日本では魔法使いが増殖している。

エピローグ？え、これ、エピローグ？

　

　最近日本では30歳童貞『魔法使い』が増殖している。




　年々、草食系男性が増えていくなか、３０歳童貞の数が爆発的に増殖した。それに伴って増えた『魔法使い』は、とてつもなく厄介である。

　何たって30歳童貞の多くが抱える「稼ぎは少ない」「友達いない」「彼女いない」という問題は確実に性格を拗らせた。とにかく世界が憎い『魔法使い』達は、手に入れた力を悪事に使う。
　銀行強盗や、詐欺、痴漢、空き巣、あと主に変態行為等の犯罪に魔法を使い世間を騒がした。そんな30歳童貞達に重い腰を上げざるを得なかった日本政府は、やむなく「童貞は取り敢えず風俗でヤってこい」という警告を出した。



　だが、そんな政府に童貞達はざわつく。「それが出来るなら童貞じゃないから！！」なんとも尤も言葉である。彼らだって好きで童貞でいるわけじゃないのだ。

　女性の膣内にぺニスをぶっ混む行為を女性とまともに「話せない」「目を合わせられない」野郎が出来るわけない。だいたい、「初めては好きな人と」と願うロマンチスト童貞は多く、政府の警告は効かないと思われていた。

　世間が日本政府と童貞達を冷ややかな視線で見守るなか、それでも30歳童貞『魔法使い』の魔法使用における犯罪は低迷した。それは、犯罪を起こした30歳童貞『魔法使い』の殆どが「初めては好きな人」なんてロマンチストではなく、ヤりたいけど女の人が苦手だから出来ない人であり、政府の出した公的「風俗ＯＫ」「素人童貞歓迎」につられ、ついに童貞を卒業し『魔法使い』の力を失ったからだ。



　この吉報に一番ホッとしたのは、女性ではなくか弱い童貞達だ。女性は逞しい。どんな荒波でも生きていけるが自信のない童貞男子はそうもいかないのである。過激になった童貞差別により一段と彼ら童貞達の肩幅は狭くなってしまった。






　そんな時、勇者が現れる。


　柿野銀次郎。

　彼は、35歳童貞ニートの輝かしい経歴を持った人で、初めて『魔法使い』の魔法を人助けの為に使った自己犠牲を顧みない素晴らしい童貞である。この事件は世間に大いなる賛否両論を巻き起こしたが童貞達の権利が再び得られる良いきっかけになろうとしていた。

　しかし、そこに待ったをかけたのは日本政府である。30歳童貞『魔法使い』が持ち得る物理法則を無視した魔法はそれまで、犯罪の助長にしか使われないと思われていたのが人の役に立つことも出来るとわかったのだ。その人類の叡知を集合させても実現出来なかった大きな力、魔法が敵でなく味方にあったら？
　政府の役人は初めてこの事に気付いた。



　そしてすぐに行動に起こす。


「30歳になっても尚、穢れを知らない純粋な青年は我が国の宝である」と発表したのだ。今までとは百八十度違うこの言葉は始めこそバッシングを受けたが、すぐに30歳童貞『魔法使い』達の有効な使い道に気付き世間もその発表に批判しなくなる。


　それに喜んだのは30歳童貞『魔法使い』と童貞の『魔法使い』予備軍であった。「これでやっと心置き無く道を歩ける」彼等が溢した言葉は何とも切なく胸が張り裂けそうな思いにさせられるが、実は彼等の悲劇はここからなのである。






　30歳童貞『魔法使い』の諸君はその類いまれなる魔法を祖国日本のために使う義務がある。これから30歳童貞『魔法使い』の者は、強制的に軍に入りその力を存分に発揮しなさい。





　総理大臣の突然のこの発表と共に出されたのは『魔法使い』強制兵役化に対する法律である。要は『魔法使い』のうちは自国のために戦いましょうという事だ。

　世の30歳童貞『魔法使い』は戦慄しすぐに童貞を捨てようとした、・・・捨てようとしたのだが身体が言うことを聞かない。まず、ビビり過ぎて勃起しないし、やっと勃ったとしても女性の生殖器がエロゲと違ってグロいという現実を受け止められなかったのである。30歳童貞『魔法使い』彼らは、有り余る性欲をエロゲで鬱憤させていた。アダルトビデオではない。エロゲというところがポイントだ。

　斯くして、残念にも童貞を卒業出来ず涙を飲んだ『魔法使い』達は翌日には軍人に連行されていった。それでも彼らは諦めない。「ここで一回免疫ついたし、次ヤるときにはいける」と。



　だが、それが間違いなのだ。




　政府が、ビビりで扱いやすい上に強力な『魔法使い』を手放すわけがない。強制的に連れていかれた軍の宿舎は門限は厳しく、新しい出合いは見込めない。その上、軍に務めている女性職員は皆気が強く、気性が荒いので女性恐怖症を発症させるという鞭が待っていたのだ。

　いや、それだけなら良かったのかもしれない。


　鞭があるなら飴もある。




『24時間どんなエロゲもやり放題。課金も限度額までは免除します』




　この飴は、ミル○ーの飴よりさらに甘い甘い飴で。日々の行き場のない性欲をエロゲで発散し、エロゲ博士、いや、最早エロゲ依存性に陥っている童貞諸君を厳しい軍から逃げ出さない、否、離れたくないと思うほどには効果が抜群であった。

　今も尚、童貞『魔法使い』達は、軍に強制連行させられていて、一回入ると逃げだせない。寧ろ逃げだそうとさえ思わせないそれを30歳に至らない童貞達は『魔法使いのパンドラ』として恐れている。