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第六章 葛藤
30話
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今、秋斗さんの寝室には美波さんと拓斗くんがいる。
拓斗くんのお話は学校での出来事が多い。それをにこにこと笑顔で聞く美波さんと私。
それはなんだか私の小さいころを見ているようだった。
学校へ行って帰ってきて、その日にあった出来事をお母さんや蒼兄に話すことが日課だった。
学年が上がるごとに話す頻度は減っていったけれど、こうやって話をする時間を作ってもらえることがとても嬉しかった。
目の前で、話すのを待ってくれる人がいることに、ひどく安心感を覚えたのを今でも覚えている。
ふと窓の外を見ると、今にも雨が降り出しそうだった。真っ黒な雲が空一面を覆っている。
「あらやだ、雨降りそうね。そんな空でも見るのが好きなの?」
美波さんに訊かれて、コクリと頷く。
「でも今は――できれば青空が見たかったです」
「どうして?」
と、美波さんとの会話に拓斗くんが加わる。
「……心が晴れそうだから、かな」
「お空が晴れているとお姉ちゃんの心も晴れるの? どうして? 今、お姉ちゃんの心には雨が降ってるの?」
拓斗くんの質問にどう答えようか考える。
どう説明してあげたら理解を得られるだろう。
「実際に雨が降ってるわけじゃないんだよ? ……拓斗くんは落ち込むことってないかな?」
「ある! 試合に負けたときっ!」
真っ直ぐに人の目を見て答えてくる。
「うん。それをね、気持ちが晴れるとか曇るとか、そんなふうにたとえているの」
「あっ! わかったよ! じゃぁ、お姉ちゃんは今悲しいの? 試合負けちゃった?」
上目がちに心配そうな視線を注がれる。
うぅぅ……拓斗くん、かわいい……。
でも、私にとって試合って――つまりは身体との闘いとか学校へきちんと通えるかとか、きっとそういうこと。
「拓斗くんは悲しいことや嫌なことがあったらどうする?」
「うーん……テニスのラケット振ってボールを打つ! それかサッカーボールを思い切り蹴るっ!」
その返答に思わず笑みが漏れる。
「それはすっきりしそうだね?」
「お姉ちゃんは?」
「私はね、お空を見るとなんとなくすっきりする気がするの」
「ふーん……お空、ねぇ?」
拓斗くんがベッドに腰かけ、一緒になって窓から見える空を見た。
かわいいなぁ……。
今は空よりも拓斗くんを見るほうが癒される気がする。
「何か悩みごと?」
美波さんに訊かれ、
「いえ、そういうわけではないんですけど、今週いっぱいは学校に行けないなぁ、とか色んなことを考えてしまうと心が曇り空で……」
「……真面目ねぇ? 休めてラッキーくらいに思わなくちゃ。しかも好きな人の家よっ!?」
言われて面食らう。
でも、お母さんに言われているような気がした。
なんとなく、美波さんの思考回路はお母さんに似ている気がする。
長い付き合いだと考え方が少し似通ったりするものなのかな……?
そこへ美波さんの携帯が鳴り出した。
「はーい! こちら美波ですっ!」
明るすぎる対応。
携帯に、というよりは、まるでトランシーバーか何かに応答するかの如く。
「あ、ゆうこちゃんね。いいわよ。――え? 今? 秋斗くんのとこにタクと一緒にお邪魔して翠葉ちゃんと話してたところ。――いいって、私が行くわ」
通話を切ると、すく、と立ち上がる。
「妊婦さんが荷物運べないって言ってるから手伝ってくるわね。拓斗、翠葉ちゃんにもうキスなんてしちゃだめよっ?」
「はーい……。でも、手ぇつなぐのはいい?」
「そのくらいなら良しっ! じゃ、すぐに戻ってくるから」
と、部屋を出ていった。
拓斗くんは、「バイバーイ」と手を振っている。
「拓斗くん、お母さん元気いいね?」
「元気良すぎて困っちゃうんだよねー。とくにパパが」
「どうして?」
「元気があまりすぎてて色んなことしちゃうから、パパがそのシリヌグイするの」
「拓斗くん……尻拭いの意味知ってるの?」
「うん。後始末でしょ?」
あっけらかんとした答えに唖然とした。
こんなに小さいのに難しい言葉を知っているのね……。
それにしても、元気があり余って何をしちゃうのかな?
それが気になりつつも、拓斗くんの学校での話を聞くのはとても楽しかった。
学校の話をしていたかと思えば、突飛な話を振られる。
「ねぇ、お姉ちゃんは秋斗お兄ちゃんが好きなの?」
「えっ!?」
「あっ! 戸惑った! どうせ秋斗お兄ちゃんに押し切られちゃったんじゃないのー? ママが秋斗お兄ちゃんは格好いいから女の子は誰でも流されちゃうって言ってたもん」
なんて答えたらいいのかな……。
「……流されて付き合っているわけではないと思います」
「えー!? じゃぁ、好きっ?」
屈託のない顔で聞いてくる。
それにコクリと頷くと、口を半開きにした拓斗くんがじっと私を見ていた。
「拓斗、くん?」
「お姉ちゃん、顔真っ赤っ! トマトみたい!」
確かに顔が熱い。もう、やだ……。
頬を両手で覆うと、手のほうが冷たいくらいだった。
すると、リビングへ通じるドアではなく、秋斗さんの仕事部屋に抜けるらしいドアからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けると、
「秋斗さんっ!?」
もうやだ……絶対に全部聞いてたんだ。
「拓斗、あまり翠葉ちゃんをいじめないでくれる?」
と、拓斗くんの隣に腰掛けると小さな頭に手を乗せる。
手、大きい……。
大きいのは知っていたけれど、こうやってみると本当に大きな手であることがわかる。
拓斗くんはその手を嬉しそうに受けていて、とてもかわいい。
腕に絡み付いて秋斗さんにじゃれつく様は、まるで犬が尻尾をはちきれんばかりに振ってじゃれついているように見える。
拓斗くん、秋斗さんが大好きなんだなぁ……。
「だって、お姉ちゃんかわいいんだもんっ! うちのクラスの女子よりもウブだよっ!」
初心って――
「翠葉ちゃん、拓斗に言われてるけど?」
秋斗さんは面白そうに笑って私を振り返る。
私は何も答えることができなかった。
そこへ美波さんの笑い声が聞こえてきた。
ほどなくして美波さんと妊婦さんが入ってくる。
「あ、ゆうこちゃん。お腹の子は順調?」
秋斗さんが訊くと、「はい、もう元気すぎて」とその人は柔らかく笑った。
私を視界に認めると、
「あなたが御園生翠葉ちゃん?」
「はい……」
「私、蒼樹くんと同級生なの。倉田ゆうこです」
「……蒼兄の同級生って……高崎さんとも同級生ですか?」
にこりと笑って、「そうよ」と答える。
「……兄がお世話になってました……かな? 妹の翠葉です」
奇妙な挨拶になってしまい首を傾げていると、クスクスと笑われた。
「こんなにかわいい妹さんだったのねぇ……。かわいい妹がいるって話はずっと聞いていたんだけど、写真なんて一度も見せてはくれなかったし、葵くんも一度しか会ったことがないって言ってて、でも、すごくかわいいよって情報だけはくれるから、すごく見てみたかったのよ」
「……あの、たぶん『かわいい』というのは年が離れてるから『かわいがってる』という意味だと思います」
「いいえっ」
ゆうこさんはキッパリと言いきった。
「彼のシスコンは筋金入りなんだから」
それには反論をすることができない。
「でも、こんなにかわいい子なら納得だわ」
「……え?」
「私、蒼樹くんが大好きで、高校のときに一時お付き合いしていた時期があるの。でも、うまくいかなかったのよ」
いきなりのカミングアウトにびっくりする。
美波さんはお母さんの古くからの知り合いみたいだし、高崎さんとゆうこさんは蒼兄の高校の同級生。ほかにも何かが潜んでいそうで、このマンションの住人には会うたびにドキドキしそうだ。
「翠葉ちゃん、大丈夫?」
目の前で美波さんに手を振られ、
「あ、はい……大丈夫です。なんだかびっくりすることが多くて……」
「翠葉ちゃん、私がここの住人っていうのは蒼樹くんに内緒にしてもらえるかしら?」
「え……?」
「……偶然会いたいの。偶然再会して『久しぶり』って言いたいの。だから、お願いね」
「……はい」
ゆうこさんはとてもかわいらしい方だった。
ロングヘアの毛先に緩いパーマをかけていて、ふわっとした感じの人。実際の年よりも少し幼く見えるかもしれない。
それに対し、美波さんは真夏の太陽みたいな人。とても元気がよくて何もかもを照らしあげるような……そんなバイタリティを感じる。
美波さんが太陽ならゆうこさんは陽だまり。そんな印象。
「私、準が帰ってくる時間だから帰ります」
と、ゆうこさんが部屋を出ると、拓斗くんがベッドから飛び降り走り出した。
「僕、ゆうこさん送るー!」
「タクっ、走らない飛びつかない抱きつかないっ!」
美波さんは拓斗くんのあとを追って部屋を出ていった。
みんな元気……。
唖然としていると、
「くっ、翠葉ちゃん相当びっくりしてるみたいだね?」
「それはもう……。おもちゃ箱を開けた感じというか、何か開けちゃいけない箱を開けてしまった感覚に囚われるのはどうしてでしょう……?」
そう口にして、またくつくつと笑われた。
拓斗くんのお話は学校での出来事が多い。それをにこにこと笑顔で聞く美波さんと私。
それはなんだか私の小さいころを見ているようだった。
学校へ行って帰ってきて、その日にあった出来事をお母さんや蒼兄に話すことが日課だった。
学年が上がるごとに話す頻度は減っていったけれど、こうやって話をする時間を作ってもらえることがとても嬉しかった。
目の前で、話すのを待ってくれる人がいることに、ひどく安心感を覚えたのを今でも覚えている。
ふと窓の外を見ると、今にも雨が降り出しそうだった。真っ黒な雲が空一面を覆っている。
「あらやだ、雨降りそうね。そんな空でも見るのが好きなの?」
美波さんに訊かれて、コクリと頷く。
「でも今は――できれば青空が見たかったです」
「どうして?」
と、美波さんとの会話に拓斗くんが加わる。
「……心が晴れそうだから、かな」
「お空が晴れているとお姉ちゃんの心も晴れるの? どうして? 今、お姉ちゃんの心には雨が降ってるの?」
拓斗くんの質問にどう答えようか考える。
どう説明してあげたら理解を得られるだろう。
「実際に雨が降ってるわけじゃないんだよ? ……拓斗くんは落ち込むことってないかな?」
「ある! 試合に負けたときっ!」
真っ直ぐに人の目を見て答えてくる。
「うん。それをね、気持ちが晴れるとか曇るとか、そんなふうにたとえているの」
「あっ! わかったよ! じゃぁ、お姉ちゃんは今悲しいの? 試合負けちゃった?」
上目がちに心配そうな視線を注がれる。
うぅぅ……拓斗くん、かわいい……。
でも、私にとって試合って――つまりは身体との闘いとか学校へきちんと通えるかとか、きっとそういうこと。
「拓斗くんは悲しいことや嫌なことがあったらどうする?」
「うーん……テニスのラケット振ってボールを打つ! それかサッカーボールを思い切り蹴るっ!」
その返答に思わず笑みが漏れる。
「それはすっきりしそうだね?」
「お姉ちゃんは?」
「私はね、お空を見るとなんとなくすっきりする気がするの」
「ふーん……お空、ねぇ?」
拓斗くんがベッドに腰かけ、一緒になって窓から見える空を見た。
かわいいなぁ……。
今は空よりも拓斗くんを見るほうが癒される気がする。
「何か悩みごと?」
美波さんに訊かれ、
「いえ、そういうわけではないんですけど、今週いっぱいは学校に行けないなぁ、とか色んなことを考えてしまうと心が曇り空で……」
「……真面目ねぇ? 休めてラッキーくらいに思わなくちゃ。しかも好きな人の家よっ!?」
言われて面食らう。
でも、お母さんに言われているような気がした。
なんとなく、美波さんの思考回路はお母さんに似ている気がする。
長い付き合いだと考え方が少し似通ったりするものなのかな……?
そこへ美波さんの携帯が鳴り出した。
「はーい! こちら美波ですっ!」
明るすぎる対応。
携帯に、というよりは、まるでトランシーバーか何かに応答するかの如く。
「あ、ゆうこちゃんね。いいわよ。――え? 今? 秋斗くんのとこにタクと一緒にお邪魔して翠葉ちゃんと話してたところ。――いいって、私が行くわ」
通話を切ると、すく、と立ち上がる。
「妊婦さんが荷物運べないって言ってるから手伝ってくるわね。拓斗、翠葉ちゃんにもうキスなんてしちゃだめよっ?」
「はーい……。でも、手ぇつなぐのはいい?」
「そのくらいなら良しっ! じゃ、すぐに戻ってくるから」
と、部屋を出ていった。
拓斗くんは、「バイバーイ」と手を振っている。
「拓斗くん、お母さん元気いいね?」
「元気良すぎて困っちゃうんだよねー。とくにパパが」
「どうして?」
「元気があまりすぎてて色んなことしちゃうから、パパがそのシリヌグイするの」
「拓斗くん……尻拭いの意味知ってるの?」
「うん。後始末でしょ?」
あっけらかんとした答えに唖然とした。
こんなに小さいのに難しい言葉を知っているのね……。
それにしても、元気があり余って何をしちゃうのかな?
それが気になりつつも、拓斗くんの学校での話を聞くのはとても楽しかった。
学校の話をしていたかと思えば、突飛な話を振られる。
「ねぇ、お姉ちゃんは秋斗お兄ちゃんが好きなの?」
「えっ!?」
「あっ! 戸惑った! どうせ秋斗お兄ちゃんに押し切られちゃったんじゃないのー? ママが秋斗お兄ちゃんは格好いいから女の子は誰でも流されちゃうって言ってたもん」
なんて答えたらいいのかな……。
「……流されて付き合っているわけではないと思います」
「えー!? じゃぁ、好きっ?」
屈託のない顔で聞いてくる。
それにコクリと頷くと、口を半開きにした拓斗くんがじっと私を見ていた。
「拓斗、くん?」
「お姉ちゃん、顔真っ赤っ! トマトみたい!」
確かに顔が熱い。もう、やだ……。
頬を両手で覆うと、手のほうが冷たいくらいだった。
すると、リビングへ通じるドアではなく、秋斗さんの仕事部屋に抜けるらしいドアからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けると、
「秋斗さんっ!?」
もうやだ……絶対に全部聞いてたんだ。
「拓斗、あまり翠葉ちゃんをいじめないでくれる?」
と、拓斗くんの隣に腰掛けると小さな頭に手を乗せる。
手、大きい……。
大きいのは知っていたけれど、こうやってみると本当に大きな手であることがわかる。
拓斗くんはその手を嬉しそうに受けていて、とてもかわいい。
腕に絡み付いて秋斗さんにじゃれつく様は、まるで犬が尻尾をはちきれんばかりに振ってじゃれついているように見える。
拓斗くん、秋斗さんが大好きなんだなぁ……。
「だって、お姉ちゃんかわいいんだもんっ! うちのクラスの女子よりもウブだよっ!」
初心って――
「翠葉ちゃん、拓斗に言われてるけど?」
秋斗さんは面白そうに笑って私を振り返る。
私は何も答えることができなかった。
そこへ美波さんの笑い声が聞こえてきた。
ほどなくして美波さんと妊婦さんが入ってくる。
「あ、ゆうこちゃん。お腹の子は順調?」
秋斗さんが訊くと、「はい、もう元気すぎて」とその人は柔らかく笑った。
私を視界に認めると、
「あなたが御園生翠葉ちゃん?」
「はい……」
「私、蒼樹くんと同級生なの。倉田ゆうこです」
「……蒼兄の同級生って……高崎さんとも同級生ですか?」
にこりと笑って、「そうよ」と答える。
「……兄がお世話になってました……かな? 妹の翠葉です」
奇妙な挨拶になってしまい首を傾げていると、クスクスと笑われた。
「こんなにかわいい妹さんだったのねぇ……。かわいい妹がいるって話はずっと聞いていたんだけど、写真なんて一度も見せてはくれなかったし、葵くんも一度しか会ったことがないって言ってて、でも、すごくかわいいよって情報だけはくれるから、すごく見てみたかったのよ」
「……あの、たぶん『かわいい』というのは年が離れてるから『かわいがってる』という意味だと思います」
「いいえっ」
ゆうこさんはキッパリと言いきった。
「彼のシスコンは筋金入りなんだから」
それには反論をすることができない。
「でも、こんなにかわいい子なら納得だわ」
「……え?」
「私、蒼樹くんが大好きで、高校のときに一時お付き合いしていた時期があるの。でも、うまくいかなかったのよ」
いきなりのカミングアウトにびっくりする。
美波さんはお母さんの古くからの知り合いみたいだし、高崎さんとゆうこさんは蒼兄の高校の同級生。ほかにも何かが潜んでいそうで、このマンションの住人には会うたびにドキドキしそうだ。
「翠葉ちゃん、大丈夫?」
目の前で美波さんに手を振られ、
「あ、はい……大丈夫です。なんだかびっくりすることが多くて……」
「翠葉ちゃん、私がここの住人っていうのは蒼樹くんに内緒にしてもらえるかしら?」
「え……?」
「……偶然会いたいの。偶然再会して『久しぶり』って言いたいの。だから、お願いね」
「……はい」
ゆうこさんはとてもかわいらしい方だった。
ロングヘアの毛先に緩いパーマをかけていて、ふわっとした感じの人。実際の年よりも少し幼く見えるかもしれない。
それに対し、美波さんは真夏の太陽みたいな人。とても元気がよくて何もかもを照らしあげるような……そんなバイタリティを感じる。
美波さんが太陽ならゆうこさんは陽だまり。そんな印象。
「私、準が帰ってくる時間だから帰ります」
と、ゆうこさんが部屋を出ると、拓斗くんがベッドから飛び降り走り出した。
「僕、ゆうこさん送るー!」
「タクっ、走らない飛びつかない抱きつかないっ!」
美波さんは拓斗くんのあとを追って部屋を出ていった。
みんな元気……。
唖然としていると、
「くっ、翠葉ちゃん相当びっくりしてるみたいだね?」
「それはもう……。おもちゃ箱を開けた感じというか、何か開けちゃいけない箱を開けてしまった感覚に囚われるのはどうしてでしょう……?」
そう口にして、またくつくつと笑われた。
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