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19 Side 桃華 01話
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今日には聞き出さなくてはいけないこと、やらなくてはいけないことがかなりある。
頭の中でひとつずつ整理をしていると、やらなくてはいけないことのひとつが大騒ぎしながら教室に入ってきた。
海斗と千里にも、今日のどこかで話さなくてはいけない。
生徒会役員確定の話と、明日の大掛かりなイベントのことを。
ふたりとも機動力はあるのだが、若干顔に出やすい。ゆえにまだ伝えていないのだ。
「な、桃華! レア情報知りたくね?」
「何? 私が仕入れられなさそうなネタなの?」
そんなもの、この校内においてはないと言っていいだろう。
「どうかな? まぁいいや、聞いて驚け! 今日の放課後、司と翠葉がデートだって!」
どうやら藤宮司は首尾よく動いているようだ。それでなくてはすべてが台無しになる。
席にかばんを置いた翠葉は妙に慌てて否定した。
「海斗くんっ、デートじゃないよ!? ただ、付き合ってほしいって言われただけっ」
少し不安に思い、
「翠葉……一応確認なんだけど、その付き合ってほしいの意味、履き違えてないんでしょうね?」
「あ、わ、大丈夫っ。だって『用事があるから』って、『市街まで付き合って』って言われたものっ。今度は正真正銘、どこかへ行くのに付き合う、の付き合うだよっ」
自信を持って答える翠葉に少しほっとする。
海斗、残念だけどこれは私の想定範囲内よ。
今日、四時十五分から四時半までの間に藤宮司が翠葉を学校から連れ出すことを前提で物事が進む。
四時半に校内放送にて明日のイベントを開示し、イベントの抽選会を桜林館で行うことになっている。
各クラス委員には四時半までクラスの人間を校内に留めるように、とだけ生徒会から指示を出していた。
「俺、午後練サボってあとつけたいくらい興味津々なんだけどっ!」
いえ、海斗にはほかにやってもらうことが山ほどあるから無理よ。
そうは思いつつ、
「私も右に同じよ……。ま、そんなえげつないことはしないけど。……あぁ、そうだ。海斗あとで話があるの」
そうね、昼前には話しておこう。千里にはいつ話そうか……。
今一番の問題児。なんといっても翠葉をターゲットにしている最中だし……。
校内放送をかけるのと同時に呼びつけるのが妥当ね。
あとで茜先輩にメールを送っておこう。きっと校内放送を担当するのは久先輩だろうから。
そんな段取りを頭でしていると、飛鳥のよく通る声がした。
「あー! サボり魔海斗発見っ!」
「今日だけじゃん。魔じゃねーし!」
いつものように言い合いが始まる。
うるさいと思いつつ、この万年部活大好き人間が朝練をサボるとは珍しいと思った。
物珍しいものを見るように海斗を見ていると、
「はいはい、ふたりともうるさいから。人様の迷惑になるでしょ? どーどーどーどー……。あ、高崎悪い。いつも二頭がうるさくて」
と、佐野が止めに入った。
今までは私がやっていたことを気づけば佐野がやるようになっていた。
佐野を見て思う。外部生の割に、この学校に馴染むのが早かったな、と。
今回生徒会に持ち込んだプランニングは私と佐野が練ったものだった。
佐野ならイベントの実行委員をやらせてもいい動きをするかもしれない。
いつもと変わらないホームルームに授業。気がつけばお昼休み。
校内展示が終わったこともあり、クラスでお弁当を食べる人が多い。
そして、今日の翠葉は少しおかしい。なぜか周りをきょろきょろ見ては胸を撫で下ろす。
後ろから見ていてわかる程度に肩に力が入っていた。
それに気づいたのは私だけではなかった。翠葉マニアの飛鳥が、
「翠葉、どうかした?」
「え? どうもしないけど?」
普通を装ってはいるけれど、挙動不審にしか見えない。
「そう……? なんか緊張してるように見えたり、ほっとしてたり、それの繰り返しな気がしたんだけど」
翠葉は観念したのか、
「……うん。ちょっとだけそういうのあるかもしれない」
手元に視線を落としてから、気を取り直すといったふうに顔を上げ、
「ちゃんと自分で消化してから話すね。だから、そのときは聞いてほしいな」
内容を話すことはなかった。
蒼樹さんは何か知っているのかしら……。
「まさか、藤宮司と出かけるのに緊張してるとかないわよね?」
念のために確認をすると、
「……え? どうして司先輩と出かけるのに緊張しなくちゃいけないの?」
「そうよね……そんなわけないわよね」
誰がどう見ても今は藤宮司じゃなくて秋斗先生一筋って感じだもの。
お可哀想に、フジミヤセンパイ。
「そういえば、翠葉ってウエストいくつ?」
普段の話となんら変わらない口調で訊くと、
「え? 五十六とか五十八だったと思うけど……?」
やっぱり細いわね……。
「ほっそ……」
海斗が凝視すると、
「海斗、視線がエロイからやめろ」
佐野が突っ込んだ。
佐野、ナイス突っ込み……。
「ブラのサイズは?」
そのままの流れで口にしたけど、今度ばかりは翠葉が固まった。
「あの……桃華さん、これはなんの調査だろう?」
さすがにこっちは無理ね。
「ちょっとした市場調査」
でも、これを訊き出さないことにはミッションが終わらない。
「そうね、男子の前で言わせることでもないわね。ここに書いて」
強引に手の平を差し出すと、素直に文字を書き始めた。
綴られる数字と英語に衝撃を受けつつ、
「細いのにグラマーね……。じゃ、サイズにすると七号かしら」
これでスリーサイズはクリア。ヒップは訊くまでもないわ。
すぐに嵐子先輩にメールを送って、海斗を呼び出すためのメールも送らなくちゃ……。
頭の中でひとつずつ整理をしていると、やらなくてはいけないことのひとつが大騒ぎしながら教室に入ってきた。
海斗と千里にも、今日のどこかで話さなくてはいけない。
生徒会役員確定の話と、明日の大掛かりなイベントのことを。
ふたりとも機動力はあるのだが、若干顔に出やすい。ゆえにまだ伝えていないのだ。
「な、桃華! レア情報知りたくね?」
「何? 私が仕入れられなさそうなネタなの?」
そんなもの、この校内においてはないと言っていいだろう。
「どうかな? まぁいいや、聞いて驚け! 今日の放課後、司と翠葉がデートだって!」
どうやら藤宮司は首尾よく動いているようだ。それでなくてはすべてが台無しになる。
席にかばんを置いた翠葉は妙に慌てて否定した。
「海斗くんっ、デートじゃないよ!? ただ、付き合ってほしいって言われただけっ」
少し不安に思い、
「翠葉……一応確認なんだけど、その付き合ってほしいの意味、履き違えてないんでしょうね?」
「あ、わ、大丈夫っ。だって『用事があるから』って、『市街まで付き合って』って言われたものっ。今度は正真正銘、どこかへ行くのに付き合う、の付き合うだよっ」
自信を持って答える翠葉に少しほっとする。
海斗、残念だけどこれは私の想定範囲内よ。
今日、四時十五分から四時半までの間に藤宮司が翠葉を学校から連れ出すことを前提で物事が進む。
四時半に校内放送にて明日のイベントを開示し、イベントの抽選会を桜林館で行うことになっている。
各クラス委員には四時半までクラスの人間を校内に留めるように、とだけ生徒会から指示を出していた。
「俺、午後練サボってあとつけたいくらい興味津々なんだけどっ!」
いえ、海斗にはほかにやってもらうことが山ほどあるから無理よ。
そうは思いつつ、
「私も右に同じよ……。ま、そんなえげつないことはしないけど。……あぁ、そうだ。海斗あとで話があるの」
そうね、昼前には話しておこう。千里にはいつ話そうか……。
今一番の問題児。なんといっても翠葉をターゲットにしている最中だし……。
校内放送をかけるのと同時に呼びつけるのが妥当ね。
あとで茜先輩にメールを送っておこう。きっと校内放送を担当するのは久先輩だろうから。
そんな段取りを頭でしていると、飛鳥のよく通る声がした。
「あー! サボり魔海斗発見っ!」
「今日だけじゃん。魔じゃねーし!」
いつものように言い合いが始まる。
うるさいと思いつつ、この万年部活大好き人間が朝練をサボるとは珍しいと思った。
物珍しいものを見るように海斗を見ていると、
「はいはい、ふたりともうるさいから。人様の迷惑になるでしょ? どーどーどーどー……。あ、高崎悪い。いつも二頭がうるさくて」
と、佐野が止めに入った。
今までは私がやっていたことを気づけば佐野がやるようになっていた。
佐野を見て思う。外部生の割に、この学校に馴染むのが早かったな、と。
今回生徒会に持ち込んだプランニングは私と佐野が練ったものだった。
佐野ならイベントの実行委員をやらせてもいい動きをするかもしれない。
いつもと変わらないホームルームに授業。気がつけばお昼休み。
校内展示が終わったこともあり、クラスでお弁当を食べる人が多い。
そして、今日の翠葉は少しおかしい。なぜか周りをきょろきょろ見ては胸を撫で下ろす。
後ろから見ていてわかる程度に肩に力が入っていた。
それに気づいたのは私だけではなかった。翠葉マニアの飛鳥が、
「翠葉、どうかした?」
「え? どうもしないけど?」
普通を装ってはいるけれど、挙動不審にしか見えない。
「そう……? なんか緊張してるように見えたり、ほっとしてたり、それの繰り返しな気がしたんだけど」
翠葉は観念したのか、
「……うん。ちょっとだけそういうのあるかもしれない」
手元に視線を落としてから、気を取り直すといったふうに顔を上げ、
「ちゃんと自分で消化してから話すね。だから、そのときは聞いてほしいな」
内容を話すことはなかった。
蒼樹さんは何か知っているのかしら……。
「まさか、藤宮司と出かけるのに緊張してるとかないわよね?」
念のために確認をすると、
「……え? どうして司先輩と出かけるのに緊張しなくちゃいけないの?」
「そうよね……そんなわけないわよね」
誰がどう見ても今は藤宮司じゃなくて秋斗先生一筋って感じだもの。
お可哀想に、フジミヤセンパイ。
「そういえば、翠葉ってウエストいくつ?」
普段の話となんら変わらない口調で訊くと、
「え? 五十六とか五十八だったと思うけど……?」
やっぱり細いわね……。
「ほっそ……」
海斗が凝視すると、
「海斗、視線がエロイからやめろ」
佐野が突っ込んだ。
佐野、ナイス突っ込み……。
「ブラのサイズは?」
そのままの流れで口にしたけど、今度ばかりは翠葉が固まった。
「あの……桃華さん、これはなんの調査だろう?」
さすがにこっちは無理ね。
「ちょっとした市場調査」
でも、これを訊き出さないことにはミッションが終わらない。
「そうね、男子の前で言わせることでもないわね。ここに書いて」
強引に手の平を差し出すと、素直に文字を書き始めた。
綴られる数字と英語に衝撃を受けつつ、
「細いのにグラマーね……。じゃ、サイズにすると七号かしら」
これでスリーサイズはクリア。ヒップは訊くまでもないわ。
すぐに嵐子先輩にメールを送って、海斗を呼び出すためのメールも送らなくちゃ……。
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