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18最 終 章

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18最 終 章

一輪の花

 今でも忘れられないあの日 あの夜 
 僕は一輪の花に出会った
 その花は僕に教えてくれた

 泣きなさい 怒りなさい 愛しなさいと
 そう ありのままに ありのままに
 風は大気の汚れを吹き跳ばし
 雨は大地を洗う 
 涙は心を洗う
 そう 心が疲れたら泣こう
 涙で洗い流そう
 今が心から泣くとき 今が涙を流すとき  
 その涙で一輪の花を咲かせよう
 疲れたら花を見よう
 花はいつもそこにある
 そう 君の胸の中に


 今でも忘れられないあの日 あの夜 
 僕は一輪の花に出会った
 その花は僕に教えてくれた

 空を飛ぶ小鳥をごらん
 森の木々を飛び回るリスをごらん
 みんな初めから自由
 だから彼らに自由という言葉はいらない
 だって 自由が当たりまえだから
 君は苦しいと自分を縛り
 君は悲しいと自分を縛る
 小鳥と何が違うの? どこが違うの
 自由を楽しもう
 誰にも止めることは出来ない
 だって 君は初めから自由だから


 今でも忘れられないあの日 あの夜 
 僕は一輪の花に出会った
 その花は僕に教えてくれた

 君は 生きるのが不安だと云う
 人は生れ そして死に
 君は不安という妄想に
 恋をしてしまったようだ
 おおいに恋をするのも良い
 おおいに恋を楽しんで
 一生懸命 恋を生きて
 全身全霊で恋を味わって
 もし疲れたときは戻っておいで
 きっと きっと 一輪の花が癒してくれる
 そしてその花はこう言うんだ
 お帰りなさいと




 今でも忘れられないあの日 あの夜 
 僕は一輪の花に出会った
 その花は僕に教えてくれた

 一輪の花を見たいと君は云う
 僕はいつだって咲いてる
 いつだって君と一緒
 何故そんな質問するんだい?
 僕は何処へも行かない
 後にも先にも僕は君と一緒
 淋しいこと聞かないで
 君は僕を困らせようとしてる?
 心を止めてほしい
 どうか心の奥深いところ見て
 僕は小さく 小さく 咲いている
 君のための花
 僕の声を聞くことは簡単なこと
 だって 僕は君で君は僕だから


由美子が風輝を偲び曲を作り、摩耶の作詞による作品となった。

由美子にとってもかけがえのない存在フウキ。

時を同じくしてエジプトのピラミッドの一部が何者かの手によって破壊される事件が世界を震撼させた。

そこにはKIZUNAと銘打った犯行声明文が地元警察と新聞社に投稿されていた。
それは、キリスト圏・イスラム圏・各宗教宗派に対しての犯行声明。 

『我々「ONE」は人間の作った宗教を全面的に排除する。 唯一絶対神である、神は人間は作ったが
宗教は作っていない。 世界人類の覚醒と世界の絶対平和のため』

という身勝手なくだりだった。

世界の目はONEへ向けられた。

世界中のマスコミは一斉にONEへの活動を誹謗中傷し集中攻撃した。

エレボスの思惑通りに事は運んだ。

ピラミッドの事件以降世界からはONEの事を口にする者はいなくなった。

イギリスのとあるビルのオフィイスでマーラが「人間とはそんなもの、時代がどうであれ情報に
左右されるのは世の常。

一番可愛いのはしょせん自分の身の安全。世界に君臨する者はいつの世も民衆を誘導してやらんとな。
それも我々エレボスの勤め」

マーラは勝ち誇っていた。

そのころ東京では、旧SANGAの面々に由美子も加わり居酒屋の一室に集まっていた。

シバが「今日は大変お疲れ様でした。本当にみんな久しぶりだね。
元気そうでなによりだよ。

本当にこれで良いのか?もう一度みんなの意見を聞きたいと思って集まってもらった。

フウキ君は我々にある意味人間として、いや、覚醒する切っ掛けを与えてくれた。

そして目指す目的はSANGA(安住の地)のはず。たとえ、我が身が滅びようと魂は永遠に不滅。 

今、やらずして何時やるのか?

フウキ君が生前ことある事に言っていた言葉を思い出して欲しい。ひとりが変われば自ずと廻りそして
地域社会、そして世界が変わると何時も彼は言っていた。
 
それが今なんじゃないかって僕は思うんだ。思い起こしてほしい。
あの久慈氏が晩年は180度人間が変わった。たったひとつの詩と摩耶ちゃんとの出会いで・・・
人間は瞬時に変われる。

僕はフウキ君の志を繋げて行きたいし実現したいんだ。
フウキ君の死後、僕は臆病になっていた。 今、気が付いたんだ。
僕達は志半ばなんだってね。みんなの意見を聞きたい」

摩耶が「私もこの数年何かを置き忘れているようで、しっくりこなかったの。今、シバさんの言葉で
何が足らなかったのかが解りました。SANGAは志半ばだったって事に。そして私も志半ばだったって事を、
そしてこれが私の天命だって事を」

インドラが涙目で言葉を発した「僕も摩耶さんと同じです。今、此処に何で僕がいるのか。
どうあるべきか解った気がします。 僕もフウキさんの目指した世の中になって欲しいです」

花梨が「SANGAの中で私が一番先にフウキさんと出会い、
土地柄が札幌でもあって、一番長く接してきました。フウキさんは何時も前を見て歩いてました。
私のこの世で尊敬するフウキさんがやってきたことを、完結させたいと思います」

ラトリが「僕もフウキさんを追っかけて札幌の大学を受験し、半ば強引に親に願い出て住んだ札幌。
フウキさんから色々と学んできました。僕もSANGAを愛してます。
そして僕のライフワークと自覚してます」

「私もいいですか?」遠巻きに様子を伺っていた由美子が口を開いた。

「私は晩年のそれも一時のフウキさんしか知りません。でもフウキさんの話は花梨さんからことある
事に聞いて来ました。

私は、ろくすっぽ会話も出来ない徳島の田舎の娘でした。
フウキさんが切っ掛けを与えてくれたおかげで人前で表現できました。ここにこうして居れるのも
フウキさんのおかげ・・・

皆さんの邪魔にならないようにしますので、どうか、どうか私も仲間に入れて下さい・・・」

シバが「ここに居ると言うことはもう立派な仲間だよ。フウキ君が最後に見つけてくれた大事なSANGAの仲間・・・」

全員が拍手をした。

アグニが話し始めた「僕もみんなと同じです」

簡単に云い終えたアグニはバックから包み物を取り出した。

「今日はみんなに視てもらいたい物があるんです。これは僕が小樽の喫茶店でパラレルのフウキさんに
貰った緑色の石なんです」包みを開けて花梨に手渡した。

「例のエジプトテロ事件の前に、小樽でフウキさんから預かった石なんです。何故、僕が預かったのか
未だに解らないんです。 皆さん手にとって感じてみて下さい」

由美子が「あの~~う、フウキさんと会ったんですか?」

シバが説明した「パラレルワールドのもうひとりのフウキ君が半霊半物質でアグニの前に現われたんだ」

「それって幽霊ですか?」

「ウ~~ン。とも違うかな・・・別世界のフウキ君ってとこかな」

「由美子ちゃん、後で教えてあげるね」花梨が言った。

摩耶が切り出した。「前回と同じ活動内容でするの?それとも違う方法か何かで?」

アグニが「此処に居るのが歌い手2人・詩・書・絵・小説・癒しの波長」

インドラが続いた「これらを複合して統合するとどうなりますかね・・・」

「あっ・・・」突然、由美子が声を上げた。

全員の視線が由美子に集中した。

花梨が「由美子ちゃん、どうかしたの?」

由美子はじっと目を伏せて何かを視ていた。そして片手には緑の石が握られていた。

由美子は石を握って直ぐ、身体に振動が走った。そして次の瞬間、自分の身体を眼下にして
宇宙空間を漂ってよいる自分を感じた。

間もなく風景が変わって今度は白い宮殿のような処に自分が座っていた。右側を視るとあの懐かしい
波動の顔がそこにあった。

「フウキさん、お久しぶりです」

フウキがにこやかに立っていた。その横には見慣れた顔もあった。

「あっ、ヘルさんもお久しぶりでございます」

由美子はサンガにトリップしてたのだった。しかも由美子はヘルを知っていた。

ヘルが「これから数年後の地球の姿を見せてあげよう。その世界は望む望まざるに係わらず進む
道は自分で決めているのです。

そこは嘘隠しの出来ない自分の行く地球の姿。大きく分けると
地球は2方向に分かれる」

由美子が初めに垣間見た世界は、薄暗くチョット獣臭いジメジメした何とも云えないよどんだ
空気の世界だった。

人間は様々で、ブツブツ何か独り言を言ってる者。目が血走った修羅の形相のような者。
長い髪に半裸同然の出で立ちで男に媚びを売る女性。等々、自分の欲望丸出しの世界がそこにあった。

胸に声が「ここは将来の地球のひとつの姿、自分最優先の世界」

次に垣間見た世界は、ほんのり暖かく初夏の日差しのように心地よい、そして秋のような透き
通った空気が本当に遠くまで見通せた。道を歩く人は皆、輝いていてにこやかでピュアな感じがする。

先ほどとは全く違った世界がそこにあった。

「もうひとつの地球の将来」声が胸に響いた。


 次の瞬間SANGAの仲間の中に座っていた。

花梨が「由美子ちゃんトリップしたの?」

「はい、身体から飛び出したと思ったらフウキさんとヘルさんの居る世界に行きました。
そしてヘルさんが近未来の地球は二つに分かれていて、その二つの地球を少しだけ視せてもらいました。

サンガのヘルさんが云うには球は近い将来二つに分離するそうです。ひとつは自己中心的で
欲望のままに我を通そうとする世界。 

今の世の中の灰色な部分をデフォルメしたような世界。

もうひとつは調和の取れた神の世に近い世界みたいです。
フウキさんもサンガにおりました。ニコニコ笑ってました」

話を聞いていたシバが「ちょっとごめん・・・みんな、僕の話を聞いてくれるかい。
今の由美子ちゃんの話を聞いていて思ったんだけど。

もう一度、SANGAの存在意義を確認しないかい。僕は今までこの世の中を楽園的な世の中に
修正できないかなと考え行動してきたところがあるんだ。

百匹目の猿じゃあないけど、僕達SANGAの影響が知らず知らず廻りに及ぼすだろうと考えていた。

でも、それは思い上がりではないかなと思ったんだ。

たった今。由美子ちゃんがサンガで視せられた近未来の世界は、ズバリ二方向に分離されていて
双方の世界が存在する。

今のこの世を良しとする利己主義の世界と、調和を求める人間、
いや本来の魂のすがた。

当然、どちらを選ぶのも各自次第ってわけ。だから近未来は分離されているんだ・・・

で、僕らの意義は後者の調和を求める人の少しでも手助けになればと思うんだ。あくまでも
ガイドのような縁の下の力持ち的な・・・・どうだろうか?」

花梨が「私も今、そんな気がします。私は歌の世界を通してだけど、同じ歌でもその時々で
伝わり方が違うのね。

原因は色んな要因があると思うけど、それって原因のひとつにこちら側があるような気がするの。

最初の頃は、只がむしゃらで心に余裕がなかったの。

でもちゃんと伝わったのね。

そのうち馴れてくると客席の反応を気にしたり、歌う側も馴れて
きたっていうか新鮮味が欠けたっていうか・・・と同時に心に穴が開くことがあったのね。

そこいくとKIZUNAのような自然発生のパワーって凄いなって思うの。それに作られたものって
冷めるのも早いような気がするの・・・みんなも感じてると思うけど」

由美子も深く頷き「私も押しつけにならないKIZUNAの歌のように自然発生的な歌も
良いかなって思いました・・・」

全員一致でSANGAの今後の方向性が決定された。

活動は再開。但し自然発生的な方向性を目的とする。 
全ての教義的なものは無く、あくまでも個人の自主性を最優先し尊重して活動する。

SANGAに類する作品は著作権フリーとし、宣伝活動は個々の判断によるものとする。

摩耶作詞・由美子作曲の作品「一輪の花」がネット配信され世界中で歌われることとなった。

その後、地球はサンガの予言通り二方向に別れていった。

2026年、争いのない平和に満ちた地球が再構築された。 

もうかつての地球を思い起こす者は無かった。

新生地球には国境は無く人種や差別言葉の違いや性別さえも無くなっていた。

かつての地球的習わし、常識の類はこの新生地球にはもはや存在していなかった。
真実の文明に支えられた地球は宇宙の仲間入りを果たし、霊的文明へと進化を遂げていた。

将来の地球が光り輝く星になりますように。

    THE END
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