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Chapter 1
④
しおりを挟む麻琴は高校生のとき、exchange student として一年間、カナダのバンクーバーに留学していたため、英語は日常会話なら問題ない。
(本当は、大好きな「赤毛のアン」の舞台であるプリンスエドワード島に近いモントリオールなどの東海岸がよかったのだが、父親が「遠すぎるっ!」と猛反対して西海岸のバンクーバーになったのだ。)
大学生になると、恩師が猛プッシュして決まったゼミ旅行で夏のストックホルムを体験して以来、スウェーデンにすっかりハマってしまった。
日本に帰国したあと、現地で購入したインテリア関連の美しい本を読むために、ほとんど独学でスウェーデン語の読み書きをマスターしたくらいだ。
……と言っても、ラテン語由来の言語のわりにスウェーデン語の文法には格変化が比較的少なく、英語がそこそこできればなんとなく読めたり書けたりするのである。
発音の方は日本語や英語にはない母音があるし、そもそも耳慣れない言葉なので、難しく感じるのだが。
「……北欧、ですか」
上林は乾いた笑いを浮かべていた。
「文具なら、まだ斬新でしょうけどね。生活雑貨では、もう手垢にまみれてますよ。そもそも、本場スウェーデンのイ◯アも、デンマークのタ◯ガーコペンハーゲンやソスト◯ーネグレーも、すでに日本に『上陸』してるんです。……ホンモノ相手に太刀打ちできますか?」
麻琴は返す刀でバッサリ袈裟懸けにされた。
「ちょ、ちょっと……上林さんっ」
紗英がおろおろと焦りだす。だが、彼女とて上林の一期下の後輩だ。強くは制することができない。
「……上林、そのへんにしておけ」
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