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August
夏の思い出 Side 翠葉 03話
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途中、サービスエリアで休憩を取ってからさらに一時間ほど走ると、緑がきれいな山間が見えてきた。
雲間から、幾筋もの光芒が山に差し込む。
写真を撮りたいところだけれど、カメラはトランクに入れてあるし、緊急事態でもないのに高速道路の路肩に停車することはできない。
仕方なく、目に焼き付けるべくその光景を眺めていた。
眺めているだけでは飽き足らず、
「天使の梯子、きれいね!」
ツカサを巻き込もうと声をかけると、
「天使の梯子って?」
博識なツカサも「天使の梯子」は知らないらしい。
「あの雲間から漏れる太陽の光の筋のことをそう言うの」
光芒の位置は左前方ということもあり、左へカーブしている今なら、車の運転をしているツカサが見ることも難しくはないだろう。
案の定、ツカサは光芒を視界に認めると、「へぇ……」と声を漏らした。
「小学生のころに空の写真集を読んで知ったのだけど、あのころは雲の上に天使様がいるって真面目に信じてたな」
「すごい翠らしいエピソード」
「ツカサはそういうエピソードないの?」
「言われてすぐ思い当たるものはないかな……。俺の小さいころの話なら、周りの人間のほうが詳しいと思うけど?」
それは、ツカサ以外の人に訊いてもいいということだろうか……。
じっとツカサを見ていると、
「別に聞かれて困るようなことはないと思うし、今度母さんとお茶会するときにでも訊いてみれば?」
「そうする!」
「緑山に着く前に言っておくけど……」
「ん?」
「緑山に着いたら、昼食や夕飯、バーベキューはみんなと行動するけど、そのほかは別行動だからそのつもりで」
「そうなの……?」
「なんのための旅行だと思ってるの?」
なんのため……?
「え? なんのため……?」
ツカサは信じられないものでも見るような目で私を見てから、前方へ視線を戻した。
「えっ!? なんのため? 何か目的あったっ!? 強いて言うなら星を見るためだったと思うのだけど、私、何かスルーしてるっ!?」
シートベルトを引き出し、ガッツリツカサの方を向くと、
「ふたりきりで過ごすためっ」
まるでヤケクソ――そんな言い方をされて、私は旅行を家族に申し出た日のことを思い出す。
そうだった……。ツカサは最初からふたりで行くつもりでいて、秋斗さんや唯兄が一緒に行くことは渋々了承しても、海斗くんや飛鳥ちゃんたちにも声をかけようかと提案したときにはバッサリと斬り捨てたんだった。
「ごめん……」
「到着する前に理解してくれればそれでいい」
「はい……」
「……俺とふたりきりになることよりも、みんなと団体行動するほうがよかった?」
ちら、とこちらを見たツカサに対し、私は慌てて首を左右に振る。
「そんなことないっ――みんなと一緒なのも絶対楽しいけど、ツカサと一緒にいられるのはものすごく嬉しいよ? 寝るときに『おやすみ』と、朝起きて一番に『おはよう』を言えるのはとっても貴重っ」
「ならよかった。どっちにしろ、日中は団体行動になりそうだけど……」
半分諦めているようなツカサに、
「が、がんばろうっ!? ふたりの時間を死守しようっ?」
必死になって声をかけると、
「その言葉、信じてるから」
まるで言質を取られたような気分だった。
緑山の別荘地に着いたのはお昼少し前のこと。
雅さんは私たちより三十分ほど早く着いていたらしく、感動の再会を果たしては、桃華さんを紹介する。と、ふたりはすぐに打ち解けあい、仲良く話すようになった。
「翠葉さん、すてきな計画を立ててくれてありがとう! 何かないと帰国しないから、とっても嬉しかったわ」
言われて少し疑問に思う。
もともとの旅行発案者はツカサだし、大勢での旅行になったのは、成り行き感が否めない。
「雅さん、唯兄になんて言われたんですか?」
「え? 翠葉さんと司さんが旅行へ行くのに便乗して、Fメディカル起業メンバーで社員旅行へ行くって……。確か、社長直々のお達しだから、必ず参加するように、って……」
そう言われてみれば、起業メンバー勢ぞろいかも……? ――否、ひとり不在だ。
「竜田さんは? 竜田さんも起業メンバーですよね?」
「竜田さんなら、お盆にお休みが欲しいという理由から、今回の旅行は留守番組だとうかがっているけれど……?」
「そうなんですね……」
と納得して見せてはみたけれど、何かがおかしい……。
「もともとは、ツカサと私のふたりで旅行に行きたいって両親に話したんです。そしたら、さすがに未成年だけで泊まりの旅行は……っていう話になって、蒼兄や唯兄が一緒ならいいよ、って許可が下りたんです」
雅さんにお声がかかった理由としては、桃華さんを同行させやすい環境を整えるためであって、それがいつ社員旅行に切り替わったのか……。
悩んでいると、
「じゃあ、社員旅行に切り替わったのは唯くんの機転かしら? だとしたら、唯くんに感謝ね」
そんな会話をしていると、桃華さんも嬉しそうに会話に混ざった。
「私も唯さんと雅さんに感謝です!」
「あら? 桃華さんも何か事情がおありなの?」
そこで、桃華さんが蒼兄とお付き合いしていることを話すと、雅さんはすべてを察したように頷いた。
「じゃ、ふたりで唯くんにお礼を言いに行きましょうか」
「はいっ!」
ふたりは仲良く並んで、あれこれこき使われている唯兄のもとへ向かった。
あとはみんな顔見知りというか、それ以上に親しい関係のため、誰に誰を紹介する必要もなく、車から荷物を下ろす手伝いをしようと車に近づいたところ、
「私どもにお任せください。お嬢様のハープも傷ひとつ付けずにお運びいたしますので」
と、武明さんに断られてしまった。
数歩下って警護班の様子を見ていると、
「任せておけばいい。俺たちの荷物は全部、星見荘へ運んでもらえる」
「ほしみそう……?」
「星を見る別荘で、星見荘」
「星を見るための別荘……?」
ツカサはひとつ頷き、
「別荘の中からも星は見えるらしいけれど、その前にある泉に映る星がすごくきれいだって母さんが言ってた」
「え? ツカサは泊まったことがないの?」
「泉単体は見たことがあるけど、星見荘自体は九年前に母さんの要望で建てられた別荘だし、そのころから俺たち子どもは、子どもだけでこっちの陽だまり荘に泊まるようになったから」
「そうなのね。でもその別荘、特別な建物ではないの……? 私たちが使わせていただいてもよかったのかな?」
「母さんが、翠なら喜んでくれるだろうって言ってた」
「そっか……ふふ、なんだかものすごく楽しみになってきちゃった」
「管理人の稲荷さんがきれいに手入れしてくれてるはずだから、楽しみにしてていい」
「うん」
管理棟の斜向かいに建つ蒼兄たちが泊まる別荘は、華美すぎない洋館だった。
一階にも入り口はあるけれど、雪が降ると一晩で一階部分が埋まってしまうこともあるらしく、建物の中央に二階へ上がる階段が設けられている。
一階は二十畳ほどの談話ルームのほかに、六部屋のゲストルームがあり、それぞれの部屋にトイレとシャワーブースがあるものの、それ以外にも湯船付きのバスルームが各階にひとつずつあるという。
なんといっても二階――このフロアの広さには度肝を抜かれる。
機能としては、キッチン、ダイニング、リビング、バスルーム、トイレといたって普通の内容なのだが、その広さが尋常じゃない。
ツカサも正確な広さは知らなかったけれど、蒼兄の見立てだと、一〇〇畳はあるんじゃないかとのこと。
キッチンは、いかにも女の子が憧れそうな北欧系のユニットが入っているし、ダイニングテーブルは幅が二メートル弱、長さ四メートルほどの一枚板。天然木から切り出した、とても質のいい天板を使用している。並べられた椅子を数えてみれば、十六脚。つまり、それだけの大人数でテーブルを囲むことができるのだ。
リビングにおいては応接セットがひとつではなく、三箇所にスペースが区切られており、それぞれに応接セットが完備されている。それも、かなり大き目の、仰々しいソファセットが。
照明や飾られている絵画のどれをとってもセンスがよく、「さすが藤宮の別荘」といった感じだ。いやみたらしさや下品さを微塵も感じられないところが、本当にすばらしい。
カーテンやソファのファブリックが統一されているのは当然として、それらがすべてリネンでまとめられているところに頭が下る。
夏という季節の滞在を、いかに快適に過ごせるかまで考えられている気がする。
きっと、季節によってファブリックは変えられるのだろう。冬に来れば、厚地のカーテンであったり、ぬくもりを感じられるツイードなどの生地がソファを覆っているはず。
「蒼兄っ! 暖炉っ! 本物の暖炉っ!」
「今が冬じゃないのがもったいないなぁ……。冬だったら、暖炉の火を見ながら酒を飲むの、うまいだろうなぁ」
「雰囲気に酔えそうよね? バスルームはどんなかな?」
「見に行こうっ!」
蒼兄とふたり揃ってバスルームを見に行くと、洗面所の床や洗面台は乳白色の大理石で、バスルームの内装も同じ素材で統一されている。そして、単なるユニットバスが組み込まれているのかと思いきや、猫足がかわいいバスタブとシャワーブースが別に作りつけられていた。
「かわいいー! 猫脚っ! 蒼兄っ、猫脚っ!」
「しかも、ちゃんと金でできてるところがなんとも言えないよなっ!」
私と蒼兄はキャーキャー騒ぎながら室内をめぐり、調度品のすばらしさに感嘆する。
「あんちゃんたちちょっと落ち着きなよ……。二泊三日っしょ? 今急いで見て回らなくても十分鑑賞する時間あるってば……。まずはお世話になる稲荷さん夫妻に挨拶じゃないの?」
唯兄の言葉に私と蒼兄ははっとする。
辺りを見回すと、秋斗さんや蔵元さん、桃華さんに雅さんにクスクスと笑われていた。ツカサはというと、予想通りの呆れ顔。
私と蒼兄は身を縮こめて稲荷さん夫妻へと向き直る。
旦那様は辰治さん、奥様は鈴子さん。どちらもふくよかな体型で、笑顔が優しい人当たりの柔らかそうな人たちだ。なんとなく、「森のくまさん」を彷彿とさせるふたりに向かい、
「二泊三日お世話になります」
蒼兄が頭を下げるのに習い、私も同時に頭を下げた。
雲間から、幾筋もの光芒が山に差し込む。
写真を撮りたいところだけれど、カメラはトランクに入れてあるし、緊急事態でもないのに高速道路の路肩に停車することはできない。
仕方なく、目に焼き付けるべくその光景を眺めていた。
眺めているだけでは飽き足らず、
「天使の梯子、きれいね!」
ツカサを巻き込もうと声をかけると、
「天使の梯子って?」
博識なツカサも「天使の梯子」は知らないらしい。
「あの雲間から漏れる太陽の光の筋のことをそう言うの」
光芒の位置は左前方ということもあり、左へカーブしている今なら、車の運転をしているツカサが見ることも難しくはないだろう。
案の定、ツカサは光芒を視界に認めると、「へぇ……」と声を漏らした。
「小学生のころに空の写真集を読んで知ったのだけど、あのころは雲の上に天使様がいるって真面目に信じてたな」
「すごい翠らしいエピソード」
「ツカサはそういうエピソードないの?」
「言われてすぐ思い当たるものはないかな……。俺の小さいころの話なら、周りの人間のほうが詳しいと思うけど?」
それは、ツカサ以外の人に訊いてもいいということだろうか……。
じっとツカサを見ていると、
「別に聞かれて困るようなことはないと思うし、今度母さんとお茶会するときにでも訊いてみれば?」
「そうする!」
「緑山に着く前に言っておくけど……」
「ん?」
「緑山に着いたら、昼食や夕飯、バーベキューはみんなと行動するけど、そのほかは別行動だからそのつもりで」
「そうなの……?」
「なんのための旅行だと思ってるの?」
なんのため……?
「え? なんのため……?」
ツカサは信じられないものでも見るような目で私を見てから、前方へ視線を戻した。
「えっ!? なんのため? 何か目的あったっ!? 強いて言うなら星を見るためだったと思うのだけど、私、何かスルーしてるっ!?」
シートベルトを引き出し、ガッツリツカサの方を向くと、
「ふたりきりで過ごすためっ」
まるでヤケクソ――そんな言い方をされて、私は旅行を家族に申し出た日のことを思い出す。
そうだった……。ツカサは最初からふたりで行くつもりでいて、秋斗さんや唯兄が一緒に行くことは渋々了承しても、海斗くんや飛鳥ちゃんたちにも声をかけようかと提案したときにはバッサリと斬り捨てたんだった。
「ごめん……」
「到着する前に理解してくれればそれでいい」
「はい……」
「……俺とふたりきりになることよりも、みんなと団体行動するほうがよかった?」
ちら、とこちらを見たツカサに対し、私は慌てて首を左右に振る。
「そんなことないっ――みんなと一緒なのも絶対楽しいけど、ツカサと一緒にいられるのはものすごく嬉しいよ? 寝るときに『おやすみ』と、朝起きて一番に『おはよう』を言えるのはとっても貴重っ」
「ならよかった。どっちにしろ、日中は団体行動になりそうだけど……」
半分諦めているようなツカサに、
「が、がんばろうっ!? ふたりの時間を死守しようっ?」
必死になって声をかけると、
「その言葉、信じてるから」
まるで言質を取られたような気分だった。
緑山の別荘地に着いたのはお昼少し前のこと。
雅さんは私たちより三十分ほど早く着いていたらしく、感動の再会を果たしては、桃華さんを紹介する。と、ふたりはすぐに打ち解けあい、仲良く話すようになった。
「翠葉さん、すてきな計画を立ててくれてありがとう! 何かないと帰国しないから、とっても嬉しかったわ」
言われて少し疑問に思う。
もともとの旅行発案者はツカサだし、大勢での旅行になったのは、成り行き感が否めない。
「雅さん、唯兄になんて言われたんですか?」
「え? 翠葉さんと司さんが旅行へ行くのに便乗して、Fメディカル起業メンバーで社員旅行へ行くって……。確か、社長直々のお達しだから、必ず参加するように、って……」
そう言われてみれば、起業メンバー勢ぞろいかも……? ――否、ひとり不在だ。
「竜田さんは? 竜田さんも起業メンバーですよね?」
「竜田さんなら、お盆にお休みが欲しいという理由から、今回の旅行は留守番組だとうかがっているけれど……?」
「そうなんですね……」
と納得して見せてはみたけれど、何かがおかしい……。
「もともとは、ツカサと私のふたりで旅行に行きたいって両親に話したんです。そしたら、さすがに未成年だけで泊まりの旅行は……っていう話になって、蒼兄や唯兄が一緒ならいいよ、って許可が下りたんです」
雅さんにお声がかかった理由としては、桃華さんを同行させやすい環境を整えるためであって、それがいつ社員旅行に切り替わったのか……。
悩んでいると、
「じゃあ、社員旅行に切り替わったのは唯くんの機転かしら? だとしたら、唯くんに感謝ね」
そんな会話をしていると、桃華さんも嬉しそうに会話に混ざった。
「私も唯さんと雅さんに感謝です!」
「あら? 桃華さんも何か事情がおありなの?」
そこで、桃華さんが蒼兄とお付き合いしていることを話すと、雅さんはすべてを察したように頷いた。
「じゃ、ふたりで唯くんにお礼を言いに行きましょうか」
「はいっ!」
ふたりは仲良く並んで、あれこれこき使われている唯兄のもとへ向かった。
あとはみんな顔見知りというか、それ以上に親しい関係のため、誰に誰を紹介する必要もなく、車から荷物を下ろす手伝いをしようと車に近づいたところ、
「私どもにお任せください。お嬢様のハープも傷ひとつ付けずにお運びいたしますので」
と、武明さんに断られてしまった。
数歩下って警護班の様子を見ていると、
「任せておけばいい。俺たちの荷物は全部、星見荘へ運んでもらえる」
「ほしみそう……?」
「星を見る別荘で、星見荘」
「星を見るための別荘……?」
ツカサはひとつ頷き、
「別荘の中からも星は見えるらしいけれど、その前にある泉に映る星がすごくきれいだって母さんが言ってた」
「え? ツカサは泊まったことがないの?」
「泉単体は見たことがあるけど、星見荘自体は九年前に母さんの要望で建てられた別荘だし、そのころから俺たち子どもは、子どもだけでこっちの陽だまり荘に泊まるようになったから」
「そうなのね。でもその別荘、特別な建物ではないの……? 私たちが使わせていただいてもよかったのかな?」
「母さんが、翠なら喜んでくれるだろうって言ってた」
「そっか……ふふ、なんだかものすごく楽しみになってきちゃった」
「管理人の稲荷さんがきれいに手入れしてくれてるはずだから、楽しみにしてていい」
「うん」
管理棟の斜向かいに建つ蒼兄たちが泊まる別荘は、華美すぎない洋館だった。
一階にも入り口はあるけれど、雪が降ると一晩で一階部分が埋まってしまうこともあるらしく、建物の中央に二階へ上がる階段が設けられている。
一階は二十畳ほどの談話ルームのほかに、六部屋のゲストルームがあり、それぞれの部屋にトイレとシャワーブースがあるものの、それ以外にも湯船付きのバスルームが各階にひとつずつあるという。
なんといっても二階――このフロアの広さには度肝を抜かれる。
機能としては、キッチン、ダイニング、リビング、バスルーム、トイレといたって普通の内容なのだが、その広さが尋常じゃない。
ツカサも正確な広さは知らなかったけれど、蒼兄の見立てだと、一〇〇畳はあるんじゃないかとのこと。
キッチンは、いかにも女の子が憧れそうな北欧系のユニットが入っているし、ダイニングテーブルは幅が二メートル弱、長さ四メートルほどの一枚板。天然木から切り出した、とても質のいい天板を使用している。並べられた椅子を数えてみれば、十六脚。つまり、それだけの大人数でテーブルを囲むことができるのだ。
リビングにおいては応接セットがひとつではなく、三箇所にスペースが区切られており、それぞれに応接セットが完備されている。それも、かなり大き目の、仰々しいソファセットが。
照明や飾られている絵画のどれをとってもセンスがよく、「さすが藤宮の別荘」といった感じだ。いやみたらしさや下品さを微塵も感じられないところが、本当にすばらしい。
カーテンやソファのファブリックが統一されているのは当然として、それらがすべてリネンでまとめられているところに頭が下る。
夏という季節の滞在を、いかに快適に過ごせるかまで考えられている気がする。
きっと、季節によってファブリックは変えられるのだろう。冬に来れば、厚地のカーテンであったり、ぬくもりを感じられるツイードなどの生地がソファを覆っているはず。
「蒼兄っ! 暖炉っ! 本物の暖炉っ!」
「今が冬じゃないのがもったいないなぁ……。冬だったら、暖炉の火を見ながら酒を飲むの、うまいだろうなぁ」
「雰囲気に酔えそうよね? バスルームはどんなかな?」
「見に行こうっ!」
蒼兄とふたり揃ってバスルームを見に行くと、洗面所の床や洗面台は乳白色の大理石で、バスルームの内装も同じ素材で統一されている。そして、単なるユニットバスが組み込まれているのかと思いきや、猫足がかわいいバスタブとシャワーブースが別に作りつけられていた。
「かわいいー! 猫脚っ! 蒼兄っ、猫脚っ!」
「しかも、ちゃんと金でできてるところがなんとも言えないよなっ!」
私と蒼兄はキャーキャー騒ぎながら室内をめぐり、調度品のすばらしさに感嘆する。
「あんちゃんたちちょっと落ち着きなよ……。二泊三日っしょ? 今急いで見て回らなくても十分鑑賞する時間あるってば……。まずはお世話になる稲荷さん夫妻に挨拶じゃないの?」
唯兄の言葉に私と蒼兄ははっとする。
辺りを見回すと、秋斗さんや蔵元さん、桃華さんに雅さんにクスクスと笑われていた。ツカサはというと、予想通りの呆れ顔。
私と蒼兄は身を縮こめて稲荷さん夫妻へと向き直る。
旦那様は辰治さん、奥様は鈴子さん。どちらもふくよかな体型で、笑顔が優しい人当たりの柔らかそうな人たちだ。なんとなく、「森のくまさん」を彷彿とさせるふたりに向かい、
「二泊三日お世話になります」
蒼兄が頭を下げるのに習い、私も同時に頭を下げた。
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