97 / 214
変身ヒーローと異世界の国々
王女の行方
しおりを挟む
ホルクレストの北にある湖は確かに海のように広かった。
地上から見ていたら、その対岸にも大陸があるとは思えないかも知れない。
こうして空から見てみると一目瞭然。
湖を挟んでホルクレストもエオフェリアも一つの大陸の国だった。
太陽は真上にあるから今は丁度お昼頃だった。
飛翔船はゆっくりと湖を南下している。
なぜそんなことになったのかというと、速度が向上したことと徹夜明けの妙なテンションのせいで、アーヴィンは全力で飛翔船を飛ばしてしまった。
そのせいで危うく湖を越えてエオフェリアに入国するところだったのだが、女王陛下の情報では、すでに家出した王女とやらはホルクレストにいるらしい。
つまり、湖はすでに渡った後。
俺はシャリオットとアーヴィンにちゃんと睡眠を取るように言い聞かせて、ヨミに操縦を代わってもらい、湖をホルクレストに向かって南下しているところだった。
「何か見えますか?」
操縦桿を操りながらヨミが聞く。
「いや、もう少しスピードを上げてくれ。シャリオットたちが寝ぼけてなければ、家出した王女はすでにホルクレストの大陸にいるって話だ」
「はい」
流れゆく景色が少しだけ速くなると、ようやく岸が見えてきた。
「そこからでも見えるだろ、あの岸を越えたらまたゆっくりに戻してくれ」
ヨミは小気味好い返事をして、言う通りに飛翔船を動かす。
しかし、問題はここからだ。
岸の先はほとんど森が生い茂っている。
その中に少しだけ切り開かれた場所が道になっている。
家出した王女がこの道を通ってくれていれば、見つかるかも知れないが……。
そもそも、岸のどの辺りからホルクレストに入ったのかまではわからなかった。
「キャノンギアのセンサーでこの森の中から人間を捜し出すことって可能か?」
『……何か、捜している人間に特徴があれば可能かも知れませんが……。情報が何もなければ捜しようがありません』
特徴と言われても、俺には王女とやらの顔すらわからない。
こんなことならギルドでちゃんと仕事を請け負っておくべきだったか。
いや、待てよ……。
「ヨミ、操縦しながら魔法水晶でホルクレストのギルド本部へ連絡を取れるか?」
「それくらいでしたら、簡単ですよ」
言いながら操縦桿を片手で持ち、胸のポケットから魔法水晶を取り出す。
呼び出すためのキーワードを魔法水晶から送り込むと、間もなく魔法水晶にはホルクレストのギルドが映し出された。
これは受付のところにある魔法水晶か。
少し狭いが、ヨミの隣に立って魔法水晶に向かい合う。
すると、ダリアがこちらの様子にも気付いてくれた。
「こんにちは。どうされたのですか? アキラさんには、必要な情報は全て昨日お伝えしたはずですが……」
「理由はちょっと省かせてもらうが、成り行きで例の王女様を捜すことになった」
「……仕事を引き受けると言うことですか? でしたら、その手続きはこちらでしておきましょう」
「それは別にどちらでもいいんだけど、王女様の特徴が知りたい」
「そう言うことですか。レオノーラ王女様の特徴は、髪の色が魔法でコロコロ変わることと、猫のような瞳を持ち、童顔で愛らしい顔。年齢は十五歳ですが、顔に似合わないほどスタイルがいい、と言うところでしょうか」
「俺の聞き方が悪かった。身体的特徴よりも、もっと別の……例えば、魔力が高いとか低いとか。能力的な特徴を教えて欲しい」
「能力……魔力は人並みのようですが、幻惑魔法を得意としているようです。人だけでなく魔物すら己の虜にしてしまうような魔法を使うようなので、その事に注意するようにと女王陛下が注釈を入れてます」
「わかった。ありがとう」
そう言って魔法水晶を切ってもらった。
俺は再び甲板に降りて柵から身を乗り出すようにして地上を見る。
「今の説明で特定できそうか?」
一人の時はこうして堂々とAIを頼ることが出来るのは、大きな利点だった。
『一応データに登録はしてますが、難しいですね。この状態でもセンサーはある程度使えますが、森の中には多くの生命反応と魔力が感知できます。人並みの魔力の反応だけではあまりに数が多すぎます』
そりゃそうだよな。森の中には野生生物や魔物がたくさんいるだろう。
しかし、そんな森の中を王女が一人でいても大丈夫なのだろうか。
親である女王は娘を心配すると言うよりも、仕事を引き受けた人が騙されたりしないかの方を心配しているようだし。
『左前方に大きな魔力を感知しました!』
突然、AIがそう告げた。
次の瞬間、森の中から大きな爆発音が鳴り響き、左の前の方――だいたい二十メートルくらい先から煙が上がるのが見えた。
飛翔船はそれを少し避けるように船体を少し右側に向けていた。
「大丈夫ですか!?」
ヨミが声を上げる。
「問題ない!」
「申し訳ありません。急な魔力の流れを感じたので、勝手に飛翔船の向きを変えてしまいました」
ヨミにもAIと同じくらいの能力があるようだ。
あの程度の爆発に巻き込まれたとしても、防御魔法が守ってくれるだろうが、回避行動は間違いではない。
「どうしましょう」
王女がいるかも知れない森の中での爆発。放っておくことは出来ないだろう。
「ヨミ、爆発があったところを回り込むように飛べるか?」
「はい。やってみます」
俺は船首部分に向かった。
そこにはアスルがいて身を乗り出すようにして地上を見ている。
「アスルは今のわかったか?」
「うん。何かが戦ってる。それも、この魔力は普通の魔物のものじゃない」
真剣な眼差しは、すでにアスルを臨戦態勢に入らせているのだとわかるくらいだった。
「魔物じゃない? それじゃ……」
「魔力が急に大きくなったり、小さくなったりしているのは、魔族がそれをコントロールしてるからだ」
「そんなことがここからわかるのか?」
「当たり前じゃん。だからオレたちは人間よりも大きな魔力を扱えるんだぜ。……まあ、オレは魔力が大きすぎて上手く操れないから普段は押さえ込んでるだけなんだけどさ」
少しだけ恥ずかしそうにアスルがつぶやいた。
魔族の特徴について、一つ勉強にはなった。
とはいえ、どうするべきか……。
この辺りは森が広がっているし、飛翔船を降ろすようなスペースはない。
操縦桿を誰か他の魔道士に任せてヨミと一緒に降りるか。
そう言えば、確かルトヴィナが作った魔法道具があったはずだ。
俺は一旦船室に戻った。
ここにはさすがに改修作業でも人の出入りはなかったようで、すぐに目的のものは見つかった。
掌くらいの大きさのクリスタルは淡い輝きを放っている。
これがあれば、ほんの少しだけ空を飛ぶことが出来る。
飛んでいる飛翔船から飛び降りても、難なく地上に降りられるだろう。
甲板に出ると、前方で何かがぶつかり合う音が散発的に聞こえ、再び爆発と煙が巻き起こった。
「ヨミ! 俺とアスルが地上に降りて様子を見る! ヨミは飛翔船を下ろせる場所を探して下ろしたらシャリオットたちを起こしてから俺たちを追いかけてくれ!」
「わかりました! では、もう少し近づけます!」
返事をせずにそのまま船首にいるアスルのところへ戻った。
「一緒に降りるぞ。このクリスタルはアスルにも使えるんだろう?」
「え? うん、たぶん」
飛行魔法が込められているというクリスタルをアスルに渡すと、確かめるように眺めていた。
使えなかったら、最悪キャノンギアで耐えればいいか。
そう思って、アスルを抱えて船首から飛び降りた。
「うおおおぉぉぉおお!! 兄ちゃん、マジか!!」
さすがのアスルもいきなり飛び降りるとは思っていなかったようだ。
飛翔船の防御魔法の範囲から離れると、突風に襲われる。
落下する速度が一気に速くなり、下からの風に体ごと飛ばされそうな感覚に陥る。
「あははははは! 最高だね!」
アスルは随分楽しそうに笑っていた。
大きな力と力のぶつかり合いが森の中から聞こえる。
もう少し、右寄りか。
体を捻りながら向きを変える。
「そろそろそのクリスタルを使ってくれ」
「うん」
ルトヴィナに実演してもらったときのことを思い出すと、もう少し地上に近づいてから使うべきだろうが、万が一使えなかったときに変身が間に合わないというのは避けたかった。
少し構えていたのだが、それが杞憂に過ぎなかったことは、体が少し浮き上がるような感覚を覚えてからわかった。
ゆっくりと木々の間を抜けるようにして森の中に入っていく。
着地すると同時に、アスルの手に握られていたクリスタルは輝きを失っていた。
「魔族が戦ってるって言うのは、どっちだ?」
俺の質問はAIとアスルの両方に向けられていた。
「こっちだよ」
先に答えたのは、と言うかすでにアスルは森の中を先に進んでいた。
俺は慌てて追いかける。
アスルの身体能力は生身で追いかけるのは不可能だ。
「――変身」
認証と同時に体が軽くなったようにスピードが上がり、アスルの背中を簡単に捉えた。
さすがにファイトギアではすぐに追いつく。
少し進むと、開けた場所に出た。
……と言うより、木々が薙ぎ倒されている。
燃えてはいないものの、焦げ臭い匂いが漂い、戦いの激しさが窺えた。
魔族は一体何と戦っているんだろうか。
まさか、王女様を殺そうとしているとか?
だとしたら、すでに戦いが終わっていても良さそうなものだ。
幻惑魔法が得意と言っても、人並みの魔力しか持っていない人間がこれだけの破壊力を持つ魔族を相手にしのげるとはとても思えなかった。
「いつまで見てんだよ。先に行っちゃうよ」
「ああ、悪い」
振り返って足を止めていたアスルのところへ行く。
再び森の中を進んでいくと、叫び声が聞こえてきた。
「止めるんだ! 人間を殺しても、意味なんてない! 君はその事を理解してくれたはずじゃなかったのか!?」
「わかってるわよ! でも、殺さなければならない理由が出来たの!」
「僕は君を人殺しにさせる気はない!」
「どうしてわかってくれないの!? あなたと考え方を共有しても、それでも人間を殺さなければならない私の心を!」
「それは僕のセリフだ! 君こそ僕の本当の心をわかってくれていない!」
魔道士のような服装の男女が言い合いをしている。
男は恐ろしく美しく、金色の瞳を持ち、銀色の長い髪を頭の後ろで一つに束ねている。
背は百八十くらいあり、スラリとしたモデルのようだった。
立っているだけでも様になっている。
そして、女の方も負けていない。息を呑むほど美しい。
色気に溢れた切れ長の瞳が妖しく濡れている。首のところで切りそろえられた黒髪。白い首筋が髪の色と見事なコントラストを強調していた。
こちらも背は百七十以上はありそうだ。やはり、モデルのような体形をしている。
『彰、よく見てください。男の背中に隠れているのは、データにあるレオノーラ王女ではありませんか?』
あまりに美しい二人の男女に目を奪われていたせいで気がつかなかったが、確かに男の背中に女の子が隠れていた。
と言うより、美しい男が女の子を守っているように見える。
ピンク色の派手な髪。赤を基調とした派手なワンピースドレスにシルバーのマント。
ここからだとさすがに顔は見えないが、背格好からしてレオノーラ王女で間違いなさそうだ。
……しかし、あの格好で家出をしてきたというのか。
目立って仕方ないと思うのだが。
そう思っていたら、美しい女が動き出した。
「ダークフレア!」
すでに呪文を唱えていたのか、魔法を発動させる。
美しい女の手から放たれた闇の球体が美しい男に直撃する。
避けられないような魔法ではなかったはずだ。
レオノーラ王女を庇うためにあえて受け止めたのか?
大きな爆発音が響き渡る。
俺は少しだけ後ろに下がった。
爆発による衝撃波が彼の周りの木々を吹き飛ばして煙を上げさせていた。
普通の人間なら今の攻撃で死んでいるところだろう。
防御魔法を使ってもどれだけ防げるのかどうか。
にもかかわらず、続け様に同じ魔法をさらに二発浴びせていた。
……確認するまでもないんだろうな。
あの男女こそが、アスルが言っていた魔族なんだろう。
つまり、魔族同士で戦っている。
さっき聞こえてきた会話と、この状況から察するに、女の魔族が人間を殺そうとしていて、男の魔族が人間を守っている。
守られている人間が、レオノーラ王女なのは偶然なのか必然なのかはわからないが。
「兄ちゃん、どうするんだ?」
俺の傍らで一緒に様子を窺っていたアスルが聞く。
当然、このまま見ているつもりはない。
どうしてこういう状況になっているのかは、後で話を聞けば良い。
今は取り敢えず、人間を守っている魔族に協力するしかない。
このままファイトギアで女の魔族に奇襲を仕掛けるか、それとも女の魔族をアスルに任せて男の魔族とレオノーラ王女を保護するか。
迷いは一瞬。
「アスルはあの女の魔族の相手をしてやってくれ」
「わかった! 倒しちゃっていいんだな?」
「殺さない程度にな。話し合いの余地はありそうだ」
「そうかなぁ。ま、兄ちゃんがそう言うなら、手加減してやる」
言うや否やアスルは飛び出した。
「「何!?」」
男女の魔族は同じ声を上げて驚いていた。
「行くぜ! おりゃああ!!」
アスルは声なんか無視して女の魔族に殴りかかっていった。
「ちょ、あなた何なの!?」
戸惑いながらも彼女はアスルのパンチやキックを受け流していた。
格好は魔道士のようだけど、やはり身体能力は人間のそれとは別物のようだ。
本気ではないとはいえ、アスルの攻撃は普通の人間が素手でいなせるようなものじゃない。
俺と戦ったときよりも、鋭さも増しているように見えた。
「あの子は、魔族なのか……? どこかで見たような気がするが……」
俺はキャノンギアに変身してから男の魔族に話しかけた。
もちろん、彼が攻撃することを想定しているわけではない。
女の魔族がアスルの攻撃をかいくぐってこっちに魔法を撃ってきたときのことを考えて、である。
「想像している通りで間違いない。アスルは……いや、あいつはアスラフェルという名の魔族だ。確か、魔王の息子って話だが」
俺の声にあからさまに驚いて男の魔族が振り返った。
「アスラフェル? まさか、行方不明になったと言われている、フェルラルド様のご子息か……」
そう言えば、父親の名前は聞いてなかった。
だけど、男の魔族の口調からして、アスルがちょっとは名の知れた魔族であるとわかった。
「君は……人間のように見えるが、なぜアスラフェル様のことを知っている」
「まあ、いろいろあってな。今はアスルの保護者というか、仲間というか、友達というか……とにかく一緒に行動してる」
改めて聞かれると俺とアスルの関係って言葉にすると難しかった。
「人間が、魔族とですか?」
「それは、俺のセリフじゃないか? あんたも、人間を守っているように見えるが」
男の魔族の目が大きく開かれる。
「わかるんですか? 僕が、魔族だと。おかしいな、ちゃんと魔力を抑えているのに」
……こいつ、本気でそう言ってるのか?
だとしたらかなりの天然……。
仕方ないから理由を説明した。
「いやだって、あれだけの魔法攻撃を食らったのに、無傷じゃないか。普通の人間なら死んでるところだぞ」
「――はっ! そ、それは盲点でした。次からは避けた方がカムフラージュできると言うことですね。勉強になります」
……興が削がれる。
だけど、はっきりさせておかなければならないことがある。
「あんたはアスルの父親のことも知っているようだし、見たところ人間を守ってくれた。ってことは、人を襲わない魔族なんだな?」
「当たり前じゃないですか。魔族が人間を襲うことに意味はありません。フェルラルド様は僕たちにそのことを教えてくださった偉大な魔王様です」
……やっと、ヨミとアスル以外にも人間を襲わないという考えを持つ魔族に出会えた。
その考え方があの二人だけの特別なものではないことがわかってちょっとだけホッとしたような気がした。
地上から見ていたら、その対岸にも大陸があるとは思えないかも知れない。
こうして空から見てみると一目瞭然。
湖を挟んでホルクレストもエオフェリアも一つの大陸の国だった。
太陽は真上にあるから今は丁度お昼頃だった。
飛翔船はゆっくりと湖を南下している。
なぜそんなことになったのかというと、速度が向上したことと徹夜明けの妙なテンションのせいで、アーヴィンは全力で飛翔船を飛ばしてしまった。
そのせいで危うく湖を越えてエオフェリアに入国するところだったのだが、女王陛下の情報では、すでに家出した王女とやらはホルクレストにいるらしい。
つまり、湖はすでに渡った後。
俺はシャリオットとアーヴィンにちゃんと睡眠を取るように言い聞かせて、ヨミに操縦を代わってもらい、湖をホルクレストに向かって南下しているところだった。
「何か見えますか?」
操縦桿を操りながらヨミが聞く。
「いや、もう少しスピードを上げてくれ。シャリオットたちが寝ぼけてなければ、家出した王女はすでにホルクレストの大陸にいるって話だ」
「はい」
流れゆく景色が少しだけ速くなると、ようやく岸が見えてきた。
「そこからでも見えるだろ、あの岸を越えたらまたゆっくりに戻してくれ」
ヨミは小気味好い返事をして、言う通りに飛翔船を動かす。
しかし、問題はここからだ。
岸の先はほとんど森が生い茂っている。
その中に少しだけ切り開かれた場所が道になっている。
家出した王女がこの道を通ってくれていれば、見つかるかも知れないが……。
そもそも、岸のどの辺りからホルクレストに入ったのかまではわからなかった。
「キャノンギアのセンサーでこの森の中から人間を捜し出すことって可能か?」
『……何か、捜している人間に特徴があれば可能かも知れませんが……。情報が何もなければ捜しようがありません』
特徴と言われても、俺には王女とやらの顔すらわからない。
こんなことならギルドでちゃんと仕事を請け負っておくべきだったか。
いや、待てよ……。
「ヨミ、操縦しながら魔法水晶でホルクレストのギルド本部へ連絡を取れるか?」
「それくらいでしたら、簡単ですよ」
言いながら操縦桿を片手で持ち、胸のポケットから魔法水晶を取り出す。
呼び出すためのキーワードを魔法水晶から送り込むと、間もなく魔法水晶にはホルクレストのギルドが映し出された。
これは受付のところにある魔法水晶か。
少し狭いが、ヨミの隣に立って魔法水晶に向かい合う。
すると、ダリアがこちらの様子にも気付いてくれた。
「こんにちは。どうされたのですか? アキラさんには、必要な情報は全て昨日お伝えしたはずですが……」
「理由はちょっと省かせてもらうが、成り行きで例の王女様を捜すことになった」
「……仕事を引き受けると言うことですか? でしたら、その手続きはこちらでしておきましょう」
「それは別にどちらでもいいんだけど、王女様の特徴が知りたい」
「そう言うことですか。レオノーラ王女様の特徴は、髪の色が魔法でコロコロ変わることと、猫のような瞳を持ち、童顔で愛らしい顔。年齢は十五歳ですが、顔に似合わないほどスタイルがいい、と言うところでしょうか」
「俺の聞き方が悪かった。身体的特徴よりも、もっと別の……例えば、魔力が高いとか低いとか。能力的な特徴を教えて欲しい」
「能力……魔力は人並みのようですが、幻惑魔法を得意としているようです。人だけでなく魔物すら己の虜にしてしまうような魔法を使うようなので、その事に注意するようにと女王陛下が注釈を入れてます」
「わかった。ありがとう」
そう言って魔法水晶を切ってもらった。
俺は再び甲板に降りて柵から身を乗り出すようにして地上を見る。
「今の説明で特定できそうか?」
一人の時はこうして堂々とAIを頼ることが出来るのは、大きな利点だった。
『一応データに登録はしてますが、難しいですね。この状態でもセンサーはある程度使えますが、森の中には多くの生命反応と魔力が感知できます。人並みの魔力の反応だけではあまりに数が多すぎます』
そりゃそうだよな。森の中には野生生物や魔物がたくさんいるだろう。
しかし、そんな森の中を王女が一人でいても大丈夫なのだろうか。
親である女王は娘を心配すると言うよりも、仕事を引き受けた人が騙されたりしないかの方を心配しているようだし。
『左前方に大きな魔力を感知しました!』
突然、AIがそう告げた。
次の瞬間、森の中から大きな爆発音が鳴り響き、左の前の方――だいたい二十メートルくらい先から煙が上がるのが見えた。
飛翔船はそれを少し避けるように船体を少し右側に向けていた。
「大丈夫ですか!?」
ヨミが声を上げる。
「問題ない!」
「申し訳ありません。急な魔力の流れを感じたので、勝手に飛翔船の向きを変えてしまいました」
ヨミにもAIと同じくらいの能力があるようだ。
あの程度の爆発に巻き込まれたとしても、防御魔法が守ってくれるだろうが、回避行動は間違いではない。
「どうしましょう」
王女がいるかも知れない森の中での爆発。放っておくことは出来ないだろう。
「ヨミ、爆発があったところを回り込むように飛べるか?」
「はい。やってみます」
俺は船首部分に向かった。
そこにはアスルがいて身を乗り出すようにして地上を見ている。
「アスルは今のわかったか?」
「うん。何かが戦ってる。それも、この魔力は普通の魔物のものじゃない」
真剣な眼差しは、すでにアスルを臨戦態勢に入らせているのだとわかるくらいだった。
「魔物じゃない? それじゃ……」
「魔力が急に大きくなったり、小さくなったりしているのは、魔族がそれをコントロールしてるからだ」
「そんなことがここからわかるのか?」
「当たり前じゃん。だからオレたちは人間よりも大きな魔力を扱えるんだぜ。……まあ、オレは魔力が大きすぎて上手く操れないから普段は押さえ込んでるだけなんだけどさ」
少しだけ恥ずかしそうにアスルがつぶやいた。
魔族の特徴について、一つ勉強にはなった。
とはいえ、どうするべきか……。
この辺りは森が広がっているし、飛翔船を降ろすようなスペースはない。
操縦桿を誰か他の魔道士に任せてヨミと一緒に降りるか。
そう言えば、確かルトヴィナが作った魔法道具があったはずだ。
俺は一旦船室に戻った。
ここにはさすがに改修作業でも人の出入りはなかったようで、すぐに目的のものは見つかった。
掌くらいの大きさのクリスタルは淡い輝きを放っている。
これがあれば、ほんの少しだけ空を飛ぶことが出来る。
飛んでいる飛翔船から飛び降りても、難なく地上に降りられるだろう。
甲板に出ると、前方で何かがぶつかり合う音が散発的に聞こえ、再び爆発と煙が巻き起こった。
「ヨミ! 俺とアスルが地上に降りて様子を見る! ヨミは飛翔船を下ろせる場所を探して下ろしたらシャリオットたちを起こしてから俺たちを追いかけてくれ!」
「わかりました! では、もう少し近づけます!」
返事をせずにそのまま船首にいるアスルのところへ戻った。
「一緒に降りるぞ。このクリスタルはアスルにも使えるんだろう?」
「え? うん、たぶん」
飛行魔法が込められているというクリスタルをアスルに渡すと、確かめるように眺めていた。
使えなかったら、最悪キャノンギアで耐えればいいか。
そう思って、アスルを抱えて船首から飛び降りた。
「うおおおぉぉぉおお!! 兄ちゃん、マジか!!」
さすがのアスルもいきなり飛び降りるとは思っていなかったようだ。
飛翔船の防御魔法の範囲から離れると、突風に襲われる。
落下する速度が一気に速くなり、下からの風に体ごと飛ばされそうな感覚に陥る。
「あははははは! 最高だね!」
アスルは随分楽しそうに笑っていた。
大きな力と力のぶつかり合いが森の中から聞こえる。
もう少し、右寄りか。
体を捻りながら向きを変える。
「そろそろそのクリスタルを使ってくれ」
「うん」
ルトヴィナに実演してもらったときのことを思い出すと、もう少し地上に近づいてから使うべきだろうが、万が一使えなかったときに変身が間に合わないというのは避けたかった。
少し構えていたのだが、それが杞憂に過ぎなかったことは、体が少し浮き上がるような感覚を覚えてからわかった。
ゆっくりと木々の間を抜けるようにして森の中に入っていく。
着地すると同時に、アスルの手に握られていたクリスタルは輝きを失っていた。
「魔族が戦ってるって言うのは、どっちだ?」
俺の質問はAIとアスルの両方に向けられていた。
「こっちだよ」
先に答えたのは、と言うかすでにアスルは森の中を先に進んでいた。
俺は慌てて追いかける。
アスルの身体能力は生身で追いかけるのは不可能だ。
「――変身」
認証と同時に体が軽くなったようにスピードが上がり、アスルの背中を簡単に捉えた。
さすがにファイトギアではすぐに追いつく。
少し進むと、開けた場所に出た。
……と言うより、木々が薙ぎ倒されている。
燃えてはいないものの、焦げ臭い匂いが漂い、戦いの激しさが窺えた。
魔族は一体何と戦っているんだろうか。
まさか、王女様を殺そうとしているとか?
だとしたら、すでに戦いが終わっていても良さそうなものだ。
幻惑魔法が得意と言っても、人並みの魔力しか持っていない人間がこれだけの破壊力を持つ魔族を相手にしのげるとはとても思えなかった。
「いつまで見てんだよ。先に行っちゃうよ」
「ああ、悪い」
振り返って足を止めていたアスルのところへ行く。
再び森の中を進んでいくと、叫び声が聞こえてきた。
「止めるんだ! 人間を殺しても、意味なんてない! 君はその事を理解してくれたはずじゃなかったのか!?」
「わかってるわよ! でも、殺さなければならない理由が出来たの!」
「僕は君を人殺しにさせる気はない!」
「どうしてわかってくれないの!? あなたと考え方を共有しても、それでも人間を殺さなければならない私の心を!」
「それは僕のセリフだ! 君こそ僕の本当の心をわかってくれていない!」
魔道士のような服装の男女が言い合いをしている。
男は恐ろしく美しく、金色の瞳を持ち、銀色の長い髪を頭の後ろで一つに束ねている。
背は百八十くらいあり、スラリとしたモデルのようだった。
立っているだけでも様になっている。
そして、女の方も負けていない。息を呑むほど美しい。
色気に溢れた切れ長の瞳が妖しく濡れている。首のところで切りそろえられた黒髪。白い首筋が髪の色と見事なコントラストを強調していた。
こちらも背は百七十以上はありそうだ。やはり、モデルのような体形をしている。
『彰、よく見てください。男の背中に隠れているのは、データにあるレオノーラ王女ではありませんか?』
あまりに美しい二人の男女に目を奪われていたせいで気がつかなかったが、確かに男の背中に女の子が隠れていた。
と言うより、美しい男が女の子を守っているように見える。
ピンク色の派手な髪。赤を基調とした派手なワンピースドレスにシルバーのマント。
ここからだとさすがに顔は見えないが、背格好からしてレオノーラ王女で間違いなさそうだ。
……しかし、あの格好で家出をしてきたというのか。
目立って仕方ないと思うのだが。
そう思っていたら、美しい女が動き出した。
「ダークフレア!」
すでに呪文を唱えていたのか、魔法を発動させる。
美しい女の手から放たれた闇の球体が美しい男に直撃する。
避けられないような魔法ではなかったはずだ。
レオノーラ王女を庇うためにあえて受け止めたのか?
大きな爆発音が響き渡る。
俺は少しだけ後ろに下がった。
爆発による衝撃波が彼の周りの木々を吹き飛ばして煙を上げさせていた。
普通の人間なら今の攻撃で死んでいるところだろう。
防御魔法を使ってもどれだけ防げるのかどうか。
にもかかわらず、続け様に同じ魔法をさらに二発浴びせていた。
……確認するまでもないんだろうな。
あの男女こそが、アスルが言っていた魔族なんだろう。
つまり、魔族同士で戦っている。
さっき聞こえてきた会話と、この状況から察するに、女の魔族が人間を殺そうとしていて、男の魔族が人間を守っている。
守られている人間が、レオノーラ王女なのは偶然なのか必然なのかはわからないが。
「兄ちゃん、どうするんだ?」
俺の傍らで一緒に様子を窺っていたアスルが聞く。
当然、このまま見ているつもりはない。
どうしてこういう状況になっているのかは、後で話を聞けば良い。
今は取り敢えず、人間を守っている魔族に協力するしかない。
このままファイトギアで女の魔族に奇襲を仕掛けるか、それとも女の魔族をアスルに任せて男の魔族とレオノーラ王女を保護するか。
迷いは一瞬。
「アスルはあの女の魔族の相手をしてやってくれ」
「わかった! 倒しちゃっていいんだな?」
「殺さない程度にな。話し合いの余地はありそうだ」
「そうかなぁ。ま、兄ちゃんがそう言うなら、手加減してやる」
言うや否やアスルは飛び出した。
「「何!?」」
男女の魔族は同じ声を上げて驚いていた。
「行くぜ! おりゃああ!!」
アスルは声なんか無視して女の魔族に殴りかかっていった。
「ちょ、あなた何なの!?」
戸惑いながらも彼女はアスルのパンチやキックを受け流していた。
格好は魔道士のようだけど、やはり身体能力は人間のそれとは別物のようだ。
本気ではないとはいえ、アスルの攻撃は普通の人間が素手でいなせるようなものじゃない。
俺と戦ったときよりも、鋭さも増しているように見えた。
「あの子は、魔族なのか……? どこかで見たような気がするが……」
俺はキャノンギアに変身してから男の魔族に話しかけた。
もちろん、彼が攻撃することを想定しているわけではない。
女の魔族がアスルの攻撃をかいくぐってこっちに魔法を撃ってきたときのことを考えて、である。
「想像している通りで間違いない。アスルは……いや、あいつはアスラフェルという名の魔族だ。確か、魔王の息子って話だが」
俺の声にあからさまに驚いて男の魔族が振り返った。
「アスラフェル? まさか、行方不明になったと言われている、フェルラルド様のご子息か……」
そう言えば、父親の名前は聞いてなかった。
だけど、男の魔族の口調からして、アスルがちょっとは名の知れた魔族であるとわかった。
「君は……人間のように見えるが、なぜアスラフェル様のことを知っている」
「まあ、いろいろあってな。今はアスルの保護者というか、仲間というか、友達というか……とにかく一緒に行動してる」
改めて聞かれると俺とアスルの関係って言葉にすると難しかった。
「人間が、魔族とですか?」
「それは、俺のセリフじゃないか? あんたも、人間を守っているように見えるが」
男の魔族の目が大きく開かれる。
「わかるんですか? 僕が、魔族だと。おかしいな、ちゃんと魔力を抑えているのに」
……こいつ、本気でそう言ってるのか?
だとしたらかなりの天然……。
仕方ないから理由を説明した。
「いやだって、あれだけの魔法攻撃を食らったのに、無傷じゃないか。普通の人間なら死んでるところだぞ」
「――はっ! そ、それは盲点でした。次からは避けた方がカムフラージュできると言うことですね。勉強になります」
……興が削がれる。
だけど、はっきりさせておかなければならないことがある。
「あんたはアスルの父親のことも知っているようだし、見たところ人間を守ってくれた。ってことは、人を襲わない魔族なんだな?」
「当たり前じゃないですか。魔族が人間を襲うことに意味はありません。フェルラルド様は僕たちにそのことを教えてくださった偉大な魔王様です」
……やっと、ヨミとアスル以外にも人間を襲わないという考えを持つ魔族に出会えた。
その考え方があの二人だけの特別なものではないことがわかってちょっとだけホッとしたような気がした。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる