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第三十六話 力を合わせて
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「お願い。みんな。少しだけ、時間をちょうだい」
「? リアちゃん、何をする気で……」
「しばらく、私にスーザンを近づけないでください」
「っ、わかった」
その時、スーザンが私のほうへ突っ込んできた。
それをレオナルドは水の魔法の水圧で食い止める。
一瞬スーザンが動きを止めた時、ライヴ先輩の蹴りがスーザンに炸裂した。
ドォッ!!
「っ、お、もいな!?」
「ーーはぁあっ!!」
ライヴ先輩が足を振り切り、スーザンがわずかに後ろに下がった。
スーザンは剣を握り直して、ライヴ先輩に斬りかかろうとする。
その途端アンちゃんの光魔法が目を眩ませ、スーザンの剣は若干左に逸れる。
レオナルドがその隙に水魔法で攻撃した。
「っはははっ!! おもしれぇ!! 人数が増えた途端、急にバランスが取れ始めたな!! だが、俺は殺せねぇ!!」
その言葉の次に、遠く離れたアンちゃんにスーザンは詰め寄る。
アンちゃんは剣を杖で防ごうとするが、杖が剣によってスパッ! と斬られた。
「きゃあっ!?」
「アンナさん!!」
アンちゃんの手が斬られ、ドパッと血が溢れる。
ごめん。ごめんね、何もできなくて。
でも、もう少しだけ耐えて。
「ウェル・ハレア・カシム……」
この呪文を使わなかったのは、私がこれを使った後絶対に気絶してしまうから。
「アドバンラン」
それに、あの男、スーザンに呪文を絞ることができないと、思い込んでいたから。
「トールム・フォレア」
そう、全ては思い込み。
絞ることができないと思っていたのは、男があまりに恐ろしいものに思えていたから。
そして、気絶するのは、私が対象がどうなるか見る勇気がなかったから。
そんなうじうじしたことは言わない。
学院に入って、友達ができて。
大切な人が、できた。
だから私は、全部見届けてみせる。
もう1人じゃないから。
「レガリア・ルーシュ・イクストーム!!」
ありがとうお母様。
私のために、この呪文を残してくれて。
この杖を残してくれて。
絶対お父様は、私が治す。
「レオナルド!! アンちゃん!! ライヴ先輩!! スーザンから離れてっ!!」
私の叫び声を聞いて、三人がスーザンから離れる。
スーザンは何かが起きると予想して、剣を構える。
でも、剣で防げるものじゃない。
これは禁忌の呪文。
ギュバッ!!
「は!?」
木の根がスーザンを捕らえる。
それを切り刻むも、その暇をなくすぐらい凄まじいスピードで、次から次へと木はスーザンに巻き付いた。
私が先ほど転んだ時に落とした種が、芽を出したのだろう。
私の魔力で急成長し、スーザンを追い詰める。
そして。
「こんなものがあったとはな……ははっ、面白い!!」
スーザンの胸を、木が凄い勢いで貫いた。
ドスッと音がして、スーザンの体から血が飛び出す。
「……ははっ、意外と、呆気なかったな」
木で体を貫かれて尚、スーザンは面白げに笑っていた。
木の拘束が緩むと、スーザンはそのまま地面に倒れる。
「…………っ」
がくん、と足の力がなくなった気がした。
杖で支えて自分の意識を何とか繋ぎ止める。
「り、リア。大丈夫?」
アンちゃんがよろけながら私に近づく。
アンちゃんは血だらけだった。
本当に頑張ってくれた。
傷だらけになって、それでも、生きていてくれた。
「リア……髪の毛」
「あ、ああ。斬られちゃって。でも、これくらいどうってことないよ。それより、レオナルドとライヴ先輩は……?」
「さっきやられちゃって。でも、脈はあるよ。2人共ギリギリだけどね」
見れば、2人は気を失っている。
アンちゃんと同じく血を流して、傷がたくさんある。
四肢はどこも千切れていない。
ただ、出血が酷い。
「と、とにかく、お父様を治して、王宮を出よう……」
そう言った時、クラリと目眩がした。
貧血による目眩か、それとも、魔力不足による目眩か。
「……リア?」
「…………アンちゃん。2人を見ていて」
私は、6階へと向かった。
◆ ◆ ◆
6階には、お父様の寝室しかない。
扉を開けば、こんこんとお父様が眠っていた。
「お、とう、さま……」
魔力が残り少ない。
魔法を使うのは、明日にしておいたほうがいいのかもしれない。
そう思ったが、私には何となく嫌な予感があった。
お父様に近づくと、〔全知〕を発動させる。
見るのは中心部。
やはり凄まじい情報量に、頭が打たれるような痛みが走る。
でも、今のでわかった。
猶予が1年だと思っていた私を殴りたい。
お父様は、もう限界寸前だった。
病にお父様が食い潰されてしまう。
「………」
はぁ、はぁ、と荒い息づかいが聞こえる。
この状況で『治癒魔法』を使えば、私は死ぬかもしれない。
でも、お父様さえ助かれば、この混乱を収めることができる。
「……治癒、魔法」
ポウ、と光がお父様を満たす。
回復力を上げるの。
この弱り切った光に、私の魔力を注ぐ。
「治って……お父様……!!」
意識が遠のきそうになる。
脳裏に浮かんだのは、レオナルドの笑顔だった。
……せっかく、好きだって言えたんだけどな。
それでも、魔法の手は緩めない。
「お父様……! 起きて……!」
私の目の前が、真っ白に染まる。
お願いお父様。起きて。
起きて、早く。
「死な、ないで……!!」
私の全てを、お父様に注ぎ込んだ。
「? リアちゃん、何をする気で……」
「しばらく、私にスーザンを近づけないでください」
「っ、わかった」
その時、スーザンが私のほうへ突っ込んできた。
それをレオナルドは水の魔法の水圧で食い止める。
一瞬スーザンが動きを止めた時、ライヴ先輩の蹴りがスーザンに炸裂した。
ドォッ!!
「っ、お、もいな!?」
「ーーはぁあっ!!」
ライヴ先輩が足を振り切り、スーザンがわずかに後ろに下がった。
スーザンは剣を握り直して、ライヴ先輩に斬りかかろうとする。
その途端アンちゃんの光魔法が目を眩ませ、スーザンの剣は若干左に逸れる。
レオナルドがその隙に水魔法で攻撃した。
「っはははっ!! おもしれぇ!! 人数が増えた途端、急にバランスが取れ始めたな!! だが、俺は殺せねぇ!!」
その言葉の次に、遠く離れたアンちゃんにスーザンは詰め寄る。
アンちゃんは剣を杖で防ごうとするが、杖が剣によってスパッ! と斬られた。
「きゃあっ!?」
「アンナさん!!」
アンちゃんの手が斬られ、ドパッと血が溢れる。
ごめん。ごめんね、何もできなくて。
でも、もう少しだけ耐えて。
「ウェル・ハレア・カシム……」
この呪文を使わなかったのは、私がこれを使った後絶対に気絶してしまうから。
「アドバンラン」
それに、あの男、スーザンに呪文を絞ることができないと、思い込んでいたから。
「トールム・フォレア」
そう、全ては思い込み。
絞ることができないと思っていたのは、男があまりに恐ろしいものに思えていたから。
そして、気絶するのは、私が対象がどうなるか見る勇気がなかったから。
そんなうじうじしたことは言わない。
学院に入って、友達ができて。
大切な人が、できた。
だから私は、全部見届けてみせる。
もう1人じゃないから。
「レガリア・ルーシュ・イクストーム!!」
ありがとうお母様。
私のために、この呪文を残してくれて。
この杖を残してくれて。
絶対お父様は、私が治す。
「レオナルド!! アンちゃん!! ライヴ先輩!! スーザンから離れてっ!!」
私の叫び声を聞いて、三人がスーザンから離れる。
スーザンは何かが起きると予想して、剣を構える。
でも、剣で防げるものじゃない。
これは禁忌の呪文。
ギュバッ!!
「は!?」
木の根がスーザンを捕らえる。
それを切り刻むも、その暇をなくすぐらい凄まじいスピードで、次から次へと木はスーザンに巻き付いた。
私が先ほど転んだ時に落とした種が、芽を出したのだろう。
私の魔力で急成長し、スーザンを追い詰める。
そして。
「こんなものがあったとはな……ははっ、面白い!!」
スーザンの胸を、木が凄い勢いで貫いた。
ドスッと音がして、スーザンの体から血が飛び出す。
「……ははっ、意外と、呆気なかったな」
木で体を貫かれて尚、スーザンは面白げに笑っていた。
木の拘束が緩むと、スーザンはそのまま地面に倒れる。
「…………っ」
がくん、と足の力がなくなった気がした。
杖で支えて自分の意識を何とか繋ぎ止める。
「り、リア。大丈夫?」
アンちゃんがよろけながら私に近づく。
アンちゃんは血だらけだった。
本当に頑張ってくれた。
傷だらけになって、それでも、生きていてくれた。
「リア……髪の毛」
「あ、ああ。斬られちゃって。でも、これくらいどうってことないよ。それより、レオナルドとライヴ先輩は……?」
「さっきやられちゃって。でも、脈はあるよ。2人共ギリギリだけどね」
見れば、2人は気を失っている。
アンちゃんと同じく血を流して、傷がたくさんある。
四肢はどこも千切れていない。
ただ、出血が酷い。
「と、とにかく、お父様を治して、王宮を出よう……」
そう言った時、クラリと目眩がした。
貧血による目眩か、それとも、魔力不足による目眩か。
「……リア?」
「…………アンちゃん。2人を見ていて」
私は、6階へと向かった。
◆ ◆ ◆
6階には、お父様の寝室しかない。
扉を開けば、こんこんとお父様が眠っていた。
「お、とう、さま……」
魔力が残り少ない。
魔法を使うのは、明日にしておいたほうがいいのかもしれない。
そう思ったが、私には何となく嫌な予感があった。
お父様に近づくと、〔全知〕を発動させる。
見るのは中心部。
やはり凄まじい情報量に、頭が打たれるような痛みが走る。
でも、今のでわかった。
猶予が1年だと思っていた私を殴りたい。
お父様は、もう限界寸前だった。
病にお父様が食い潰されてしまう。
「………」
はぁ、はぁ、と荒い息づかいが聞こえる。
この状況で『治癒魔法』を使えば、私は死ぬかもしれない。
でも、お父様さえ助かれば、この混乱を収めることができる。
「……治癒、魔法」
ポウ、と光がお父様を満たす。
回復力を上げるの。
この弱り切った光に、私の魔力を注ぐ。
「治って……お父様……!!」
意識が遠のきそうになる。
脳裏に浮かんだのは、レオナルドの笑顔だった。
……せっかく、好きだって言えたんだけどな。
それでも、魔法の手は緩めない。
「お父様……! 起きて……!」
私の目の前が、真っ白に染まる。
お願いお父様。起きて。
起きて、早く。
「死な、ないで……!!」
私の全てを、お父様に注ぎ込んだ。
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