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「ただいま」
誰もいない家にその声は響いた。
今日はいろいろあった。つい数時間前までは全く信じていなかった水神様に会い
、しかも、災害の予言までされてしまった。どうするべきか頭を働かせる。
夕食の準備に取り掛かっていると、玄関から戸を叩く音が聞こえた。
「はい」
急いで扉を開くと、そこに立っていたのは真美だった。
「ジンくん、今日は何してたの?」
「あ、ちょっと山菜取りに行ってきただけだよ。」
「そっか、じゃあ夕飯一緒に食べよう!」
真美はタッパーに入ったおかずに、川魚をにっこりしながら見せてきた。
「うん、いいね!ちょうど今から準備するところなんだ」
「ならよかった~、私も手伝うよ!」
二人で台所に立って料理を始める。今日のメニューは取ってきた山菜をつかった天ぷらだ。
それに真美が持ってきてくれたおかずや川魚もあるので随分と豪勢な食事になった。
そうだ、水神様のこと真美に相談してみようか。
真美自身はそんなに水神様への信仰は深くないように思えたが、その両親や親せきが水神をあがめる会のメンバーだったことを思い出した。
少し考えて遠回しに聞いてみることにした。足を延ばしてくつろげるような恰好をしていた真美にさりげなくを装って聞いてみることにした。
「真美は水神様って信じてるのか」
真美は少し驚いた顔をしていた。
「びっくりした仁君はそんなこと興味ないと思ってた。」
真美は少し考えてこういった。
「水神様はね、この町の人たちがお好きで何人もの人が水神様のお姿をお見掛けしているんだ。」
「ふうん」
何よそのはんのー
とちょっと不満げに見つめる真美。
そんなところもかわいい。
「水神様は、水に関する災害が多いこの町の守り神で信じればすくわれるって言われてるんだ。」
水神の様子を見て少しうなづける部分はあった。
最も、俺の水神への信仰とやらはゼロだったけれど。
「私はね、水神様はいらっしゃると信じてる。仁君にはバカにされちゃうと思うんだけどね。昔、私が小さいころ山の近くにある小川でおぼれたことがあるんだ。
足がつかない沖合の近くまで流されてもう駄目だと思った。でもね、意識を失う寸前、誰かに手を引かれたの。まあ、酸欠で意識が混濁していたのもあって幻覚を見たのかもしれない。
気が付いた時には家のベッドの上だったの。お母さんに聞いたら小川のすぐ近くで倒れてたって。
それで、その時手をひいて助けてくれたのが水神様じゃないかなぁって思ってるの。」
そう言った彼女は、とても神妙そうに言った。
ジンくんは信じてくれないかもだけど。
と次の瞬間にはおちゃらけた様子で言っていた。
以前の俺だったら絶対に信じないようなことでもすんなりとはいってきた。少しぶっきらぼうだけど根はやさしい感じの水神だ。だからきっと助けに来てくれるんだろうって。
ヒーローのように語る真美の様子を見て少し嫉妬した。
真美は持ってきた缶ビールをごくごく飲んで水神様のことを話してくる。水神様は甘党でたまにお供物のフルーツだけが消えていたり、気まぐれで龍のような蛇のような姿になったり人の形をするらしい。
そして最後にいった真美の言葉がある意味衝撃的だった。
「ジンくんは、水神様ってどんな神様だと思う??私はねぇ、おじいちゃんだと思うの。私を川から助けてくれたときめっちゃしわしわなかすれた声が聞こえたの。」
「……」
その時はそうなんだで流した。
自分が今日あったのは間違えなく真美を救った水神様だと思った。
俺も土砂崩れから救ってもらった。そのお礼もしないのは人間としてどうなんだと思い、お礼品を持っていこうと考えた。
姿を見てしまった手前、水神を信じざる負えなくなってしまったこともあるが、単純に水神様のことが気になって仕方がない。
昼間はどうしても水神を崇める会人間がいる。いまさらその人間に交じることの気恥ずかしさから、誰にも見つからない時間に行こうと考えた。この田舎の町はみな、ね静まるのが早い。俺はフルーツの盛り合わせと、昨日取った山菜で作った天ぷらに塩焼きにした川魚を冷めないうちに届けようと自転車に乗った。その場所に行くと、ぼやッと光る何かがある。
最初は蛍の大群か?とも思ったがその光は一か所に集まっていてなおかつそれよりも大きい。地面に近い位置にある其れは動かずただそこにあった。近づいていくとその光の正体が何か分かった。水神様だ。水神様の周りがぼおっと光っている。神様って夜体が光るんだと漠然と思っていたが、近づいていくうちに明らかに倒れているように見える様子に慌てて駆け寄る。
「水神様!大丈夫ですか!?」
声をかけてみるものの返事はない。
水神様は全体的に生臭いにおいをしていて汚れた水で濡れていた。全く反応しない様子に内心冷や汗が出ている。
何で水神様が倒れているんだ!?
其れよりもこういう場合って、病院?いや動物病院?それとも神社?お寺?どこ地れてけばいいんだよ。畜生!!!!!!!!
こんな時どうすればいいか分からない。
おろおろしているとううっと、小さなうめき声のようなものが聞こえた。
「水神様!!!」
何でこんなところに水神様が倒れているのかはわからない。でも、ほおっておくわけにはいかない。
それがたとえ、得体のしれないものだとしても・・・・。
水神様は意識を失っているようだ。
川にでも落ちたのか?
正直、悪臭を放ち、汚れて濡れているものを抱えるには抵抗があったが仕方がないたとえ、人じゃなかったとしても命の恩人であることには変わりがない。
このままでは風邪を引いてしまうだろう。とりあえず家に連れ帰ろうと思い、水神様を抱えて歩く。自転車と荷物はあとで取りに戻ろう・・・・・。
そんなことを思いながら帰路についた。
*******************************************
「力が弱まってる!?」
「ああ、お前さんが巻き込まれたあの土砂崩れで確信した。」
水神はきれいな水を好むらしく、風呂に入れてやるとたちまち動けるくらいには回復していった。そして今目の前で俺がお礼の品として持ってきたものをバクバク食べている。手づかみで・・・・
いや、蛇だか竜だかの動物だったのならその食べ方はうなづけるんだけど・・・・・・なんか人の形してるとシュールだ。
山菜のてんぷらを食べて、フルーツを皮ごとバリバリ食べる姿は控えめに言ってもワイルドだ。
「・・・・私にはもう、あの程度の災害をも止めることは難しい」
「・・・・・・なんだか知らねえけど、何でそうなっちまったんだ?」
「分からん。だが、力を使いすぎたのが原因なのは間違いないだろう。」
水神はそう言うとため息をついた。
「私は、神としての力を失いつつある」
フルーツのかごいっぱいのフルーツを食べつくさん勢いで食べていく水神に若干引きながら質問を重ねる。
「神ってそんな簡単に消えるもんなのかよ。」
「そんなの知らん。」
「完全に力を失ったらどうなるんだ。」
「この町の水神はいなくなる。ただそれだけの話。」
「フーン」
分かったようなふりをした。
「治す方法はないのか?」
「それも知らん。500年以上生きてきてこんな事初めてだからな。」
500年という壮大な年月を言われ、気後れした。
今日の水神はなんだか饒舌だ。
以前水神は近いうちに災害が起こると言っていた。
もしかしたら今の水神にはその災害を止めるすべがないから、俺に忠告したのかもしれない。そう考えてゾッとした。
本当のところはわからない。それでも今は聞かないようにした。
「・・・・・・ちそうになった。これ、特にうまかったぞ、ほめて遣わす。」
水神は最後のフルーツを平らげると満足げにそういった。特にリンゴがお気に召したらしい。
動物よろしく手についたくだものの汁をなめとっていたのはびっくりしたけど。
「そりゃあよかった。」
俺はほっとして、水神の顔をみて驚いた。
さっきまで人の形をしていたものが電灯の明かりを消すようにふっと消えた。
「水神様、あんた・・・。」
まさか消えてしまったのかと慌てた。
反射的に山に行こうと外に出ると、透き通った青みががった白い竜が目を細めていた。
「すい、じん様・・・」
あまりの迫力に少しビビったが、最初にあった時のように叫び声は挙げなかった。
「・・・世話になった」
水神はそれだけ言うと空に飛んでいった。
「え、ちょっまっ」
待ってくれ!と言い終わる前に水神の姿は見えなくなった。
「あれ、夢か?」
俺はその場にしばらく立ち尽くした。
誰もいない家にその声は響いた。
今日はいろいろあった。つい数時間前までは全く信じていなかった水神様に会い
、しかも、災害の予言までされてしまった。どうするべきか頭を働かせる。
夕食の準備に取り掛かっていると、玄関から戸を叩く音が聞こえた。
「はい」
急いで扉を開くと、そこに立っていたのは真美だった。
「ジンくん、今日は何してたの?」
「あ、ちょっと山菜取りに行ってきただけだよ。」
「そっか、じゃあ夕飯一緒に食べよう!」
真美はタッパーに入ったおかずに、川魚をにっこりしながら見せてきた。
「うん、いいね!ちょうど今から準備するところなんだ」
「ならよかった~、私も手伝うよ!」
二人で台所に立って料理を始める。今日のメニューは取ってきた山菜をつかった天ぷらだ。
それに真美が持ってきてくれたおかずや川魚もあるので随分と豪勢な食事になった。
そうだ、水神様のこと真美に相談してみようか。
真美自身はそんなに水神様への信仰は深くないように思えたが、その両親や親せきが水神をあがめる会のメンバーだったことを思い出した。
少し考えて遠回しに聞いてみることにした。足を延ばしてくつろげるような恰好をしていた真美にさりげなくを装って聞いてみることにした。
「真美は水神様って信じてるのか」
真美は少し驚いた顔をしていた。
「びっくりした仁君はそんなこと興味ないと思ってた。」
真美は少し考えてこういった。
「水神様はね、この町の人たちがお好きで何人もの人が水神様のお姿をお見掛けしているんだ。」
「ふうん」
何よそのはんのー
とちょっと不満げに見つめる真美。
そんなところもかわいい。
「水神様は、水に関する災害が多いこの町の守り神で信じればすくわれるって言われてるんだ。」
水神の様子を見て少しうなづける部分はあった。
最も、俺の水神への信仰とやらはゼロだったけれど。
「私はね、水神様はいらっしゃると信じてる。仁君にはバカにされちゃうと思うんだけどね。昔、私が小さいころ山の近くにある小川でおぼれたことがあるんだ。
足がつかない沖合の近くまで流されてもう駄目だと思った。でもね、意識を失う寸前、誰かに手を引かれたの。まあ、酸欠で意識が混濁していたのもあって幻覚を見たのかもしれない。
気が付いた時には家のベッドの上だったの。お母さんに聞いたら小川のすぐ近くで倒れてたって。
それで、その時手をひいて助けてくれたのが水神様じゃないかなぁって思ってるの。」
そう言った彼女は、とても神妙そうに言った。
ジンくんは信じてくれないかもだけど。
と次の瞬間にはおちゃらけた様子で言っていた。
以前の俺だったら絶対に信じないようなことでもすんなりとはいってきた。少しぶっきらぼうだけど根はやさしい感じの水神だ。だからきっと助けに来てくれるんだろうって。
ヒーローのように語る真美の様子を見て少し嫉妬した。
真美は持ってきた缶ビールをごくごく飲んで水神様のことを話してくる。水神様は甘党でたまにお供物のフルーツだけが消えていたり、気まぐれで龍のような蛇のような姿になったり人の形をするらしい。
そして最後にいった真美の言葉がある意味衝撃的だった。
「ジンくんは、水神様ってどんな神様だと思う??私はねぇ、おじいちゃんだと思うの。私を川から助けてくれたときめっちゃしわしわなかすれた声が聞こえたの。」
「……」
その時はそうなんだで流した。
自分が今日あったのは間違えなく真美を救った水神様だと思った。
俺も土砂崩れから救ってもらった。そのお礼もしないのは人間としてどうなんだと思い、お礼品を持っていこうと考えた。
姿を見てしまった手前、水神を信じざる負えなくなってしまったこともあるが、単純に水神様のことが気になって仕方がない。
昼間はどうしても水神を崇める会人間がいる。いまさらその人間に交じることの気恥ずかしさから、誰にも見つからない時間に行こうと考えた。この田舎の町はみな、ね静まるのが早い。俺はフルーツの盛り合わせと、昨日取った山菜で作った天ぷらに塩焼きにした川魚を冷めないうちに届けようと自転車に乗った。その場所に行くと、ぼやッと光る何かがある。
最初は蛍の大群か?とも思ったがその光は一か所に集まっていてなおかつそれよりも大きい。地面に近い位置にある其れは動かずただそこにあった。近づいていくとその光の正体が何か分かった。水神様だ。水神様の周りがぼおっと光っている。神様って夜体が光るんだと漠然と思っていたが、近づいていくうちに明らかに倒れているように見える様子に慌てて駆け寄る。
「水神様!大丈夫ですか!?」
声をかけてみるものの返事はない。
水神様は全体的に生臭いにおいをしていて汚れた水で濡れていた。全く反応しない様子に内心冷や汗が出ている。
何で水神様が倒れているんだ!?
其れよりもこういう場合って、病院?いや動物病院?それとも神社?お寺?どこ地れてけばいいんだよ。畜生!!!!!!!!
こんな時どうすればいいか分からない。
おろおろしているとううっと、小さなうめき声のようなものが聞こえた。
「水神様!!!」
何でこんなところに水神様が倒れているのかはわからない。でも、ほおっておくわけにはいかない。
それがたとえ、得体のしれないものだとしても・・・・。
水神様は意識を失っているようだ。
川にでも落ちたのか?
正直、悪臭を放ち、汚れて濡れているものを抱えるには抵抗があったが仕方がないたとえ、人じゃなかったとしても命の恩人であることには変わりがない。
このままでは風邪を引いてしまうだろう。とりあえず家に連れ帰ろうと思い、水神様を抱えて歩く。自転車と荷物はあとで取りに戻ろう・・・・・。
そんなことを思いながら帰路についた。
*******************************************
「力が弱まってる!?」
「ああ、お前さんが巻き込まれたあの土砂崩れで確信した。」
水神はきれいな水を好むらしく、風呂に入れてやるとたちまち動けるくらいには回復していった。そして今目の前で俺がお礼の品として持ってきたものをバクバク食べている。手づかみで・・・・
いや、蛇だか竜だかの動物だったのならその食べ方はうなづけるんだけど・・・・・・なんか人の形してるとシュールだ。
山菜のてんぷらを食べて、フルーツを皮ごとバリバリ食べる姿は控えめに言ってもワイルドだ。
「・・・・私にはもう、あの程度の災害をも止めることは難しい」
「・・・・・・なんだか知らねえけど、何でそうなっちまったんだ?」
「分からん。だが、力を使いすぎたのが原因なのは間違いないだろう。」
水神はそう言うとため息をついた。
「私は、神としての力を失いつつある」
フルーツのかごいっぱいのフルーツを食べつくさん勢いで食べていく水神に若干引きながら質問を重ねる。
「神ってそんな簡単に消えるもんなのかよ。」
「そんなの知らん。」
「完全に力を失ったらどうなるんだ。」
「この町の水神はいなくなる。ただそれだけの話。」
「フーン」
分かったようなふりをした。
「治す方法はないのか?」
「それも知らん。500年以上生きてきてこんな事初めてだからな。」
500年という壮大な年月を言われ、気後れした。
今日の水神はなんだか饒舌だ。
以前水神は近いうちに災害が起こると言っていた。
もしかしたら今の水神にはその災害を止めるすべがないから、俺に忠告したのかもしれない。そう考えてゾッとした。
本当のところはわからない。それでも今は聞かないようにした。
「・・・・・・ちそうになった。これ、特にうまかったぞ、ほめて遣わす。」
水神は最後のフルーツを平らげると満足げにそういった。特にリンゴがお気に召したらしい。
動物よろしく手についたくだものの汁をなめとっていたのはびっくりしたけど。
「そりゃあよかった。」
俺はほっとして、水神の顔をみて驚いた。
さっきまで人の形をしていたものが電灯の明かりを消すようにふっと消えた。
「水神様、あんた・・・。」
まさか消えてしまったのかと慌てた。
反射的に山に行こうと外に出ると、透き通った青みががった白い竜が目を細めていた。
「すい、じん様・・・」
あまりの迫力に少しビビったが、最初にあった時のように叫び声は挙げなかった。
「・・・世話になった」
水神はそれだけ言うと空に飛んでいった。
「え、ちょっまっ」
待ってくれ!と言い終わる前に水神の姿は見えなくなった。
「あれ、夢か?」
俺はその場にしばらく立ち尽くした。
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