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私のご主人様は本当に悪人なのかしら4

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「体調はどうだ? シシィ」

 あまり似ていないけど、ふたりきりの兄妹だ。ラフェルはシシィ王女をとてもかわいがっているみたい。
 彼女は控えめな笑顔を浮かべながら答えた。

「はい。おかげさまで最近は少し良くなりました」
「それは良かった。自室にこもってばかりいないで、たまには外に出るのもいいものだぞ」

 ラフェルがそう言うと、すぐにアリスが手をあげる。

「シシィ王女。今度、私と一緒に街に遊びに行きませんか? きっと楽しいわ」
「おぉ、それはいいな。頼んだぞ、アリス」

 アリスの提案をラフェルは絶賛するけれど、肝心のシシィ王女がわずかに表情を曇らせたことに私は気がついてしまった。

「で、でも……私はアリスやみんなのように美しくないから街に出たらきっと笑いものになるわ」
「そんなことあるわけないわ!」
「私のかわいい妹を笑う奴がいるもんか」

 アリスとラフェルはシシィの心配を笑い飛ばす。
 ま、ふたりには到底理解できない悩みよね。でも、私にはわかるよシシィ王女! カースト最上位の子の隣に並ぶのって勇気がいるよね。正直、私も嫌だったもん。
 菜穂時代のことを思い返してみても、オシャレな街に堂々と行けるようになったのはメイクを覚えてからだった。

 私は思い切って、シシィ王女に話しかけた。

「あの、シシィ王女! もしよければ、私にお化粧をさせてもらえないでしょうか?」
「え、お化粧を?」
「はい。お化粧の力はすごいんですよ。王女のなりたいイメージにきっと近づけると思います」

 シシィ王女がまったくオシャレに興味がないのなら、無理強いするつもりはないのよ。けど、彼女はアリスやフィオナに劣等感を抱いているように見える。それなら、私の出番だろう。
 私の提案をフィオナも後押ししてくれた。

「エマの実力はこの私が保証します。エマにお化粧してもらうと、不思議なくらいに気持ちも明るくなるんですよ」
「そ、それなら……」


「じゃーん! どうでしょうか?」

 私が大変身したシシィ王女を連れて戻ると、みんながあっと息をのんだ。

「まぁ、素敵!」
「うん。よりかわいくなったぞ、シシィ」

 でしょ、でしょ。我ながら、いい仕事したと思うもん!

 普段地味な子ほど、メイクの魔法で輝くのだ。ナチュラル美人なアリスやフィオナより、こちらも仕事のしがいがあるってもんだ。
 シシィ王女のちょいダサドレスは、予想通りお母様の形見の品だった。なので、それを生かしてあえてレトロな雰囲気に仕上げてみた。髪はクラシカルな編み込みにして、メイクはそばかすをチャームポイントに愛らしく。靴だけは流行のデザインのもにチェンジしてバランスを取る。


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