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出てってやるよっ、こんなとこ!!(ヤケクソ)

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「アサヒ様もお稽古ですか? 熱心ですね。ツクト様についていけないというのに」
「欠陥品だからしょうがないさ……っと、すみません」

ボソボソ言うな、そこ。
聞こえてるんだよ。
ギロリと睨めば、「おお怖い」とわざとらしく肩をすくめられる。
怖いとか思ってないだろ。
アサヒは不機嫌であった。
こんなことを心の中でブツブツと呟くくらいには。

「アサヒー!」

その時、ツクトがアサヒに駆け寄ってきた。

「アサヒお疲れ! もうちょっと頑張ろうね!」
「マジかよ」
「うん! だってアサヒ弱いし」
「うるせぇ」

ズバズバと意見を言ってくるツクトには気が滅入る。
こいつ俺のこと嫌いなのか? とまで思えてきた。
でもニコニコしているし、悪気はないんだろう。
召喚されて一週間。
アサヒは何とか勇者の相棒として食い繋いでいた。
ネームバリューが大変お役立ちなこともあり、追い出されるような真似はされていない。
だが、冷遇っぷりがあまりに酷い。
ここまでするかというレベルのものだ。
全ては役立たずのアサヒへの期待外れの当て付けと、勇者ツクトという膨大な存在を手に入れたことの浮かれから来ているのだろう。
ツクト自身は何とも思っていないようだが、アサヒはもうこりごりだった。

「ツクト……」
「なぁに?」
「お前、これから稽古して……本当に世界を救うのか」

魔王とかに立ち向かって。
そう尋ねれば、「うん」としっかりとした返事が返ってくる。

「いいのか。死ぬかもしれないんだぞ」
「……苦しんでる人がいるなら、私が助けたいよ。私が勇者に選ばれたのならそうしたい」

別にアサヒはツクトのことが嫌いではない。
寧ろ好いている部類に入るのだろう。
しかし何度も言うがアサヒは、もう勇者の相棒としてやっていける気がしないのだ。

「そうか。頑張れよ」
「うん!」

それだけ言い残して。
アサヒは王宮から出ることを決めた。

◆ ◆ ◆

「俺は役立たずです。何もできません。ですので、ここに厄介になるのも迷惑です。王宮を出ようと思います」

国王に謁見し、ひたすらに頭を低くしてそう述べれば、「そうか」とどこか気の抜けた返答をされた。

「ならば商人を紹介しよう。その商人の弟子となり、商人として生きていくといい」
「ありがとうございます」

これはアサヒにとってありがたい話である。
もういっそ着の身着のまま出て行ってやろうとも考えていたが、この申し出を受けない理由はない。
国王が何かを合図すると、傍らで控えていた臣下の一人が書状のようなものを持ってきた。
それにサラサラとペンを走らせ、臣下に返す。
すると臣下がアサヒに書状を手渡してきた。

「そちらの書状があれば、商人の方が受け入れてくれるでしょう。ヘルドという街に住む、アンドリアを訪ねるといい」

書状を受け取り、アサヒは玉座の間を出た。
旅荷物は既にまとめてある。
王宮を出て、改めて見上げてみれば、立派なものだった。
中世のヨーロッパ風の、想像していた異世界の造りそのものだ。

「地図貰ったけど、読みづらいな……」
『ヘルドの街へナビを開始しますか』
「あー、うん。よろしく頼ーー」

何だこの声。
ポカンとして開いた口が塞がらない。
どこからか聞こえてきた謎の声は、続けた。

『スキル『取得』と申します。どうぞお役立てください』
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