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9「旅立ち」

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9「旅立ち」

  ケンタと京子は余市町に帰郷した。 

「ねえケンタ余市はのどかね、やっぱり田舎はいい……」 

「山・川・海。 余市町は三拍子揃ったいい所だよ、将来は余市町かな?」
運転しながらケンタは呟いた。

トンネルを出て余市に入りすぐ右手の海の側に巨大なUFOが浮かんでいた。 
一辺が二百メートル以以ありそうな巨大三角形のUFO。 二人はしばらく見入った。 

ケンタが「こんな田舎に何の用事だろう……?」 

「それにしても見事ね。 他は誰も気付いてないみたいよ。 見てないもの」  

「そっか、僕達だけか……」  

「もしかして私達になんか用事があるわけ?」 

ケンタは京子と金星の一件を思い出した。 ケンタの実家に着いた二人はUFOの事には触れないでいた。 
夕食を済ませほろ酔いの二人ははじめてUFOの事を語り始めた。 

「何だろうね……」

「あれは母船だよ。 余市に地震か何かが起こるのかなあ? 
東北の地震の時もその前後はUFOだらけだったから……」  

「二人でUFOに繋がってみようか?」  

「さすが京子ちゃん、物怖じしないね」 

「よし! コンタクト取ろう」 

二人は手を繋いで瞑想に入り、体外離脱して二人はUFOに意識を合わせ、そして乗り込んだ。

ケンタが「うわっ! 広い、こりゃ案内がいるね…… 誰かとコンタクト取ろうか……? いいかいやるよ」  

次の瞬間別空間に二人は移動していた。 目の前には霧状の光った意識体が二つあった。 

ケンタがコンタクトを開始した。 

「私はこの町に縁のある者。 何かこの町に用事あるんですか?」 

意識体は「驚かしてすまない。 あなた達に用事があって此処に来ました」 

「……? 僕たちに? な、なんでしょうか?」  

「我々の仲間は世界中に網羅し、あなた達のような方とコンタクトを勧めてきました。 
今回もその一環。 あなた達二人だけで出かけるのを待っていました」 

京子が「あんた達はストーカーか? おい」宇宙人を恫喝した。 

「話を聞いて下さい。 これは人類の未来にも関わるる話し。 
今の地球は夜明け前の一番暗い苦しい時期。 お二人も既にご承知のとおり。 
この地球は今後二つの道に分かれて進む事にほぼ決定してます。 それもご存じのはず。 
それで、新生地球の為の先駆者をひとりでも多く増やしてほしい。 いわば新人類の育成……」 

「で?」 

「シリパの会を閉鎖するか、お二人に脱会してもらいたい」 

「どうしてよ?」 

「今の会は正直、神秘主義の会で趣旨が違う。 
いまのメンバーは能力を付けたい人の集団。 
自分の神秘的欲求を満たす為に存続してる会。 
残念ながらこれからの地球は実践的でなければならない。 
今の会を軌道修正するには時間が掛かる。 そ
れなら閉会するか、新しく趣旨の違う会を結成するか……。 
二人によく考えていただきたい。 

地球は両極の氷が溶け始めています。 するとその多くの水が増えて重力バランスが変わります。 
今のバランスが変わり、より球体に近くなります。 そうなると極の移動も否めない。 
地震や火山活動がますます増えます。 結果、人類に多大な悪影響を及ぼします。 
決して遠い未来でなく、すぐそこまで来てます。 
そうなった場合地球の人口は大きく減るのです。 

その事はハッキリ言って阻止できない。 
だから一人でも多くの人間をアセンションさせる手助けが必要となります。 
それには今の体制では無理なのです。 
今ある習慣を変えなくては新しい地球に移行できません。 
古い体制の地球、つまり今の地球にしか住めなくなります。 
時間が消滅した世界では思ったことがすぐ形になります。 
つまりもう一つの取り残された世界は修羅場となります。 これは間違いなくそうなります。 

何故なら宇宙ではそうなった星が少なからず存在るから。 話が長くなりました。 
早い話が二つに分離される地球の、片方の新地球へ多くの魂を移行させるお手伝いをしませんか? 
と言う提案です。 我々地球外の魂はこの事に直接関与できません。 
だからこういう形を取っているのです。 お判り頂けましたか?」 

ケンタは「大方の見当はついておりました。 
ですが今急にシリパの会の解散・離脱といいますが我々にも準備が必要です。 
返答の余地は無いと思いますが、いつ頃までに返答したらいいのですか?」  

「すぐです。 もう既にあなた達はその事を決めて生まれてきてます。 
あとは実行のみです。 すでに奥様の心は決定しています。 奥様、頑張りましょう」 

ケンタは京子の顔を覗いた。 

京子もケンタの顔を見て黙ってうなずいていた。 

ケンタは「解りました。 札幌に帰ったら早速、行動に移します。 
今後とも我々を導いて下さい。 お願いいたします」

二人の意識は戻ってきた。 

京子が口を開いた「さっ、つべこべいってる暇無いね、帰ったら五人集合して伝えましょ。 
その前に私達の意向を確認しましょう。 ケンタはどうしたい?」 

「僕は二人が抜けてあとは三人に任せたいと思う。 
それにはもう一人スタッフを増やす必要があるね」 

「それ賛成よ。 スタッフにいい子がいるのよ。 
サキちゃんって子なんだけど、ミルキーさんが来たとき面倒をみてたの。 
本質をついた見方が出来るのよ。 彼女なら素質ある。 
そして考えたんだけど、置土産に石を置いていくのはどう? 
もともとケンタの石なんだけど、これは私の意見だけどね……」 

「うん、僕もそう考えていた」 

「じゃ、決定だね、早速集合かけるよ」 

「うん頼む」

二人は澄んだ空に星が綺麗に輝く余市の空を眺めていた。 

「こんな運命になろうとは子供の頃思いもしなかったわよ」 

「僕もさ……」

  
 居酒屋リンちゃんに五人集合し、余市であった事を包み隠さず説明した。 

京子が「そういうわけで、二人を脱会させてください。 
今後私たちはどんな活動になるかまったく決まってないけど決まったら必ず連絡する。 
あと、スタッフをひとり育ててあるのね。 
みんなの意見を聞いてからと思って今日は連れてきてないけど素質は充分あるの。

妖精のミルキーの面倒をみてくれていたサキちゃんなんだけど、みんなの力になるわよ。
それとシリパの会に置みやげがあるの。 この石使ってください。 
ケンタと私から皆へのお礼なの、本当に勝手言ってすみません」  

ケンタと京子は深々と頭を下げた。 

ママが「事情は解った。 二人の決意は固いようだから反対は出来ない。 
でも、これだけは云わせてちょうだい。 この会はこの場所で三人で発足したの。 
ここが船出の場所。
ケンタくんと京子ちゃんががいなかったら、この会は存在しなかった。 
私はそれを忘れない。 石は単なる切っ掛けで、この会に命を与えてくれたのはケンタくんなの。 
だからなにかあったらこの会はいつでも応援します。 
いや、もし会が応援しなくても私は全てを投げ打ってでも二人を応援する。 
平凡な飲み屋のママで終わるはずの人生が、こんな充実した人生になったんだもの…… 
困ったらいつでも言ってちょうだい」ママは胸が詰まり下を向いた。 

メメが口を開いた「私もママと同じです。 応援させて下さい。 私
も平凡なOLでした。京子さんに出会って人間として育ててもらいました。 
今は指導する立場にまで育ててもらいました。 このご恩は忘れません。 
お二人のお手伝い出来る日が必ず来ると思っています。 
その時は無条件でお手伝いさせてもらいます。 
私から最大級のお礼を言わせて下さい。 
ケンタさん京子さん、どうもありがとうございました……」 

マチコママが「今日も貸し切りで飲み食べ放題やっちゃいます。 二人の旅立ちに乾杯!」  

みんな笑顔で泣いていた。
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