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変身ヒーローと未知の国

ギルドマスターの秘密

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 エトワスの案内で俺たちはダグルドルドの方へ車を走らせた。
 帝国は全て魔族の領土になっているが、真ん中から東側の方はフェラルド派が領土を拡大しているとのこと。
 人間界に進出したのはもちろん主流派の魔族や魔王だが、彼らは個人主義が強くあまり協力して行動を取らないらしい。
 だから、その後フェラルド派閥が軍隊のように魔族と魔物を協力させて主流派が人間から奪った土地をさらに奪い取ったのだ。
 魔界での派閥争いが人間界にまで拡大した。
 それはきっと、人間のしてきたことと変わらない。
 連合国が帝国と世界の覇権をかけて争ったように、魔族も覇権を争っている。
 その目指すところは、どちらも争いのない平和な世界を手に入れるためだ。
 考えていることは一緒のはずなのに、どうしてわかり合おうとしないのか。
 いや、魔族にもわかり合おうとするものはいる。
 エトワスの話だと、フェラルド派閥に所属する魔族の数は全体の約三割。
 これでもここ数ヶ月で急に増えたらしい。
 ヨミがフェラルドに合流すれば、その勢力もさらに変わるかも知れないと教えてくれた。
 魔王の影響力だろうな。
 実際に魔王の力は平均的な魔族にとって脅威だ。
 魔族の数よりも、魔王の数こそが派閥にとって戦局を左右する戦力となる。
 意味を知れば、主流派の連中がヨミを取り込もうと近づいてきたと言うことも頷ける話だった。
 車はいつしか森を抜け草原を抜け、荒れ地を走っていた。
 この辺りは見覚えがある。
 アイレーリスとダグルドルドの国境付近。
 近くにギルド世界本部があるはずだ。
 思っていた通り、程なくしてあの城のような町が前の方に見えてきた。
「なあ、ちょっとあの町へ寄ってくれないか?」
 ここを目的に車を走らせていたわけではないが、せっかくだから疑問を一つ解消させておこうと思った。
 彼の見解も改めて聞いてみたい。
「え? 人間の町に近づけば、また攻撃されるのではありませんか?」
 マーシャが当然の疑問を口にする。
 だが、俺には確信があった。
 この町を治めるギルドマスターは魔王に手を出さない。
「たぶん、大丈夫だ」
「……わかりました」
 そう言いながらもマーシャは呪文をブツブツ唱え始めた。
 きっと攻撃されそうになったら防御魔法を使うつもりだろう。
 車はスピードを落としながらギルド世界本部の町へ近づく。
 俺の予想通り、攻撃はされなかった。
 と言うより、人の気配がほとんどない。
 車に乗ったまま門を通るのは不可能だったので、町の入り口に横付けさせて俺とヨミだけ車から降りる。
「アキラ、もしかしてここも魔族に襲われた後なのでは……」
 ヨミがそうつぶやくのも無理がないほどひっそりとしていた。
「魔族がここを襲ったなら、もっと爪痕がある。ここには冒険者が出入りしていたから抵抗するだろうし、遺体が一つもないってことはありえないだろ」
 魔族は人間をエサとしか見ていない者がいるが、だからといって体を取って食ってしまうわけではない。
 彼らは人間の魔力を取り込もうとする。
 残酷だが、魔族に襲われたなら遺体は残っているはずなんだ。
「……確かに、そうでしたね」
 町の中は迷路のようになっているが、ここで生活した時もあったから道はだいたい覚えていた。
 目指すのは、最上階。
 書庫にギルドマスターはいると思った。
 魔法陣の転送装置をいくつか使い、俺たちは久しぶりに書庫へ入った。
 相変わらず部屋いっぱいに並べられた本に圧倒される。
 果たしてギルドマスターのクランスは真ん中に置かれた机の椅子に座っていた。
 本は机の上に何冊か積まれているだけで、手を組みこちらを見ている。
 まるで、俺たちが来ることを待っていたかのようだ。
「あんたに聞きたいことがあってきた」
 ぶしつけにそう言ったが、クランスは驚く様子さえ見せない。
「俺はエルフの女王に会っていろいろ話を聞いてきた。この世界の理というのも教えてもらったが、あんたも知っていたんじゃないのか?」
 ……ずっと気になっていた。
 クランスは勇者と魔王が戦うことを阻止するように行動していた。
 過去の伝承を検証した結果だといっていたが、エルフの話を聞いた後だと印象が変わる。
 救世主の介入を防ぐには、勇者と魔王が戦ってはダメだ。
 人類の希望として注目を浴びる勇者では世界は救われない。
 それを人類が悟ったときに現れる。
 エリザベス女王は勇者が勝てなかった魔王を俺が倒してしまったから、俺が救世主ではないかと疑いを向けていたが、結局のところ俺ではないと彼女自身が結論づけた。
 今はまだ世界の人々にとって勇者は希望だ。
 だからある意味条件は整いつつあるのだが。
「……エルフは生きていたのか……」
 クランスは死んだような瞳をしながらつぶやいた。
 まだ俺の質問に答える気はないようだ。
「クランスはギルドを使って伝説の武器の所在を確認していた。それを勇者の手に渡らないようにしていたのは、勇者と魔王の争いの先を知っていたからじゃないのか?」
 勇者と魔王の戦いに意味はないということも今ならわかる。
 それは、救世主が救世主であるための見世物のようなものだ。
 伝説の武器に選ばれた勇者が死んでも、伝説の武器は復活して新たな勇者を選ぶ。
 魔王が死んでも同じ。新たな魔王が生まれる。
 本当の意味で魔王を倒せるのは、救世主しかいない。
「……エルフは、君に何を教えた?」
 ようやくクランスがちゃんと俺の目を見た。
 彼から情報を得るには、こちらも明かさなければならないということか。
「エルフの女王はこの世界が平和になった直後に終焉を迎えて、再び始まるといっていた。俺の解釈ではこの世界はループしていると思う。俺は実際に体験したわけじゃないから確証を持って言えることじゃないけど」
「……君はそんな突拍子もない話を本気で信じているのか?」
「身も蓋もない話だが、俺の知ってる世界にはよくある物語だからな。異世界に行く物語と同様に」
「物語……? 伝承のようなものか……?」
「そんな堅苦しいものじゃないよ。小説とか漫画とか……」
「……そうか……やっと理解できた。君は奴と同一なのかも知れないな」
 クランスは立ち上がるとショートソードを握っていた。
「奴や君が何をするつもりなのか、もうどうでもいい。俺は一足先に終わらせてまた始めるだけだ。今度こそ、みんなの命を救ってみせる」
 自殺するつもりか!
 そう思ったときには体が動いていたが、俺よりも先にヨミが動いていた。
 煌めく刃。
 流れるような動きでヨミの足がクランスの首の辺りで一閃する。
 カランカランとショートソードが俺の足下に転がってきた。
「自殺なんて愚か者のすることです。たとえ苦しくても、足掻いてでも生きるべきです」
 俺はショートソードを拾い上げて逆手で持った。
「……あんたはこの世界の命を救いたいと言っただろ。死んでどうするんだよ」
「ここまで事態が進んでしまったら、どんなに足掻いても無駄なんだ。世界は救われるが、俺たちはまたこの世界に生まれてしまう。ここは、魂の牢獄だよ」
 クランスは膝から崩れ落ちてそう言った。
「魂の牢獄? それはどういう意味だ? さっきクランスは一足先に終わらせて始めるといっていたが、それと関係があるのか?」
「……きっかけは、俺の自殺だった」
 クランスは四つん這いのままぽつりぽつりと言葉を吐き出すようにいった。
「もうどれくらい前のことか覚えてはいない。その頃の俺は一介の冒険者だった。恋人もいて同じ上級冒険者だったんだ」

 その時はアイレーリスに現れた勇者と帝国の勇者が戦って決着を付け、アイレーリスを中心とした連合国が世界を統べることとなった。
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 クランスも冒険者として名前も売れていたし腕にも覚えがあったので、恋人と共に勇者と協力し魔王と戦った。
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 クランスは片腕を失ったものの何とか生き残った。
 恋人は救世主の魔法で奇跡的に助かった。
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 その時にはすでに恋人の心は自分にはないと悟った。
 救世主がいれば、早晩この世界に平和がもたらされる。
 だけど、クランスの心に平穏が戻ることはないと絶望し、自ら命を絶った。
 不思議なことはここで起こった。
 クランスの意識は世界と共に彷徨い続ける。
 そして、気がついたときには生前の記憶を全て引き継いだ状態でクランスとして生まれた。

「クランスも世界をループしていると気付いていたのか?」
「いや、正確にはエルフの女王とは違う。俺は世界の終焉を見てから再生するのを体験しているわけじゃない。あくまでも俺という人間を繰り返しているだけだ」
 話をしたことでようやく落ち着きを取り戻したのか、クランスは立ち上がって口調もしっかりしていた。
「自殺しても俺は俺として生まれ変われる。だから、そのショートソードを返してくれ」
「目の前で自殺すると宣言されて、どうぞと言えるわけはないだろ」
「だから、死んでも死ぬわけじゃない。と言うより、この世界では死んでも新しく自分の人生が始まるだけだから、誰も本当の意味で死ぬことはない」
「それは、お前の感覚だけだ。残された俺の視点じゃ、クランスは死ぬことになる」
「……だが、今回も失敗だ。このまま勇者や魔王との戦いが激しくなれば、きっと奴が現れる。エルフの話も総合すると、世界は再び始まるんだろ。ってことは、君がここで俺の自殺を見たことも結局忘れてしまうさ」
「それも気になったことだ。クランスは生前の記憶を引き継いでいるんだよな。この世界じゃ他の人間も同じように生前の記憶を引き継いでいるのか?」
 もしそうだとしたら、今までのことが全て茶番だったということになる。
「いいや。俺の予測では、自殺した者だけが記憶を引き継ぐ。ギルドの調査ではこの世界で自殺した人間は一人もいない。だから、このことは俺だけが知っていることだ」
「そんなことまで調べたのか?」
「当然だ。俺と同じだけの情報量を持っている人間が他にもいれば、協力してこの魂の牢獄から抜け出せると考えた」
 クランスもただの自殺願望じゃなくて、よりよい未来を目指すために覚悟を決めていると言うことか。
 だからといって、このまま自殺させるわけにはいかない。
 少なくとも彼もある意味この世界の理を知っている。
 これで、エルフの女王と魔王。人間の中に世界の理を知る者がいるということになる。
 それはきっと、事態を打開する力になるんじゃないか。
「この世界の情報量は劣るかも知れないが、俺たちと協力してクランスの目的を達成できないか?」
「だから、さっきも言ったけどここまで事態が進んでしまったら、もうやりようがない」
「どうしてそう言いきれる」
「悪いが、俺はもう何度もやり直しているんだ。君が何をするのかは読めないが、人間は勇者という希望の力を持ったことで、魔王との決着を求める。勇者たちが協力すれば、魔王の一人くらいは運良く倒せるだろうが、その後は俺が最初に見たときと同じになる」
「読めない? 何度も人生をやり直しているはずなのに、俺のことはわからないのか?」
「……以前、君に言っただろう。異世界の人間というのは見たのは初めてだ。俺にとってはそれ自体が不確定要素でしかない」
「それは違うんじゃないか。経験していないことが起こると言うことは、決して悪いことばかりじゃないだろ。何度も同じ人生を繰り返していて、それを打開したいと思っているなら、常に違う道を目指すべきだと思うが」
 ゲームで言うと、選択肢の総当たりだな。
 マルチエンディングのゲームなら、有効的な攻略法でもある。
 時間さえ度外視できるなら。
 しかし、この世界の終わりは決まっている。
 何をしても辿り着くところが変わらないなら、別の方法を考えるべきなのか。
「クランスはギルドを使って世界中の人々と団結して、魔族との戦争に臨もうとしていたんだよな?」
「ああ、誰かに希望を託すのではなく、俺たち一人一人が自分の意志で立ち上がれば、救世主が現れてもそれにすがることもなくなると思った」
 クランスは戦争を止めることとは違うやり方で救世主の存在そのものを無意味なものにしようとした。
「そう言うことだったのか」
「いつも、決まっているんだ。この世界では勇者が現れて人々を魔族や戦争から救う。いつしか世界の人々は勇者という特別な存在に頼るようになり、それがやがては救世主を心酔する下地を作る」
 唇を噛みながら悔しそうに言った。
 ようやく納得できた。
 クランスは俺が元の世界へ戻ることをしきりに推奨した。
 勇者が現れる前の俺の行動は、まさしくクランスが危惧していた状況を作っていた。
 ケルベロスや戦争からアイレーリスを救った英雄。
 勇者の出現を阻止しようと動いていたのに、俺がそれに近い働きをしてしまったわけだ。
 今はその立ち位置に勇者が納まっている。
 状況は確かに良くはない。
 だが、まだ救世主が現れたわけじゃない。
「俺は魔族と魔王を説得して戦争を止めてみようと考えている。それを見届けてもらえないか?」
「……そんなことが可能だと思ってるのか?」
「ああ、何しろ魔王の一人はもう説得済みだし」
 そう言ってヨミを抱き寄せる。
「あ、アキラ。人前で、そんな――」
 ヨミってぐいぐい来る割に攻められると弱いタイプだな。
 顔を赤くさせたまま目を逸らしていた。
「人間と魔王の和平交渉は失敗に終わる。救世主ではなく天使の介入を許すだけだ」
 クランスは冷ややかな視線を向ける。
 エルフが言っていた。
 この世界を作った神は平穏を望んでいない。
 神の望みを叶え、争いを続けさせるために天使たちは存在するということか。
「俺は相手が天使であっても倒せる。それでも、やはり失敗に終わると言えるか?」
「……天使を?」
 怪訝な顔をされるかと思ったが、意外にもクランスは表情を変えなかった。
「驚かないんだな」
「ああ、やはり君はどことなく奴に似ている」
「さっきから何度か口にしているが“奴”とは誰のことだ?」
「なぜか記憶を引き継いでもその名前だけは覚えることができない。だが、君が魔王と共にいるつもりなら必ず出会うことになるだろう。奴とはこの世界を救う救世主のことだ」
「俺が、そいつに似ている?」
「世界の理についての理解力や言動がな。それに、天使を退ける力も持っていた。奴はこの世界の魔法を駆使していたから、この世界の人間のはずなのに異世界についても詳しかった」
 そう言われると、益々異世界転生してきたんじゃないかと疑いたくなる。
 もっとも、それは出会ってから確かめればいい。
 魔王を倒そうとするなら、俺たちと出会わない理由はない。
「もし、救世主がヨミを倒す目的で近づいてきたときは、俺は戦うことになる」
「……救世主と、君が?」
「ヨミは俺の恋人で婚約者だからな」
「そうか……なら、その時までは見届けよう。救世主と異世界の人間の戦いなら見届けるだけの価値はある」
 感情のこもっていない声で、まるで物事を観察するような瞳を向けた。
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