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変身ヒーローと魔界の覇権

迫る世界の理

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 覚悟を決めた微笑みだと思った。
 だから、その瞬間にキャノンギアへと変身した。
 そうしなければ爆風をもろに浴びて、俺もただじゃすまなかったと思う。
 グロリアの自爆魔法はファイトギアではとても防げる威力ではなかった。
 一番近くにいたメリッサも後ろに大きく吹き飛ばされている。
 彼女の魔力が健在なのが救いだった。
 もはやグロリアの魔力を感知することはない。
 彼女は妹を守るために自分の命を犠牲にしたんだ。
 それなのに、無情にもネムスギアのセンサーは爆発の中心に魔力が残っていることを表していた。
「いやぁ、さすがに今のは危ないと思った」
 服に付いた埃を手で軽く払いながら煙の中から少年が現れる。
「そ、そんな……今のは、お姉さまが使える魔法の中でも一番……」
「うん、確かに痛かったよ。でもまあ、神のギフトを超えるほどじゃなかったかな」
「神のギフト……?」
 俺の質問に少年は振り返って答えた。
「そう。信じられないかも知れないけど、俺は神様から力をもらったんだ。この世界のあらゆる魔法を使う力と絶対に負けない力と絶対に勝てる力を」
「何だそりゃ……」
「ネムスにもわからないよね。魔法なんて存在しない世界の人だもんね。でも、この世界じゃ俺が最強だから」
 少年は俺のつぶやきの意味を間違っていた。
 キャノンギアを使っている俺には少年の魔力がわかる。
 この場にいる魔王にはとても及ばない。
 せいぜい上級冒険者並の魔力しかない。
 それで、あらゆる魔法が使えるはずがなかった。
 キャリーの使う戦略複合魔法だって少年の魔力では使えないはずだ。
「まあ、魔法を使うとあまり倒した実感が湧かないから、最近は専らこの刀で遊ぶ方が楽しいんだけどね」
「……刀で、遊ぶ……? お姉さまの命を奪ったことが、遊びだとでも言うつもりですか?」
 魔法を使ったわけでもないのに、辺りの温度が急速に冷えていくような錯覚を覚える。
 メリッサは戦うつもりだ。
 止めなければメリッサも殺される。
 グロリアの敵を討ちたいと思うよりも、メリッサが殺されるかも知れないと言うことに恐怖を覚えた。
 俺が走ってメリッサのところへ行こうとしたら、勇者たちが少年を取り囲んだ。
「何? ああ、君たちが今回の勇者?」
 ガイハルトは剣を構えて少年に向けていた。
「それ、何のつもりかな?」
「それはこっちのセリフだ。魔王は俺たち勇者が倒すべき敵だ。どこのどいつか知らないが、ここから消えろ」
「ハハハッ! 何言ってるんだよ。君たち勇者じゃ魔王は倒せても魔王の数を減らせないんだろ? それじゃあいつまで経っても世界は平和にならないじゃないか」
「お前は、違うとでもいうのか?」
「違うよ。俺に攻撃された魔王は怪我も治せなかっただろ。俺には神のギフトがあるからね。絶対に勝てる力がある限り、俺が殺した魔王の代わりは現れない」
「ふざけるな! 魔王は俺が倒す! 俺だけが世界を救って薄汚い人間どもの賞賛を浴びるんだ!」
 斧の勇者がつばを飛ばして叫んだ。
「やれやれ、三人がかりで魔王の一人相手に苦戦してるのに、君一人で倒せるわけないじゃないか」
「うるさい! ガキは引っ込んでろ!」
「そこまで言うなら、あいつを倒して見せなよ」
 少年に焚き付けられて、斧の勇者はメリッサと向かい合った。
 だが、メリッサの瞳は少年にしか向けられていない。
「あなたは戦わないの?」
「俺はそうしたいんだけど、勇者って馬鹿ばっかりだからさー。俺と戦いたかったらこいつら殺しちゃってよ。馬鹿は死ななきゃ治らないって言うし」
 これが世界を救う救世主の言葉かと思ったが、きっと少年にその自覚はない。
 特別な力を与えられただけのただの人間。
 自分のことをそう言っていた。
 その特別な力があまりにも不可解だった。
 絶対に負けない力というのは、あの防御力のことだろう。
 絶対に勝てる力というのは、魔王を殺した力のことだろう。
 それはまるで、天使と同じ。
 救世主が天使と同じ性質の存在なら、俺でも戦える。
 しかし、アルラウネは天使とも違うと言っていた。
 どうすればいいんだ。
 得体の知れない少年に、俺はたとえようのない不安を覚えていた。
 アルラウネに警告されたからではない。
 俺の本能がこいつと関わることを拒絶している。
「ダグラス! 先走るな!」
 ガイハルトの制止も聞かず、斧の勇者がメリッサに向かって行く。
 アルラウネが死んだから斧の勇者の動きにはキレが戻ってはいたが、遠距離戦主体のメリッサには近づくことも出来なかった。
 意識は少年に向いていても、メリッサは氷の魔法を使って斧の勇者を足止めし、グロリアを閉じ込めた氷の壁で斧の勇者を捕らえた。
「あの馬鹿!」
 悪態をつきながらも、同じ勇者として放っては置けないのか、ガイハルトが助けに行く。
 槍の勇者も後に続いた。
「あ! ハル様!」
 女の声に振り返ると、戦場にはとても似合わない格好の女たちがぞろぞろ歩いてきた。
「勝手に行かないでよね。せっかくハル様が活躍しても見られないじゃない」
「ああ、ごめんごめん。強い奴らが集まってると、どうしても体が動いちゃってさ」
 少年に少女が話しかける。
 ここが戦場でさえなければ、どこででも見られるような場面。
 だから、違和感しかなかった。
 少女の服装は俺の知ってる学校の制服に、軽装の鎧を身につけた格好だった。
 他にもビキニアーマーを身につけた女。
 袴に薙刀を構えた女。
 露出の多いくノ一のような女。
 セーラー服にマントを羽織った女。
 ミニスカのナース服を着た女。
 未来的なピッタリとした全身スーツを着た女。
 総勢七人の女が少年を囲んでいた。
 その視線はどれもが熱っぽく少年を見つめる。
「ねえ、魔王を倒してこの世界を平和にするんでしょ? どうして戦わないの?」
「それがさあ、勇者たちが邪魔するなって言うんだよ」
「はあ? 勇者ごときがハル様の邪魔をするの? 私が退かしてあげようか?」
「いいよ、どうせあいつらには勝てないんだから。ヤバそうになったら助けてやるし」
「さすがハル様! 優しい~」
 くノ一のような女がその胸に少年の顔を埋める。
「ちょっと、どさくさに紛れて何してるのよ!」
 ミニスカナース服の女が睨みつけるが、くノ一のような女はベロを出して挑発した。
「ぷはぁ、ちょっと待った。こんなところでケンカはしないで欲しいな」
 くノ一のような女の胸から顔を離して、少年がなだめる。
「……まあ、ハル様がそう言うなら……」
 ……何だこの安っぽいギャルゲーのようなノリは。
 女たちの衣装がどこかで見たようなコスプレのようだし、世界観もぶち壊しだった。
 ……どこかで見たような?
 俺は、あの女たちに見覚えがあった。
 どこで見たのかまでは思い出せないが、少なくとも知っている。
「な、なんだ……? どうなってやがる……?」
 そう言ったのは、バルガスだった。
 後頭部を押さえながら立ち上がって辺りを見回していた。
 不意打ちでヨミが攻撃したのに、あれで生きていたのか。
 ちゃんと手加減してやったんだなと感心した。
「ん? 何だお前らは?」
 当然バルガスは気絶している間に現れた少年たちに目をやった。
「やーん、ハル様。あいつ嫌らしい目で私を見たわ」
「はあ!? 人間なんかをそんな対象として見るわけないだろ! ブスが!」
 バルガスの美的感覚は別として、俺から見て少年を取り囲む女たちの顔は悪くない。
 いや、客観的に見たら可愛い子と美人しかいない。
 魔族やエルフに通ずる美しさがある。
 まるで、ゲームやアニメのキャラクターのように整った顔をした女しかいない。
 その女たちの空気が変わった。
「ハル様、私たちであいつを倒してもいい?」
 制服の上に鎧を身につけた少女が腰に下げた剣の柄を握った。
「いや、やめておいた方が良い。あれも魔王らしいからね」
「でも、あいつ私を……」
 今にも泣きそうな少女の頭をポンポンと叩いて、少年が刀を持ってバルガスに向かって行く。
「よくも俺の彼女たちを罵ってくれたな。暇だからお前も殺しておいてやるよ」
「ハッ……ハハハハッ……! おいおい、冗談を言うなよ。お前の魔力でどうやって俺を殺すって――」
「覇王一閃――神輝斬!」
 一足で間合いを詰めて、鞘から抜かれた刀がその刃を煌めかせる。
 居合い抜かれたバルガスの体は、刀が鞘に戻った音をさせた時には上半身と下半身が綺麗に真っ二つにされていた。
「……え……?」
 胴体から上が滑るように地面に落ちる。
 腰と足が後ろに倒れた。
「な……え……?」
 地面に顔を付けたまま、バルガスの顔は困惑していた。
 あまりにも呆気ない最期。
 足も体も光の粒となって空に消えていく。
 まるで風に吹かれた砂のように体が消滅してクリスタルだけが残った。
 きっと、殺されたことさえわからなかったんじゃないかと思った。
「ぐああああああああああ!!」
「ダグラス!!」
 絶叫のした方へ向くと、斧の勇者がメリッサの魔法で氷漬けにされているところだった。
「そんな……勇者では魔王に勝てないのか……」
「あの少女たちが言ったことは本当だった……」
「あの少年だけが、魔王を倒せる……?」
 いつの間にか、周りに冒険者や国軍の兵士たちが集まってきていた。
 彼らは遠巻きに戦況を見守っている。
 魔王と勇者の戦いに手を出すことが邪魔にしかならないと言うことはわきまえているようだが、不安げな言葉までは止められない。
 口に出さない者たちも、勇者たちが魔王に対して劣勢であることを冷めた視線で見つめていた。
 魔族や魔物たちはどうなったんだ?
 エトワスたちの説得に応じて魔界へ引き上げたのだろうか。
 キャノンギアのセンサーの感度を上げる。
『……あの少女たちがここへ集まる前に、魔族と魔物の反応は一気に消失しました』
 まさか……あの少女たちが……?
『わかりかねます。少年もですが、センサーでは計り得ぬ力を持っているようです』
 それが、神のギフトって奴なのか……?
 AIは答えなかった。
 その問いに対する解答は存在しないということの表れだった。
「アイスニードル」
「うおあああああ!!」
 槍の勇者が四方八方から放たれるつららを、槍を振り回して防ぐ。
 だが、その数はとても防ぎきれる量ではない。
 呆気なく防御を突破されていくつものつららで串刺しにされた。
「ティーモ!!」
 ガイハルトが呼びかけるが、ピクリとも動かない。
 槍の勇者はほとんど虫の息だった。
 早く回復魔法をかけてやらなければ、その内死ぬ。
 ガイハルトは剣を構えていたが震えていた。
 それは寒さが原因というだけではない。
 その瞳には恐怖が見えた。
 前に伝説の杖を持っていた勇者と同じだ。
 このままだとガイハルトは勇者としての資格を失う。
「くそっ! 複合魔法でもないのに、どうして伝説の武器で破れない!」
 ガイハルトはギリギリのところで踏みとどまっているように見えた。
 嘆きながらもまだ一歩も引いてはいない。
「……馬鹿ね。複合魔法は魔力の低い人間が魔法に多様性を与えるために造り上げた技術。魔力の高い魔族――魔王ともなると単一属性を極めた方がより強い魔法を形成できるのよ」
 メリッサは淡々と説明した。
 複合戦略魔法は魔王には無意味だとか言っていたのはそう言うことだったのか。
 ヨミは最初から複合魔法が苦手だったが、魔王としての素質があったのかも知れない。
 ――ま、そんなことで感心してる場合じゃないな。
 メリッサにこれ以上人を傷つけさせたくない――というよりは、あの少年とメリッサを戦わせるわけにはいかない。
 メリッサは怒るかも知れないが、たぶんあの少年を止められるのは俺だけだ。
「あなたも死になさい」
「くっ!」
 メリッサに手を向けられても、ガイハルトは剣を振るわせたまま動かなかった。
 蛇に睨まれた蛙のよう。
「ほらね、だから言っただろ」
 ガイハルトの肩を少年が叩く。
 その表情は友達と遊びに行く時のように楽しげだった。
「これ以上無理すると、伝説の武器に愛想尽かされちゃうよ? ここは俺に任せて引きなよ」
「し、しかし……」
「大丈夫さ。勇者は普通の人よりは強いけど、魔王には無力だってみんなが見ていたから。もう誰も君たちに期待する人間はいないよ」
 その言葉にガイハルトは肩を落とした。
 魔王に恐怖を感じるよりも、よほど周りの視線が堪えたのだろう。
 少年に対して怒るような羨むような諦めるような、複雑な顔を浮かべながら剣を鞘に収めた。
 メリッサと少年が向かい合う。
 俺は、その真ん中に立った。
「アキラさん?」
 メリッサが訝しげな声を上げる。表情は見なくても伝わってくるようだった。
「あれ? どうしたの? 邪魔しないで欲しいな。ここは俺が活躍するいいところなんだから。こればっかりはいくらネムスでも譲れないよ」
 少年は俺のことを知っている。
 それなら、何とか説得できないだろうか。
 戦うことよりも、これ以上被害を減らすことに集中していた。
 少年も少女たちも、あまりにも得体が知れない存在過ぎる。
 このまま何もわからずに戦うのは危険だと“俺”の心が言っていた
「君は俺のことを知っているのか?」
「当たり前じゃん。ガキの頃すごい好きで見てたんだから」
 ――子供の頃、見ていた――?
「知らないの? “武装セイバーネムス”って特撮番組。平成セイバーシリーズって言って、日曜の朝に放送してるんだけど」
 ――特撮、番組――?
「ああ! そっか、番組のキャラクターが番組名を知ってるわけないよね。確か、メタ何とかって言うんだっけ? とにかく、ネムスが強くて格好いいのは知ってるけどさ、それはその番組の中での話で、ここでは俺が最強だから、退いてくれないかな」
 ……俺も、それを知ってる。
 いや、見ていた。
 子供の頃だったか……?
「『見た目に騙されてはいけません』」
 頭の中に響くような声が聞こえた。
 少年も周りにいるみんなにも聞こえたみたい。
 耳を手で押さえながら辺りを見回している。
 そして、いつの間にか少女が俺と少年の間に現れていた。
 声を聞いた時からそうじゃないかと思ってはいたが――。
「ネムスはあなたの味方ではなく、敵としてこの世界に現れたのです」
 意志の強そうな瞳を向けて、大地彰の妹――大地未来はそう告げた。
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