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アンジェラの反乱4
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その夜。ジークがエイミの部屋を訪ねてきた。
「どうしたんですか?」
ジークが部屋を訪ねてくるなんて初めてのことで、エイミは少し驚いた。
「いや。その、急に、エイミと話したくなってな。入ってもいいか?」
「は、はい! 少し散らかってますけど」
今日はアンジェラ行方不明事件でバタバタしていて、部屋の掃除は全くできていなかった。
(わ~ん。明日でいいかなんて考えずに、ちゃんとしておくべきだった)
ジークの部屋とは違って、ソファなどは置いてないので、エイミはベッドに座るようジークを促した。が、ジークは床にどかりと座り込んだ。
「お尻が痛くなりませんか?」
「問題ない。ここで大丈夫だ」
「そうですか。じゃあ、私も」
エイミは言いながら、ジークの隣に腰をおろした。
「エイミはベッドに座っていいんだぞ」
「いえいえ。床に座るのは、私のほうが慣れてますから」
とは言ったものの、肩が触れ合うその距離にエイミはなんだか緊張してしまった。
そういえば、ジークは朝もこうしてエイミの部屋を訪ねてきたのだ。なにかあるのだろうか。
ジークはなにやら難しい顔をしているように見える。
「エイミ」
「は、はい!」
ジークはエイミに向き直ると、神妙な顔で頭を下げた。
「アンジェラのこと、本当にありがとう。アンジェラを見つけられたのは、エイミのおかげだ」
「いやいや、私はなにも……」
むしろ、母親代わりとして子供達のケアをできていなかった自分の責任は重い。エイミはジークにそう言って、侘びた。
「いや、子供達に向き合えていなかったのは俺の方だ。引き取って、衣食住の世話をするだけじゃ父親にはなれないんだな。怖がられているからとか余計なことを考えずに、これからはもう少し話をしたり一緒にいる時間を増やそうと思う」
ジークはアンジェラの家出がかなりこたえたらしい。反省点もたくさん見つかったようだ。
エイミはジークのこういう素直でまっすぐなところが、とても好きだと強く思った。
「はい。子供達はみんなジーク様が大好きですから。一緒に過ごす時間が増えたら、きっと喜びますよ」
「うむ。そんなわけで、次の休みには家族みんなで少し遠出をしてみようと考えているんだが……エイミも付き合ってくれるか?」
「もちろんです!」
エイミが満面の笑みで答えると、ジークは少し恥ずかしそうに目を伏せた。
「ありがとう。それからな、エイミ」
「はい」
「子供達の母親になって欲しいという気持ちと同じくらいの重さで、俺は……妻としてエイミを必要としている」
「は、はい。えーと」
エイミは一生懸命、ジークの言葉を噛み砕いた。
「あっ。公爵夫人としてのお仕事ですね。ゾフィーさんから聞いています! 社交界でのマナーや領地のこと、自信はあまりないのですが、頑張りたいと思って……」
「違う。そうじゃなくて……」
「はい?」
エイミがジークの顔をのぞきこむと、彼の顔はみるみる赤く染まっていく。
(なんだか、ジーク様が可愛く見える)
エイミの胸がドキドキと早鐘を打つ。
ジークが熱のこもった瞳で、エイミを見据えた。
「そうじゃないんだ。俺が言いたいのは、男としてエイミが好きだってことだ」
「えっーー」
ジークの告白はこれ以上ないほどストレートだったにも関わらず、エイミは頭が真っ白になってしまい、なにを言われたのかすぐには理解できなかった。
身体中が熱くなって、鼓動はどんどん大きく、速くなっていく。このままじゃ、心臓が弾けてしまうんじゃないか。エイミは半ば本気でそんなことを思った。
「俺がそんな風に思ってたら、嫌か?」
エイミは間髪いれずに、ぶんぶんと首を横に振った。
「い、嫌なわけない。嬉しい。嬉しいに決まってます」
「そうか」
ジークは心の底から安堵したという表情で、白い歯を見せた。
その笑顔に、エイミの心臓はまた弾け飛びそうになる。
(うぅ。ジーク様に殺されちゃう)
「なら、もう遠慮はしないことにする」
「え、遠慮?」
「うむ。昨夜は遠慮したが、もう自分の気持ちに正直になることにした。エイミ、俺の部屋においで」
そう言うと、ジークはエイミをふわりと抱き上げだ。
「やはり夫婦は同じ部屋で眠るべきだと俺は思う」
『私もそう思います!』
エイミはそう言いたかったが、ジークの腕の中があまりにも心地よく、幸せで、なにも言葉にできなかった。
「どうしたんですか?」
ジークが部屋を訪ねてくるなんて初めてのことで、エイミは少し驚いた。
「いや。その、急に、エイミと話したくなってな。入ってもいいか?」
「は、はい! 少し散らかってますけど」
今日はアンジェラ行方不明事件でバタバタしていて、部屋の掃除は全くできていなかった。
(わ~ん。明日でいいかなんて考えずに、ちゃんとしておくべきだった)
ジークの部屋とは違って、ソファなどは置いてないので、エイミはベッドに座るようジークを促した。が、ジークは床にどかりと座り込んだ。
「お尻が痛くなりませんか?」
「問題ない。ここで大丈夫だ」
「そうですか。じゃあ、私も」
エイミは言いながら、ジークの隣に腰をおろした。
「エイミはベッドに座っていいんだぞ」
「いえいえ。床に座るのは、私のほうが慣れてますから」
とは言ったものの、肩が触れ合うその距離にエイミはなんだか緊張してしまった。
そういえば、ジークは朝もこうしてエイミの部屋を訪ねてきたのだ。なにかあるのだろうか。
ジークはなにやら難しい顔をしているように見える。
「エイミ」
「は、はい!」
ジークはエイミに向き直ると、神妙な顔で頭を下げた。
「アンジェラのこと、本当にありがとう。アンジェラを見つけられたのは、エイミのおかげだ」
「いやいや、私はなにも……」
むしろ、母親代わりとして子供達のケアをできていなかった自分の責任は重い。エイミはジークにそう言って、侘びた。
「いや、子供達に向き合えていなかったのは俺の方だ。引き取って、衣食住の世話をするだけじゃ父親にはなれないんだな。怖がられているからとか余計なことを考えずに、これからはもう少し話をしたり一緒にいる時間を増やそうと思う」
ジークはアンジェラの家出がかなりこたえたらしい。反省点もたくさん見つかったようだ。
エイミはジークのこういう素直でまっすぐなところが、とても好きだと強く思った。
「はい。子供達はみんなジーク様が大好きですから。一緒に過ごす時間が増えたら、きっと喜びますよ」
「うむ。そんなわけで、次の休みには家族みんなで少し遠出をしてみようと考えているんだが……エイミも付き合ってくれるか?」
「もちろんです!」
エイミが満面の笑みで答えると、ジークは少し恥ずかしそうに目を伏せた。
「ありがとう。それからな、エイミ」
「はい」
「子供達の母親になって欲しいという気持ちと同じくらいの重さで、俺は……妻としてエイミを必要としている」
「は、はい。えーと」
エイミは一生懸命、ジークの言葉を噛み砕いた。
「あっ。公爵夫人としてのお仕事ですね。ゾフィーさんから聞いています! 社交界でのマナーや領地のこと、自信はあまりないのですが、頑張りたいと思って……」
「違う。そうじゃなくて……」
「はい?」
エイミがジークの顔をのぞきこむと、彼の顔はみるみる赤く染まっていく。
(なんだか、ジーク様が可愛く見える)
エイミの胸がドキドキと早鐘を打つ。
ジークが熱のこもった瞳で、エイミを見据えた。
「そうじゃないんだ。俺が言いたいのは、男としてエイミが好きだってことだ」
「えっーー」
ジークの告白はこれ以上ないほどストレートだったにも関わらず、エイミは頭が真っ白になってしまい、なにを言われたのかすぐには理解できなかった。
身体中が熱くなって、鼓動はどんどん大きく、速くなっていく。このままじゃ、心臓が弾けてしまうんじゃないか。エイミは半ば本気でそんなことを思った。
「俺がそんな風に思ってたら、嫌か?」
エイミは間髪いれずに、ぶんぶんと首を横に振った。
「い、嫌なわけない。嬉しい。嬉しいに決まってます」
「そうか」
ジークは心の底から安堵したという表情で、白い歯を見せた。
その笑顔に、エイミの心臓はまた弾け飛びそうになる。
(うぅ。ジーク様に殺されちゃう)
「なら、もう遠慮はしないことにする」
「え、遠慮?」
「うむ。昨夜は遠慮したが、もう自分の気持ちに正直になることにした。エイミ、俺の部屋においで」
そう言うと、ジークはエイミをふわりと抱き上げだ。
「やはり夫婦は同じ部屋で眠るべきだと俺は思う」
『私もそう思います!』
エイミはそう言いたかったが、ジークの腕の中があまりにも心地よく、幸せで、なにも言葉にできなかった。
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