遠い昔からの物語

佐倉 蘭

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第一部「初めて」

第五話

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——うちゃぁ、これから、どがぁなことをされるんじゃ。

   うちの目に涙が込み上げてきた。
   間宮中尉が左右の手のひらで、うちの頬をすっぽり包んだ。大きな手だった。

「……わしが、いびせぇか」
   中尉は暗闇の中で、うちの目を見て云った。
「見合いの日も、結納の日も、そして今日も……わりゃぁ、まともに口きいてくれんけぇのう」

   うちの目の涙が、あふれそうなほどふくれ上がる。

「わしと夫婦めおとになるんが、そがぁにいらんのんか」
   闇の中でもうちの目に光るものが見えたのか、中尉は不安げに尋ねた。

   うちは、ぶんぶんと首を振った。それは、自分でも思いがけないほど、激しいものだった。

「……ほうか」
   中尉はほっとした声で呟いた。そして、首を振った拍子にあふれ出て、頬を伝っていくうちの涙を、親指でそっとぬぐった。

   中尉の顔が近づいてくる。中尉の唇がうちの唇を覆う。うちは自然と、中尉の背中へ、腕を回した。

   中尉の舌が、うちの口の中に入ってきた。
  「接吻」というものは知っていたが、それはただ唇と唇とを合わせるだけだと思っていた。
   まさか、そんなことまでするとは思わなかったので、うちはびくっとした。

   だけど、中尉は躊躇ためらうことなく、うちの舌に自分の舌を重ね合わせてきた。うちは回した腕に力を込めた。

   唇を離したあと、中尉は半身を起こして紐を解き、身に纏っていた寝巻きをするりと脱いだ。
   十代の頃から軍隊で鍛え抜かれた、しなやかな筋肉を持つたくましい肉体があらわれる。その表面は既に汗で光っていた。

   それから、中尉はうちの寝巻きの紐をするっと解いた。寝巻きの前が開いて、うちの生まれたての姿があらわになった。
   真っ暗闇に、真っ白なうちの裸身が光を放つように浮かび上がる。

   中尉の息を飲む気配がした。

   たぶん、たわわに実ったうちの二つの乳房を見ているのだろう。うちは身体からだは小さいくせに、どういうわけか胸だけが大きい。
   着物を着ているときは目立たないが、裸になるお風呂屋さんではよその人からじろじろ見られて、いつも恥ずかしい思いをしている。

   実は、一緒にお風呂に行った薫子ゆきこさんからも、
「……あんた、細っこい身体つきやなのに大きなお乳しとうなぁ。……うち、ちっちゃいから羨ましいわぁ」
と云われていた。

   だから、思わず腕で乳房を隠そうとしたが、中尉の腕によって阻まれた。
   うちの腕の代わりに、中尉の大きな手がうちの乳房をすっぽりと包む。そして、既に固くなったその突端を、そっと口に含んだ。

「・・・ぁあぁ・・・」
   うちの口から「猫の鳴き声」が漏れた。
   向かいの部屋に聞こえると困るので、すぐに奥歯を噛みしめて声を殺す。

   なのに、中尉はうちの「我慢」に構うことなく、大きな手のひらでうちの乳房をまさぐり、口に含んだその突端を舌先で舐めまわした。

「・・・ぅくっ・・・」
   うちは唇をきつく噛んで、初めて味わう淫らな気持ちと必死に闘った。

   中尉の長い指が、うちの下腹部を通り過ぎて、淡い茂みの奥に入っていく。
   そこ・・は、もうじんわりと湿り気を帯びていた。

「・・・ぁああっ・・・」
   うちは中尉にそんなところを触れられるのが恥ずかしくて、思わず身をよじった。

   それでも、やっぱり、中尉はそんなうちに構うことなく、さらに奥へと分け入って、やがて見つけた小さな突起を、思いのままにいじり始めた。

   いつの間にか、うちの胎内なかがどこからともなく潤ってきて、くちょ…くちょ…という今までに聞いたことがない音を立てていた。

「・・・ぁはぁ・・うぅん・・・ぁあん・・・」
   うちはもう「猫の鳴き声」を止めることができなかった。

   中尉はうちの脚を大きく開いた。
   そして、あろうことか、その間に自分の顔をうずめた。

「・・・いけん・・・いけん・・てぇ・・・っ」
   うちは我を忘れて叫んだ。

   これまでも、そしてこれから先も、決して経験しないような恥ずかしさが、うちの身体を駆け巡る。うちの全身はきっと今、真っ赤に染まっているに違いない。

   身体中の力を込めて、うちは脚を閉じようとしたが、中尉はそれを許さなかった。
   中尉の舌が、うちの身体の中で一番敏感なところを捉えて、ついばみだした。

「・・・男ん・・人が・・・そがぁ・・なとこを・・・ぅん・・・はぁ・・・いけん・・てぇ・・・」
   うちの声はいつしか、すすり泣くような声になっていた。

   それでも、中尉の舌は、うちの一番恥ずかしいところを舌先で弄ぶのをやめない。今や、中尉の舌におびき出されてあふれんばかりになっていた。

   中尉がふんどしをはずした。
   褌の中からこらえきれないように、垂直に勃ち上がったもの・・が姿を見せる。

   うちは、見ちゃいけん、と思ってすぐに目を逸らした。

   うちの太腿が、中尉の大きな手によって、ぐっと持ち上げられる。左右に開かれたうちの脚の間に、中尉の身体が入ってきた。
   中尉の勃ち上がったもの・・の「照準」が、ぴったりと合わされる。

   中尉が、うちの身体に覆いかぶさってきた。
   うちは息を詰め、ぎゅっと目を閉じ、身を固くした。


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*いびせえ ー 怖い・恐ろしい
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