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二宗 教
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二宗 教
シリパが路上デビューして数ヶ月が過ぎた。 ヤクザのミノルがやってきた。
「ネエちゃん金払うから視てくんねえか……?」
「視るのはいいけど金は要らない 。いつも差入れ貰ってるからお礼させて……」
「おう、そっか、悪いなじゃ頼む」
「で、なに?」
「俺、実はなガキの頃から幽霊を視るんだ。 落ち着いて寝られやしねえのよこの前も夜中に
小便に起きて用足しに行ったら便所に出たのよ。 思わず小便ちびった。
エイジにいうなよ、言ったらぶっ殺すかんな!そんで視えなくなる方法あったら教えてくれ」
シリパは笑いをこらえた。
「ミノルさんは子供の頃から幽霊に怯えてたのね。 可愛い~い」
「ほっとけ、バカ野郎!」
「いい? 幽霊を視るということはその幽霊の波長とミノルさんの波長が同調してるってことなのね。
つまりミノルさんの波長が低いってことなの。 高い波動の人は人間よりも上の世界と繋がるから
そんなの視ないもの。 そこにもってきてミノルさんは体質がお母さん似で感が強いのよ……」
「そうなんだ、母親似なんだよ。 よく解るな。 で、どうすればいい?」
「人を陥れようとか他人から何かを奪おうとかしないで、それと反対のことやればいいのよ」
「そんなこと、この極道家業で出来っこねえよ。 お人好しの極道もんなんて格好つかねえよ…… おめぇ」
「せめて部下を悪いことしないように指導するとか方法はあるでしょ」
「まあな。 そしたら幽霊視なくなるか……?」
「大丈夫……」
「そっかあ」
「おぅ、ありがとう。 じゃあな内緒だぞおめぇ、言ったらぶっ殺すぞ。 じゃあな…… バイ!」
ミノルが帰ったのを見て男性客が現れた。
「今晩は」
「お願いします」
「はい、いらっしゃい! 私はシリパです。 あなたのニックネームと生年月日と聞きたいこと言って下さい」
「大城良です」
「はい、で、今日はなにを?」
「宗教のことなんですけど」
「宗教ですか? はいどうぞ」
「僕にどんな宗教が合ってると思いますか?」
「好きな宗教とか、好きなお坊さんとかおりますか?」
「はい、親鸞さんが好きです」
「じゃあ、あの方は浄土真宗でしたね? それでいいのでは?」
「実は、家が禅宗で自力本願。 他力本願の浄土真宗と正反対なんです」
「だけどあなたは親鸞さんが好き! それでいんじゃないの?」
「……」
「所詮行き着くところは同じだとおもいます。 高い世界に住んでる人たちは宗教ってい
概念が無いのよ。 私の視てきた限りでは人間が宗教を作ったのよ。
その宗教がこの世界では対立し合って戦争。 バッカみたい……」
「じゃあシリパさんは宗教を否定するんですか?」
「否定はしない。だって宗教で助かる人、心の支えになってる人がいるなら否定は出来ないでしょ」
「じゃあ、僕は」
「だから、自分が親鸞さん好きってことは興味があるから好きなわけで、思い切って
信仰したらどうですか? そして嫌になったら辞めて、また考え直したら?
残念だけど私にとって宗教とはそれだけのものでしかないのよ。
因みに、禅宗の白隠和尚や黄檗宗開祖の隠元さんは、晩年、南無阿弥陀仏をとなえていたのよ。
二人とも悟りを開いた立派な自力宗のお坊さんなの。
行き着いた人は自力や他力は関係ないのよ。
もし人間に本当に必要なものなら、生まれたときに首からぶら下げて来るわよ、何宗ってね。
あなた生まれた時は裸でしょ? だから自由なのよ、本当は……」
「じゃあ、シリパさんは死んだ時の葬式はどうするの? 成仏出来なくてもかまわないのですか?」
「あなた、葬式でお経を読むことが供養と思ってるの? 私、霊界を何度も視てきて知ってるの。
葬式をあげても浮かばれない人は浮かばれない。 生前の行いと死んだときの意識が一番大事なのよね。
お葬式の内容じゃないのよ、勘違いしないでね実際に私は死後の世界を何度も何度も
視てきてるから言ってるの。
私が死んだら通夜はみんなで宴会し火葬後は海にでも散骨して貰うわよ。 ついでにいうと、
あなたの将来は宗教と一切関係ない。 いや逆に否定しているあなたが視えるけどね!」
「じゃあ宗教を信仰しない方が好いのかなあ」
「私が言ってるのはそういうことじゃないの。 未来は簡単に解釈出来ないわよ、あなたが宗教の
門を叩いたが故に、宗教のあり方を実感し、つまり未来のあなたが経験して初めて出る言葉ってあるの。
そういう意味でも未来は自分で作るのよ。 私が言ってる世界は数ある可能性がある
世界のたったひとつの世界。 その都度あなたは未来を選択してるの。未来は可能性の山なの。
そしてどれを選んでも自由なのね」
「なんか、今まで思ってた固定観念をはずされたような気がします! ありがとうございます」
ある時ケンタがやってきた。
「どう?」
「ぼちぼちよ! で、今日はなに?」
「久々にマチコママんとこ、どうかなと思って……」
「OK、じゃあさっそく行こう」
二人は店に行った。
ケンタが「路上占いのほうはどう?」
「うん恋愛相談が半分ってとこかな? 中には同じ職場の同僚なんだけど彼と上手くいくか?
そして彼が私をどう思ってますか? っていうのもあって私は聞いたのね。
『彼から何かアプローチあった?』って。
『いやありません』じゃあ、あなたから言いましたか?って。
『言ってません』まずはじめにアプローチすることから初めてねって。
彼があなたのこと思っていたらどうするの? こんな所に金かけて相談する暇があったら
告白してきなさいって追い返したわよ。 お金いらないからその金で喫茶店に誘い出して
思いを伝えなさいってね。 あの娘ったら、彼と付き合うことになってデートの前日に母親に
『明日のデートでエッチしていいですか?』って許可もらうんじゃない? ガ・ハ・ハ・ハ!
そのくらい自分がどうしたいのかさえ明確にできない若者も多いの。
でも、この商売で解ったことあるの。 相談に来るほぼ八から九割は自分で結論持ってるね。
私の処には自分の思いの確認か背中を押して欲しいだけなのよ。 意に反したことを言うと目を
三角にして私に食らいついてくるの。 そしてこの私を自分の思いの方に誘導してくるのね」
「そう言う時はどう返答するの?」
「自分で答えを用意してるのになんでここに来たの? って言うの。 たいがいは確認のためとか
何とかいうのよ。 そういうときは、大丈夫です。 思い切ってやって下さいっていうの。
マイナスの暗示は言わない……」
「上手くいくか、いかないって解ってるときは?」マチコママが聞いてきた。
「もしかしてそれを切っ掛けに違う最良の道が用意されてるかもしれないので、二
割くらいは心に余裕持たせておいてねっていう。 心の保険……」
マチコママとケンタは京子が短期間で成長してる。 いい占い師になると思った。
金星に出入り禁止をくらった女と同一人物なの……? ケンタは思った。
シリパが路上デビューして数ヶ月が過ぎた。 ヤクザのミノルがやってきた。
「ネエちゃん金払うから視てくんねえか……?」
「視るのはいいけど金は要らない 。いつも差入れ貰ってるからお礼させて……」
「おう、そっか、悪いなじゃ頼む」
「で、なに?」
「俺、実はなガキの頃から幽霊を視るんだ。 落ち着いて寝られやしねえのよこの前も夜中に
小便に起きて用足しに行ったら便所に出たのよ。 思わず小便ちびった。
エイジにいうなよ、言ったらぶっ殺すかんな!そんで視えなくなる方法あったら教えてくれ」
シリパは笑いをこらえた。
「ミノルさんは子供の頃から幽霊に怯えてたのね。 可愛い~い」
「ほっとけ、バカ野郎!」
「いい? 幽霊を視るということはその幽霊の波長とミノルさんの波長が同調してるってことなのね。
つまりミノルさんの波長が低いってことなの。 高い波動の人は人間よりも上の世界と繋がるから
そんなの視ないもの。 そこにもってきてミノルさんは体質がお母さん似で感が強いのよ……」
「そうなんだ、母親似なんだよ。 よく解るな。 で、どうすればいい?」
「人を陥れようとか他人から何かを奪おうとかしないで、それと反対のことやればいいのよ」
「そんなこと、この極道家業で出来っこねえよ。 お人好しの極道もんなんて格好つかねえよ…… おめぇ」
「せめて部下を悪いことしないように指導するとか方法はあるでしょ」
「まあな。 そしたら幽霊視なくなるか……?」
「大丈夫……」
「そっかあ」
「おぅ、ありがとう。 じゃあな内緒だぞおめぇ、言ったらぶっ殺すぞ。 じゃあな…… バイ!」
ミノルが帰ったのを見て男性客が現れた。
「今晩は」
「お願いします」
「はい、いらっしゃい! 私はシリパです。 あなたのニックネームと生年月日と聞きたいこと言って下さい」
「大城良です」
「はい、で、今日はなにを?」
「宗教のことなんですけど」
「宗教ですか? はいどうぞ」
「僕にどんな宗教が合ってると思いますか?」
「好きな宗教とか、好きなお坊さんとかおりますか?」
「はい、親鸞さんが好きです」
「じゃあ、あの方は浄土真宗でしたね? それでいいのでは?」
「実は、家が禅宗で自力本願。 他力本願の浄土真宗と正反対なんです」
「だけどあなたは親鸞さんが好き! それでいんじゃないの?」
「……」
「所詮行き着くところは同じだとおもいます。 高い世界に住んでる人たちは宗教ってい
概念が無いのよ。 私の視てきた限りでは人間が宗教を作ったのよ。
その宗教がこの世界では対立し合って戦争。 バッカみたい……」
「じゃあシリパさんは宗教を否定するんですか?」
「否定はしない。だって宗教で助かる人、心の支えになってる人がいるなら否定は出来ないでしょ」
「じゃあ、僕は」
「だから、自分が親鸞さん好きってことは興味があるから好きなわけで、思い切って
信仰したらどうですか? そして嫌になったら辞めて、また考え直したら?
残念だけど私にとって宗教とはそれだけのものでしかないのよ。
因みに、禅宗の白隠和尚や黄檗宗開祖の隠元さんは、晩年、南無阿弥陀仏をとなえていたのよ。
二人とも悟りを開いた立派な自力宗のお坊さんなの。
行き着いた人は自力や他力は関係ないのよ。
もし人間に本当に必要なものなら、生まれたときに首からぶら下げて来るわよ、何宗ってね。
あなた生まれた時は裸でしょ? だから自由なのよ、本当は……」
「じゃあ、シリパさんは死んだ時の葬式はどうするの? 成仏出来なくてもかまわないのですか?」
「あなた、葬式でお経を読むことが供養と思ってるの? 私、霊界を何度も視てきて知ってるの。
葬式をあげても浮かばれない人は浮かばれない。 生前の行いと死んだときの意識が一番大事なのよね。
お葬式の内容じゃないのよ、勘違いしないでね実際に私は死後の世界を何度も何度も
視てきてるから言ってるの。
私が死んだら通夜はみんなで宴会し火葬後は海にでも散骨して貰うわよ。 ついでにいうと、
あなたの将来は宗教と一切関係ない。 いや逆に否定しているあなたが視えるけどね!」
「じゃあ宗教を信仰しない方が好いのかなあ」
「私が言ってるのはそういうことじゃないの。 未来は簡単に解釈出来ないわよ、あなたが宗教の
門を叩いたが故に、宗教のあり方を実感し、つまり未来のあなたが経験して初めて出る言葉ってあるの。
そういう意味でも未来は自分で作るのよ。 私が言ってる世界は数ある可能性がある
世界のたったひとつの世界。 その都度あなたは未来を選択してるの。未来は可能性の山なの。
そしてどれを選んでも自由なのね」
「なんか、今まで思ってた固定観念をはずされたような気がします! ありがとうございます」
ある時ケンタがやってきた。
「どう?」
「ぼちぼちよ! で、今日はなに?」
「久々にマチコママんとこ、どうかなと思って……」
「OK、じゃあさっそく行こう」
二人は店に行った。
ケンタが「路上占いのほうはどう?」
「うん恋愛相談が半分ってとこかな? 中には同じ職場の同僚なんだけど彼と上手くいくか?
そして彼が私をどう思ってますか? っていうのもあって私は聞いたのね。
『彼から何かアプローチあった?』って。
『いやありません』じゃあ、あなたから言いましたか?って。
『言ってません』まずはじめにアプローチすることから初めてねって。
彼があなたのこと思っていたらどうするの? こんな所に金かけて相談する暇があったら
告白してきなさいって追い返したわよ。 お金いらないからその金で喫茶店に誘い出して
思いを伝えなさいってね。 あの娘ったら、彼と付き合うことになってデートの前日に母親に
『明日のデートでエッチしていいですか?』って許可もらうんじゃない? ガ・ハ・ハ・ハ!
そのくらい自分がどうしたいのかさえ明確にできない若者も多いの。
でも、この商売で解ったことあるの。 相談に来るほぼ八から九割は自分で結論持ってるね。
私の処には自分の思いの確認か背中を押して欲しいだけなのよ。 意に反したことを言うと目を
三角にして私に食らいついてくるの。 そしてこの私を自分の思いの方に誘導してくるのね」
「そう言う時はどう返答するの?」
「自分で答えを用意してるのになんでここに来たの? って言うの。 たいがいは確認のためとか
何とかいうのよ。 そういうときは、大丈夫です。 思い切ってやって下さいっていうの。
マイナスの暗示は言わない……」
「上手くいくか、いかないって解ってるときは?」マチコママが聞いてきた。
「もしかしてそれを切っ掛けに違う最良の道が用意されてるかもしれないので、二
割くらいは心に余裕持たせておいてねっていう。 心の保険……」
マチコママとケンタは京子が短期間で成長してる。 いい占い師になると思った。
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