上 下
190 / 531
第11章 HAPPY HAPPY FAIRY DAY

日常3

しおりを挟む
 そして夕方。
 新開発区の一角に建つ『コーポ LIMBO』の玄関口。

 放課後に、舞奈は一旦、アパートに帰っていた。
 そしてチャビーのおばけ探しに間に合うように出かけようとしていたところ、

「志門! こんな時間に出かけるのか!?」
 管理人室の窓から、ハンチング帽を目深にかぶった管理人が顔を出した。

「もう夜も遅いんだ! 俺のスパスも持ってけ!」
弾倉マガジン余分に持ってくから! ショットガンフランキ スパス12なんかいらないよ!」
「そうか! 気をつけて行ってこい!」
 付近に住人がいないのが幸いな大声に苦笑しつつ、アパートを後にする。

 そして廃墟の通りを歩く。

 新開発区は怪異が跋扈する廃墟の街だ。
 怪異どもは日中に人を襲うことはないが、そろそろ日が暮れる。

 それでも楽観視していたのは、先日の事件で泥人間をまとめて片づけたからだ。
 新開発区の奥まった場所にあるビルに力を求めて集まった怪異ども。
 舞奈と明日香は、奴らをキムと滓田妖一の一味を倒すついでに殲滅した。

 だが……。

「そういやあ、こんな奴らもいたなあ」
 ぼやきつつ、拳銃ジェリコ941握把グリップを振り下ろす。
 ドスリと鈍い音。
 空気からにじみ出るように、握把の底で脳天をカチ割られた猛獣があらわれる。
 漆黒の毛と鋭い牙を持った、大型犬ほどもある狼。

 毒犬である。
 泥人間と同様に異能力を持つ怪異で、その多くは【偏光隠蔽ニンジャステルス】だ。
 そして同じように日中は廃墟の陰に潜み、日が陰りはじめると群で人を襲う。

 だが、そんな獣は舞奈の側で溶け落ちる。

 透明状態からの大型獣の奇襲は、執行人エージェントの集団にとってすら危険だ。
 だが舞奈にとっては藪蚊ほどの脅威だ。つまり……

「……ええい、うっとおしい」
 そのまま発砲し、もう1匹を仕留める。
 次いでワイヤーショットをはめた左の掌で、反対側に出現した1匹の顔面を殴る。
 そのまま首をつかんで、へし折る。やれやれ。

 一説によると、泥人間は集団で泥犬を襲って喰うらしい。
 リンチして動けなくした後に生きたままかぶりつき、身体を構成する魔力を吸収するのだそうな。忌まわしい怪異の犬食文化だ。

 だが、そいつらがいなくなると毒犬が増えて困る……ことが今、わかった。

 しかも舌打ちする舞奈の前方から、今度は傍迷惑なエンジン音が近づいて来た。

「どけどけーーぇ! 邪魔だぁ!!」
 不格好なマフラーから下品な爆音をまき散らしながら、オートバイが通り過ぎる。
 愛車を改造した珍走団だ。

 排気ガスの臭いに混じったアルコールとヤニの悪臭に顔をしかめる。
 酔っぱらって珍走していて白バイに追われ、新開発区に逃げこんだのだろう。

 怪異が巣食う新開発区には、一般人の立ち入りは禁止されている。
 だが守衛には、厄介な通行人を無理矢理に押し止める義務まではない。
 ヤンキーや珍走団は素通りだ。
 しかも白バイも横着して、間抜けな珍走団を追いこむこともある。
 彼らが二度と帰らないことを承知のうえで。

「……おまえが邪魔だよ」
 思わず舞奈は悪態をつく。
 新開発区の不愉快なものが、今晩まとめてやって来た気がした。

 そして振り返った目前で、

「あーあ」
 不格好なバイクに乗った男のシルエットが、複数の獣のそれと重なった。

 無防備に姿を現した毒犬どもは、うめく珍走団員を囲んで喰い始める。
 舞奈はやれやれと苦笑する。

 ヤニ臭い喫煙者は人に似て人ではない。
 脂虫と呼ばれる怪異だ。
 そして普段は人型の泥人間が毒犬を食っているのだから、たまには毒犬が人型の脂虫を食ってもいいのかもしれない。

 そんなことを考えながら、片手で拳銃ジェリコ941を構えて3連射。
 毒犬の頭を砕いて消滅させる。

 そしてヤニの臭いを我慢しながら近づく。
 もちろん、体じゅうを食いちぎられた脂虫は息などしていない。
 だが舞奈は悪臭漂う死骸を平然と見下ろす。

 ヤニの悪臭漂う脂虫どもの数少ない利点のひとつ。
 不快すぎて死んでも特に気にならないのだ。【機関】もそう言っている。
 横柄だが無能な怪異どもを、守りたいとも守るべきとも思わない。
 何故なら奴らは人間ではないのだから。

 だが、そんな脂虫も死ねばその場に死骸が残る。
 毒犬はエサを綺麗に平らげてくれたりはしない。
 まったく脂虫は、生きていても死んでいても臭くて不潔で迷惑だ。

 そう思って苦笑して――

 ――所変わって検問前。

 アサルトライフル89式小銃を携えた2人の守衛の側。
 装甲リムジンから降りた明日香が、手持無沙汰に新開発区を見やる。

 すると廃墟の通りの向うから、夕闇にも鮮やかなピンク色の人影がやってきた。
 舞奈である。

「遅いわよ。心配したじゃないの」
 明日香は不機嫌そうに出迎える。

「脂虫の珍走団が出たんだよ。白バイが追いこんでたろ?」
 ひと仕事済ませた後のような疲れた口調で、舞奈は答える。
 心配してたって言うのなら、別に毒犬の話はしなくていいと思った。

 そんな舞奈の手には鉄パイプ。
 その先にくくり付けたワイヤーショットのワイヤーで、珍走団員を引いてきたのだ。

 執行人エージェントが死骸の回収に来るのは明日の昼間だ。
 脂虫は死んでも臭いし、今晩と翌朝に同じものを見るのもうんざりだ。

「やはり先程の痴れ者は脂虫でしたか。よろしければ引き取りましょうか?」
 執事の夜壁が満面の笑顔で申し出る。
 彼は脂虫を生きたまま斬り刻むのが大好きなのだ。

 脂虫のもうひとつの利点。
 奴らは不快すぎるので殺しても問題ない。【機関】もそう言っている。だが、

「執事さんばんわっす。でも死んでるし、引きずってきたんでボロボロっすよ?」
「そうですか……」
 返事を聞いて露骨にがっかりした。
 舞奈はパイプを守衛に渡し、保健所の方から来た人に渡してくれと言付けした。

 そして一行を乗せたリムジンは、平和な讃原さんばら町へと向かう。
 そこでチャビーと園香を乗せて、学校まで行くのだ。
 なみにリムジンの運転手を兼ねた護衛は、マンティコア戦時の装甲車60式の運転手だ。

「……どうせなら、生け捕りにしてきてチャビーに見せたら喜んだかな」
 舞奈は毒犬のことを言ったのだ。
 だが、そういえばそのことは明日香に言っていなかった。だから、

「ちょっとやめてよ。汚らしい」
 明日香は嫌そうに眉をひそめる。

「これから学校に、可愛らしい猫のおばけを探しに行くのよ」
「可愛いマンティコアなら、家に1匹いるだろう」
 後部座席でそんな馬鹿話をしているうちに、車はチャビーの家に着いた。

 明日香は夜壁を連れて礼儀正しく玄関に向かう。
 そして玄関のチャイムを鳴らすと、チャビーの母親があらわれた。そして、

「千佳! お友だちがいらっしゃったわよ!」
「はーい!」
 元気のいい返事とトタトタと階段を駆け下りる音が聞こえ、本人があらわれた。

 普通の親は、夜の学校に友達と遊びに行くなんて言っても許さないだろう。
 いくら旧市街地でも、子供に夜道は危ないからだ。

 だが、その友人が明日香だった場合は別だ。
 実家が警備会社である彼女は執事と護衛を連れ、防弾リムジンに乗って迎えに来る。
 そこに同乗するのだから、これほど安全な旅路もない。
 魔獣が出たってへっちゃらだ。

「千佳、お友だちに迷惑をかけないようにね」
「わかってるよ! ママもネコポチをお願いね」
 チャビーは母親に挨拶して、

「娘をよろしくお願いします」
「かしこまりました。千佳様をしっかりお預かり致します」
 母親と執事は頭を下げ合う。

 そんな2人を見やったチャビーは、ニコニコ笑う。
 チャビーは明日香の執事が大好きだ。
 千佳『様』と呼ばれるのが嬉しいらしい。お姫様になった気分になれるのだとか。
 ……まあ、平和で何よりだ。

「日比野さん、ネコポチちゃんは元気?」
 明日香は玄関を覗きこむ。
 チャビーの子猫がひょっこり顔を出さないかと期待してるのだろう。
 何気を装ったつもりかもしれないが、かなり露骨だ。だが、

「うん! 今はわたしの部屋で遊んでるよ」
「そう……」
 元気のいいチャビーの答えに凹んでみせる。
 舞奈はやれやれと苦笑する。
 普通は玄関を開ける前に部屋の中に入れるだろう。

「よっ、チャビー。ちゃんと起きてられたか?」
 護衛に促されてチャビーが車に乗ってきた。
 その横に明日香も座る。

 そして護衛が運転席に、夜壁が助手席に座ると、滑るように動き出す。
 流石は高級車。明日香が召喚する半装軌装甲車デマーグの荷台とはえらい違いだ。

 無駄にデカイ装甲リムジンは、後部座席に子供が3人乗っても余裕がある。
 だが縦にも長くて後部座席が2列もある。
 なので、園香が来たら2×2で別れて座るべきかと考えていると、

「あのね、ゾマが来られないって」
 チャビーが残念そうに言った。

「ま、そんなこったろうと思った……」
 舞奈はしょんぼりとうなだれる。

 園香と2人で隣同士に座ったらこっそり触り放題だと思ったのだ。
 だが、そんなことは彼女の父親にはお見通しだったようだ……。

「しゃーない。泥棒をぶちのめして、とっとと帰るぞ」
「泥棒なんていないわよ」
 ヤケクソ気味に言ったら明日香にギロリと睨まれた。

 そんなふうにして、リムジンは夜の学校に向かった。

「ボス、みなさん、お待ちしてたっす」
 校門では面白黒人のベティが待っていた。
 今日の守衛は彼女ひとりだ。
 クレアは休暇をとって(普通に)里帰りしているらしい。

「学校は今夜も平和ですよ。それにしても、夜の視察なんて急な話っすね」
 言いつつベティはむしゃむしゃと、手にしたささみスティックを食べる。
 呑気なものだ。

「今日はあたしひとりしかいないんで、ついて行ってあげられないんすよ」
 そりゃ、まあ守衛の仕事をほっぽり出すわけにもいかないだろう。
「けどボスと舞奈様がいれば、大抵のことはなんとかなるっす」
 まあ、キムと滓田妖一をまとめて片づけるくらいはな。
 舞奈はやれやれと苦笑する。

 だが、その方が都合のいいのは確かだ。
 音楽室のおばけを調べに来たなんて、しょうもない理由を話す必要はない。
 ……面白がってついてこられても面倒だ。
 そう思った舞奈の側で、

「……ニコッ」
 むしゃむしゃ。
 ベティは先ほどから不自然なタイミングで笑みを浮かべてササミ食っていた。

「何やってるんだ? あんたは」
 ツッコんだら負けかと思いながらも、ベティにジト目で問いかける。

「いやですね」
 ベティはベリーショートのアフロの頭をポリポリと掻いて、

「生徒さんのお母さんから、あたしが怖がられてるってクレームがあったんすよ」
 クレームを受けた人とは思えない呑気な口調でそう言った。

「で、怖く見えないようにしてるっす」
「顔じゃなくて、背が高いから怖いんじゃないのか?」
「じゃ、こうすればいいっすね!」
 ベティは後ろを向いて海老反りになった。

「お、おう……」
 舞奈は思わず絶句する。

 以前のみゃー子と違って飛び跳ねたりはしない。
 だが上背のあるベティはポーズだけでも迫力があって面白い。
 チャビーも腹を抱えて笑っている。
 だが制服を着た大の大人が、それをやるというの如何なものか。なので、

「真面目に仕事をしてください」
 明日香に真顔で怒られた。
 それでもベティは懲りもしないで笑顔のままで、

「真面目に見張りしてますので、ボスは校内の見回りをお願いっす」
 呑気に言った。なので、

「はーい」
 チャビーの元気な返事を残し、舞奈たちは初等部の校舎へと向った。

 警備室で借りた鍵を使ってドアを開ける。

 そして律儀に上履きに履き替え、廊下を歩く。
 夜の学校の廊下を星明かりと、明日香が持った懐中電灯がおぼろげに照らす。
 昼間の喧騒が嘘のような静寂は、新開発区の死んだような静けさとは違って警戒心をかきたてられることはない。
 だが賑やかな日常の象徴だったはずの場所とも、まるで別の空間のようにも思える。
 夜の冷気に、チャビーがブルッと身震いする。

 正直なところ、舞奈はすでにおばけを嫌というほど狩ってきた。
 それに比べれば、夜の旧市街地の学校は薄暗い以外は安全で清潔だ。
 警戒すべきことは何もない。

 ……先日の、鷹乃の予言がなければ。

 警備員に対するクレームというのが、襲撃への布石である可能性はゼロではない。
 特定人権団体による社会的な攻撃で萎縮させ、警備が手薄になったところを襲撃するるなんて、人に化けた泥人間どもが使いそうな手だ。

 鷹乃が観た、舞奈が負傷するビジョンとやらに思いを巡らせる。
 それが新開発区の泥犬のような実体のある怪異によるものなのか、それ以外の予想もつかないような脅威によるものなのか、今の時点ではわからない。

 そんなことを考えていると、窓の外を影が通り過ぎた。
 鳥か、あるいは遠くを飛ぶ飛行機か。
 こんな時間に飛ぶ鳥も、航空灯を灯さず飛ぶ飛行機も不自然な気がする。

 チャビーが悲鳴をあげて腕にしがみついてきた。

「なんだよチャビー。歩きにくいだろ」
 思わず文句を言ってはみるが、チャビーの挙動が微笑ましいのも事実だ。
 だから彼女が歩きやすいよう歩調を緩めつつ、あごをしゃくって明日香をチャビーを挟んだ対角線上に移動させる。

「しょうがないわね」
 明日香は文句を言いつつも、大人しく移動する。

 舞奈は明日香に向き直る。
 そして無言で、一瞬だけ窓を見やり、口の形だけで話しかける。

 さっ、き、な、ん、か、と、ん、だ。

 明日香は無言でうなずく。
 こういう仕事を続けていれば、唇を読むくらいはできるようになる。
 窓の外を何かが通った状況は、今ので伝わったはずだ。

 そして明日香が魔力感知をしようと集中した途端――

 ――ガタッ!

「ひゃあっ!」
 物音に、チャビーが悲鳴をあげてしがみつく。

「音楽室の方からだ。本当に泥棒なんじゃないのか?」
「だとしたら、ベティとしっかり話をしないと」
「ま、捕まえてみれば、わかるさ」
 軽口を叩きつつ、チャビーを引っぺがして明日香に押しつけて走る。

「マイ! 待って!」
 だがチャビーは先ほどの怯えっぷりが嘘のように、明日香と一緒に走る。
 チャビーはお子様だが、臆病じゃない。

 そして舞奈は音楽室の前にやって来た。

 教室のドアは、当然ながらきっちり閉まっている。
 窓の中は真っ暗で、何も見えない。

 だが気配。
 この部屋の中に、いるはずのない何者かがいる。
 舞奈が警戒した途端、

「おまえたち! かーえーれー!!」
 以前にチャビーが見ていた子供向け番組の悪役みたいな、芝居がかった声がした。
 機械か何かで変えたような、鷹乃の式神を連想させる不自然な声色。

 続いて、部屋に明かりが灯った。
 窓には大きな異形のシルエットが映る。

「ホントにおばけがいた!?」
 チャビーが悲鳴をあげる。

 だが舞奈は笑う。
 舞奈にとって馴染み深い展開になってきた。

「おばけの正体を暴いてやる!」
 言いつつドアに跳びつく。だが、

「……あれ、開かないぞ」
「何やってるのよ」
 明日香もいっしょにドアを開けようとする。
 それでもドアは開かない。

「糞ったれ! つっかえ棒かなんかで固定してやがる」
 ドアを力まかせにガコガコ動かす。
 だが、そんなので開くくらいならつっかえ棒の意味はない。

「開けられる場所があるかもしれないわ」
 明日香は冷静に、窓をひとつづつ調べ始めた。

「ちゃんと閉まっていない窓がひとつあるわ」
「――おっ、ドアがちょっと開いた」
 明日香が何かに気づくのと同時にドアが少し開いて、隙間が空いた。

「やめろ! おまえたち! かえれー!!」
 窓に映った大きな影は、プルプルふるえながら大声で叫ぶ。

 脅しがまったく効かない相手に、逆に気圧されたのだろう。
 わかりやすい反応だ。
 というより、わかりやすすぎる。奴がもし泥棒だとしたら、きっと新米だろう。

 舞奈と明日香は一緒になってドアを引っぱる。
 隙間がどんどん大きくなる。

 ふと背後からの奇襲を警戒し、

「チャビーも手伝ってくれ」
「うん!」
 チャビーも一緒にドアを引っぱる。
 これで有事の際にチャビーをかばいやすくなる。
 舞奈は笑う。

「やーめーろー!!」
 声が焦った感じで叫ぶ。そして、

「君たち、何をやっとるのかね!?」
 後ろから聞き覚えのある声がした。

 その声を聴いた途端、舞奈はビックリ仰天、跳び上がった。
 そして、おそるおそる背後を見やる。

「チャビーちゃん、マイちゃん、明日香ちゃん。こんばんは」
 そこには園香がいた。
 隣には園香父がいた。

「わーい、ゾマだ! でも、どうして来られたの?」
「パパとママとお話して、パパといっしょなら来てもいいって言ってもらったの」
 園香は答えてにこやかに笑う。
 今まで父親を説得してくれていたらしい。

 だが父も完全に納得した訳じゃないのだろう。舞奈を見つけてギロリと睨む。
 舞奈は思わず「ひい」と首をすくめる。
 そんな舞奈を見やって園香は微笑み、

「お夜食は、お魚のクッキーだよ」
 小さな袋を開けた。

「猫のおばけちゃんも食べられるように、お塩を使わないで焼いたの」
 中には魚を象ったクッキーがいっぱいつまっている。

「わー! お魚のいい匂いがする!」
 袋を覗きこんだチャビーはニコニコ笑顔だ。
 調味料の代わりに魚の身でも混ぜて焼いたか、食欲をそそる焼き魚の匂いがする。
 明日香も、園香父も笑う。

 舞奈も一時、おばけのことを忘れて笑う。
 おそらく、これも説得の材料のひとつだったのだろう。
 娘が焼いたクッキーを、無駄にさせるのも忍びないと思わせたのだ。
 そんなことを考えた、そのとき――

「――!?」
 ドアの隙間から小さな何かが飛び出した!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【短編】冤罪が判明した令嬢は

砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。 そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。

退魔の少女達

コロンド
ファンタジー
※R-18注意 退魔師としての力を持つサクラは、淫魔と呼ばれる女性を犯すことだけを目的に行動する化け物と戦う毎日を送っていた。 しかし退魔の力を以てしても、強力な淫魔の前では敵わない。 サクラは敗北するたびに、淫魔の手により時に激しく、時に優しくその体をされるがままに陵辱される。 それでもサクラは何度敗北しようとも、世の平和のために戦い続ける。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 所謂敗北ヒロインものです。 女性の淫魔にやられるシーン多めです。 ストーリーパートとエロパートの比率は1:3くらいでエロ多めです。 (もともとノクターンノベルズであげてたものをこちらでもあげることにしました) □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ Fantiaでは1話先の話を先行公開したり、限定エピソードの投稿などしてます。 よかったらどーぞ。 https://fantia.jp/fanclubs/30630

処理中です...