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الفصل ٧「CEOの許嫁」

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   とうとうDessertデザートが終わり、Cafeコーヒーも飲み終わってしまった。手持ち無沙汰感が半端ない。
——あぁ、こんなことなら、ワインもらっておいた方がよかったかなぁ……
   
   世界各地の人たちを相手に仕事をしているマーリク氏であるが、やはり彼はムスリムだけあって、お酒はいっさい呑まない。
   でも、外国人のguests用に一応ワインなどの酒類を常備しているらしくあたしも勧められたが、もともとそんなにお酒が強くないこともあって丁重にお断りしていた。

   だからと言って、目下どんなにヒマであろうと、ジャミーラさんが同席して「話し相手」になってくれていた方がよかったとはまでは、到底思わないけれども……

   ムフィードさんによると、ジャミーラさんはマーリク氏の親戚筋の娘であるそうだ。
   彼女が言ったとおり、マーリク氏が「第一夫人」候補を片っ端から拒否しまくったために、彼女以外の同年代の一族の娘たちはすでに嫁入っているらしい。
   第一夫人が決まらなければ、敵対関係に近いほかの一族の娘と「政略結婚」しなければならない「第二夫人」も決められないから、マーリク氏の父親は相当焦っているとのことだ。

——そんな状況下にもかかわらず「第三夫人」を真っ先に決めちゃった、というわけね……

   あのあと、激昂したマーリク氏によってジャミーラさんは追い出されたのだが、
『I'll see you tomorrow at your office.』
〈では明日、あなたのオフィスで会いましょう〉
というさらにマーリク氏の怒りに油を注ぐ言葉を残し、妖艶に微笑みながら去って行った。


「……あたしもアラビア語、勉強した方がいいのかなぁ」

「No, you don't have to learn Arabic.」
〈いや、君はアラビア語を覚えることはしなくていい〉

   今までムフィードさんと話をしていたはずのマーリク氏が、いつの間にかあたしにその目を向けていた。
   あたしがぼそり、とつぶやいた日本語をムフィードさんがすぐに訳して彼に伝えたのだろう。

   だが、先ほどまでのたとえどんな防音機能の付いた鉄壁のオンナゴコロであろうと、わんわんと響いてゆさゆさと揺さぶられるに違いない甘い低音ではなく、ジャミーラさんに向けられていたのと同じ絶対零度の冷たく尖った声だった。
   どうやらとろける笑顔といっしょに、甘い声もまたラララ星のはるか彼方へ旅立って行ったようだ。

   そして、マーリク氏はうんざりした顔と声で告げた。
「It's inconvenient for me when I can't understand what you're telling. I don't have a choice. I’ll learn Japanese, your native language.」
〈君が話すことを私が理解できないのはなにかと不便だ。仕方がない。私が、君の母国語である日本語を覚えよう〉

「…What?」
〈えっ?〉

「Just as well,I'll learn Japanese from him. He's our interpreter anyway.」
〈ちょうどいい、彼から日本語を教わるとしよう。どうせ我々の通訳をしているんだ〉
   マーリク氏がムフィードさんに向かって告げた。

「ان شاء الله」
   ムフィードさんが恭しい態度になって、なにか答えた。

——まぁ、彼にとっては新しい仕事が加わることになり、その分報酬もアップするのだろうから、応じるに決まってるんだけど……

   あっという間に「決定事項」となってしまったようだ。

「Then I'd like to add some desert elements to the interior of our new hotel that we're starting, to reflect the characteristics of the area.」
〈それから、これから着手する我々の新しいホテルの内装には、この地域の特性を反映して、砂漠の要素を加えたいと思っている〉

——ええっ、いきなり仕事の話っ⁉︎

「So we're going to the desert.」
〈だから、砂漠へ行くぞ〉

——ええっ、desert砂漠って、ウソでしょっ⁉︎

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