
「みなさん、こんにちは」
チャビーと園香が窓から顔をのぞかせた。
思わず紅葉が慌てる側、舞奈はさり気なくカタログを書類の陰に隠し、
「ウサギとは遊び終わったのか?」
「うん! おいしそうにごはんを食べてた!」
「お、おう。そりゃよかった……」
チャビーの答えに苦笑する。
考えてみれば当然だ。
小屋の掃除が終わった後は、清潔なエサ入れに新鮮なクズ野菜を入れる。
ウサギにだってチャビーと遊ぶより飯を優先したい日もあるだろう。
それを邪魔せず見守ってから帰ってくるあたりがチャビーの可愛げだ。なので、
「よし! じゃあ、あたしらも帰りに何か食ってくか」
「わーい! ……でもわたしもゾマも、学校におこずかい持ってきてないよ?」
「どうせブルジョワの明日香様が、カードかなんか持ってるだろ」
「なに断りもなく他人の財布から奢る算段してるのよ」
文句を言う明日香だが、断るそぶりは見せない。だから、
「それじゃ明日香ちゃん、じっくり考えて答えを出すよ」
「ええ、そうしてください」
紅葉は明日香にそう言って、
「じゃ、行こうか」
舞奈たち4人は、一足先に下校する。
そして『シロネン』でケーキを平らげた。
明日香にとってははした金なのか、意外にもあっさり4人分を支払ってくれた。
その後、3人と別れた舞奈は足早にアパートに帰り、
「なんだ志門! どっか行くのか!?」
「ああ! ちょっとそこまで行ってくる」
「そうか! 怪異が出ないうちに戻って来いよ! 最近、泥人間の痕跡を見つけた!」
「あいよ!」
管理人室の窓から顔を出すハンチング帽に背中で答える。
そのまま廃墟の通りをぶらぶら歩く。
目的は、いちおう旧市街地にあるスミスの店。
先日の一件で撃ちまくった改造拳銃のメンテナンスのためだ。
スミスが設えてくれた改造拳銃は、大口径強化弾の使用や付与魔法との併用を可能とすべく無茶なカスタムをされた特別製だ。
なので一戦ごとにメンテナンスが必要となる。
だが学校に用もなく護身用でもない改造拳銃を持っていくのも気が引ける。
舞奈はうーんとのびをする。
登校時に届けて下校時に様子を見に行こうかとも思った。
だが『画廊・ケリー』は通学路を微妙に外れているので朝に寄るのは面倒くさい。
なにより――
「――久しぶりだな」
のばした左腕に力をこめる。
鋼鉄のような筋肉が軋む。
その広げた掌の先に、空気からにじみ出るように何かが出現した。
手袋をはめた掌で受け止められた、錆の浮いた日本刀。
その刀を振り下ろした格好の、全身タイツの泥人間。
黒い覆面ごしにもわかるほどの驚愕の表情を浮かべている。
「横から襲うことを覚えたのか、こりゃすごい」
舞奈は笑う。
異能力を持つ人型の怪異、泥人間。
中でも比較的、危険度の高いとされる透明化の異能である【偏光隠蔽】。
その奇襲を、ワイヤーショットをはめた左手で受け止めたのだ。
スミスが設えてくれたもうひとつの力、特別製の手袋の内側は、射出したワイヤーにぶら下がるためのメリケンサック状の金具になっている。
それは人ひとりの重量を支えるための、硬くて頑丈な鋼だ。
そして舞奈の直観と身体能力があれば、そいつで攻撃を受け止めるのも造作もない。
舞奈はそのまま日本刀の刃の側面をつまみ、ちょいとひねってへし折る。
泥人間が驚く間もなくハイキック。
腹を蹴られた怪異はくの字に折れ曲がる。
さらに舞奈は拳銃を抜きつつ、覆面の側頭に回し蹴りを見舞う。
怪異はたまらず真横に吹き飛ぶ。
そして見えざる何かに激突する。
そこにあらわれたのも全身タイツ。
別の泥人間が同じ異能で透明化し、舞奈に襲い掛かろうとしていたのだ。
だが舞奈めがけて振り下ろした刃には、代わりに飛んできた同僚が突き刺さった。
刃を引き抜こうとするニンジャを見やって舞奈は拳銃を構え――
――後ろ手に撃つ。2発。
大口径弾が通り過ぎた後の虚空に、2匹の覆面が出現する。
その全身タイツの胸には孔。
撃ち抜かれた2匹のニンジャが溶け落ちる。
襲撃者は4匹いたのだ。
そして驚愕の表情を浮かべながら地面を転がる先ほどの1匹を、ぶつかった1匹とともに狙いすました一撃で仕留める。
2匹の泥人間はそろって溶け落ちた。
4対1の命を懸けた攻防は、いつもと同じように舞奈の圧勝に終わった。
「やれやれ、こいつらもう復活したのか」
拳銃を仕舞って何事もなかったように歩きだしながら、ひとりごちる。
しばらく前、図らずも舞奈たちは新開発区の泥人間を一掃した。
キムと滓田妖一の企みにより集まっていたところを殲滅したのだ。
なので、ここしばらく、新開発区には泥人間が出なかった。
だが舞奈たちが復活する脂虫からあずさを護衛するうちに、奴らも復活したようだ。
人間が変異する怪異も、何もないところから魔力が凝固して生まれる怪異も、厄介で面倒なものは、どれだけ片付けても湧いて出る。
舞奈はやれやれと肩をすくめる。
登下校時に感じた違和感を頼りに、少し遅めの時間に歩いてみて正解だった。
だが幸いにも今日はそれ以上の襲撃もなく、旧市街地にたどり着いた。しかし、
「あれ? いないのか?」
店を前に、舞奈は思わず首をかしげる。
ネオンの『画廊・ケリー』の字が消えかけた看板の下の、店の中には誰もいない。
シャッターは開いているから、休みではないはずだ。
そう考えて、
「裏で何かやってるのか?」
思いついて裏手に回る。すると……
「うわぁっとと」
情けない悲鳴と、銃声。
何かがドラム缶の端を削り、廃ビルのコンクリートを穿つ音。
おそらく小口径弾か。
裏路地に顔を出すと、不安をあおる微妙な射撃フォームの背中が見えた。
見覚えのある戦闘セーラー服と、野暮ったいセミロングの髪は奈良坂だ。
狙っていたのは、店の裏にぽつんと置いてあるドラム缶か。
路地の隅、奈良坂の後で不安そうに見ているのはハゲマッチョのスミス。
そして巨漢の足に隠れたリコ。
舞奈の射撃を見る時と違い、露骨に警戒している。
幼いリコなりに奈良坂の射撃の腕の微妙さを察したのかもしれない。
「……おいおい、リコに当てんでくれよ」
「しもんだ!」
「あ、舞奈さん」
声をかけると、リコと一緒に奈良坂はにへらと振り返った。
セミロングの髪がゆれる。
「そういや、そのトカレフは本物なのか?」
ふと、学校でカタログを見ていて疑問に思ったことを聞いてみる。
先ほど弾丸が出たんだから玩具なわけはないのだが、仏術士である奈良坂は妖術で銃を作り出すことができる。
だが術には【機関】が準備する特別な符が必要なはずだ。
逆に実銃だとしても奈良坂はCランク。銃器携帯/発砲許可証は持てないはずだ。
そんな疑問を抱いた舞奈だが、
「あちしが立ちあってるから大丈夫なのだよ」
「あんた、最近はどこにでもいるなあ……」
物陰からニュットがあらわれた。
「このあたりの魔力濃度も他所と変わらんのだよ。百合は咲かないのだ」
「あら、残念」
「まほうのユリはみれないのかー」
「裏を返せば、怪異が自然発生しないと言うことなのだ。平和で何よりなのだよ」
そのままスミスとリコと雑談する。
(立ちあってたか?)
舞奈は脳裏に浮かんだ疑問を押しやり、
「新開発区の百合か? ……別に異能力を使う以外は普通の百合と変わらんぞ」
しょんぼりしたリコに声をかけてみる。
「そうなのか?」
途端にリコは元気になって、
「じゃあリコもみたことあるぞ! すみっこにはえてて……はっぱがながくてギザギザで、きいろいはなびらがワサワサワサっていっぱいついてた」
「そりゃタンポポだ」
思わず苦笑しながらツッコミをいれる。
そんな舞奈に、
「彼には武器の納入を頼んでいるのだよ。大半は【安倍総合警備保障】から仕入れているのだが、一部メーカーはそうもいかないのでな」
ニュットは説明しつつ、側のスミスを見やった。
巨漢のスミスが珍しく照れる。
よくよく考えてみれば当然だ。
この国で民間人は銃を扱えない。
猟銃くらいならともかく、拳銃やアサルトライフルなど問題外だ。
その例外は超法規組織である【機関】の関係者だけだ。
なのにスミスが舞奈以外に銃を売っているところを見たことがない。
流石にそれでは商売にならないだろう。
だが納入先が【機関】だというのなら納得がいく。
「他にも銃のカスタムも委託しているのだよ」
別に彼女が設えているわけでもないのに誇らしげに、ニュットは言って胸を張る。
「小夜子ちんのグリムイーグルも彼の作なのだ」
「ああ、【霊の鉤爪】を強化するツメが付いてるって奴か」
言われて小夜子が多用している改造銃を思い出し、
「なるほどな……」
ひとりごちる、
彼は銃砲の加工の腕はもちろん、魔力を使わずに魔法を使う手段にも精通している。
もちろん魔法の仕組みにも詳しいのだろう。
彼は術者のために魔法の補佐をするギミックを組み込むこともできる。
無論、魔法とは無縁な人間のために非魔法の銃や魔法の弾丸を造ることもできる。
今までだって、舞奈のために改造拳銃やワイヤーショットを設えてくれた。
まあ確かに、これほどの技術者が同じ界隈に何人もいると考えるのは不自然だ。
たとえ彼が【機関】とは無関係だとしても、節操のないニュットがそんな人材を放っておかないだろう。
そうやってスミスと【機関】の意外な繋がりに気づいたところで、
「そこで鹿ちんの射撃の手ほどきをお願いしようと思ったのだよ」
ニュットは言いつつ奈良坂を見やる。
奈良坂は「エヘヘ」と笑う。
「奈良坂ちゃんは、もうちょっとこう、フォームをこんな感じで」
「あっ、はひ」
スミスは奈良坂のへっぴり腰を矯正していたらしい。
そんな様子を舞奈は見やる。
流石に舞奈ではこれはできない。
単純に背丈が足りないというのもあるが、奈良坂の今のフォームから何かを足し引きして正しいフォームにするのは舞奈には無理だ。
そもそも戦おうとしないで逃げてくれ、としか言えないだろう。
舞奈は最強であること以外は普通の小学5年生なのだ。
コーチングの技量もそれに準ずる。
だが、そんな事実を認めるのは癪なので、
「さすがに人材育成は【機関】の仕事じゃないのか? 何でもスミスに頼らんでくれ」
口をへの字に曲げてみせた。
するとリコが、
「スミスはメシがうまいんだ!」
得意満面な顔でそう言って、
「そうだぞ。スミスは飯を作るのがうまいんだ」
舞奈が尻馬に乗る。
「なるほど、そういえば料理の腕前は聞いていただけで確認したわけではないのだな」
「おいしいですよ~」
ニュットが糸目のまま腕組みして、奈良坂が笑う。
なので、その後、4人はスミスの店でご馳走になっていくことになった。
学校帰りに食ってきたばかりの舞奈だが、ケーキは別腹だ(順番は逆でも可)。
リコもリコで、大きいテーブルに4人で座れると喜んでいた。
「わーい! ウサギさんといっぱい遊べるね!」
チャビーはウサギ小屋の金網にへばりついて、ウサギを見ながらニコニコしている。
「マイちゃん、ありがとう」
園香はそんなチャビーを見やって微笑む。
小夜子の豪華な慰安旅行の翌日。
舞奈たち3人は、放課後のウサギ小屋の掃除をやり終えていた。
チャビーは子猫も好きだが、学校のウサギも大好きだ。
だからウサギ小屋の掃除が終わった後は、お待ちかねのウサギと遊ぶタイムだ。
人懐っこいウサギが鼻先を押しつけてくるのを構うのが楽しいらしい。
だから舞奈は鍵束を手に、用務員室を兼ねた警備員室に向かった。
無遠慮にドアを開けて部屋に入る。
「舞奈さん、ウサギ当番おつかれさまです」
事務椅子に腰かけたクレアが紅茶のカップを片手に出迎える。
生徒たちがまばらに下校するこの時間は、警備員たちはわりと暇だ。
「鍵当番をさせられたっすね」
「自発的に引き受けてきたんだよ」
ベティの軽口に、口をへの字に曲げて言い返す。
ここまでは普段と同じだ。そして、
「こんなところで、お前ら何やってるんだ?」
「あら、舞奈さん」
「ウサギ当番は終わったの?」
部屋の奥まった場所に、楓と紅葉に明日香がいた。
明日香と桂木姉妹という組み合わせは珍しい。
「……ああ、舞奈ちゃん」
一拍遅れて紅葉が何かのパンフレットから顔をあげる。
スポーツ少女な彼女のこの反応も妙だ。
いったい何を見ているのかと舞奈がパンフレットを見上げると、
「実は、わたしたち、めでたく銃器携帯/発砲許可証をいただけることになりまして」
楓が説明してくれた。
こちらも同じパンフレットを読んでいたようだ。
公共の往来で【機関】のライセンスの話は如何なものかと、ふと思った。
だがそれより、
「おまえら、実戦経験期間は足りてるのか?」
問いかける。
銃器携帯/発砲許可証は、現行法と抵触する銃器の携帯を【機関】の権威によって無理やりに許可するものだ。
だから取得には厳しい制限が課せられる。
A以上のランク、1年以上の実戦経験、その他諸々の資質だ。
「ええ、仕事人になる以前の活動期間も勘定に入れてくださいまして」
「……2人でヤニ狩りしてたころのか」
そう言われて思い出して、苦笑する。
かつて2人は脂虫連続殺害犯【メメント・モリ】として無軌道に脂虫を狩っていた。
それを問題視した【機関】は、【掃除屋】に調査と対処を依頼した。
その一件が、舞奈たちと桂木姉妹の馴れ初めだ。
「けど急にどういう風の吹き回しだ? 上層部の奴ら」
「【組合】から物言いがついたのよ。紅葉さんを丸腰で戦闘させるなって」
身もふたもない明日香の答えに、
「なるほどな」
納得する。
小夜子に続いてこちらもである。
魔道士と魔法の守護という【組合】の理念を全うするのも楽じゃない。
「はは、面目ない……」
紅葉は言って苦笑する。
実際、これまで紅葉は接近戦を挑んで負傷することが多かった。
それを彼女自身も気にしているのだろう。
どちらにせよ、舞奈も仕事人になってすぐに銃を持てた。
今思えば、ピクシオンだった期間が活動期間に入っていたのだろう。
なので人のことはとやかく言えない。
「で、明日香ちゃんの会社から銃を買って、ついでに管理も任せようと思ったんだ」
「なるほどな。そいつはそのカタログってわけか」
「そういうこと……あっ」
言いつつ舞奈は紅葉の手からカタログをパクり、
「……海外用のカタログじゃないか」
ペラペラめくって顔をしかめる。
解説がすべて英語なのだ。
だが舞奈だって素人じゃない。
写真を見れば何の銃だかはわかる。
数字を見れば、だいたい何を示してるのかくらいはわかる。
それに国内向けのパンフレットなんか作っても銃を売れるはずもないこともわかる。
この国で合法的に銃を――しかも拳銃なんて持てるのは執行機関の公僕と、超法規機関である【機関】の関係者だけだ。それにしても、
「これかこれか、これなんていいと思うのですが、どうでしょう? 特にこちらなど揃いの拳銃と弾丸を共有できるらしいですし」
楓が自分のカタログを見せてくる。
つけられた付箋を見やった舞奈は、
「F2000にP90に……クリスベクターだと? これだからブルジョワ様は」
どれも高価な最新型の銃に、舞奈はやれやれと苦笑し、
「っていうかこの本、高価な銃しか載ってないぞ。トカレフやカラシニコフは、お前ん家じゃ銃とは呼ばないのか?」
言って明日香にジト目を向ける。すると、
「世界中全ての銃を、一社で網羅できるわけないでしょ」
明日香も面白くなさそうに言い返してきた。
「ロシア製は専門外よ。扱いがないか、できても割高になるわ。あと中東のもね」
「そうかい」
気のない返事を返す舞奈を、明日香はちらりと一瞥する。
舞奈の拳銃はイスラエル製。
つまり【安倍総合警備保障】では扱いの難しい品ということになる。
明日香の微妙な視線はひとまず無視し、そんなものかと納得しつつ、
「……あれ? 奈良坂さんがトカレフ撃ってなかったか?」
ふと支部の射撃場での出来事を思い出して、首をかしげる。
「【機関】だって、1社に武器の納入をすべて任せるほど馬鹿じゃないわ。各支部毎に独自のルートもあるし……巣黒支部は個人のブローカーと契約してるはずよ」
「ふぅん」
説明に、再び気のない返事を返す。
だが内心で、舞奈たちや執行人のために武器や弾薬を都合してくれている多くの人たちの苦労を垣間見た気がして、思わず感謝していた。
兵站を維持するのも楽じゃない。
それはいつの時代でも、どこの国でも同じだ。
そんなことを考えていると、
「あ! マイ! 安倍さんもいる」
「みなさん、こんにちは」
チャビーと園香が窓から顔をのぞかせた。
思わず紅葉が慌てる側、舞奈はさり気なくカタログを書類の陰に隠し、
「ウサギとは遊び終わったのか?」
「うん! おいしそうにごはんを食べてた!」
「お、おう。そりゃよかった……」
チャビーの答えに苦笑する。
考えてみれば当然だ。
小屋の掃除が終わった後は、清潔なエサ入れに新鮮なクズ野菜を入れる。
ウサギにだってチャビーと遊ぶより飯を優先したい日もあるだろう。
それを邪魔せず見守ってから帰ってくるあたりがチャビーの可愛げだ。なので、
「よし! じゃあ、あたしらも帰りに何か食ってくか」
「わーい! ……でもわたしもゾマも、学校におこずかい持ってきてないよ?」
「どうせブルジョワの明日香様が、カードかなんか持ってるだろ」
「なに断りもなく他人の財布から奢る算段してるのよ」
文句を言う明日香だが、断るそぶりは見せない。だから、
「それじゃ明日香ちゃん、じっくり考えて答えを出すよ」
「ええ、そうしてください」
紅葉は明日香にそう言って、
「じゃ、行こうか」
舞奈たち4人は、一足先に下校する。
そして『シロネン』でケーキを平らげた。
明日香にとってははした金なのか、意外にもあっさり4人分を支払ってくれた。
その後、3人と別れた舞奈は足早にアパートに帰り、
「なんだ志門! どっか行くのか!?」
「ああ! ちょっとそこまで行ってくる」
「そうか! 怪異が出ないうちに戻って来いよ! 最近、泥人間の痕跡を見つけた!」
「あいよ!」
管理人室の窓から顔を出すハンチング帽に背中で答える。
そのまま廃墟の通りをぶらぶら歩く。
目的は、いちおう旧市街地にあるスミスの店。
先日の一件で撃ちまくった改造拳銃のメンテナンスのためだ。
スミスが設えてくれた改造拳銃は、大口径強化弾の使用や付与魔法との併用を可能とすべく無茶なカスタムをされた特別製だ。
なので一戦ごとにメンテナンスが必要となる。
だが学校に用もなく護身用でもない改造拳銃を持っていくのも気が引ける。
舞奈はうーんとのびをする。
登校時に届けて下校時に様子を見に行こうかとも思った。
だが『画廊・ケリー』は通学路を微妙に外れているので朝に寄るのは面倒くさい。
なにより――
「――久しぶりだな」
のばした左腕に力をこめる。
鋼鉄のような筋肉が軋む。
その広げた掌の先に、空気からにじみ出るように何かが出現した。
手袋をはめた掌で受け止められた、錆の浮いた日本刀。
その刀を振り下ろした格好の、全身タイツの泥人間。
黒い覆面ごしにもわかるほどの驚愕の表情を浮かべている。
「横から襲うことを覚えたのか、こりゃすごい」
舞奈は笑う。
異能力を持つ人型の怪異、泥人間。
中でも比較的、危険度の高いとされる透明化の異能である【偏光隠蔽】。
その奇襲を、ワイヤーショットをはめた左手で受け止めたのだ。
スミスが設えてくれたもうひとつの力、特別製の手袋の内側は、射出したワイヤーにぶら下がるためのメリケンサック状の金具になっている。
それは人ひとりの重量を支えるための、硬くて頑丈な鋼だ。
そして舞奈の直観と身体能力があれば、そいつで攻撃を受け止めるのも造作もない。
舞奈はそのまま日本刀の刃の側面をつまみ、ちょいとひねってへし折る。
泥人間が驚く間もなくハイキック。
腹を蹴られた怪異はくの字に折れ曲がる。
さらに舞奈は拳銃を抜きつつ、覆面の側頭に回し蹴りを見舞う。
怪異はたまらず真横に吹き飛ぶ。
そして見えざる何かに激突する。
そこにあらわれたのも全身タイツ。
別の泥人間が同じ異能で透明化し、舞奈に襲い掛かろうとしていたのだ。
だが舞奈めがけて振り下ろした刃には、代わりに飛んできた同僚が突き刺さった。
刃を引き抜こうとするニンジャを見やって舞奈は拳銃を構え――
――後ろ手に撃つ。2発。
大口径弾が通り過ぎた後の虚空に、2匹の覆面が出現する。
その全身タイツの胸には孔。
撃ち抜かれた2匹のニンジャが溶け落ちる。
襲撃者は4匹いたのだ。
そして驚愕の表情を浮かべながら地面を転がる先ほどの1匹を、ぶつかった1匹とともに狙いすました一撃で仕留める。
2匹の泥人間はそろって溶け落ちた。
4対1の命を懸けた攻防は、いつもと同じように舞奈の圧勝に終わった。
「やれやれ、こいつらもう復活したのか」
拳銃を仕舞って何事もなかったように歩きだしながら、ひとりごちる。
しばらく前、図らずも舞奈たちは新開発区の泥人間を一掃した。
キムと滓田妖一の企みにより集まっていたところを殲滅したのだ。
なので、ここしばらく、新開発区には泥人間が出なかった。
だが舞奈たちが復活する脂虫からあずさを護衛するうちに、奴らも復活したようだ。
人間が変異する怪異も、何もないところから魔力が凝固して生まれる怪異も、厄介で面倒なものは、どれだけ片付けても湧いて出る。
舞奈はやれやれと肩をすくめる。
登下校時に感じた違和感を頼りに、少し遅めの時間に歩いてみて正解だった。
だが幸いにも今日はそれ以上の襲撃もなく、旧市街地にたどり着いた。しかし、
「あれ? いないのか?」
店を前に、舞奈は思わず首をかしげる。
ネオンの『画廊・ケリー』の字が消えかけた看板の下の、店の中には誰もいない。
シャッターは開いているから、休みではないはずだ。
そう考えて、
「裏で何かやってるのか?」
思いついて裏手に回る。すると……
「うわぁっとと」
情けない悲鳴と、銃声。
何かがドラム缶の端を削り、廃ビルのコンクリートを穿つ音。
おそらく小口径弾か。
裏路地に顔を出すと、不安をあおる微妙な射撃フォームの背中が見えた。
見覚えのある戦闘セーラー服と、野暮ったいセミロングの髪は奈良坂だ。
狙っていたのは、店の裏にぽつんと置いてあるドラム缶か。
路地の隅、奈良坂の後で不安そうに見ているのはハゲマッチョのスミス。
そして巨漢の足に隠れたリコ。
舞奈の射撃を見る時と違い、露骨に警戒している。
幼いリコなりに奈良坂の射撃の腕の微妙さを察したのかもしれない。
「……おいおい、リコに当てんでくれよ」
「しもんだ!」
「あ、舞奈さん」
声をかけると、リコと一緒に奈良坂はにへらと振り返った。
セミロングの髪がゆれる。
「そういや、そのトカレフは本物なのか?」
ふと、学校でカタログを見ていて疑問に思ったことを聞いてみる。
先ほど弾丸が出たんだから玩具なわけはないのだが、仏術士である奈良坂は妖術で銃を作り出すことができる。
だが術には【機関】が準備する特別な符が必要なはずだ。
逆に実銃だとしても奈良坂はCランク。銃器携帯/発砲許可証は持てないはずだ。
そんな疑問を抱いた舞奈だが、
「あちしが立ちあってるから大丈夫なのだよ」
「あんた、最近はどこにでもいるなあ……」
物陰からニュットがあらわれた。
「このあたりの魔力濃度も他所と変わらんのだよ。百合は咲かないのだ」
「あら、残念」
「まほうのユリはみれないのかー」
「裏を返せば、怪異が自然発生しないと言うことなのだ。平和で何よりなのだよ」
そのままスミスとリコと雑談する。
(立ちあってたか?)
舞奈は脳裏に浮かんだ疑問を押しやり、
「新開発区の百合か? ……別に異能力を使う以外は普通の百合と変わらんぞ」
しょんぼりしたリコに声をかけてみる。
「そうなのか?」
途端にリコは元気になって、
「じゃあリコもみたことあるぞ! すみっこにはえてて……はっぱがながくてギザギザで、きいろいはなびらがワサワサワサっていっぱいついてた」
「そりゃタンポポだ」
思わず苦笑しながらツッコミをいれる。
そんな舞奈に、
「彼には武器の納入を頼んでいるのだよ。大半は【安倍総合警備保障】から仕入れているのだが、一部メーカーはそうもいかないのでな」
ニュットは説明しつつ、側のスミスを見やった。
巨漢のスミスが珍しく照れる。
よくよく考えてみれば当然だ。
この国で民間人は銃を扱えない。
猟銃くらいならともかく、拳銃やアサルトライフルなど問題外だ。
その例外は超法規組織である【機関】の関係者だけだ。
なのにスミスが舞奈以外に銃を売っているところを見たことがない。
流石にそれでは商売にならないだろう。
だが納入先が【機関】だというのなら納得がいく。
「他にも銃のカスタムも委託しているのだよ」
別に彼女が設えているわけでもないのに誇らしげに、ニュットは言って胸を張る。
「小夜子ちんのグリムイーグルも彼の作なのだ」
「ああ、【霊の鉤爪】を強化するツメが付いてるって奴か」
言われて小夜子が多用している改造銃を思い出し、
「なるほどな……」
ひとりごちる、
彼は銃砲の加工の腕はもちろん、魔力を使わずに魔法を使う手段にも精通している。
もちろん魔法の仕組みにも詳しいのだろう。
彼は術者のために魔法の補佐をするギミックを組み込むこともできる。
無論、魔法とは無縁な人間のために非魔法の銃や魔法の弾丸を造ることもできる。
今までだって、舞奈のために改造拳銃やワイヤーショットを設えてくれた。
まあ確かに、これほどの技術者が同じ界隈に何人もいると考えるのは不自然だ。
たとえ彼が【機関】とは無関係だとしても、節操のないニュットがそんな人材を放っておかないだろう。
そうやってスミスと【機関】の意外な繋がりに気づいたところで、
「そこで鹿ちんの射撃の手ほどきをお願いしようと思ったのだよ」
ニュットは言いつつ奈良坂を見やる。
奈良坂は「エヘヘ」と笑う。
「奈良坂ちゃんは、もうちょっとこう、フォームをこんな感じで」
「あっ、はひ」
スミスは奈良坂のへっぴり腰を矯正していたらしい。
そんな様子を舞奈は見やる。
流石に舞奈ではこれはできない。
単純に背丈が足りないというのもあるが、奈良坂の今のフォームから何かを足し引きして正しいフォームにするのは舞奈には無理だ。
そもそも戦おうとしないで逃げてくれ、としか言えないだろう。
舞奈は最強であること以外は普通の小学5年生なのだ。
コーチングの技量もそれに準ずる。
だが、そんな事実を認めるのは癪なので、
「さすがに人材育成は【機関】の仕事じゃないのか? 何でもスミスに頼らんでくれ」
口をへの字に曲げてみせた。
するとリコが、
「スミスはメシがうまいんだ!」
得意満面な顔でそう言って、
「そうだぞ。スミスは飯を作るのがうまいんだ」
舞奈が尻馬に乗る。
「なるほど、そういえば料理の腕前は聞いていただけで確認したわけではないのだな」
「おいしいですよ~」
ニュットが糸目のまま腕組みして、奈良坂が笑う。
なので、その後、4人はスミスの店でご馳走になっていくことになった。
学校帰りに食ってきたばかりの舞奈だが、ケーキは別腹だ(順番は逆でも可)。
リコもリコで、大きいテーブルに4人で座れると喜んでいた。
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