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葉野りるは

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April

キスのその先 Side 司 04話

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 翠を抱きしめたまま、少し前の話題へ話を戻す。
「翠、おりものが増えるのはキスをした日だけって本当?」
「……恥ずかしいから何度も言わせないでっ。こんなことで嘘つかないものっ」
 噛み付くように抗議する翠に、
「……それ、性的興奮に組するものだと思う」
 翠は目を見開いて絶句した。
「でもそれ、おかしいことじゃないし……。俺にだってそういう事象は少なからずとも起こってる」
「え……?」
 今度はきょとんとした顔がこちらを向く。
「……キスしたあとはシャワーを浴びに行くだろ? それに今だって――」
 翠の表情は変わらない。
 こういうのが素だから困る……。
 俺は恥ずかしく思いながら、自分のそれが翠に当たるように位置をずらす。と、
「あ……」
 翠が一気に赤面した、首から耳まで見事に真っ赤。
「……だから、関係を少し先に進めたかった」
 翠は何を答えるでもなく、俺のシャツにしがみつく。
 腕から逃げられはしなかった。拒絶はされていない――
 状況分析をして冷静さを保ちつつ、
「翠に触れたい。……翠の全部に触れたい。俺にだけ、許してほしい」
「触れるって、どこに……?」
「全部。つま先から頭の天辺までくまなく」
「触れる、だけ?」
「……許されるなら身体を重ねたい」
「っ……」
「無理なら触れることだけは許してほしい」
 口にしながら、そんな器用なことができるのか、と自分に問う。
 触れて翠の反応を見たら、その先を考えずにはいられなくなるのではないか。
 身体を重ねることしか考えられなくなったら――
 考えたところで明確な答えは出ない。
 こんなとき、秋兄ならどうなのか……。
 秋兄ほど経験があったなら、こんな場面でも己をコントロールすることができるのだろうか。
 そんなことを考えていると、
「ツカサに触れられたら、おりもの、出なくなる……?」
 怯えた目が俺を見ていた。
 俺には秋兄みたいな経験はない。したがって、うまくリードすることはできないだろう。
 でも、翠が理解できるように話すことならできる気がする。
「……それはない。どちらかと言うなら、分泌物が出る立証はできると思うけど……。ただ、分泌物が出るならそれに伴った行為をすればいいだけだと思う」
「え……?」
「つまり、こういうこと……」
 翠の背に回していた手を速やかに移動させる。
 腰を通過すると、翠が脚に力を入れ閉じたのがわかった。けれど、華奢な翠が脚を閉じたところで完全に隙間がなくなるわけではない。
 脚の付け根に指を進め、柔らかな内腿に触れる。と、
「やっ――」
 翠が声を発したと同時、翠の腰がビク、と動く。
 俺は少し驚いていた。
 自分が今触れているのは秘部に近い内腿。しかし、そこがすでにぬめりを帯びていたのだ。
 ショーツの上から秘部に触れると、布越しでもわかるほどに潤っていた。
 事実、ワンピースに染みができてしまうほどには濡れているのだろう。
 抵抗されることを予想しつつ、ショーツの脇から指を忍ばせる。と、とろりとした粘液が指に絡んだ。
「ツカサ、やめてっ。恥ずかしいっ」
「恥ずかしいだけなら我慢して」
 翠はいっそう脚に力を入れ、口をきつく引き結ぶ。
「痛ければ言って」
 初めて触れた秘部は胸より柔らかくあたたかい。
 指先に触れるものを性器名称と一致させながら触れていくと、
「でもっ、汚いからっ――」
 翠は必死の抵抗を見せた。
「汚くないし……」
 次なる場所、指の腹にクリトリスが触れると、
「んっ、やっ――」
 感じているのだろうか。
 触れるたび、翠は恥ずかしそうに短い声を何度もあげる。
 すると、奥からとぷり、と蜜が追加された。
 感じている――翠が、俺のすることに感じている。
 それは今まで感じたことのない高揚感をもたらした。
「もっと感じて……」
 いてもたってもいられず、吐息を漏らし続ける口を自分のそれで覆う。
 蹂躙するように口腔に舌を這わせ、舌に吸い付き扱いていると、ビク、と翠の身体が跳ねた。
 たぶん、キスじゃなくてこっち……。
「ここ、感じるの?」
 確認のため、ぷくりと少し大きくなったそれを指でつつく。
 翠はもう一度身体を震わせた。
 クリトリスは誰もが感じるっていうけど、本当なんだな……。
 事前情報と照らし合わせるも、ショーツの脇から愛撫するのには限界があり、早急に取り払うことにした。
 ショーツを剥ぎ取り、
「洗濯機回してくる」
 翠を置き去りにして洗面所へ向かった。
 翠の秘部に触れていた指にはまだ粘液が絡んでおり、てらてらといやらしく光っている。
 俺は好奇心に耐え切れず、その指を舐めた。
 人体から発せられるものは汗にしても涙にしてもしょっぱい。それは愛液にしても変わらないはずだが、それでもどこか甘く感じる。
「やばい……翠のこと舐め尽したいかも」
 そんなことを考えながら洗濯機を回して部屋へ戻ると、翠は両手で顔を隠し背を丸めてうずくまっていた。
 部屋の照明は点いていないものの、窓からの光で問題のない明るさ。
 さすがに恥ずかしさに耐え切れなかったか……。
 そうは思いつつも、翠の顔を見たいと思う。
 細すぎる手首をマットの上に押さえつけ、恥ずかしさに耐える翠を見下ろす。すると、
「どうして……? どうしてそんなに嬉しそうなの?」
 そんなの――
「嬉しいから。逆に、翠はどうしてそんな不安そうな顔?」
「……だって、嫌いにならない?」
「なんで?」
 翠はもじもじと脚をすり合わせた。
 あぁ……。
「分泌物?」
 頷く翠の額に優しくキスを落とす。
「嫌いにならない。むしろ嬉しい……。キスに感じてくれていたことが。触れると奥からさらに溢れてくることが」
「……どうして?」
「この分泌物がなかったら、性行為は苦痛なものになると思う。分泌物が潤滑油になるから男性器がそこに入っても摩擦がおきづらくなる。……つまり、双方痛みを感じずに済む。そういうもの。……翠の身体は俺を受け入れる準備を整え始めたわけだけど、それが嬉しくないわけがないだろ?」
「……そう、なの……?」
「そう……。ちなみに、分泌物は膣液をはじめとして、バルトリン腺液、スキーン腺液、子宮頚管粘液とあって、それらすべてを総称して膣分泌液という。俗称は愛液」
「あい、えき……?」
「愛するの愛に、液体の液」
 きょとんとしていた顔が真っ赤に染まる。
 そんなところもすべてが愛おしい。
「翠のこれは病気じゃないし、婦人科にかかる必要もないから安心していい」
 もう一度触れたくて、翠の秘部に手を伸ばす。
 翠は不安そうな顔をしていたけれど、抵抗はしないでくれた。そして、指を這わせた瞬間に甘い声を発する。
「気持ちいい?」
 翠は恥ずかしそうに顔を逸らし、コクリと頷いた。
 どんな翠でも好きでいる自信はあるけれど、こんなふうに素直に肯定されるとたまらなくかわいく、そしていっそう愛おしく思う。
「良かった……。なら、もっと感じて。気持ちがいい場所をもっと教えて」
 翠が気持ちいいと感じる場所をもっと知りたい。もっともっと――
 性感帯を探していると、ぬぷ、と指が何かにはまった。
 中指が三六〇度から圧迫されている。
 たぶん、間違いない。これは膣の中――
 翠の顔を見ると、
「ツカ、サ……?」
 何をしたの、と言わんばかりの目に罪悪感が滲む。
「……悪い。入れるつもりはなかったんだけど……指が滑って中に入った」
 その言葉に、翠も事態を察知したらしい。
 ゆっくりを指を引き抜こうとしたら、
「んっ――」
 翠は少し苦しそうな声を発した。
 そんな翠を労わるように膣口をゆるゆると撫で回すと、蜜は止まることなく溢れてくる。
 とろりとろりと指に滴るそれを秘部全体に行き渡らせたものの、好奇心に負け、俺の指は未知の入り口へと戻ってしまう。
 今度はゆっくりと、そのくぼみへ指を沈めてみる。第二関節ほどまで入ると、きついと感じるほどに指が圧迫された。
「痛い?」
 翠は眉間にしわを寄せ、
「……痛くはないけど、変な感じ……」
 確かに、これだけ締め付けられているのだ。指を入れられている翠が圧迫感を感じていても不思議ではない。
「悪い、もうやめる……」
 俺は入れるときと同様にゆっくりと指を引き抜いた。
 本音を言うと、もう少し触れていたかった。
 翠の内側は思っていたよりはるかに熱く、柔らかな肉壁は指をぎゅうぎゅうと締め上げる。
 指一本ですらきつかったのだから、現況自分のそれを入れられるとは思えない。
 でも、もしここに己の欲望をあてがったなら、どれほどの快感を得られるのか――そんな想像が脳内をめぐった。
 触れるか触れないかくらいのタッチで、優しく翠の秘部をなぞっていると、
「あっ、やっ――」
「……ここ?」
 もとは小さかった芽が、今はぷっくりと膨らんで主張をしている。まるでここに触れてと言わんばかりに。
 そこに触れると、翠は喉の奥からかわいい声を発した。
「ぁっ……」
 ふと思う。初めての行為で相手をいかせることなどできるのか、と。
 性行為そのものがどういう行動をとるものなのか、そういったことは知識として知っている。でも、身体をひとつに重ねる前の前戯においては授業で習うものではない。
 ほか、自分が知ってることといえば、男は物理的作用があれば達することができるのに対し、女はその限りではないということ。
 あとは兄さんから聞いた付け焼刃の知識くらい。
 どうしたら翠を気持ちよくさせることができるのか。
 何をとってもわからないことだらけだ。
 でも、翠の反応を見ていたら、翠が感じる場所はわかる気がしたし、もしかしたら、という気持ちがないわけでもない。
 一点を緩急つけてリズミカルにさすり始めると、
「ぁっ……やっ――ツカサっ、怖いっ」
 翠は涙を流しながら「やめて」と懇願する。でも、感じていることは火を見るよりも明らか――
 俺は手を休めることなく、シーツを力いっぱい掴み、身体を捩って喘ぐ翠をじっと見つめていた。
 しだいに高みへ上り詰めるように声を発し始め、
「あっ……あっ……あっ……やぁっっっ――」
 ……達したのか?
 翠の身体はくたりと脱力し、荒い呼吸を繰り返す。そして、
「も……ほん、とに、も……だ、め――」
 もうやめて、と言わんばかりに懇願された。
 その額にはうっすらと汗をかいている。
 俺は涙が伝う頬に口付け、自分に乱されあられもない姿をしている翠を見つめる。
 その姿はとても美しく、
「きれいだ……」
 思わず、そう口にせずにはいられなかった。
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