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撮影はどのように行われた?

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映画を観ると何となく察しが付くが、ロケ地の大半は日本ではなくニュージーランドで撮影が行われている。その証拠に渡辺謙演じる勝元とトムクルーズ演じるオールグレンが吉野(たぶん奈良)で対決する場面があるが、その舞台となった山中に日本では見られないような樹木が沢山生えているのが画面にしっかり写り込んでおり、少し驚いてしまったほどだった。

日本でもロケは行われているが、それは神社や寺など小規模な場所。何故、こうなったのか理由には富士山が関係している。クライマックスには大迫力の合戦シーンがあるのだが、その舞台を富士山の麓にしたい。だが、それには富士山の麓で半年間も爆薬などを大量に使用した大規模な撮影をするという許可がいる。それは日本では許可が降りない。

出たアイデアが富士山に似た山がある国での撮影。そこで白羽の矢が立ったのがニュージーランドのニュープリマスという町にあるタラナキ山という山だったのだ。映画の冒頭でトムが横浜港に到着する場面があり、そこで富士山がクローズアップされる。この山こそが富士山そっくりのタラナキ山だ。

現地の撮影には日本と現地のあわせて約300人(情報によっては約500人と記載されているものもある)のエキストラが参加した。撮影が約半年間にも及ぶということできちんと就労ビザも取得する必要があった。エキストラの旅費や食費(朝食と昼食のみ。撮影以外の夕食代等は実費)は全て制作側が持ち、給料もきちんと一か月分支給された。日本円に換算すると約40万円、ボーナス13万円ほど。ホテルも一人一部屋が与えられたそうだ。だが、ツイッターで聞いた他の方の話によるとエキストラ全員がこの待遇だった訳ではないようで正確なところは不明である。因みに旦那はこの待遇の恩恵を受けている。

撮影は2003年1月から行われた。期間は約半年間の予定だったが、実際は3か月で終了した。聞いていた話と違うとエキストラ側と制作側でちょっとしたバトルが勃発したとかしなかったとか。旦那は中立の立場だったそうでバトルの結末がどうなったかは覚えていないようだ。ひとつ覚えているのは就労ビザが1年単位なので(観光だと3ヶ月程らしい)時間やお金に余裕のある人はビザの期限ギリギリまで現地に留まっていたとのこと。

こんな美味しい経験は滅多にないだろう。さすがハリウッドと言わざるを得ない。旦那はその空白の間に、レンタカーを借りて友達と共にニュージーランドを一周するなど思う存分遊んで過ごしたそうだ。何とも贅沢な過ごし方である。

因みに、この映画の費用関係についてはこちら。(日本円換算)

・製作費140億円以上
・興行収入4568億円

日本の映画とは規模が全く違うのがお分かり頂けるだろう。お金の使い方に関してはもうひとつエピソードがある。

日本ではフィルムの無駄遣いを防ぐために、小まめにカチンコ(助監督が「よーいアクション!」とか言う時に使ってるアイテム)で場面を切りながら撮影している。しかし、ハリウッドは違う。基本的にローリングといってカメラを長回しするそうだ。

エキストラへの指示は「前進して!」「倒れて!」「死んで!」という簡潔なものが多かったらしいが、例えば「死んで!」という指示を受けたら、30分間死んだふりをしなければならないことがよくあったらしい。なので、フィルムの数は膨大な量になる。お金の使い道が違う。さすがはハリウッドである。

話を戻すと、ようやく「カット!」の声がかかっても撮り直しになることも何度もあった。理由はシーンを後で繋ぎ合わせる時に矛盾が生じてしまうからだ。それは天候であったり、役者の動きであったり、些細なことが多かったという。特に天候は重要だ。例えばひとつ前のシーンで青空だったのに、次のシーンでは曇り空になっているなど。たった一瞬であっても矛盾があっては映画は台無しになる。とてもデリケートな問題なのだ。

しかし、監督はエキストラに対してのフォローを忘れなかった。30分間も死んだふりをしていたのにもう一度やり直しと言われたら「えー?!」と思うだろう。監督はその気持ちを汲んで「君達の演技はとても良かったんだよ!」とフォローを入れてくれていたという。日本人ばりの気遣いが素晴らしいエピソードである。
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