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日向の気持ち

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ノートには何ページも、何ページも、日常のこと、日向への気持ち、本当の葵がつらつらと書いてあった。
日向は、泣いた。ボロボロと涙を零しながら、読んだ。
「日向クン、大丈夫かい?」
見兼ねた紫は日向に声をかける。
「はい。紫サン」
そう答える日向に紫は言った。
「もう、悩んではいなさそうだね?これで大丈夫かな?」
その言葉にまた涙を零す日向。
そんな日向を前に、紫は何も言わず、じっと、その場に佇み続けた。
「すみません。紫サン。」
涙を流し終えた日向は返事をする。
「大丈夫。日向クン。それだけ、葵が、あの子が、キミに伝える気持ちがあったってことだから。」
紫はそう、優しく日向を諌めた。
「さて、これで大丈夫かな?日向クン。」
紫は立ち上がってそう言った。
「はい。けど、俺は1つ、紫サンに言っておかないといけないこと出来ました。」
紫を見上げながら、日向は言った。
「何かな?」
そう言うと、紫は日向の前にもう一度、座り直した。
「はい。俺は、やっぱり、ずっとずっと葵が好きだったみたいです。今までも、これからも、俺の最愛の人が、葵から、変わる事はありません。
これだけは、紫サンに言っとかなきゃいけない気がして。」
涙を流し終えたぐしゃぐしゃの顔で笑顔で、日向はそう応えた。
「そう、それは…難儀だねぇ…」
紫はクスッと笑いながらそう言った。
「それじゃあ、このノート、ありがとうございました。」
立ち上がって、部屋を後にしようとすると、日向はそう言って紫にノートを差出した。
「いーよ。それは君のものだ。葵のも、君の分しか載ってないしね。全く、天邪鬼な妹だよ。」
ため息を吐きながら、紫は日向の目を見てそう言った。
「はい…。ありがとう、ございます。」
笑いながら、少し、涙を流しながら、そう言う日向に、あの悩みは見えなかった。
「あぁ、そうそう、時々遊びに来るといいよ。私しか居ないと、少し、寂しくもあってね。」
ニッと笑いながら紫はそう言う。
「え、あ、はい。」
少し、複雑な表情で応える日向。
「何、遠慮はいいさ。キミは弟だからね。なんならウチに住んでも、構わないよ?と言うか、もう、キミのものだ。私じゃなく、葵の家だからね。」
真面目な顔で、柔らかく笑いながら紫はそう言った。
「はい。それじゃあ、また、来ます。今日はお世話になってばかりでだったので。ありがとうございました。紫サン。」
苦笑いをして、涙を払いながら、家を後にする日向のその顔は晴れ晴れしく、輝いていた。


「はぁ、我ながら、妹に甘いね。好きな人まで、取られてしまうとは…。日向クン、私だって、キミが好きだったんだよ。なんて。」
ボソッと呟く紫のその目には1度、虚無を知った強い男の姿が映っていた。

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