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第11章 HAPPY HAPPY FAIRY DAY
襲撃1 ~陰陽術vs宝貝
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時は少し遡る。
「いやー歩いた歩いた」
うららかな放課後の公園で、梓は言ってニコニコ笑う。
三つ編みおさげと大きな胸が、歩みに合わせてゆらゆら揺れる。
そんなお胸を思わず見上げながら、
「ほんとうに歩いただけではないか。選り好みしおってからに」
幾分低い視点から鷹乃が愚痴る。
鷹乃たちは梓の買い物につき合う最中、休憩がてら公園を訪れたのだ。
「まーまー鷹乃っち、こういうものは本人が納得できるかどうかが大事なのだよ」
さらに隣の長身巨乳が、したり顔でそう言った。
支倉美穂。
2人の友人だ。
背丈は梓と同程度。もちろん胸も。
だが痩身巨乳の梓より、美穂は少しぽっちゃりした愛嬌のある顔立ちをしている。
そして軽い遠視程度でほぼ伊達眼鏡に近い梓と違い、ガチで遠視な美穂の眼鏡は度も強く、かけると目が小さくなって綺麗というより愛嬌のある見た目になる。
なので梓と同じくらいの長身にも関わらず、美穂はツインテールがよく似合う。
小6にしては身長のある梓と美帆に挟まれると、低学年に見紛うばかりの鷹乃は親同士の寄り合いに連れてこられた子供のように見える。
そんな周囲からの目を知ってか知らずか、
「それにしても限度というものが……」
鷹乃はぶつくさ文句を言う。
そのポケットから覗く符は【孔雀・護身符】。
仏術の【孔雀経法】と同様に奇襲を察知する効用を持つ。
そんなものを所持しているのは、先日に明日香から警告を受けていたからだ。
曰く、張梓が何者かに狙われていると。
だが符ばかりに頼っておれぬと不機嫌そうに周囲をぬめつける。
その両手が――
「――ぬおっ!?」
不意に2人に持ち上げられた。
長身の2人にそうされると、ちっちゃな鷹乃は足がつかずにブランコ状態だ。
それを公共の往来でされるのだから、たまったものではない。
「ええい、やめんかー」
鷹乃は焦る。
「我等が持ち運んでしんぜようー」
「そっかー鷹乃ちゃん、ちっちゃいのにたくさん歩いてお疲れだもんだねー」
「こんなんじゃ余計に疲れるわー」
子供みたいに足をじたばたさせ――
「――!!」
渾身の力で梓を蹴りつつ、小さな身体をのばして美帆を突き飛ばす。
瞬間、先程まで美帆がいた場所――鷹乃の身体を重い何かが両断した。
「……え?」
突き飛ばされながら、梓は目を見開く。
一瞬前まで自分たちがいた場所。
そこにいる鷹乃めがけて、大柄な何者かが凶器を振り下ろしていた。
正確には、襲撃者に気づいた鷹乃が2人をかばって突き飛ばしたのだ。
「鷹乃っち……?」
美帆もまた、尻餅をつきながら目前の惨状を見やる。
鷹乃は自分たちの代わりに、突然の凶行の犠牲に――
「――危ういところじゃったわ」
犠牲になど、なっていはいなかった。
凶器をまともにくらったはずの鷹乃は無傷。
その側で引き裂かれた、10枚の符が塵と化して消える。
即ち【布瑠之言】。
布留御魂大神の御名を借りて因果律を操り、負傷や疾病をなかったことにする術だ。
正確には、それらを十種神宝を模した10枚の符に肩代わりさせる。
その効果は絶大で、瀕死の重傷すら回復させることができる。
だが負傷してから時間が経つにつれ、負傷という因果が対象と強く結びつくために成功率が著しく低下するという欠点を持つ。
そんな大魔法を、鷹乃は符を用いて一瞬で発動させたのだ。
傷つくと同時に施術された大魔法は負傷と同時に術者を癒す。
それは負傷を回避したのと同義だ。
「鷹乃ちゃん!?」
「鷹乃っち? 鷹乃っち!?」
梓と美帆は混乱して叫ぶ。
だが襲撃者は再び3人に襲いかかる。
鷹乃は矢継ぎ早に符を投ずる。
放たれた4枚の符は金属の塊となり、襲撃者を阻む。
即ち【大陰・鉄楯法】
得物を弾かれた襲撃者が跳び退る隙に、さらに手早く符を投ず。
こちらは【吉祥天・誘眠符】。
それにより梓と美帆は眠りに落ちる。
鷹乃は崩れ落ちる2人の身体を支え、ゆっくりと地面に下ろす。
襲撃者も対象にしたのだが……こちらには効かなかったようだ。
鷹乃は新たな符を取り出しながら敵を見やる。
幸い、相手はひとりのようだ。
豚のように醜く肥え太った、くわえ煙草の男だ。
金属の盾に弾かれたのだろう、ひとふりの手斧が地面に刺さる。
先ほどの斬撃の正体はそれだ。
「貴様、何奴じゃ!」
詰問しながら、鷹乃は素早く符の束を放つ。
符はひとりでにたたまれ折り鶴になって8方に飛ぶ。
途端、世界が様変わりする。
公園から人の気配が消え、現実味を欠いた幽玄と化す。
木々や遊具の向うからは白虎、玄武、青龍、朱雀――五行の象徴が顔を覗かせる。
天地には輝く晴明桔梗紋が浮かび上がる。
即ち【四角四堺】。
範囲内の空間を周囲から遮断する戦術結界の魔術である。
そんな閉ざされた空間の中にいるのは鷹乃と友人、そして襲撃者である豚男。
これで魔法戦で周囲を害することも、余人に魔術を見られる危険もない。
友人2人を閉め出さなかったのは、伏兵を警戒したからだ。
「邪魔をするナ! こレは俺たちファンの警告を無視したあずさへの天誅なんダ!!」
豚男は見た目通りの愚鈍そうな口調で叫ぶ。
血走った双眸で鷹乃をぬめつけながら、カラテを構える。
その手には新たな凶器。
一見すると短い棒に見える。
鷹乃は目前の豚男を睨む。
奴は双葉あずさを害するつもりと言い放った。
だが実際に刃を振り下ろした相手は美穂だ。
占術に対する対策だろうか?
張梓の父親である張金龍は、元執行人の道士だと聞く。
娘に対する襲撃より、娘の友人の襲撃に巻きこまれる事故は予見しづらい。
だが、そうすると相手には占術への備えができる知識があることになる。
目前の豚の、赤子がそのまま大人になったような表情の乏しさ、ぽってりと気味悪く膨れあがった四肢。そんな学も職もなさそうな容姿からは、それは考えずらい。だが、
「退かぬと言ったら?」
鷹乃も油断なく符を構え、周囲に4枚の金属盾を従えて豚男を睨みつける。
相手の正体を詮索するのは後でいい。
奴が何者であれ、美穂と梓を守るためには倒さなければならぬ。
「貴様カらぶっ殺ス!!」
豚は下唇に癒着した煙草を揺らして叫ぶ。
「よう言うた!」
鷹乃も応じる。
同時に金属盾のひとつが溶け、無数の水の矢と化して男を襲う。
即ち【玄武・征矢雨法】。
鋭利に尖った無数の矢が、豚男の全身をズタズタに切り裂き、穿ち、吹き飛ばす。
鷹乃にとって、敵が煙草を吸っている利点は2つ。
ひとつは焦げた糞尿のような悪臭によって襲撃を察知できたこと。
もうひとつは、相手が喫煙者であれば躊躇なく殺すことができること。
悪臭と犯罪をまき散らす喫煙者は、脂虫と呼ばれる怪異だ。
人そっくりだが、人間ではないのだ。
だから八つ裂きにしようが焼き払おうが良心は痛まない。
喫煙者の殺害に倫理的に問題はないし、法的な問題は【機関】が片づけてくれる。
鷹乃は次なる符を取り出しながら、足元に倒れる2人の友を意識する。
何の前触れもなく美穂を襲った不埒者に情けなど無用。
動機など2人の友の安全を確保してから探知魔法で探ればいい。
普段の戦闘で多用している式神に比べて鷹乃本人の接近戦能力は低い。
純粋な体力では梓や美帆にすら劣る。
だが鷹乃の、陰陽師としての技量は本物だ。
不埒な脂虫の1匹程度、ひねり潰すのは造作ない。
止めを刺そうと豚男を見やる。だが、
「何と……!?」
驚愕する鷹乃の目前で、豚男はゆっくりと立ち上がった。
しかも無数の水矢に穿たれたはずの傷は、完全に癒えている。
「むむ、その得物」
豚男の手には、いつの間にか槍が握られていた。
くすんだ色の頭蓋骨と、不吉な色の長い毛で装飾された不気味な長槍。
先ほどの棒が伸びたのだ。
「なるほど普通の槍ではないようじゃな」
新たな符を構えつつ、足元の友人をかばうように低く構える。そして、
「よもや魔道具……否、宝貝か!?」
豚男が手にした槍の正体を見破る。
怪異の魔力を焼きつけられた、いわば悪の魔道具。
鷹乃がその名を告げると同時に、豚男は再び鷹乃めがけて飛びかかる。
その跳躍は常人の身体能力をはるかに超える。
宝貝に焼きつけられた怪異の魔力で強化されているのだろう。
対して鷹乃は符を投ずる。
符は無数の木の矢と化して男を襲う。
即ち【青龍・征矢雨法】。
水の矢より速く鋭い硬木の矢が、豚男めがけて雨あられと降り注ぐ。
肥え太った豚の醜い身体を切り裂き、穿ち、削り取る。
だが次の瞬間、その身体が不気味な音を立てながら癒え始める。
裂かれ、穿たれ、削られた傷跡に、飛び散った肉片が這い集まる。
そし醜い豚のような身体を再生する。
頭蓋と毛で装飾された、不吉な槍の穂先がギラリと光る。
こちらが宝貝の本来の能力か。
そして醜い四肢を再生させた豚男は、仕返しとばかりに槍を構えて突き進む。
戦闘に不慣れな鷹乃が反応する間もなく、豚は鷹乃に接敵する。
そして盾の合間を縫って、するどい突き。
「……!?」
だが鋭い槍の穂先は鷹乃に届かない。
即ち【身固め】。
因果律を歪める【式神の召喚】の応用で、術者の周囲の空間を湾曲させて防御する。
神術の【護身神法】と似た術だ。
本来ならば対象は術者のみ。
だが手練れの陰陽師である鷹乃は、その範囲を術者の至近距離にいる数人を含めるくらいにまでなら広げることができる。
なので動かずして友人たちを守ることができる。
反面、鷹乃自身も動くことはできない。
トーチカのようにこの場に留まり友人たちを守りつつ、襲撃者を倒さねばならない。
だが陰陽術に手慣れた鷹乃が、宝貝を手にした程度の暴徒に臆する理由はない。
口訣とともに、先ほどの木矢のすべてが火の玉と化す。
即ち【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
無数の火球が豚男めがけて一斉に飛来し、次々と爆発する。
「……やったかの?」
だが爆炎が止んだ後、豚男はそこに立っていた。
焼けただれた皮膚が不気味な音をたてて蠢き、癒える。
ふと気づくと、男の頭の前頭葉のあたりから触角が生えていた。
蛾のような1対の触角だ。
狂った豚のように醜悪な顔に、虫の触角を生やした最悪の容貌。
その無様を見やり、
「その宝貝……方天画戟か!」
鷹乃は驚愕のあまり目を見開く。
ひとりごちたのは、使用者の身体組織を昆虫のそれに近づけることにより耐久力と再生能力を付与する宝貝の名だ。
その災禍の力に魅入られた者は、徐々に人間であることを捨てさせられていく。
喫煙によって人間であることを辞めた脂虫は、槍に人の姿すら奪われるのだ。
だが、その代償として得られる耐久力と再生能力は、魔獣に匹敵する。
「俺ハ死なないゼ! あずさに俺の……ファンの怒りを思い知らせてやるまではナ!!」
「ええい! 手前勝手な世迷い事を!」
豚男の叫びに言い返しながら口訣。
数手前の攻防で放った【玄武・征矢雨法】。
その水の矢が地に落ちた幾つもの水たまりから、今度は蔓草が一斉にのびる。
「何ッ!?」
豚男は槍を振り回して蔓の何本かを切る。
だが残る数多の蔓が男の足に絡みつき、ぶよぶよと肥えた腕に得物に絡みつく。
即ち【青龍・枝鎖法】。
「くそっ! 何ダこいつハ!? 離セ!! 離しやがレ!!」
「誰が離すか! 痴れ者め!」
蔓に身動きを封じられた豚男は、抜け出そうと身をよじる。
「俺ハあずさに忠告したんダ! 子供向けのちゃちな歌ハ俺のあずさに似合わないってナ!! もっと激しくセクシーな曲で俺の股間を熱くさせてくれってナ!! 手紙だって送っタ! SNSでも伝えタ! でも、あずさは俺の魂の叫びを無視しタ!!」
豚男は耳障りな声で、吠えるように叫ぶ。
叫びながら、皮膚がこすれてヤニ色の体液がにじむのも構わず狂ったようにもがく。
鷹乃は、そんな男を黙して睨む。
「俺ハあずさのファンなんダ! 愛してるんダ! ファンレターだって送っタ! プレゼントだって何度も送っタ! なのに何であずさは俺の想いに従わないんダ!!」
「……下らぬ」
鷹乃は男を見下すように睥睨する。
低学年と見紛う自分の、倍ほど大きい豚男を。
明らかに美帆を手にかける意図で襲撃した豚に、報いを与えるのが道理だと思った。
だが、その凶行に至った思いを聞いて、鷹乃は考えを改めた。
この胸糞の悪い下郎が、梓や美帆と同じ空気を吸っていると思うだけで我慢ならぬ。
心ある善なる人々は、脂虫を憎み嫌悪する。
同様に、鷹乃は目の前の男を憎悪した。
そして思った。
友人たちの憂いを払拭するべく、この外道を塵も残さずこの世から消し去ろうと。
その為の一手を熟考する。
陰陽術には、多数の符を砲弾にして一斉に放ついくつかの術が存在する。
ハニエルとの共同戦線で泥人間の群を薙ぎ払った水刃【天后・玄武・刃嵐法】。
あるいは大木の杭を無数に放つ【六合・青龍・亂杭法】。
先ほど男を焼き尽くした大爆発【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
岩石の刃を嵐の如く叩きつける【大裳・勾陣・刃嵐法】。
ミノタウロスの結界を破壊した鋼鉄の刃【大陰・白虎・刃嵐法】。
否、それでは足らぬ。
現に先ほどの【騰蛇・朱雀・焔嵐法】は、男を屠るには至らなかった。
ならば必殺の大魔法か。
陰陽術には、相手の耐久性能を無視して破壊する術すら存在する。
本来は仏術である空間湾曲による大魔法の砲撃【大元帥法】。
あるいは魔力の源たる意思と精神を破壊する【大威徳・調伏護摩法】。
逆に感情を暴発させ自滅させる【愛染・一夜護摩法】。
更には泰山府君を奉ずる五行それぞれによる戦略魔術砲撃。
正直なところ、それらを行使するには許可がいる。
言うなれば【機関】のSランクと同じ、個人に委ねるには危険すぎる力だからだ。
人の世に害を及ぼさぬよう結界内とはいえ、勝手に使ったと知れたら始末書だ。
だが構わぬ。
そう考えて豚男を見やる。
醜い男があずさを見ていたのと同じ目で、男自身を見て笑う。
だが、それが鷹乃の命取りになった。
集中を要する魔道士が、観察と反応を要する戦闘の最中に思考の海に沈んだ。
それは鷹乃が実戦に不慣れゆえの失態だった。
「アアアアァァァァァァァァ!!」
「何……!?」
豚男は力まかせに蔓を引き千切る。
蔓を維持するべく集中を、先ほどまでの鷹乃は欠いていた。
それに方天画戟は人の精神と肉体を虫へと近づける。
だから痛みも恐怖も感じないことによる限界以上の馬鹿力によって、無理矢理に拘束から逃れたのだ。
鷹乃が驚愕する間に、豚男は一瞬で距離を詰める。
「しまっ……!?」
目を見開く鷹乃の目前で、槍を大きく振りかぶる。
渾身の斬撃で【身固め】の障壁を破壊する。
注連縄のような物理的な依代を持たぬこの術は、術者の意思の力だけで存在する。
だから気を緩めれば、あっけなく破壊される。
「死ネ! 貴様を殺しテ、あずさも殺ス!!」
豚男は叫ぶ。
だが防御魔法を無理やりに破壊された衝撃で、鷹乃はとっさに動けない。
その隙を逃さず男は鷹乃の喉元めがけて槍を突き出し――
――顔面から血を吹いて吹き飛んだ。
同時に聞き覚えのある銃声を聞いたような気がした。
「――間一髪、間に合ったようですね」
鷹乃の背後から左脇を通り、鷹乃の前に歩み出た全裸ストッキングの尻。そして、
「やれやれ45口径を撃ちこんだってのに、ふっとぶだけかよ」
右脇を通って、鷹乃を庇うように歩み出たピンク色のジャケット。
油断なく構えた拳銃からは硝煙が立ち昇る。
そして小柄だが、頼もしい背中――
――それは志門舞奈の後姿だった。
「いやー歩いた歩いた」
うららかな放課後の公園で、梓は言ってニコニコ笑う。
三つ編みおさげと大きな胸が、歩みに合わせてゆらゆら揺れる。
そんなお胸を思わず見上げながら、
「ほんとうに歩いただけではないか。選り好みしおってからに」
幾分低い視点から鷹乃が愚痴る。
鷹乃たちは梓の買い物につき合う最中、休憩がてら公園を訪れたのだ。
「まーまー鷹乃っち、こういうものは本人が納得できるかどうかが大事なのだよ」
さらに隣の長身巨乳が、したり顔でそう言った。
支倉美穂。
2人の友人だ。
背丈は梓と同程度。もちろん胸も。
だが痩身巨乳の梓より、美穂は少しぽっちゃりした愛嬌のある顔立ちをしている。
そして軽い遠視程度でほぼ伊達眼鏡に近い梓と違い、ガチで遠視な美穂の眼鏡は度も強く、かけると目が小さくなって綺麗というより愛嬌のある見た目になる。
なので梓と同じくらいの長身にも関わらず、美穂はツインテールがよく似合う。
小6にしては身長のある梓と美帆に挟まれると、低学年に見紛うばかりの鷹乃は親同士の寄り合いに連れてこられた子供のように見える。
そんな周囲からの目を知ってか知らずか、
「それにしても限度というものが……」
鷹乃はぶつくさ文句を言う。
そのポケットから覗く符は【孔雀・護身符】。
仏術の【孔雀経法】と同様に奇襲を察知する効用を持つ。
そんなものを所持しているのは、先日に明日香から警告を受けていたからだ。
曰く、張梓が何者かに狙われていると。
だが符ばかりに頼っておれぬと不機嫌そうに周囲をぬめつける。
その両手が――
「――ぬおっ!?」
不意に2人に持ち上げられた。
長身の2人にそうされると、ちっちゃな鷹乃は足がつかずにブランコ状態だ。
それを公共の往来でされるのだから、たまったものではない。
「ええい、やめんかー」
鷹乃は焦る。
「我等が持ち運んでしんぜようー」
「そっかー鷹乃ちゃん、ちっちゃいのにたくさん歩いてお疲れだもんだねー」
「こんなんじゃ余計に疲れるわー」
子供みたいに足をじたばたさせ――
「――!!」
渾身の力で梓を蹴りつつ、小さな身体をのばして美帆を突き飛ばす。
瞬間、先程まで美帆がいた場所――鷹乃の身体を重い何かが両断した。
「……え?」
突き飛ばされながら、梓は目を見開く。
一瞬前まで自分たちがいた場所。
そこにいる鷹乃めがけて、大柄な何者かが凶器を振り下ろしていた。
正確には、襲撃者に気づいた鷹乃が2人をかばって突き飛ばしたのだ。
「鷹乃っち……?」
美帆もまた、尻餅をつきながら目前の惨状を見やる。
鷹乃は自分たちの代わりに、突然の凶行の犠牲に――
「――危ういところじゃったわ」
犠牲になど、なっていはいなかった。
凶器をまともにくらったはずの鷹乃は無傷。
その側で引き裂かれた、10枚の符が塵と化して消える。
即ち【布瑠之言】。
布留御魂大神の御名を借りて因果律を操り、負傷や疾病をなかったことにする術だ。
正確には、それらを十種神宝を模した10枚の符に肩代わりさせる。
その効果は絶大で、瀕死の重傷すら回復させることができる。
だが負傷してから時間が経つにつれ、負傷という因果が対象と強く結びつくために成功率が著しく低下するという欠点を持つ。
そんな大魔法を、鷹乃は符を用いて一瞬で発動させたのだ。
傷つくと同時に施術された大魔法は負傷と同時に術者を癒す。
それは負傷を回避したのと同義だ。
「鷹乃ちゃん!?」
「鷹乃っち? 鷹乃っち!?」
梓と美帆は混乱して叫ぶ。
だが襲撃者は再び3人に襲いかかる。
鷹乃は矢継ぎ早に符を投ずる。
放たれた4枚の符は金属の塊となり、襲撃者を阻む。
即ち【大陰・鉄楯法】
得物を弾かれた襲撃者が跳び退る隙に、さらに手早く符を投ず。
こちらは【吉祥天・誘眠符】。
それにより梓と美帆は眠りに落ちる。
鷹乃は崩れ落ちる2人の身体を支え、ゆっくりと地面に下ろす。
襲撃者も対象にしたのだが……こちらには効かなかったようだ。
鷹乃は新たな符を取り出しながら敵を見やる。
幸い、相手はひとりのようだ。
豚のように醜く肥え太った、くわえ煙草の男だ。
金属の盾に弾かれたのだろう、ひとふりの手斧が地面に刺さる。
先ほどの斬撃の正体はそれだ。
「貴様、何奴じゃ!」
詰問しながら、鷹乃は素早く符の束を放つ。
符はひとりでにたたまれ折り鶴になって8方に飛ぶ。
途端、世界が様変わりする。
公園から人の気配が消え、現実味を欠いた幽玄と化す。
木々や遊具の向うからは白虎、玄武、青龍、朱雀――五行の象徴が顔を覗かせる。
天地には輝く晴明桔梗紋が浮かび上がる。
即ち【四角四堺】。
範囲内の空間を周囲から遮断する戦術結界の魔術である。
そんな閉ざされた空間の中にいるのは鷹乃と友人、そして襲撃者である豚男。
これで魔法戦で周囲を害することも、余人に魔術を見られる危険もない。
友人2人を閉め出さなかったのは、伏兵を警戒したからだ。
「邪魔をするナ! こレは俺たちファンの警告を無視したあずさへの天誅なんダ!!」
豚男は見た目通りの愚鈍そうな口調で叫ぶ。
血走った双眸で鷹乃をぬめつけながら、カラテを構える。
その手には新たな凶器。
一見すると短い棒に見える。
鷹乃は目前の豚男を睨む。
奴は双葉あずさを害するつもりと言い放った。
だが実際に刃を振り下ろした相手は美穂だ。
占術に対する対策だろうか?
張梓の父親である張金龍は、元執行人の道士だと聞く。
娘に対する襲撃より、娘の友人の襲撃に巻きこまれる事故は予見しづらい。
だが、そうすると相手には占術への備えができる知識があることになる。
目前の豚の、赤子がそのまま大人になったような表情の乏しさ、ぽってりと気味悪く膨れあがった四肢。そんな学も職もなさそうな容姿からは、それは考えずらい。だが、
「退かぬと言ったら?」
鷹乃も油断なく符を構え、周囲に4枚の金属盾を従えて豚男を睨みつける。
相手の正体を詮索するのは後でいい。
奴が何者であれ、美穂と梓を守るためには倒さなければならぬ。
「貴様カらぶっ殺ス!!」
豚は下唇に癒着した煙草を揺らして叫ぶ。
「よう言うた!」
鷹乃も応じる。
同時に金属盾のひとつが溶け、無数の水の矢と化して男を襲う。
即ち【玄武・征矢雨法】。
鋭利に尖った無数の矢が、豚男の全身をズタズタに切り裂き、穿ち、吹き飛ばす。
鷹乃にとって、敵が煙草を吸っている利点は2つ。
ひとつは焦げた糞尿のような悪臭によって襲撃を察知できたこと。
もうひとつは、相手が喫煙者であれば躊躇なく殺すことができること。
悪臭と犯罪をまき散らす喫煙者は、脂虫と呼ばれる怪異だ。
人そっくりだが、人間ではないのだ。
だから八つ裂きにしようが焼き払おうが良心は痛まない。
喫煙者の殺害に倫理的に問題はないし、法的な問題は【機関】が片づけてくれる。
鷹乃は次なる符を取り出しながら、足元に倒れる2人の友を意識する。
何の前触れもなく美穂を襲った不埒者に情けなど無用。
動機など2人の友の安全を確保してから探知魔法で探ればいい。
普段の戦闘で多用している式神に比べて鷹乃本人の接近戦能力は低い。
純粋な体力では梓や美帆にすら劣る。
だが鷹乃の、陰陽師としての技量は本物だ。
不埒な脂虫の1匹程度、ひねり潰すのは造作ない。
止めを刺そうと豚男を見やる。だが、
「何と……!?」
驚愕する鷹乃の目前で、豚男はゆっくりと立ち上がった。
しかも無数の水矢に穿たれたはずの傷は、完全に癒えている。
「むむ、その得物」
豚男の手には、いつの間にか槍が握られていた。
くすんだ色の頭蓋骨と、不吉な色の長い毛で装飾された不気味な長槍。
先ほどの棒が伸びたのだ。
「なるほど普通の槍ではないようじゃな」
新たな符を構えつつ、足元の友人をかばうように低く構える。そして、
「よもや魔道具……否、宝貝か!?」
豚男が手にした槍の正体を見破る。
怪異の魔力を焼きつけられた、いわば悪の魔道具。
鷹乃がその名を告げると同時に、豚男は再び鷹乃めがけて飛びかかる。
その跳躍は常人の身体能力をはるかに超える。
宝貝に焼きつけられた怪異の魔力で強化されているのだろう。
対して鷹乃は符を投ずる。
符は無数の木の矢と化して男を襲う。
即ち【青龍・征矢雨法】。
水の矢より速く鋭い硬木の矢が、豚男めがけて雨あられと降り注ぐ。
肥え太った豚の醜い身体を切り裂き、穿ち、削り取る。
だが次の瞬間、その身体が不気味な音を立てながら癒え始める。
裂かれ、穿たれ、削られた傷跡に、飛び散った肉片が這い集まる。
そし醜い豚のような身体を再生する。
頭蓋と毛で装飾された、不吉な槍の穂先がギラリと光る。
こちらが宝貝の本来の能力か。
そして醜い四肢を再生させた豚男は、仕返しとばかりに槍を構えて突き進む。
戦闘に不慣れな鷹乃が反応する間もなく、豚は鷹乃に接敵する。
そして盾の合間を縫って、するどい突き。
「……!?」
だが鋭い槍の穂先は鷹乃に届かない。
即ち【身固め】。
因果律を歪める【式神の召喚】の応用で、術者の周囲の空間を湾曲させて防御する。
神術の【護身神法】と似た術だ。
本来ならば対象は術者のみ。
だが手練れの陰陽師である鷹乃は、その範囲を術者の至近距離にいる数人を含めるくらいにまでなら広げることができる。
なので動かずして友人たちを守ることができる。
反面、鷹乃自身も動くことはできない。
トーチカのようにこの場に留まり友人たちを守りつつ、襲撃者を倒さねばならない。
だが陰陽術に手慣れた鷹乃が、宝貝を手にした程度の暴徒に臆する理由はない。
口訣とともに、先ほどの木矢のすべてが火の玉と化す。
即ち【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
無数の火球が豚男めがけて一斉に飛来し、次々と爆発する。
「……やったかの?」
だが爆炎が止んだ後、豚男はそこに立っていた。
焼けただれた皮膚が不気味な音をたてて蠢き、癒える。
ふと気づくと、男の頭の前頭葉のあたりから触角が生えていた。
蛾のような1対の触角だ。
狂った豚のように醜悪な顔に、虫の触角を生やした最悪の容貌。
その無様を見やり、
「その宝貝……方天画戟か!」
鷹乃は驚愕のあまり目を見開く。
ひとりごちたのは、使用者の身体組織を昆虫のそれに近づけることにより耐久力と再生能力を付与する宝貝の名だ。
その災禍の力に魅入られた者は、徐々に人間であることを捨てさせられていく。
喫煙によって人間であることを辞めた脂虫は、槍に人の姿すら奪われるのだ。
だが、その代償として得られる耐久力と再生能力は、魔獣に匹敵する。
「俺ハ死なないゼ! あずさに俺の……ファンの怒りを思い知らせてやるまではナ!!」
「ええい! 手前勝手な世迷い事を!」
豚男の叫びに言い返しながら口訣。
数手前の攻防で放った【玄武・征矢雨法】。
その水の矢が地に落ちた幾つもの水たまりから、今度は蔓草が一斉にのびる。
「何ッ!?」
豚男は槍を振り回して蔓の何本かを切る。
だが残る数多の蔓が男の足に絡みつき、ぶよぶよと肥えた腕に得物に絡みつく。
即ち【青龍・枝鎖法】。
「くそっ! 何ダこいつハ!? 離セ!! 離しやがレ!!」
「誰が離すか! 痴れ者め!」
蔓に身動きを封じられた豚男は、抜け出そうと身をよじる。
「俺ハあずさに忠告したんダ! 子供向けのちゃちな歌ハ俺のあずさに似合わないってナ!! もっと激しくセクシーな曲で俺の股間を熱くさせてくれってナ!! 手紙だって送っタ! SNSでも伝えタ! でも、あずさは俺の魂の叫びを無視しタ!!」
豚男は耳障りな声で、吠えるように叫ぶ。
叫びながら、皮膚がこすれてヤニ色の体液がにじむのも構わず狂ったようにもがく。
鷹乃は、そんな男を黙して睨む。
「俺ハあずさのファンなんダ! 愛してるんダ! ファンレターだって送っタ! プレゼントだって何度も送っタ! なのに何であずさは俺の想いに従わないんダ!!」
「……下らぬ」
鷹乃は男を見下すように睥睨する。
低学年と見紛う自分の、倍ほど大きい豚男を。
明らかに美帆を手にかける意図で襲撃した豚に、報いを与えるのが道理だと思った。
だが、その凶行に至った思いを聞いて、鷹乃は考えを改めた。
この胸糞の悪い下郎が、梓や美帆と同じ空気を吸っていると思うだけで我慢ならぬ。
心ある善なる人々は、脂虫を憎み嫌悪する。
同様に、鷹乃は目の前の男を憎悪した。
そして思った。
友人たちの憂いを払拭するべく、この外道を塵も残さずこの世から消し去ろうと。
その為の一手を熟考する。
陰陽術には、多数の符を砲弾にして一斉に放ついくつかの術が存在する。
ハニエルとの共同戦線で泥人間の群を薙ぎ払った水刃【天后・玄武・刃嵐法】。
あるいは大木の杭を無数に放つ【六合・青龍・亂杭法】。
先ほど男を焼き尽くした大爆発【騰蛇・朱雀・焔嵐法】。
岩石の刃を嵐の如く叩きつける【大裳・勾陣・刃嵐法】。
ミノタウロスの結界を破壊した鋼鉄の刃【大陰・白虎・刃嵐法】。
否、それでは足らぬ。
現に先ほどの【騰蛇・朱雀・焔嵐法】は、男を屠るには至らなかった。
ならば必殺の大魔法か。
陰陽術には、相手の耐久性能を無視して破壊する術すら存在する。
本来は仏術である空間湾曲による大魔法の砲撃【大元帥法】。
あるいは魔力の源たる意思と精神を破壊する【大威徳・調伏護摩法】。
逆に感情を暴発させ自滅させる【愛染・一夜護摩法】。
更には泰山府君を奉ずる五行それぞれによる戦略魔術砲撃。
正直なところ、それらを行使するには許可がいる。
言うなれば【機関】のSランクと同じ、個人に委ねるには危険すぎる力だからだ。
人の世に害を及ぼさぬよう結界内とはいえ、勝手に使ったと知れたら始末書だ。
だが構わぬ。
そう考えて豚男を見やる。
醜い男があずさを見ていたのと同じ目で、男自身を見て笑う。
だが、それが鷹乃の命取りになった。
集中を要する魔道士が、観察と反応を要する戦闘の最中に思考の海に沈んだ。
それは鷹乃が実戦に不慣れゆえの失態だった。
「アアアアァァァァァァァァ!!」
「何……!?」
豚男は力まかせに蔓を引き千切る。
蔓を維持するべく集中を、先ほどまでの鷹乃は欠いていた。
それに方天画戟は人の精神と肉体を虫へと近づける。
だから痛みも恐怖も感じないことによる限界以上の馬鹿力によって、無理矢理に拘束から逃れたのだ。
鷹乃が驚愕する間に、豚男は一瞬で距離を詰める。
「しまっ……!?」
目を見開く鷹乃の目前で、槍を大きく振りかぶる。
渾身の斬撃で【身固め】の障壁を破壊する。
注連縄のような物理的な依代を持たぬこの術は、術者の意思の力だけで存在する。
だから気を緩めれば、あっけなく破壊される。
「死ネ! 貴様を殺しテ、あずさも殺ス!!」
豚男は叫ぶ。
だが防御魔法を無理やりに破壊された衝撃で、鷹乃はとっさに動けない。
その隙を逃さず男は鷹乃の喉元めがけて槍を突き出し――
――顔面から血を吹いて吹き飛んだ。
同時に聞き覚えのある銃声を聞いたような気がした。
「――間一髪、間に合ったようですね」
鷹乃の背後から左脇を通り、鷹乃の前に歩み出た全裸ストッキングの尻。そして、
「やれやれ45口径を撃ちこんだってのに、ふっとぶだけかよ」
右脇を通って、鷹乃を庇うように歩み出たピンク色のジャケット。
油断なく構えた拳銃からは硝煙が立ち昇る。
そして小柄だが、頼もしい背中――
――それは志門舞奈の後姿だった。
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