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突然のプロポーズ3
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エイミがなにも答えられないでいるのを、ジークは拒絶と受け取ったようだ。大きく肩を落として、しゅんとしてしまった。
「……やはり、こんな怖い顔の男とでは嫌か? アルのように美しい顔ならなぁ」
「いえ! そういうことでは!」
エイミはあわてて、ジークの勘違いを訂正する。
「たしかにアルは物語の王子様みたいに格好いいですけど、ジーク様にはジーク様の魅力があります! ふさふさの銀髪も鋭い瞳も、ワイルドで素敵です!背も高くて、強そうですし」
「……それは女には嫌われるポイントでは?」
「他の人は知りませんけど、私は好きです!」
エイミは大声で宣言すると、はぁはぁと肩で息をした。
「では、どこがダメだ? お前の希望に沿えるよう、できる限り改善するから言ってくれ」
ジークは真剣な目でエイミを見つめた。彼の本気が伝わってくる。
(えぇ~本気で言ってるの!)
エイミはパニックになりそうな頭を必死で落ち着かせて、懸命に言葉を選んだ。
「ジーク様ではなく、問題があるのは私です」
「どんな問題だ? 解決に向けて、尽力しよう」
ジークはどこまでも、いい人だ。
「まず、私は平民です。それも貧しい村のなかでも、もっとも貧乏な家の。公爵様の奥様になれるような身分ではないです」
「公爵家が平民を娶ってはならないという法律は我が国にはないぞ」
「法的に問題なくても、周囲がきっと反対します!」
「俺の両親はとうに亡くなっているし、密に付き合いのある親類もない。ハットオル家の当主は俺だから、俺がいいといえばそれで問題ない」
「でも、でも、あっ! アルが、アルがきっと反対します。公爵の身分にふさわしい女性でなくては~なんて、言いそうです」
ジークははてと、首をかしげた。
「アルにはさっき伝えてきたぞ。俺の決めたことなら異論はないとのことだ」
「えぇ~!」
「あれは賢い男だ。意味もなく反対などしない」
(それって……絶対、呆れて投げやりになったんだ)
「では身分は置いておいて。私のこの黒髪と黒い瞳をよく見てください!不吉ですよ!ノービルド領に良くないことが起こるかも」
エイミはまとめていた髪をほどいて、ジークに見せつけた。
が、ジークは嬉しそうに微笑んだ。
「……うん。やっぱりおろした方が似合うな。黒い瞳も黒曜石のようで、美しい。エイミは黒曜石を知ってるか? 異国ではとても価値のある宝石だ」
エイミはうーんと頭を抱えてしまった。いまのジークでは話が通じそうもない。
そもそも、なぜ唐突に結婚の話などが出たのだろうか。
「あの、なんで急に結婚をお考えになったのですか?」
ジークは三つ子達に視線を向けた。
「アンジェラや三つ子達はまだ幼い。しっかりしてるが、リーズやナットだってまだ子供だ。母親と呼べる存在が必要なのでは……とずっと考えてはいた」
「……そういうことだったんですね」
腑に落ちた、というようにエイミは頷いた。自分のためでなく、子供達のための結婚なのか。優しいジークらしい話だ。
「でも! それならなおさら、私なんかよりふさわしい方を探さなくては」
「エイミがふさわしいと俺は思った。だからプロポーズしたんだが」
「そんなあっさり決めたらダメですよ! そうだ、領内中の女性を集めて夜会でも開いたらどうですか? その中からジーク様が好みの女性を選ぶというのは?」
「以前、ゾフィーが似たようなことを画策したが……女達はこの城に近づくことすら嫌がったぞ」
「それは残虐公爵なんて、根も葉もない、どころか真逆の噂のせいですよー」
エイミは叫んだ。
「……やはり、こんな怖い顔の男とでは嫌か? アルのように美しい顔ならなぁ」
「いえ! そういうことでは!」
エイミはあわてて、ジークの勘違いを訂正する。
「たしかにアルは物語の王子様みたいに格好いいですけど、ジーク様にはジーク様の魅力があります! ふさふさの銀髪も鋭い瞳も、ワイルドで素敵です!背も高くて、強そうですし」
「……それは女には嫌われるポイントでは?」
「他の人は知りませんけど、私は好きです!」
エイミは大声で宣言すると、はぁはぁと肩で息をした。
「では、どこがダメだ? お前の希望に沿えるよう、できる限り改善するから言ってくれ」
ジークは真剣な目でエイミを見つめた。彼の本気が伝わってくる。
(えぇ~本気で言ってるの!)
エイミはパニックになりそうな頭を必死で落ち着かせて、懸命に言葉を選んだ。
「ジーク様ではなく、問題があるのは私です」
「どんな問題だ? 解決に向けて、尽力しよう」
ジークはどこまでも、いい人だ。
「まず、私は平民です。それも貧しい村のなかでも、もっとも貧乏な家の。公爵様の奥様になれるような身分ではないです」
「公爵家が平民を娶ってはならないという法律は我が国にはないぞ」
「法的に問題なくても、周囲がきっと反対します!」
「俺の両親はとうに亡くなっているし、密に付き合いのある親類もない。ハットオル家の当主は俺だから、俺がいいといえばそれで問題ない」
「でも、でも、あっ! アルが、アルがきっと反対します。公爵の身分にふさわしい女性でなくては~なんて、言いそうです」
ジークははてと、首をかしげた。
「アルにはさっき伝えてきたぞ。俺の決めたことなら異論はないとのことだ」
「えぇ~!」
「あれは賢い男だ。意味もなく反対などしない」
(それって……絶対、呆れて投げやりになったんだ)
「では身分は置いておいて。私のこの黒髪と黒い瞳をよく見てください!不吉ですよ!ノービルド領に良くないことが起こるかも」
エイミはまとめていた髪をほどいて、ジークに見せつけた。
が、ジークは嬉しそうに微笑んだ。
「……うん。やっぱりおろした方が似合うな。黒い瞳も黒曜石のようで、美しい。エイミは黒曜石を知ってるか? 異国ではとても価値のある宝石だ」
エイミはうーんと頭を抱えてしまった。いまのジークでは話が通じそうもない。
そもそも、なぜ唐突に結婚の話などが出たのだろうか。
「あの、なんで急に結婚をお考えになったのですか?」
ジークは三つ子達に視線を向けた。
「アンジェラや三つ子達はまだ幼い。しっかりしてるが、リーズやナットだってまだ子供だ。母親と呼べる存在が必要なのでは……とずっと考えてはいた」
「……そういうことだったんですね」
腑に落ちた、というようにエイミは頷いた。自分のためでなく、子供達のための結婚なのか。優しいジークらしい話だ。
「でも! それならなおさら、私なんかよりふさわしい方を探さなくては」
「エイミがふさわしいと俺は思った。だからプロポーズしたんだが」
「そんなあっさり決めたらダメですよ! そうだ、領内中の女性を集めて夜会でも開いたらどうですか? その中からジーク様が好みの女性を選ぶというのは?」
「以前、ゾフィーが似たようなことを画策したが……女達はこの城に近づくことすら嫌がったぞ」
「それは残虐公爵なんて、根も葉もない、どころか真逆の噂のせいですよー」
エイミは叫んだ。
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