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頼まれていた合コンが開催できたのは春休みになってからのことだった。この間私の周りでは特筆すべきことは無かったんだけど、先輩たちの卒業パーティーでちょっとした事件が起こった。なんと王子様の婚約破棄である。そして新しい婚約者として登場したのがアリシア・エイベル男爵令嬢。アレックスは振られていたらしいが取り巻き仲間たちはもう吹っ切っていたらしく誰一人として取り巻きには戻らなかった。本当によかった。もしも取り巻きに戻っていたら代わりに合コンに参加する人間を探さないといけなくなるところだった。
こちらは学生だから合コンはいつでもよかったのだがお相手の騎士様たちの都合がつかなくてこんなに遅くなってしまった。忘れがちだけどアンダーソンさんも女子の憧れ職業の騎士様なんだよね。……本当になんで売れ残ってたんだろう。いや、理由は前に聞いたけども。
取り巻き仲間は五人とも相手を見つけられたらしくデートに忙しいようだ。たまにアドバイスを求められるけど答えられない日々が続いている。唯一言えたのは制服の着こなしくらいだ。シャツの胸元を開けない、スカートも短くしない、メイクは薄め。本当にこれだけ。だって私とアンダーソンさんはちょっぴり不健全な関係なので……。清らかな少女たちにどうアドバイスをしろと……? 無理である。
「そんなに見られると穴が開いてしまう」
「あ、すみません」
絶賛アンダーソンさんとデート中なのだけどちょっと考え事をしてしまっていた。でもそれも仕方ないと思う。今私たちがいる喫茶店には取り巻き令嬢が偶然にもデートで勢揃いしているのだから! いやどんな確率!? しかも騎士様たち休み思いっきり合ってるじゃないですか! なんで?
合コンはまだかとせっつかれた日々はなんだったのだろうと少し遠い目になりながら紅茶を飲んだ。頼んだのはアールグレイ。ベルガモットの香りが堪らない。チーズケーキも美味しい。アンダーソンさんは今日もダージリンだ。思えばいつもダージリンを飲んでいるし好みなんだろう。 タウンハウスには私好みのアッサムとアールグレイしか置いていないからアンダーソンさん用にダージリンの茶葉を買っておこうかな? ああ、でも確認してからの方がいいか。
「いつもダージリンを頼まれますよね。お好きなんですか?」
「ああ」
「じゃあ我が家にも用意しておきます」
ああ、そうだ。どうせなら一番好きな物を用意してあげたいし一緒に買いに行こう。この後は我が家へ向かうだけだし寄り道したっていいだろうと思い至って一呼吸置いて続けた。
「この後買いに行きませんか?」
「ありがとう。そうしよう」
+++++
「さあ、好みの茶葉を選んでください」
紅茶専門店に着いて私はそう言った。お小遣いもちゃんと持ってきているしなんでも好きな物を選んでほしい。
「ターナー社のセカンドフラッシュをよく飲むんだ」
「じゃあそれにしますか? それとも冒険してみます?」
アンダーソンさんはターナー社のセカンドフラッシュの缶を手に取っていた。冒険はしないらしい。残念だなんて思ってない。別に気に入った物を見つけるまで紅茶を選ぶのに付き合いたかったとか思ってないから……!
アンダーソンさんはそのままレジに行ってしまった。私が買おうと思っていたのに! と言うと俺の物を君の家に置かせてくれと言われてしまった。
「じゃあこれはアンダーソンさん専用ってことで。……風味が落ちる前に全部飲みに来てくださいね」
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「そんなに見られると穴が開いてしまう」
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「ああ」
「じゃあ我が家にも用意しておきます」
ああ、そうだ。どうせなら一番好きな物を用意してあげたいし一緒に買いに行こう。この後は我が家へ向かうだけだし寄り道したっていいだろうと思い至って一呼吸置いて続けた。
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+++++
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