浮気した彼の行方

たたた、たん。

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浮気された彼の行く末-3-

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 下品に下で喘ぐ女は、ゴムなしでしようと強請ったが冗談じゃなかった。彰を傷つけながらも絶対条件として僕は彰に愛され続けなければならない。僕が与えるもの以外で彰に嫌われる要素を持つのはリスクだ。だからといって性欲は止まったりしないからセフレを二人に絞って、こっそり会うことにしている。
 淫乱でありながらも自己主張があまりない二人を選んだはずが、最近は図々しく僕の特別を気取っていて煩わしい。なんで女は、いや人間は関わりが増えるとこうも愛されていると思って満たされてしまうのか。しかもこの女は僕に愛されてもいない、寧ろ嫌われているというのに。どうしようもない。

「ねえ、良かったら私が付き合ってあげようか?」

「は?」

 挙句の果てにはこの台詞だ。あまりにも馬鹿らしくてつい素が出てしまった。女は僕の怪訝な声が聞こえてなかったのか、そもそも聞く気がないのかペラペラと話を続けた。

「はるかはさ、僕の他に彼氏いるんでしょ」

「いるけど、晴久のためなら切っても」

「その彼氏にさ、こうやってセックスしたことバレたらどうする?」

 にこりと笑えば、女は目を瞬かせて固まった。

「僕は言ったよね。内緒のセフレだって。それ以上にはならない。はるかとはもう会わないよ」

「な、なんで!?私が付き合いたいって言ったから!?ならもうやめるから!」

「もうはるかに興味がないんだ」

 付きまとわれても面倒くさい。切る時にはバッサリ切るに限る。それでもまだ僕は優しいだろう? 元々これっぽっちも興味がないのに、今まであったかのように言ってあげたんだ。

 尚も女は食い下がった。それを無視して支度を進めていると金切り声で喚き、しまいには枕元にあるものを飛ばしてくる。

「皆に言いふらしてやるから!」

 脅し文句としてこれは正しい。たかが他人。されど他人。人は一人じゃ生きていけない。時に騙し、時に犠牲にして上手く生きないと負け組一直線だ。だけど、その台詞を吐くのに必要なものをこの女は持っていない。

「どうぞ?その皆がはるかを信じるならね」

 信頼だ。この女は自己主張が少ないものの、酷い虚言癖で周りに嫌われている。それもあってこの女を選んだのだが、まさかその自覚がないとは驚きだ。

 喚く女を無視して部屋を出る。手切金としてお金を置いて行っても良かったが、ラブホに来てお金がないなんて惨めで可哀想な客がどんな目にあうのか。そんな好奇心でラブホを出る。
 何か僕を楽しませるような愉快な目に遭ってくれるといいけど。




 最近、彰の様子がおかしい。僕に向けるあの瞳は変わらない。ただ、僕に触られるのを厭うような、僕から距離を取るような行動をする。僕に向ける瞳が変わらないならそれでいい。それでいいはずなのに、このソワソワする感じはなにか。

 隣で彰がふうと艶やかに息を吐く。その色気に何人かの男がチラリと彰を見て、慌てて目線を外す。潜在的なバイセクシャルは割と多いというから彰に惹かれているのかもしれない。無意識に彰を引っ張って、人目のつかない位置に隠した。無意識に人に何かするなんて。自分の行動が信じられず自分の手を眺めていると、僕以上に彰は戸惑っていた。彰は色っぽくなったと話題だ。僕以外の前では好青年らしくスポーツ好きで優等生な彰は良くも悪くもいい子ちゃんで、友達は沢山いても人目を集める生徒でもなく、その他大勢の一人だった。それが急にモテ始めている。実際に何人かの女子に告白されているはずだ。

 もうそろそろ抱いてもいい時期だ。彰を焦らす事はできたし、そもそも僕の肉欲も限界だ。今や、彰に勃つかなんて自分に問わなくても分かっている。早く抱きたい。あの柔肌とは言えない筋肉のついた身体をどう蹂躙してやろうか、そう考えただけでじくじくと身体が温まってくる。

「彰、あのさ」

「うん」

 彰は僕と一緒にいる時スマホをあまり見ない。いや、見なかった。いつだって僕に夢中だったのに、今日はスマホを気にしてばかりだ。僕以外に気になる物があるなんて許せない。胸に渦巻く黒い感情のまま彰の腕を握り、彰の視線を僕に集める。

「ごめん。つまんないよね……彰になるべく楽しんでもらいたいんだけど」

「ちがっ!つまんなくない!俺は晴久といれたらそれだけで……」

 言いながら小さくなる声。そうだね。僕といれるだけで幸せだよね。でも、それを僕に言ったら気持ち悪がれるかもって不安なんでしょ。僕と真っ直ぐ視線がぶつかると一回逸らし、それでも諦められなくてまたその瞳を僕に向ける。僕が育てた宝石。今もまだ僕に向ける感情で怪しく光っている。彰は僕が好きで好きで堪らない。僕に愛して欲しくてたまらない。

「……うん。そんなこと言わせてごめん。彰も今日は予定あるみたいだし帰ろっか」

 彰は僕の言葉を否定しかけてやめた。彰が言葉で語らなくともその瞳が語っている。黙りこくったって無駄なのに。可愛い。可愛い彰。今日は怯えているから一旦引いてあげる。
 でも、絶対に逃がさない。彰は僕のためだけに、僕だけによって変わればいいんだ。







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