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第12章 深淵の決戦編

185話 提案です

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 一見クッションに見えず、玉座の様にも見えなくも無い特注クッションに腰掛け、膝をついて脚を組む。
 深々と背もたれに凭れこみ、両膝を地面について跪く数十名を見下す様に睥睨する。

「魔教団幹部の皆さんはじめまして、僕の名前はルーミエル。
 ナイトメアのリーダーにして深淵から世界を覗く者です」

「「「っ!」」」

 何人かが緊張した様に息を呑むのが手にとる様にわかりますね。
 威厳ある雰囲気を醸し出す為に態々特注で作った真っ白なクッションが効果を発揮したようで何よりです。
 まぁ尤も、彼らの緊張の大半は僕自身の溢れんばかりの威厳のおかげでしょけとねっ!!

 そもそも、白よりも絶対に黒の方が威圧感があってカッコイイ……じゃ無くて、威厳があります。
 何故かコレール達全員に全力で拒否されましたけど……

 まぁ色はちょっと不服ですけど、座り心地はアレサレムの物とは比べるのも烏滸がましい程に素晴らしい!!
 ふふふ、暇な大神達に1日中デザイン図を見てもらった甲斐がありました。

「さて、まぁ貴方達にも色々言いたい事があるでしょうけど、取り敢えず団長である5人に質問です。
 貴方達は魔教団が行っている実験等に手を染めていますか?」

 その質問に苦々しげに顔をしかめたのは5人中3名。
 しかしその3名も顔を軽くしかめはしたものの、この質問に答える気は無い様ですね。
 まぁ、答えなくてもなんの問題も無いですけど。

「第一と第三だけですか……これはちょっと意外です。
 尤も、その軍団までは管理できていなかった様ですけど」

「何の話だ?」

 そう言って怪訝そうに僕を睨みつけてくる大男……確か名前は、第一軍団長のリーガルでしたね。
 怖いですね……あんな大男に睨まれたら子供なら泣いちゃってますよ。

「貴方如きがっ!」

「ミーナ」

「でも!」

「あの者はの裁きは、ルーミエル様が下されます。
 私達が口出しする事ではありません」

 激昂してリーガルに猛烈な殺気を飛ばしたミーナを姉であるリーナが制止する。
 まぁリーナの言う通り、僕がどうするか決めますけど……この歳にして何て冷徹な目を!!

 ミーナは年相応の怒った少女と言った鋭い目でリーガルを睨んでますけど……
 リーナは、そう、例えるなら夫の浮気を知った妻の様な、まるで穢らわしい虫ケラでも見る様な冷たい視線。
 リーナ、恐ろしい子っ!!

「えっとですね。
 僕の神能の権能の1つに〝神眼〟と言う物がありまして。
 あぁ、神能と言うのは超強力なユニークスキルだと思って下さい。
 まぁ、その〝神眼〟は嘘を見抜いたり心を覗いたりできる権能を持っているのです」

「心を、覗く……」

「そうです。
 だから貴方が他人の事をどう思っているのかも知っていますよ、リーガルさん」

 まぁそれ以前にリーガルには自分が連れて来た奴隷、保護した彼女達の証言と言う決定的な証拠もありますけど。

「リーガルと、第三軍団の……」

「クレイネです」

「そう!  クレイネにはそれ相応の報いを受けて貰います」

 このさり気ないサポート。
 流石はコレールですね。
 何故か一瞬、メルヴィーとの間に火花が見えた気がしましたけど……まぁ別にいいでしょう!

「捕虜に対する国際法違反だっ!
 そもそも、お前の様な子供に何の権限があるってんだ!!」

 クレイネは粛々と受け入れたみたいですけど、リーガルは納得がいっていないみたいですね。
 それにしてもこの状況下で、しかもさっき名乗ったのに子供扱いされるとは……確かに見た目子供ですけど!

 自信満々に言い放ったリーガルに同調するのは、リーガルの側近達のみ。
 ほら!  他の軍団長や副官達も驚愕の目でリーガルを見てますよ!!

「何の権限が、ですか。
 そうですね……強いて言うのなら、ナイトメアのリーダーで、リーヴ商会の商会長で実質的な商業界の支配者であり、対魔教団同盟の盟主。
 あ、あと神だと言う程度しか……」

 我ながら凄い事言ってますね。
 自覚があります。
 だから、そんな白い目で見ないでっ!!

「神だと?
 はっ!  傑作だな幼女神様よぉ!?」

 ひ、人が気にしている事を……
 と言うか、さっきから何なんですかっ!?
 この人は仮にも捕虜ですよ?  助けを乞う事はあっても、挑発してくるとかバカなんですか?
 まぁ、バカなんでしょうけど……

「はぁ、もう面倒ですね。
 こうなったらアフィリスに……」

『自力でどうにかして下さい!』

 突然鳴り響く麗しき女性の声……先手を打たれましたか。
 と言うか、やっぱり見てましたね。
 しかし、甘い。

「この間のチェスで負けた方が1つ言う事を……」

『今度、美味しいスイーツを用意しとくから、ね?』

 こ、これは所謂、賄賂と言うやつですね。
 公平公正な僕が賄賂なんかに靡くと思っているなんて、浅はかです!

『実は神々の間も中々手に入らない超人気店のケーキがあるんだけど』

「彼を押し付けるのは辞めてあげましょう!」

『じゃあ、待ってるからまたね』

 そう言って声が途切れる。
 こっちとの通信を切った様ですね。
 しかし、神々ですら手に入れるのに苦労するケーキ……楽しみですっ!!

「と言う訳なので、貴方が信じるかどうかは勝手ですが静かにしていて下さい」

 あれ?
 ポカンと口を開けて間抜けな顔をしてますね。
 何故かリーガル以外の人達も唖然としてますし……まぁ、静かになったのは好都合。
 今のうちに話を進めてしまいましょう。

「第二・四・五軍団の皆さんに提案です」

「提案、ですか?」

 何故か全員が心ここに有らずな状況の中、唯一動じていない第四軍団長ヴァヌスさん。
 流石ですね、これが歳のなせる余裕ある態度というものですか。

「はい。
 魔教団を辞めて、僕達の仲間になりませんか?」

 僕の言葉に、流石のヴァヌスも驚愕に目を見開いた。
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