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アンジェラの反乱3

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厩舎の奥、飼葉の山のなかで、うずくまって眠るアンジェラを発見したのはエイミだった。

後から追いついたジークも、それを見てふぅと大きく息を吐いた。

「よかった……」
「はい! 私はちょっと出ておくので、ジーク様起こしてあげてくださいね」

何故だ?という顔をするジークに、エイミはもうと頬をふくらませる。

「アンジェラはジーク様に抱きしめて欲しいんですよ! それが女心ってやつです」

エイミはジークを残して、そっと厩舎を出た。アルやリーズ達にもアンジェラの無事を伝えなければ。
目を覚ましたらしいアンジェラの、安堵の泣き声を背中に聞きつつ、エイミは足を速めた。

アンジェラのジークを見つめる瞳。あれは自分と同じだと、エイミは薄々気がついていた。アンジェラの寂しさは、父親をとられたせいではないだろう。

(アンジェラってものすごく可愛い顔してるのよね……) 

手強すぎるライバルの出現に、エイミはがくりと肩を落した。

厨房の隅に、エイミとアンジェラは並んで座り込んでいる。
ジークに連れられて戻ってきたアンジェラがエイミのスカートの裾を引っ張って、ここまで連れてきたのだ。

「……ありがと」

消え入りそうな小さな声で言うと、アンジェラはぷいと顔を背けた。エイミがはて?という顔をしたので、彼女は渋々ながら、もう一度口を開いた。

「あんたが見つけてくれたんだって、ジーク様が……お礼を言いなさいって」
「あぁ!」

エイミは納得した。いまのは捜索の礼だったのか。

「いえいえ。私のほうこそ、自分のことばっかりでごめんなさい」

アンジェラは露骨にむっとして、エイミを睨みつける。

「あんたの、そういういい人ぶったとこ、大嫌い!」

アンジェラの素直さに、エイミは苦笑してしまった。

「それなら、私がすっごく嫌な継母になってアンジェラを追い出したら、好きになってくれますか?」
「そんなことしたら、ジーク様に嫌われるわよ」
「でも、強力な恋敵を遠ざけることはできますね」
「恋敵?」

エイミはくすりと笑った。

「はい。私とアンジェラはジーク様をめぐっての、恋敵です」

『馬鹿みたい』

アンジェラの目がそう言っている。

「私、まだ五歳よ。それに、あんたはジーク様の妻になったじゃない」
「でもあと十年もしたら結婚できる歳ですよ。アンジェラはきっと絶世の美女になりますし、そのころの私は……」
「いまよりずっとオバちゃんになってるわね」

エイミが避けた言葉を、アンジェラはズバリと言ってくる。シミとかシワとか気になってくるお年頃だろうか。いまよりずっと丸くなっているかもしれない。

「うっ。そうなんですけど、でも! 美貌はアンジェラに負けちゃうと思いますけど、大人の女としての内面を磨いたり、私なりになんとか頑張りますから」

アンジェラはふんと鼻を鳴らす。

「心配ないわよ。ジーク様はオバちゃんになったからって、あんたを捨てたりしないから。……そんな人じゃない」
「えっ? あぁ、たしかに! そうですよね。ジーク様はそんな人じゃないですね」

エイミは嬉しそうに、ふふっと口元を緩ませた。

「なによ、それ! なんかムカつくわね」
「えへへ」



















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