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第一章 

オレがこの世界に呼んだ

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頭の中に白いもやのようなものが
広がっている。

朧気な意識のまま、
声が頭に流れ込んでくる。

【ハナ…ハナちゃん】

ん…?先ほどのイケメンの声だ。

ぼんやりしながら、
心の中で問いかけてみる。

なんで私の名前知ってるの?

【オレがこの世界に呼んだから】

私はまだ夢を見ているようだ。
きっと頭を強く打って
悪い夢を見ているのだろう。
そろそろ覚めてほしい。

【これは夢じゃない】

夢に決まってるでしょ!
こんな意味不明な状況。

一気に感情がせきを切ったように溢れ出した。

【………】

返事はなく、
声の主は黙り込んでしまったようだ。

早くこの夢から覚めたい!
あなたが原因なら戻して

【アルファン王子】

え…?

ふと思考停止した。
ここ最近、何度も頭の中で呟いた名前。

【救いたいんだよな?】

うん!!!そりゃもちろん

朦朧とする意識の中、
全身に力を込め勢いよく頷いた。

【だからこの世界に連れてきた】

は?

【その願いを叶えるためにハナを呼んだ】

は?え…?

頭の中に疑問符が飛び回る。
どうゆうこと?!

【そうゆうことだ】

意味わかんない!!
全く説明になってない。

【ハナの救いたいって気持ちが強すぎた。
だからこの世界の扉が開いた。】

そりゃ、毎日お祈りはしてたけど…。
そんなことって現実に有り得る?

信じろって言われて、
すぐ受け入れる方が無理があるんでんdてすが。

【まあ、ハナが受け入れられなくても、
この物語はどんどん進む。
アルファン王子を救うか救わないかは
キミ次第だ】

ドクンッ…
心臓が強く脈を打った。


ウソみたいな話…
信じていいの?
でも、もう既に有り得ないことが
現実に起きている。

夢かもしれないけれど。


ドッドッドッ…
心臓を打つ音がどんどん速くなる。
目を開けようとするが、
どうしても瞼が重く思い通りに動かない。

【君にある能力を授けた。
先程のように強く祈ると
その力は発動する】

ほう…


【だが、ゲームのシナリオを変えようとするその力の反動は大きい…。
これは先に言っておくが、
堪えがたいほどの試練が
キミに襲いかかるだろう。】

言いにくそうに、声が少しかすれている。ゴクリと唾を飲み込んだ。

【それでもキミは頑張れるかい?
助けたいが、
僕ができることはここまでなんだ。】

堪えがたい試練とは?

今までの私のいじめられっ子人生も
散々なものだったが、
それ以上なのだろうか。

【逃げるなら今のうちだ。】

その瞬間、カッと目が開いた。

「逃げるもんか!!そんなの受けてやろうじゃないの!!!」
気づいたら大声で叫んでいた。


フッとかすかに笑う声が聞こえた。

【そう言うと思ったよ。僕の代わりに、サポート役をつけておく…君を導いてくれるだろう】

パァァァッ…

フラッシュがあり視界を真っ白に遮る。


【姿は現せないけど、
ハナをずっと見守ってるよ…】

静かな声が耳元で優しく溶け、
深海に沈んでいくように、
声が遠くなってゆく。

まだ、その声を聞いていたいのに。

またどこからからかメロディが聴こえ、
深い、深い眠りへと誘われた。

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