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変身ヒーローと魔界の覇権

新たな魔王の誕生

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 その場に泣き崩れてしまったフェラルドを介抱するようにヨミが寄り添って支えた。
「……ここに至るまで、もう何度繰り返したか……あの子は遂に俺の想像を超えるような魔王になってくれた!」
 喜びに打ち震えるような声を上げて泣いた。
「これも全て、アキラ殿とヨミ殿のお陰だ!」
 涙を拭いもせずに、フェラルドは諸手を挙げて俺たちまで称えてくれたが、俺も一緒になって喜ぶことは出来なかった。
「本当に、アスルがクロードを倒したのか?」
 冷静に考えれば、それは当然の疑問だった。
 ここにはそのアスル自身がいない。
 魔王を倒して父からの命令を果たしたのなら、堂々と待っていればいい。
 いない理由がわからなかった。
 それに、見る限り魔王のクリスタルはない。
 AIもその反応を見せないってことは、この城にはないんだろう。
 魔王を倒したという証拠は何もなかった。
 激しい戦いの跡だけはそれを物語ってはいるが……。
 よしんばアスルとクロードが戦ったことを認めるとしても、どちらが勝ったのかまではわからない。
「あまり想像したくはないが、アスルが殺された可能性も捨てきれないだろ」
「それはありえないんだ」
 やけに自信たっぷりにはっきりとフェラルドが言う。
 息子を信じる親の心境なのか。
 まるで疑っていなかった。
 俺はアスルの保護者のつもりでいたが、やはり本当の親とは違うと言うことか。
 でも、親のひいき目というのもある。
 フェラルドの表情は信じるとか信じないとかそういう意味ではなく、何か確証のようなものがあるようだった。
「そこまで言い切る根拠を教えてくれ」
「もちろんそのつもりだが、その前にアキラ殿たちにはアスルのことを教えておかなければならない」
「そう言えば、ここに来る前にもそんなことを言っていたな」
「もしかしたら気付いているかも知れないが、アスルは私とエリザベス女王の間に生まれた子だ」
「――は!?」
 一番大きな声を上げたのは、もちろんマーシャだった。
「何を言っているのかわかっていますか? 女王様が、魔王との間に子を作るなど……」
「私も話を持ちかけられたときは同じようなことを言った。だが、彼女は本気だった」
「そんなことをすれば、天使に――」
「失敗した回数は数え切れん。それだけ多くの時間を繰り返した」
「なぜ、エルフと魔王の子を女王様は求めたのですか?」
「神の想像を超えた存在でなければ、この世界は救えないと考えたようだ。私も、このフェラルドという存在の人生を繰り返す中で、運命を変えるにはそれしかないと思うようになっていた」
「それではまさか!」
「ああ、魔王として覚醒したアスルには次の命令も与えてある。つまり――」
「ちょっと待った。二人で勝手に話を進めないでくれないか? 俺にはさっぱり事情が見えてこない」
 俺が口を挟むと、ようやく二人はこちらを向いた。
 しかし、マーシャは何か考え事をするようにブツブツ言って瓦礫の山を下りていく。
 その場に残されたのは、俺とヨミとフェラルドだけだった。
「何が知りたい。もはやアキラ殿に隠し立てすることは何もない」
「そうだな……まず、エルフと魔王で子供が作れるのか?」
「子作りの方法については、人間とあまり変わらん。見ての通り、我々の体は人間と同じだからな」
 ヨミはそれを聞いて顔を赤らめさせていたが、俺はそれよりも気になることが増えた。
「いつ、だ」
「いつ、とは何のことだ」
「エリザベス女王が魔王との間に子を作らなければならないと悟ったのは、きっとループする世界を経験した後だろう。その起点は俺がこの世界へ来る頃だ。だけど、アスルは俺と出会ったときに十歳くらいに見えた」
「その事か……。私たち魔族やエルフは完成された存在だと言うことは理解しているか?」
「ああ、本来は寿命すらないらしいな」
「新たな命を宿すときも、人間のように時間は必要ない。交わりを経て命が宿ると、クリスタルが生まれる。そのクリスタルの魔力が覚醒することによって肉体を得る」
「それじゃ、俺が出会ったときのアスルは生後半年にも満たなかったってことか?」
「ああ」
 その割には、読み書きも出来たし、考え方だって子供らしくはなかった。
 それに、奇妙なこともある。
 アスルは幼い頃の思い出を俺に話したりしなかったか?
 生まれや成長が人間と異なることはまだ理解できるが、アスルの記憶はどうなっているのか……。
「アスルが母親と一緒に生活したことってあったのか?」
「いや、この世界ではない。私とエリザベスとアスルが一緒に生活すると高確率で天使に襲われる」
「その言い方だと、ループする世界の中で試したことはあったのか」
「あらゆる可能性を試さなければ、運命は変えられないと思うのは当然ではないか」
「そうだな……」
 ってことは、このループした世界ではなくても、別のループ世界ではアスルは両親と一緒に生活したこともある。
「まさか、アスルも記憶を引き継いでいるのか?」
「本人に自覚はない。私がきっかけを与えることで、全てを思い出すのだが……タイミングを間違えると、私たちを救うために暴走してしまう」
「暴走?」
「一人で運命を変えようと、救世主と戦ってしまう」
 その結果どうなるかは聞くまでもない。
 魔王を倒せる救世主相手に、魔王として覚醒すらしていない魔族のアスルでは足止めにすらならないだろう。
「しかし、それだけアスルの存在が大事なら、なぜ天使に奪われたんだ?」
 あの謁見の間なら、ネムスギアのセンサーでも魔王を探知することが出来なかった。
 アスルもそこに匿っていれば良かったのに。
「私との修業でアスルを鍛えても、限界を超えることが出来ない。アスルが魔王に覚醒するには、外の世界での戦いが欠かせないと悟った。だが、アスルが一定以上の力を身につけると天使にその存在が利用される。私はアスルが誘拐された時点でこの世界も諦めようと考えたのだが、エリザベスが様子を見るように言ってきた。今回は何かが違うと言ってな」
「何か?」
「それがアキラ殿のことだと知ったのは、アスルが助け出された後だった。アスルがこの世界から排除される方法はすでにパターン化されつつあった。天使たちに直接殺されるか、あるいは利用した人間諸共殺されるか。天使に誘拐されて人間に利用されたのに生き残るというのは今までに経験したことのない展開だった。だから、アスルが魔王として覚醒したのは、アキラ殿とヨミ殿のお陰なのだ」
「アスルがあんたとエリザベス女王にとって子供であると言うこと以上に重要な存在だと言うことはわかった。でも、本当に魔王として覚醒できたのかは、わからないじゃないか。そりゃ、俺だってアスルの無事は信じたいが……」
「アキラ殿、アスルがクロードに負けたとしたら、この城にはまだ奴が君臨していて、アスルのクリスタルを誇らしげに弄んでいるはずなんだ」
「それも、あんたは経験してきたことだってことなのか……」
「何度もな。そして、クロードが逃げ延びると言うこともありえない。魔王を倒さなければ、新たな魔王は生まれない。アスルが魔王にならなければ、世界のループは止められないとアスルも理解している」
 まるで肩の荷が下りたかのように、フェラルドの表情は晴れやかだった。
 アスルには全て話してあると言うことか。
 暴走したとしても、今のアスルなら乗り越えられると信じた。
 それなら俺も、信じてみようと思った。
「……わかった。アスルがクロードを倒したってことは信用しよう。俺の願望も含まれている気がするけどな」
「私も信じてますよ。アスラフェルくんは、私たちを悲しませるような子じゃありませんから」
「……ヨミ殿、信じてもらえるのはありがたいのだが、アスルは私とエリザベスの息子なのだが……」
 困惑気味にフェラルドが言う。
「え? でも、私たちにとっても子供のような存在ですよね」
 母の顔を覗かせながら、俺に聞いてきた。
「いや、俺はあんなに大きな子の親になったつもりは……」
「そんな!? だって、家族のようなものって……」
「それを言ったのはヨミだけだろ。アスルは仲間だし人間の世界では保護者のつもりだったけど、せいぜい弟くらいにしか思ってない」
「弟も家族ですから、同じようなものですよ」
 ヨミだけが納得していたが、俺とフェラルドは同じように疲れた表情をしていたと思う。
「……アキラ殿、やはり正式に結婚してちゃんと二人の子を儲けるべきでは……」
 ボソッとフェラルドが耳打ちしてきた。
 俺がこの世界で一生を遂げるなら、たぶんそれがお互いにとっても良いんだろうが……。
 自分の世界のことを何もわかっていないのに決めることが出来なかった。
 全てをはっきりさせてそれでもヨミとの未来を選びたいと決断できなければ、魔王となったヨミと生きていくことなんて出来ない。
 中途半端な気持ちをなくすためにも、俺は自分のことを知らなければならなかった。
 ――が、今はその事よりもアスルの行方だ。
「アスルが魔王になったとして、どうしてフェラルドのところに戻らないんだ?」
「言っただろう。神の想像を超えた存在になると言うことは、魔王ではまだ足りない。そのために、エルフの女王は私との子を望んだのだ」
「アスルには次の命令も与えているってのは、その事に関係があるのか?」
「エルフの女王から王としての力を受け継ぐために、儀式をしなければならないそうだ。それがどういったものなのかは私にもわからない」
 エルフの王……。
 アスルがエルフの女王の血を受け継いでいるなら、魔王でもその資格があるってことか。
 魔王でもありエルフの王でもある。
 それは確かに、ありえない存在だろう。
 どれほどの力を持つことになるのか、俺でも想像できない。
「フェラルドはアスルが二つの王になるのを待つのか?」
「いや、これから魔界も忙しくなる。クロードが死んだことは主流派に所属していた魔族や魔王に伝える。彼らが心を入れ替えて我々の考え方を受け入れるなら平和主義派に加えたいと思っているが、そうでないなら掃討戦を考えなければならない」
「大将を倒してそれで主流派のみんなが寝返るわけではないってことか」
「まあ、魔王の力が魔族にとって規格外であることは誰もがわかっている。それを失ってもなお、私たちに抵抗する魔族がいるとは思えないがね」
「実質的に戦争は終結したってことか」
「魔界においては、とつけ加える必要はある。アキラ殿、魔王の数を考えて欲しい」
「魔王の数?」
 平和主義派はフェラルドとヨミ、それからアスルが魔王として覚醒したならこちら側だろう。
 後は人間を襲ってはいるが、本来は平和主義派に所属しているグロリア。
 平和主義派は四人だ。
 それに対して、主流派に所属している魔王はクロードの配下に収まっていたヴィルギール。帝国を統治している魔王。グロリアと共に人間を襲っている魔王。
 名前の判明していない魔王が二人いるが、主流派に所属している魔王は三人だ。
 しかも、ヴィルギールは行方不明だって話だから、健在なのは人間の世界で活動している魔王二人だけ。
 主流派に所属する魔王は今の魔界には一人もいない。
 これで魔王に抵抗する魔族がいるとしたら、それこそアスルのように魔王としての覚醒を目指すような魔族だけだろう。
 派閥としての主流派は魔界ではもはや活動できないだろう。
「主流派に所属してる魔族の中には、ヴィルギールに脅されたり、奴に協力する天使に身内を殺されたりしてやむを得ず加わっていたものもいたから、比較的簡単に取り込めると思う。もし、天使がその邪魔をしてきたときはアキラ殿に戦ってもらう必要はあるが」
「そう言うことなら、喜んで協力させてもらう」
 俺はフェラルドと固い握手を交わして、クロードの城を後にすることにした。

 いろいろなことが明らかになったことと、遅くまで起きていたせいで、帰りの車内ではみんな眠ってしまった。
 マーシャも例外ではなく、車はAIに自動運転させた。
 安全な運転を命令したので、王都ファスルートに戻ったのは午前十時を過ぎていた。
 フェラルドを城の前で降ろし、俺たちはすぐ側の家に帰る。
 フェラルドはそのままクロードを討ち取ったことを発表し、クロードの町をどうやって統治するか話し合いをするといっていた。
 さすがに俺はちゃんと寝たかったので、今後の魔界については日を改めてフェラルドと話をすると約束だけした。
「お帰りなさいませ!」
 大きな声で出迎えに出たのは、エトワスだった。
「メリッサさん! お姉さんのグロリア様から使い魔が」
「え!?」
 声を上げたのはメリッサだけだったが、俺も一気に眠気が吹き飛ぶ情報だった。
 ヨミも同じようにエトワスに詰め寄る。
「グロリアから返事が来たんだな。それで、なんて言ってきた?」
「は、はい。それはあの……」
「メリッサ!」
 廊下の奥から声が聞こえてきた。
 声の高さがメリッサと似ていて、聞き分けるのが難しい。
「お姉さま!?」
 メリッサがそう叫ぶと、可愛らしい少女が姿を現した。
 クセの強い黒髪と、頼りなさげな瞳が特徴的。
 年は十歳くらいだろうか。
 背格好も含めてメリッサとそっくりだった。
「無事だったのね」
「は、はい。こちらの方々が私を助けてくれました」
 メリッサとグロリアは抱き合って言葉を交わす。
「使い魔と同時にこちらに戻るとは思っていませんでした」
「返事はすぐに返したかったのよ。でも、魔界も人間界も何か混乱してきて、それどころじゃなくなっちゃったのよ」
 こうして見てるとまるで双子だ。
 唯一、目元が若干違うくらい。
 注意深く見ていなければ気づけない。
「あの、メリッサさん。出来れば、私たちのことを紹介していただきたいんですが……」
「あ! も、申し訳ありません。ヨミ様の前でとんだご無礼を……」
 メリッサがそう言ってペコペコ頭を下げると、ヨミは手を振ってそこまで恐縮しなくて良いとアピールする。
「メリッサ、この方々が新たな魔王とそのお婿さんなわけね」
「その呼び方、魔族の間で定着してるのか?」
「え? そうですね。魔王が人間と結婚するのは珍しいので」
 まだ結婚はしていないんだが、このやりとりもさすがに面倒だ。
「俺はアキラ=ダイチ。一応人間の社会では上級冒険者だった。俺のことはヨミの婿ではなく、アキラと呼んでくれ」
「アキラさんね。わかりました。私はグロリアと言います。なぜか魔王の力に目覚めてしまったのですが、はっきり言って争いごとが嫌いです。三姉妹で仲良く平穏な生活を送りたいと願っていたのですが、私が魔王として覚醒してしまったせいで台無しになってしまいました」
 三姉妹……シャトラスの報告にあったっけ。
 グロリアの姉は天使に殺されたはずだ。
 ここも嘘ではなかったと言うことか。
 二人の容姿から、グロリアの姉もきっと似たような見た目だったんだろうなと想像した。
「えと、私はヨミ=アラクネです。元は魔物だったんですけど、魔王として覚醒しました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
 そう言ってヨミはグロリアと握手を交わした。
「さっそくですけど、グロリアさんにはお願いしたいことがあります」
「何でしょう。メリッサを助けていただいた方のお願いなら、何でもお応えしたいと思いますが……出来れば、争いごとには関わりたくはありません」
 ヨミは首を振ってそれを否定した。
 そして、俺の目を見て小さく頷く。
「グロリアさんは人間を石化させましたよね」
「あ……はい……」
 グロリアは目を伏せてあからさまに落ち込んだ表情をさせた。
 心配そうにメリッサがグロリアの手を握る。
 慌ててヨミは言葉を続けた。
「その事を責めているわけではないのです。グロリアさんが主流派に手を貸した理由はわかってますから」
「グロリアお姉さま。石化させた人たちは殺してしまったわけではないですよね」
 ヨミの言葉を補足するようにメリッサが聞く。
「当たり前よ。争いごとの嫌いな私が、人を殺したりはしないわ。ただ、ああしておけば主流派の目は誤魔化せたから」
 妹が相手だと少し話しやすくなるのか、グロリアははっきりと命は奪っていないと言った。
「俺たちの願いはたった一つ。石化させてしまった人たちを元に戻して欲しいんだ」
「わかりました。必ず元に戻すと約束します」
 力強くそう言って、グロリアは俺とも握手を交わした。
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