上 下
156 / 436
第9章 魔王誕生編

156話 戦争する事になった!

しおりを挟む
「えっと……聞き間違いでしょうか?
 今リリィーさんが冒険王ガスターの妹と仰ったように聞こえたのですが……」

「ん、そう言った」

 聞き間違いでも何でも無く、事実リリィーは今ガスターの妹だとハッキリ言った。

「な、何がどうなって……」

「クリスティア、落ち着け」

「ガルドさん……」

「お前の気持ちはわかる、俺もお前と一緒で混乱してるからな。
 だが、ここで俺達が取り乱しても話が挫折するだけだろ?」

 ふむ、流石は現役のSランク冒険者。
 驚愕に目を見開いたのも最初の数秒だけで、大きく取り乱したりはしないか。

 酸いも甘いも知っている人生経験豊富なオッサンなだけはあるな。
 これが数々の修羅場……死線を潜り抜けて来た者の貫禄ってやつか!!

「おい、お嬢。
 今何か失礼なことを考えなかったか?」

 っ!  ガルドに思考を読まれた!?
 い、いや、この私を相手にガルドがそんな事をできるハズが無い。
 これは恐らく、ただの勘。

 ガルドの勘とはすなわち、長年第一線で戦って来た事で培われ、鋭く研ぎ澄まされた技能の一種。
 ただの勘だと侮る事はできないけど……例えガルドが確信を持っていようが、証拠も無ければ確証も無い!  

 つまり!  今ならまだ誤魔化せるという事。
 ふっ、ふっふっふ、ふはっはっは!  残念だったなガルド!  この勝負、私の勝ちだっ!!

「別に、何も考えてない」

 ふっ、どうよ?
 表情筋が死滅し、常時無表情と称されるこの私のポーカーフェイスを見破れるモノならば見破ってみるがいい!!

「目を泳がせながら言われてもなぁ……まぁとにかく俺はまだ36歳、オッサンって歳じゃねぇよ」

 いや、何言ってんの?  普通にオッサンじゃん。

「いえ、オッサンでしょう」

 おぉ、クリスティアが心底何言ってんだコイツって呆れたような顔で端的に言い放った!

「お嬢、言っておくがクリスティアは俺よりも年上で60を超えるババアだからな?」

「えっ……」

 クリスティアが、ガルドよりも、年上……この見た目でガルドよりも年上!?

「レフィー様!  騙されてはなりません。
 私は長命種であるエルフ、確かに私の年齢は62歳ですが人間の年齢に換算すると20歳過ぎです」

 あぁ、確かに言われてみればガルドは人間だけどクリスティアはエルフだったわ。

「そんな事より、何故ガスターの妹であるリリィーさんがレフィー様の眷属に?」 

「クリスティア殿の仰る通りです。
 何故、アルタイル王国がリーチェ侯爵家の御令嬢がこちらに?」

 あっ、グランツェ公がやっと復活した。
 まぁそれはさておき、リリィーが養女になったなってリーチェ侯爵家だったのか。

「レフィー様、まさか誘拐を……」

 むっ、失敬な!  誰がか弱い御令嬢を無理矢理誘拐なんてするか!!
 私はゲスでクズな勇者共とは違うのだ!
 まったくアランめ、今までグランツェ公と一緒に唖然としてたくせに!!

「リリィーは、今回の復讐の協力者。
 断じて私が誘拐したり、拉致したわけじゃない」

 乗り込んで来たのはリリィーの方だし、ここに留まるって決めたのもリリィー自身。
 まぁ、確かにリリィーを養女として迎え入れた家……リーチェ侯爵家には何も言ってないけど……うん、私は何も悪くない!!

「その辺り事はガスターの顛末と一緒に説明する」

 とは言え、一から説明するのは面倒……じゃ無くて、非効率的だからいつも通りとりあえず今回の一件に関する記憶を付与して後はみんなの質問に答えれば良いか。

「あと、もうすぐ戦争する事になった」

 これでよしっと!
 ガスターの事を説明するとなると興奮して、ついついこの事を忘れちゃうかもしれないし。
 その事を考慮して事前にしっかりと伝える私って偉いわ。
 今後の予定も伝えた事ですし!

「……今なんと?」

「はい、付与!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。 「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。 元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・ しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・ 怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。 そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」 シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。 下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記 皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません! https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952 小説家になろう カクヨムでも記載中です

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...