21 / 24
20
しおりを挟む「あの子達はいいのか?」
「別にいいよ。そろそろウザくなってきてたし」
金森はどさりとソファに座ると俺をじっと見た。
「傷つかないんだ?」
その言葉に同情はない。ただの疑問。だけど金森がセックス前に話すのは珍しく、少し戸惑ったが怯んだと思われる方が嫌だった。
「別に。金森ってそういう奴だろ」
内心、落ち込んでるけど態度には出さない。分かりきってることにいちいち落ち込む自分が情けないし、ウジウジしてると金森に呆れられるかもしれない。
「まあね」
「オメガって皆あんな感じなのか?」
「君だってオメガじゃん」
「俺、ほぼベータだし。普通オメガって珍しいから周りにいなかった」
「そんなもんか。ま、殆どあれだね。強い雄を取り合って争ってる」
金森は嘲笑しながら、しぶしぶ部屋を出て行こうとする女たちを見た。一般的なイメージだとオメガはお淑やかな美人だが、エリートアルファからするとガツガツした肉食系なのかもしれない。
「嫌い?」
「別に。あいつらってそういうもんでしょ」
その言いようはまるで違う生物に対するものだ。まだこの国においてオメガ差別はなくならない。金森はオメガに嫌悪している様子がなく、良い意味でも悪い意味でも割り切っているように見えた。
「君は違うの?」
「俺があの中で張り合える訳がないし、別にいいかな」
「ふーん、変わってるね」
「金森に言われたくない」
性格はきついが美人で家柄も良くて、オメガとして機能を果たしている彼らと俺。どちらが選ばれるかなんて明白だ。争っても意味がない。選ばれなくてもいいから、忘れられたくない。時々会えればそれでいい。
いつも通り口淫で金森のペニスを勃たせ、うつ伏せになって後孔を差し出す。すぐに挿入されるかと思ったが、なかなかその時が訪れず振り返ると、金森がいつもの笑みを消して俺を見ていた。
「なに?」
「なんでいつもうつ伏せなの?」
金森の不満そうな声を初めて聞いた。金森は酷い男だが、いつも微笑を携えている。何回か無表情のことはあるが、こんなに感情が現れているのは見たことがない。
何かいけないことをしたのだろうか。
「いつもそうだし」
「じゃあ、今日は反対向き」
戸惑いながらも、仰向けに寝転ぶと、途端に恥ずかしさに襲われた。今まで背後で行われてきた行為が目の前にある。美しい金森の前であっぴろげに広げられた自分の肢体は、ミスマッチ以外何もない。今すぐにうつ伏せに戻りたかったがグッと堪えた。
「どこ見てるの?ほら、こっち」
ペチペチと金森が自身のペニスで俺の太ももを叩く。期待で俺のペニスがゆるく勃ち上がって、淫乱を晒すようで恥ずかしい。
「入れてないのに勃ってる」
馬鹿にしたように笑った金森はゆっくりとそれを挿入した。
「んっ……」
金森の顔が近くにあって緊張しているからか、いつもより中のモノを強く感じる。ちゅぷぷと仕込んであったローシャンを垂らしながら、ペニスが奥へ進む。
気持ちいい。
まだ挿入されただけなのに気持ちが良くて、奥歯を噛んだ。
「それ」
「え?」
快感を堪えるように目を瞑っていたら、目の前に金森がいる。
「それ、萎えるからやめてくれない?」
萎えると言う言葉に怯えながらも、それが何か分からない。何がそれに当たるのか考えていると、ボソリと金森が言った。
「気持ちいいならちゃんと喘いで」
俺が驚いたのが分かったのだろう。金森は俺の返事を待たず抽送を始めた。
「んっ、あ……」
言われた通り、喉から溢れる声を我慢しない。VIP室には俺と金森しかいないから俺の嬌声がひとり響いた。自分の喘ぎ声を聞きながら、正面から俺を犯す金森を見て興奮が増す。俺は金森に抱かれているんだ。
「かなもり、かなもり」
行き場のない両手を後ろに持ってきて身体を支える。うつ伏せの時より体勢は辛いが、心の満ちようが違った。
金森も射精が近いのか、短くなっていく間隔に俺は堪え切れず射精した。元から感じやすい身体だったが、遂に触らずともイけるようになってしまった。金森も中で射精して、ずるりと中から引き出す。
今日もこれで終わりだろうか、と起きあがろうとすると金森が2個目のゴムを手にしていた。
先にいたオメガ達は帰らせていたし、今日の相手は俺だけなのかもしれないと思うと嬉しくて、ニヤケそうな顔を手で覆う。金森が俺を選んでくれた。例え、今日だけでもこんな俺を。
暫く幸せに酔ったが、金森が間髪入れずに挿入してくる時に思い出した。金森にとってこれは性処理に過ぎなくて俺はオナホなんだと。
綺麗なオナホに飽きたから、珍しいオナホを使っている。ただそれだけの事実だ。
辛い現実は最近の俺にとって通常仕様で、ストンと舞い上がっていた心が沈む。勘違いしなくて良かったと思いながら、俺という選択肢を忘れてくれなかったことが愛おしい。どんな風に思われてもいいから、金森の心にいたい。
俺と金森の二人だけの時間に酔っていたから、外の気配に気付かなかったのだろう。突然、廊下から男が現れた。
「金森だけか?」
「うん。藍田は来ないよ」
黒部竜也だ。藍田透はよく見かけるが、大学以外で黒部竜也を見るのは初めてのことだ。いつもならセックス以外のことを気にしないのに、この体勢だと色んなものが見えすぎる。服を引っ張り陰部を隠そうとしたが、服の長さが足りない。
「そいつだけ?」
「他は帰した」
「そうか。混ざっていいか?」
なんてことのないように言う言葉にハッとする。藍田透はいつも俺に興味がないから、危機感を感じていなかったが黒部は相手を気にしない奴なのか。
もし金森が許可しても、そんなことされるくらいなら帰ろう。そう決意して、金森を見たら視線があった。金森は少し考えてから微笑んで答える。
「お前と穴兄弟は嫌だよ」
36
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる