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الفصل الأخير「さようなら、恋心」
④
しおりを挟む「ほかにも、身近なところで危惧することを言えば……例えば、この国で普通に食べられている物とか、君の口に合う?」
——えっ?
「特に伝統料理って、その国の文化そのものだからね。侮っちゃいけないよ?」
——た、確かに、そうだけど……
「君、砂漠に行ったんだよね?結婚式をしたくらいだから、伝統料理もふるまわれたでしょ?ちゃんと残さずに美味しく食べられた?」
——うっ⁉︎
その瞬間、あたしの口の中にあのアラビックコーヒーの——カルダモンとコーヒーが合わさった独特な匂いと、飲んだときに舌にまとわりつくどろどろっとした感触を思い出した。
すると……自然と顔が歪んでしまった。
そして、実はコーヒー以外にもあった。
アブダビでラジュリーと一緒に食した、コース料理での「仔羊のロティ」には、まったく問題なかったのだが……
砂漠での結婚式の際に供された「仔羊の丸焼き」が——あまりにも「シンプル」な料理だったため臭みが強く、またその「ワイルド」な外観も相まって、ほとんど食べられなかったのだ。
「宗教上、これからはトンカツや豚の生姜焼きや豚骨ラーメンなんかが食べられなくなったり、お酒も呑めなくなったりするけれども——大丈夫なのかな?」
この国に限らず、イスラム教徒たちは周知のとおり「不浄の豚肉」や「人を惑わすアルコール」は口にできない。砂漠での結婚式だって豚肉がないのはもちろん、みーんなシラフだったし……
イスラム法の合法に則って「食していいもの」かどうかが決められている。原則を忠実に遵守するならば、実は牛肉や羊肉であっても然るべき「お祈り」を経なければ食してはならない。
しかも、ハラールは食品だけでなく生活全般、多岐に渡って厳格に決められているのだ。
「第三夫人」の今はイスラム教に改宗しなくてもいいかもしれないが、「皇太子の唯一の夫人」となってしまえばどうなるか……
今は、サウジアラビアのメッカに向かって一日五回の礼拝すら、異教徒ということで「免除」されているんだけど……
——でも、そうか……そうだよね……
「What has he been talking about her for so long,Atif? Translate that right now!」
〈アーティフ、こいつは長々と彼女と何を話しているんだ?早く訳せ!〉
ラジュリーはもどかしげに、声を荒げた。
そして、ムフィードさんが大橋さんの言葉をあわてて訳すと、
「If I had listened quietly from earlier…why does he keep saying things that break us apart?」
〈先刻から黙って聞いていれば…なぜこいつは私たちの仲を裂くようなことばかりを言うんだ?〉
ラジュリーの怒りは限界点に近づいていた。
「Oi, you! Don't tell me…you're in love with my wife,aren’t you?」
〈おい、おまえ!まさか…私の妻のことを好きなんじゃないだろうな?〉
「もちろん、好きですよ」
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