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11意識のチューニング

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11意識のチューニング

 久慈の配下にあたる向井政晴から久慈に連絡があった。 

「久慈様、兼ねてから久慈様がおっしゃっていた反勢力の全貌が
見えてまいりました」

「で?・・・・」威厳のある久慈の声。 

「組織名はサンガといいまして、わずか7名からなる集まりでございます。今のところトップの人間の
正体は全く解りません。 

残りは今流行の花梨という歌手と女マネージャーの摩耶。小説家の芝山という男と原宿で絵を描いている
若者具志といいます。 

それと今年沖縄から札幌の大学に入学した男ですが名前は宮越。 もう一人は不明です。

計不明者2人と今いった5名からなる組織で組織名はサンガでございます」 

「馬鹿者。この、わしに報告するのに不明者がございますとは、どういう事なんだね?・・・
君はガキの使いか?」 

「た・大変申し訳ありません・・・すぐに」 

「まあよい。若造のしかも7人とはのう?・・・・」 

「はい、それが不可思議なんです。歌にしても本にしても、絵にしてもメッセージせいが全く見あたりません。 
もっと大きな組織で影響力のあるところは幾らでも存在します。 

私の印象では単なる同じ意識を持つネットか何かで知り合った集まりではないかと思われますが。 

久慈様がサンガを意識されるほどの事ではありません。久慈様の下で働いて40年、初めての経験です」 

「向井もまだ解ってないようだのう・・・まあよい。 とりあえずいつものやり方で始末せい。
小説家は電車で痴漢決定じゃ。 週刊誌とテレビを通じて大きく騒ぎなさい。

その梨花という歌手とマネージャーはダブルブッキングの2回もしてくれりゃあ、大きな借金を
負ってしばらくは立ち直れんじゃろうて。 

残るは取るに足らんからそのままで良い。 くれぐれも悟られるなよ。解かりましたね・・・」 

「はい、かしこまりました」

向井はその場を離れると事務所に戻り部下に指令を発した。

2人のやり取りをサンガの世界から地の宮の神官ミーミルはじっと見下ろしていた。 

「とうとう久慈が動き出したようだ。相変わらずのやり方か」

ミーミルは憂いの帯びた眼差しでみつめていた。

ここは京王井の頭線。シバは渋谷駅から吉祥寺に向かっていた。 

電車が高井戸駅に差し掛かった時突然、シバの胸にある意識の言葉が響いてきた。

「シバ、聞きなさい。私は天界サンガの者。これより先は両手で
つり革を掴みなさい。今後、立って乗り物を乗るときは常に両手は上・・・」 

そう、言葉にならない意識が伝わってきた。シバは指示に従って両腕は絶えず上げていた。 

同じ車両に乗り合わせていた久慈傘下の仕掛け人3人はタイミングを掴めず業を煮やしていた。 

彼らの計画は女性がシバの横に立ち小さい声で「やめて下さい」と2回云う。
そこで側にいる男がシバの手を掴み上げ「やめろ!」と大声で騒ぐ。 もう一人も騒ぎ始める。
男2人と女性の3人は途中の駅でシバを下車させ警察を呼び女性に被害届を出させ、男2人は目撃者として
証言するという手はず。 

ところがシバの両手は上げたままである。3人は予想外の展開に苛立っていた。 シバは指示に従った。
その後も列車に乗る時は必ず座るか混雑を避け空いている列車の時間帯に移動する事を心がけた。 

一方、摩耶もサンガのエイルから「ダブルブッキングに注意せよ」と夢で何度か伝えられていた。
シバからも久慈が動き始めたらしいから注意するようにと連絡があった。 

彼らはしばらく注意しながら様子をみることにした。

向井が久慈にその後の報告をしていた「久慈様、どうもあの2人は警戒してか罠にはまりません。
いっきに闇から闇に葬りましょうか?」 

久慈はタバコをくわえながら「君が弱音を吐くのも珍しいのう・・・ところで奴らのトップは掴めたのかな?」 

「はい、それがまだでございます」 

「何故だね?」 

「あ、いや、申し訳ありません。今度お会いする時はハッキリしてると思います」

「思います・・と云ったか?この私に?・・・」向井は失言したと顔を青くしていた。 

「それにしても不思議よのう?実体があるようで無いような連中か?相手は幽霊か何かですかねぇ?
いいですか、次回、会う時までにハッキリしない場合は、あなたには今までと違う仕事をしてもらう
事になります」

向井はハッキリと久慈に恫喝された。

自分の事務所に戻った向井はその苛立たしさを部下数人に浴びせていた。 

「貴様らは何をやってるんだ!おかげであの久慈の糞じじいに恫喝されたんだ。このわしが・・」3人の部下は持っていたステッキが折れるまで殴られた。

フウキからラトリ伝令が入りSANGAが札幌に集結された。 

フウキが「みなさん、今日は忙しい中、お疲れ様でした。緊急招集をかけた理由は既にエレボスが
動き出しており、躍起になってこのSANGAの実体を探しているようです。

今のところダメージは無いけれどチョットした油断が命取りになります。たぶん実体を掴むまでそう
長くはないでしょう。 

それで今日は皆さんに、いっきに波動チューニングして天界のサンガと繋ぐ
パイプを太くしようと考えてます。 

シバさんも今よりもっと太いパイプで繋がりましょう。 

皆さんは、まず自分に揺るがない芯を作る瞑想をしてもらいます。 
そして僕が隣の和室で一人60分づつ個人セッションします。 

その内容は皆さんの波動チューニングして、いっきに天のサンガに体外離脱させ、サンガ13の宮のどこかに
パイプを作る作業をします。 

結果、1回でも大きく繋がると、この世界に戻ってからも天のサンガからの指示を意識的に
受信できるようになるんです。 

当然今までも繋がっていますが今度はハッキリと自覚できるようになります。今までは意識を
集中させてから繋がってましたよね、今度からは意識した瞬間に繋がって会話できます。

時間差はありません。 

アナログとデジタルほど違います。いやそれ以上です。まずは、そこまでで今日は終了します。
意見や聞きたい事ありますか?」 

インドラが「ここまでは理解できましたが、その後はどう考えてるんですか?」
 
「うん、今日のチューニングが終わり次第で話し合おうと考えてる、これは今まで話してないことだけど、
みんなの意識が同じくらいのレベルでないと実現できない事ってあるんだ、だから今回集まってもらいました」

全員がフウキの前に座った。部屋はローソクの明かりと微かな、
お香の香りが漂った異空間の感があった。 

フウキが「まずは全員深い深呼吸を3回して下さい。では軽く瞑想に入ります。鼻から息を大きく吸って
5秒止めて下さい。 意識は鼻から吸って尾てい骨に息を降ろして止める。
 
その後静かに背骨を登って口からゆっくりと吐く、吐き終わったら、また息を5秒間止めて下さい。
約30分で終了します。 では開始して下さい」 

部屋にはメトロノームが規則正しいゆっくりとしたリズムを刻んでいた。

SANGAの面々は日頃から瞑想は馴れていたので全員素早く深い瞑想に入った。

「はい、解いて下さい。ではアグニ君を残して全員退室願います」 

フウキとアグニが対面して座り10分間の瞑想に入った。 

「アグニくん座蒲団を枕に仰向けになって目を瞑って」 

アグニは従った。

「じゃあ、身体から抜けてホテルの屋上に出ようか? 何が視える?」 

「近所のビルの屋上が視えるよ」 

「じゃあ、もっと高く上がってみようか」 

「はい、北海道が視えます」

「じゃあ、もっと上行こう」 

「地球が下に見えます」 

「次はアグニのガイドにサンガに誘導願って。ハイ!」 

次の瞬間アグニはいっきに次元を越え白いドームの様なところを
通り抜け白く光り輝くサークルのような所に居た。 

正面には10数人の意識体があった。 

隣にはフウキの存在も感じられた。

正面の意識集団の中からミーミルが語りかけてきた。 

「アグニ久しぶりです、私は汝が地球に生まれる以前から汝のことを知る者、これからは
私ミーミルが守護する。 フウキを中心に働いて下さい」 

アグニは深く頭を下げたと同時にミーミルの意識と重なり
合った。止めどなく表現しようのない歓喜の涙が溢れてきた。

数人の意識体から祝福のバイブレーションが2人に注がれた。 
サンガでの学習経験は3日程続きアグニの意識はこの世界の身体に戻った。
この世界では30分程の出来事だった。 

フウキが声を掛けてきた「どう?」 

「はい、ハッキリしたビジョンが視えました、夢とは全く違う
感覚ですね・・・」

「それでは誰とも話さずに自室に戻り、今の経験に慕っててよ。 
食事の時間前にコールするから」 

「はい、ありがとうございます」アグニは無言で退室した。

フウキがみんなに「今後この部屋から出た人は、まっすぐ
部屋に戻ってもらいます。人によって感じ方が違うから、
他の人に意識を植え付けないようにするためです。食事の
前に皆さんにコールしますから。つぎは、花梨ちゃん入って」

フウキの誘導のもと、花梨の意識はサンガにあった。 

イズンの意識が花梨と重なっていた。サンガの空間には、
ほのかな花の香りと静かな音楽が流れていた。天国を絵に
描いたような風景がそこに

あった。花梨も3日間学習し戻った。 

「次はラトリ入ってきて」

その後全員が終えたのは夜の10時を過ぎていた。 

7人全員が集まった。

フウキが口火を切った「今日で天界のサンガと太いパイプが
出来たし、それぞれのガイドも決まった。従来通り各々の活動して下さい」

フウキはゼンマイ仕掛けのロボットが全部のパワーを使い
果たしたかのようにその場に倒れ込んだ。 

「フウキさん・・・」

フウキは翌日の夕方まで部屋で寝ていた。側では摩耶が付き添っていた。 

シバの指揮の下全員チェックアウトを済ませ解散していた。 

「うっ!摩耶かい?」 

「フウキさんお目覚めですか?」 

「嗚呼、よく寝たよ。パワー全開だったからね、もう大丈夫だよ、
摩耶ちゃんありがとう。ところでみんなは?」 

「もう夕方の5時ですよ昨日から19時間近く寝てたんですよ」 

「そんなに寝てたのかい?・・・」

「みんな宜しくって言ってました。今頃はみんな家路について
活動してる頃ですよ」

「ごめんね摩耶ちゃん」 

「いいえ、どういたしまして」 

「ところで摩耶ちゃん・・・僕腹減った」 

「もう大丈夫ですね!」2人はチェックアウトし食事に向かった。 

食事をしながらフウキは「ところで摩耶ちゃん、何か好い夢視たかい?」 

「ハイ!今朝、龍の夢視ました」 

「そうかい、龍は未知なるパワーの証明でもあるんだ。内在するパワーが漲ってる証しだよ」 

「パワーですか?何か夢って面白いですね」 

「そうだね、脳は眠ることがないから、肉体が寝たと同時に別世界に入っるんだ、全く違う 
夢が重なることがあって支離滅裂に思えるけど、ひとつの夢で2つの違う世界を視るからなんだ。面白いよね」 

2人は食事を済ませて別れた。
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