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10詐欺師蛯子

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10詐欺師蛯子

 ケンタはパソコンを購入し、朝からネット検索をしていた。 リンクしてるうちに日本の
パワースポットなるサイトに目が止まった。 おもしろおかしく紹介されている。  
パワースポットって和製英語らしいが、そもそもなに?  地球自体がパワースポットでは? 

チョットした疑問が湧いた。 
 
するとガイドが「人間の身体にもツボと呼ばれるヶ所が点在する。 そのツボはみんな役割が有り、
そこを鍼灸師や指圧師が刺激を与えることで身体にいい効果を与える。 
当然人間にとって致命傷になるツボもある。 ツボは急所でもありうる」   

なるほど

「地球も日本も同様、地域・地域にツボ(パワースポット)が点在し、そして役割がある。 
但し、今流行の意味合いと違う場合がある。 商売で恐怖心をあおる場合も多い。 
太古よりそれを知る神官は、社を建て試行錯誤しながらその場を守り時には浄めてきた。

最近のケンタは石を使わなくても速攻でガイドとコンタクトを取れるようになっていた。 
しかもネットよりも早く正確に。 ある時ガイドの存在のことを尋ねた。

ガイドの存在は複数存在し臨機応変に対応してるようだ。 決して出しゃばらず、でいて要所要所で
助けてくれる。 いわば縁の下の力持ちだそうです。  そしてその存在は未来世の自分だったり、
違う世界(パラレルワールド)の自分だったりするようだ。

今の自分も同時にどこかの世界の自分を守護してると教えてくれた。 そして同時期にこの世に同じ
記憶を持った魂が複数存在することも教えてくれた。 潜在意識はだれでも悟っているとも教えてくれた。 

魂というのは本当に思ったより自由で凄いと感じた。 そして複雑に入り組んでいた。 
従来の古い習わしの内容との違いが解った。  

男女の結婚もお互いが魂レベルで了承しあって婚期が来たら出会って認め合うようになっているとも
教えてくれた。  分は結婚する自覚が無くても結ばれるケースは当たり前にあるとされる。 
当然結婚予定のない人もいることも。

新世界は旧意識の終焉を意味しているかもしれないとこの旅を通して思った。


携帯が鳴った。 京子ちゃんだった。

「ハイ」  

「久しぶりケンタくん元気?」 

「相変わらずだよ。 そっちは? 音楽活動続けてる?」  

「うん、それがねえ私の作った音楽が結構人気あるみたい」  

「なんだ、その言いかたって他人事だね?  今度聞かせて」 

「うんいいよ。 それよりおもしろいこと見つけたの」 

「何が?」 

「例えば、ジョンレノンと繋がって彼風の曲を作ったのね。 当然曲風がそうなっちゃうの。 
レイチャールズやボブマーレなど亡くなった有名人の意識に繋がってやったのね当然モーツアルトも。 
みんなの個性らしい曲が作れちゃうのよ」 

「まっ、当然といえば当然だよね……」 

「それで、いざ自分流の曲に取りかかろうとしたら、それまでチャネリングした人の曲のイメージが
全部混ざりあって、とんでもない曲が出来たの。 その曲がまた気持ち悪いのよ。 笑っちゃわない?」
  
「なるほど」 

「だから私ミュージシャン辞める……」 

「なるのも早いけど辞めるのも簡単だね。 京子ちゃんに辛抱という言葉はないわけ?」 

「……無い」 

「そんで今度は絵描きになろうと思うのね」 

「画家? 絵心あったっけ?」 

「無くてもいいの。 繋がるから」 

「誰と?」 

「今あがってる候補は東山魁夷かゴッホなんだけど」 

「僕的には棟方志功が好きだな……」 

「や~だ、創作してる時の見てくれがどうもにがて。 私があの様子で作品作ったらと思うと
嫁に行けない……」  

「結婚しようと思ってるの?」 

「それどういう意味よ?  今度会ったら殴る!」  

「小説家はどうなの?」

「わたし好きな小説家いないのよね。 でも強いて言えば大槻ケンジかな」 

「それって小説家?」  

「いいの! まっ、そんなことで音楽辞めたから……」 

「それよりも京子ちゃんの自分流はないわけ?」 

「めんどくさい……」 

「はっ?」  

「めんどくさいの」 

「今度会ったら殴ってやる」ケンタは初めて京子に刃向かった。

「ケンタ、なんかいった?」

「いや! なんでもない……」すぐに撤回した。

「でも収入になるまで時間掛かるっしょ? どうすんの?」 

「私の作った曲全部をまとめて、ひと山七十万円で売ったのよ。 それが狸小路二丁目で
路上ライブやってるチャライ男に売ったの。 泣きながら喜んで買ってたわよ。 笑えるでしょ。 
本当は最初百五十万円で売るっていったのよ。予算がないって言うから値引きしてあげたの。 
感謝されたわ……」 

「京子ちゃん抜け目ないね」  

「あたり前田のクラッカーよ」  

「絵が出来たら一番先にケンタくんに売ってあげるね。 安くするわよ。 私の絵は値打ち一気に
上がるんだからね」 

「ぼく、先行投資しないタイプだから。 それに石貸したままなんだからさ、お礼にこの絵を
差し上げますとか言えないわけ?」  

「だれが? どうして?」
 
「いや、何でもありません」 

「じゃあケンタくんまた連絡するね」  

「京子ちゃんも頑張って」  

電話を終え、天性の楽天家をはじめて見た思いがした。

携帯がなった。 

「ハイ、ケンタ」

「ケンタ?  おれ晃平だけど」 

「おっ珍しいね。 久しぶり」 

「あのさっ最近蛯子から連絡ない?」

「蛯子? 全然ないけどなんかあった?」 

「あいつさあ、結婚詐欺みたいなことやって警察から逃げてるっていう噂があるんだ。 
俺、心配で携帯してるけど全然つながらないんだよね。 店はホストクラブだから行きにくいだろ。 
もしかしたらケンタに蛯子から連絡いってないかな? と思って電話した」 

「そっか、べつにあいつからの連絡はないけど…… 誰か女の人にホストクラブconaに
行ってもらったら?」 

二人同時に「京子ちゃん!」声が揃った。 決定した。

京子は渋々行くことになった。

「いらっしゃいませ」ここはホストクラブcona 

「お客様、初めてですか?」見るからにホストらしい男が言った。

「はい」促されるまま京子は店に入った。 

二時間ほどして上機嫌で京子は出てきた。 

ホスト八人がやはり上機嫌で京子を見送っていた。 京子は全員にチップまでやって店をあとにした。  
二人と待ち合せしている居酒屋に向かった。

晃平が「京子ちゃんごめんね」

「うん、噂は本当みたいだよ」  

「あのね、相手はconaの客で三十才くらいの看護師のアンナちゃんだって。
なんか蛯子が『親の遺産なんだけど、小樽に大きい畑があって処分したい』ってほら吹いたらしいのよ。

それで、登記上の区画をハッキリするための土地家屋調査の費用百万円掛かるけど、蛯子は
『俺、日本の国債を頼まれて二千万円で買ったばかりで今現金がないから少しの間だけ貸してほしい』って
アンナちゃんに百万円借りたらしいのよ。 その時にあの馬鹿が余計なこと言ったのよ」 

二人は真剣に京子の話を聞いた。 

「将来その土地を売って札幌のマンションを建てて暮らそうって言ったらしいのね。 
で、金を貸したら急に蛯子と連絡がつかなくなったらしいの。 店も無断欠勤。 
慌てて女が中央警察署に被害届を出したんだって。 警察では結婚詐欺扱いで蛯子を探してるっていう
話しなのよ」  

何を思ったか晃平が言った。

「土地の話し本当なんだ。 あいつから小樽に土地あるって聞いたことあるよ。でも蘭島に
50坪って言ってたよ」 

「あの超ど田舎の蘭島かよ!」

二人はこけた。 

晃平が「でも、たった百万で詐欺の前科がつくのかよ?」 

京子が強い口調で「七十万円は私出す。 あと三十万は二人で何とかしてよ」

残りはケンタと晃平が折半し、京子ちゃんがアンナという女性に謝罪し被害届を取り下げてもらった。  
そのことを蛯子は知らず。 その後二年半ほど逃げ回った。 

結婚詐欺騒動から三年が過ぎた頃、北二十四条の繁華街で蛯子は偶然晃平に発見された。 
蛯子は解体屋で下回りの見習いとして日雇いアルバイトをさせてもらい三人への借金返済を始めた。
  
京子は利息が1ヶ月十パーセントと暴利を請求し、脱走の二年半も含め膨大な金額になっていた。

「勘弁して下さいよ~」蛯子はいつも京子に会うたびに謝っていた。
   
京子も蛯子を詐欺師蛯子と呼び捨てにしていた。
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