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第一章 一回目の人生
第一話
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「ーーーあ?」
パチリと勢い良く目を開け、悠輝は起き上がった。
「ここ…どこ?」
見渡す限りの木、木、木。
どこの田舎であろうか。
いや、万が一ここが日本国内の田舎であったとしても道路一つ見当たらないとは異常だ。
どこぞの山であろうか。
「…おかしいな。俺、昨日は…家にちゃんと帰ったよな?それで、疲れたからベッドに入って…もしかして、アヤのいたずらか?」
アヤ、とは悠輝の妹である井内 綾香の事である。
綺麗な黒髪を肩まで伸ばし、大きなくりくりとした目と小さな唇を持つ愛嬌のある妹だ。
現在悠輝が十五歳なのに対して、綾香は十三歳と二歳差だ。
綾香はいたずら好きであり、よくいたずらに出る事があった。
例えば、悠輝が寝ている間にベッドをガムテープでぐるぐる巻きにしてみせたり。
こちらが必死こいて勉強しているのを横目に宿題が書き連ねてあるノートに赤ペンで花マルを書いてみたり。
そのたびに悠輝は顔を真っ赤にして怒るのだが、綾香は全く気にもとめなかった。
悠輝も怒るのを諦め最近では綾香に「お兄、いじりがいなくなったね」とがっかりされた。
ひょっとしたらより大掛かりないたずらをするために悠輝が寝ている間に近所の公園とかに運んだのかもしれない。
「でも、アヤだとしても…やりすぎだ。多分違うな。だとしたら、夢か?悪い夢なら早く覚めてくれ」
誰かに言った訳でもないが、返事が返ってこないと寂しい。
ここらには誰一人、悠輝の言葉に答える者はいなかった。
「…とりあえず、歩くかぁ!」
自分を鼓舞するように大きな声で叫んでから木の葉を思い切り踏みしめた。
二時間後。
「ゼェ、ゼェ…さ、流石に抜け出してもおかしくないのに…何で出口が出てこないんだ」
息を切らしながら悠輝は文句をたれた。
先ほどからずっと一定の方向で歩いているが出口は一向に出てこない。
悠輝の体育の成績は中の上あたり。
二時間も歩き続ければ疲れる。
「もう…勘弁…してくれよ」
ぐい、と額に浮かんだ汗を拭って悠輝は泣き言を言う。
そんな情けない言葉を誰かが笑い飛ばしてくれるのなら、どれほどの幸福だろうか。
そろそろ人が恋しくなってきた悠輝に…ザク、と地面を踏みしめる音が聞こえた。
「!」
バッと音がした方へ勢い良く顔を向けた。
ザク、ザク、ザク…
木々の隙間から現れたのは、二人の男だった。
いかつい顔をして「山賊です」と自己紹介していそうな雰囲気を放っている。
不思議なのがその髪と瞳の色だ。
一人のひょろいほうは赤い髪と瞳をしている。
もう一人のマッチョなほうが緑の髪と瞳をしている。
服装も泥塗れで汚らしい。
一見貧乏な人達に見えるが咄嗟に悠輝の頭に思い浮かんだのが「コスプレーヤー」だった。
だが、相手側の服の汚れはつい最近ついたようでまだ新しいものだ。
男二人も悠輝と同じでここに迷い込んだのかもしれない。
「あの、出口知りません?」
「……貴族か?」
「へ?」
「へへ、絶対そうだぜ兄貴。見ろよあの高そうな服」
「ただのパーカーとTシャツとジーンズですけど」
今の悠輝の服装はよれたパーカー、白いTシャツ、ジーンズ、長年使い古したスニーカーだった。
どこを見て高そうな服と言ったのであろうか。
ひょっとしたら本当に貧乏な人達なのか。
哀れむような悠輝の目線に気がついたらしい。
ひょろいほうの男が「チッ」と舌打ちをする。
「これだから貴族はよぉ…ガキまで俺らを見下しやがって」
「見下してませんよ」
「兄貴!こいつボコって身ぐるみはいじまいましょう!」
マッチョのほうがひょろいほうの男に声高らかに叫んだ。
ひょろいほうが兄、マッチョが弟らしい。
兄が満足そうに頷いた。
「そうだな、頼むぞ弟よ」
「へ?」
「了解っ!!」
マッチョが嬉しそうに悠輝に向かって拳を振り上げた。
パチリと勢い良く目を開け、悠輝は起き上がった。
「ここ…どこ?」
見渡す限りの木、木、木。
どこの田舎であろうか。
いや、万が一ここが日本国内の田舎であったとしても道路一つ見当たらないとは異常だ。
どこぞの山であろうか。
「…おかしいな。俺、昨日は…家にちゃんと帰ったよな?それで、疲れたからベッドに入って…もしかして、アヤのいたずらか?」
アヤ、とは悠輝の妹である井内 綾香の事である。
綺麗な黒髪を肩まで伸ばし、大きなくりくりとした目と小さな唇を持つ愛嬌のある妹だ。
現在悠輝が十五歳なのに対して、綾香は十三歳と二歳差だ。
綾香はいたずら好きであり、よくいたずらに出る事があった。
例えば、悠輝が寝ている間にベッドをガムテープでぐるぐる巻きにしてみせたり。
こちらが必死こいて勉強しているのを横目に宿題が書き連ねてあるノートに赤ペンで花マルを書いてみたり。
そのたびに悠輝は顔を真っ赤にして怒るのだが、綾香は全く気にもとめなかった。
悠輝も怒るのを諦め最近では綾香に「お兄、いじりがいなくなったね」とがっかりされた。
ひょっとしたらより大掛かりないたずらをするために悠輝が寝ている間に近所の公園とかに運んだのかもしれない。
「でも、アヤだとしても…やりすぎだ。多分違うな。だとしたら、夢か?悪い夢なら早く覚めてくれ」
誰かに言った訳でもないが、返事が返ってこないと寂しい。
ここらには誰一人、悠輝の言葉に答える者はいなかった。
「…とりあえず、歩くかぁ!」
自分を鼓舞するように大きな声で叫んでから木の葉を思い切り踏みしめた。
二時間後。
「ゼェ、ゼェ…さ、流石に抜け出してもおかしくないのに…何で出口が出てこないんだ」
息を切らしながら悠輝は文句をたれた。
先ほどからずっと一定の方向で歩いているが出口は一向に出てこない。
悠輝の体育の成績は中の上あたり。
二時間も歩き続ければ疲れる。
「もう…勘弁…してくれよ」
ぐい、と額に浮かんだ汗を拭って悠輝は泣き言を言う。
そんな情けない言葉を誰かが笑い飛ばしてくれるのなら、どれほどの幸福だろうか。
そろそろ人が恋しくなってきた悠輝に…ザク、と地面を踏みしめる音が聞こえた。
「!」
バッと音がした方へ勢い良く顔を向けた。
ザク、ザク、ザク…
木々の隙間から現れたのは、二人の男だった。
いかつい顔をして「山賊です」と自己紹介していそうな雰囲気を放っている。
不思議なのがその髪と瞳の色だ。
一人のひょろいほうは赤い髪と瞳をしている。
もう一人のマッチョなほうが緑の髪と瞳をしている。
服装も泥塗れで汚らしい。
一見貧乏な人達に見えるが咄嗟に悠輝の頭に思い浮かんだのが「コスプレーヤー」だった。
だが、相手側の服の汚れはつい最近ついたようでまだ新しいものだ。
男二人も悠輝と同じでここに迷い込んだのかもしれない。
「あの、出口知りません?」
「……貴族か?」
「へ?」
「へへ、絶対そうだぜ兄貴。見ろよあの高そうな服」
「ただのパーカーとTシャツとジーンズですけど」
今の悠輝の服装はよれたパーカー、白いTシャツ、ジーンズ、長年使い古したスニーカーだった。
どこを見て高そうな服と言ったのであろうか。
ひょっとしたら本当に貧乏な人達なのか。
哀れむような悠輝の目線に気がついたらしい。
ひょろいほうの男が「チッ」と舌打ちをする。
「これだから貴族はよぉ…ガキまで俺らを見下しやがって」
「見下してませんよ」
「兄貴!こいつボコって身ぐるみはいじまいましょう!」
マッチョのほうがひょろいほうの男に声高らかに叫んだ。
ひょろいほうが兄、マッチョが弟らしい。
兄が満足そうに頷いた。
「そうだな、頼むぞ弟よ」
「へ?」
「了解っ!!」
マッチョが嬉しそうに悠輝に向かって拳を振り上げた。
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