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死んでしまったらしい。

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「あっ、やっちゃった……」

慌てたような声で私は目覚めた。
なぜかとんでもなく綺麗な女の人が目の前に立っている。

『え!? あの、どちら様ですか!?』
「あー、神様だよ」
『神様……』

ちょっと怪しい人のようだ。
めちゃくちゃ綺麗なのにもったいない。
残念美女とでもいうのか。

「信じてないねー。ま、どうでもいいけど。それより、君死んじゃったよ」
『え?』

死んだ。
急に言われて、頭が追いつかない。
思わず女性に怒鳴った。

『ふざけないでください!! あなたに付き合う義務はないので、帰らせていただきます!!』
「あははっ! 面白いね! 自分の体を見てみなよ」

自分の体?
そう言われて手を目の前に持ってこようとしてーー驚いた。

『え? な、ない?』

私の手がない。
というか体がなかった。

『こ、これ、どういう状態? 夢?』
「君が夢と思おうが知らないけど、一応説明するね。私、うっかり君の人生設計を間違えてたみたい。もう少しで病死するお爺さんの死相を、君に写しちゃった」
『は?』
「簡潔に言えば、君のこと殺しちゃった」

何を言っているのだこの人は。
殺した? うっかり私を?
……これは夢だ。夢に違いない。
そうじゃなきゃ、私は……だって、やりたいことだってあった。
未練どころか死んだ実感も湧かないのに。

「これが他の神様にバレるとマズいのよ。だから隠蔽として君をちゃっちゃと転生させちゃうね」
『て、転生?』
「そう」

あ、これラノベで見たやつだ。
かなり場違いだがふとそんな考えが頭を過ぎる。

『あの、私ってもう本当に……死んじゃったんですよね』
「うん、そうだよ」
『じゃあお詫びに転生した先で生きやすくする手段とか、もらえますか?』
「……? 無理だよ?」
『へ?』
「いや、無理」

自らを神様と名乗った女性は、あっけらかんとした様子でそう私に言った。
おかしい。
こういうのって、神様が何かやらかしたらお詫びとかつけてもらえるものじゃないの?
私の考えを読み取ったのか、女性はクスリと笑って私に言った。

「人間が作る作品とかとは違うんだよ? 神様が何万、何億とかある魂一つ一つに謝罪とかすると思う? たかが人間風情が、神様にそれ望んじゃダメでしょ」
『………』

思わず絶句した。
世の中には神様を信じている人がたくさんいるけれど、信仰している神様はこんなにも酷い人だったらしい。
深く考えれば当たり前なのかもしれないけれど、いくら何でもそれはないんじゃないか。

『じゃ、じゃあ! せめて普通の家に! 優しくしてくれる両親の元にーー』
「転生先は完全にランダムだから。何か特典特典うるさいから、失敗した魂には前世の記憶を残しといてあげてるんだよね。君もそうするからさ、頑張ってね」
『ちょ、待っーー』

自分が大きな波に飲み込まれるような感覚で、私の意識が遠のいていく。
これから、どうなってしまうんだろうか。
大きな不安と、女神に対する憤りで私の目の前は真っ暗になったーー

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