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ユーグside
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俺の母親は、とうの昔に壊れてしまっていたのかもしれない。
そう、思った。
◆ ◆ ◆
俺は第一王子としてこの国に生まれた。
第一王子なのだから王位はついてくるものだと思い面倒に思っていれば、この国の王は、代々魔法の適性が優れた者がなることを知った。
俺には魔法の適性はあまりない。
だからか、俺の母である王妃は、あまり俺に興味は示さなかった。
初めのうちは寂しくてしょうがなかった。
構ってほしくて何でもかんでも頑張った。
しかし母の関心は妹のミリスに移り、次第に俺は期待するのをやめた。
王子としての最低限の教養は受けつつ、日常には退屈していた。
毎日同じようなことの繰り返しで、忙しさに目を回していたはずだったのに、次第にそれは味気ないものとなっていく。
そんな日々が変わったのは、王宮にとある女性が転がり込んでからだ。
女性の名を、レガリアといった。
レガリアは本当に美しい女性であった。
絹のようにしっとりとした金の髪に、どの宝石にも勝ると断言できる、空のように澄んだ碧眼。
一見儚げで大人しそうな女性に思えるが、勝気な性格だったことをユーグは知っている。
彼女は英雄であった。
知らず知らずの内に危機に晒されていたこの国を、とある魔法で助け出したらしい。
ユーグにはよくわからなかったが、彼女は英雄となった後、父に身染められて側室の一人となった。
それから、父の寵愛はひたすらレガリアに傾いた。
側室であるはずなのに、正室である母よりも、父はレガリアを愛していた。
母が嫉妬で狂うのは、時間の問題であった。
母はなんとかしてレガリアを殺そうとした。
しかしレガリアは、あの手この手でそれらをすり抜ける。
母は無駄だと悟ったのか、それからは一切の関係を絶った。
それからレガリアは妊娠した。
レガリアは身重になったことで、母に抵抗できないと思われた。
母がその時を狙い、レガリアに刺客を仕向けた。
だが、何とレガリアはそれすらも覆してみせた。
それから、レガリアの娘である、イリーシャが誕生した。
そこまでは良い。
しかし、レガリアが生まれて間もないイリーシャを連れて庭園を散歩していたところを、俺は見かけた。
何となく声をかけることはせずにそれを見守っていれば、突然物陰からナイフを持った暗殺者が数人飛び出す。
レガリアは咄嗟にそれを躱したが、イリーシャを守りきれないと判断したらしい。
レガリアは自身の杖である、木でできた杖を出現させ、呪文を唱え始めた。
「ウェル・ハレア・カシム・アドバンラン・トールム・フォレア」
よくわからない呪文だった。
そんな呪文聞いたこともないし、何やら詠唱が長い。
彼女は躊躇いながらも、次の呪文を唱え切った。
「イリーシャ・ルンナ・イクストーム!!」
イリーシャの名前だった。
その瞬間、信じられないことが起きた。
地面が揺れて、最初は地震だと思う。
しかし次の瞬間植物が暗殺者を捕らえ、空に暗殺者を放ってしまった。
抵抗する間もなく、一瞬だ。
ポカンとしていれば、レガリアと目があった。
「……あなたは、第一王子のユーグね」
「は、はい。噂はかねがね聞いております、レガリア様」
子供らしくない挨拶に、レガリアは吹き出した。
そうして俺は、レガリアと少しだけ話をした。
「あれはね、禁術なの」
「禁術?」
「そう。私の魔力の6割と引き換えに、対象に起こりうる最も最悪なことを引き起こすことができる魔法。普段は周りの人を巻き込んでしまうから、あまり使わないの」
「最後にイリーシャの名前を叫んでいたのって……?」
それを聞くと、レガリアは嬉しそうに笑った。
本当に綺麗な笑みであった。
「この詠唱の最後には、大切な人の名前を叫ぶの。私はイリーシャが大切だから、イリーシャの名前を呼んだのよ」
「そっか……」
「皮肉なものよね。最悪を引き起こす魔法の最後に、大切な人の名前を呼ぶだなんて」
それが、レガリアとの最初で最後の会話であった。
レガリアは、王宮を出て行った。
これ以上王妃にーー母に命を狙われないためと、イリーシャを巻き込まないためであろう。
王女であるイリーシャは、連れ出すことができないのだから。
そのことにせいせいしたのか、母はイリーシャには手を出さなかった。
しかし、5ヶ月前に父が不治の病に倒れた時、イリーシャは父を治す研究のために王宮を飛び出してしまった。
母は何とかして、自分の子供を王位につけたいようであった。
この人に権力を握らせちゃならない。
代々続いてきた『治癒魔法』の研究を黙認しているのも母だ。
父は何も知らない。母が、裏舞台を操ってきた。
これ以上母の好きにさせてたまるか。
俺は王位争いを魔力不足を理由に離脱した。
イリーシャはどんどん力をつけていったようで、母はイリーシャを目の敵にするようになった。
それこそ、かつてのレガリアのように。
母は父の寵愛が受けられなくなってから、父を恨むようになっていた。
だから父を治すつもりなんて、毛頭なかったのだろう。
父が用意した大臣は不自然な罪で捕らえられ、母の用意した大臣に切り替わった。
リンメイ大臣は、そのような役を任され、困っているようであった。
それを狙っていたかのように、母は兄弟同士で争うよう言ったのだ。
信じられない。
兄弟同士で争わせるなど、鬼畜の所業である。
兄弟殺しはご法度であると言いつつ、再起不能には目を瞑るというのか。
この時、俺は母を止めればよかったのかもしれない。
ただ、そんなことを考える母が恐ろしく、関わることをしたくなかった。
そして、今日。
突然母が、今まで見向きもしなかった俺の元へ訪れた。
「地下の実験動物を王宮に解き放ったわ」
「……は?」
言われた意味が理解できなかった。
唐突に伝えられた情報は、「そうですか」と呑み込んでしまえるほどたやすくはない。
「は、母上……これは、重罪ですよ!? 王宮内の人が死ぬ!! 王族ですらも例外なく!! なぜこのようなことをっ!?」
「いいのよ。あの女の娘が死ねば」
イリーシャが来ているのか。
ということは、父を治す手段を見つけてきたのか。
母は静かに憎悪の炎を燃やしていた。
「他の兄弟、みんなみんないなくなっちゃえばいいの。ミリスはもういいわ。役立たずですもの」
「実の娘になんてことを……!!」
「それですべて死ねば、あなたが王よ」
「俺は、王位など欲しくはない!! それに、きっと事が終わればあなたは死刑になる!! あなたに実権は握らせない!!」
「いいわ。私の血をひくあなたが王になってさえくれれば。私を愛してくれないあの人なんて、死んでくれれば」
狂っている。
母は静かに壊れていた。
放っておいた、俺の責任だ。
「ああ、早く死んでくれればいいのに」
どこから、間違えたんだ?
そう、思った。
◆ ◆ ◆
俺は第一王子としてこの国に生まれた。
第一王子なのだから王位はついてくるものだと思い面倒に思っていれば、この国の王は、代々魔法の適性が優れた者がなることを知った。
俺には魔法の適性はあまりない。
だからか、俺の母である王妃は、あまり俺に興味は示さなかった。
初めのうちは寂しくてしょうがなかった。
構ってほしくて何でもかんでも頑張った。
しかし母の関心は妹のミリスに移り、次第に俺は期待するのをやめた。
王子としての最低限の教養は受けつつ、日常には退屈していた。
毎日同じようなことの繰り返しで、忙しさに目を回していたはずだったのに、次第にそれは味気ないものとなっていく。
そんな日々が変わったのは、王宮にとある女性が転がり込んでからだ。
女性の名を、レガリアといった。
レガリアは本当に美しい女性であった。
絹のようにしっとりとした金の髪に、どの宝石にも勝ると断言できる、空のように澄んだ碧眼。
一見儚げで大人しそうな女性に思えるが、勝気な性格だったことをユーグは知っている。
彼女は英雄であった。
知らず知らずの内に危機に晒されていたこの国を、とある魔法で助け出したらしい。
ユーグにはよくわからなかったが、彼女は英雄となった後、父に身染められて側室の一人となった。
それから、父の寵愛はひたすらレガリアに傾いた。
側室であるはずなのに、正室である母よりも、父はレガリアを愛していた。
母が嫉妬で狂うのは、時間の問題であった。
母はなんとかしてレガリアを殺そうとした。
しかしレガリアは、あの手この手でそれらをすり抜ける。
母は無駄だと悟ったのか、それからは一切の関係を絶った。
それからレガリアは妊娠した。
レガリアは身重になったことで、母に抵抗できないと思われた。
母がその時を狙い、レガリアに刺客を仕向けた。
だが、何とレガリアはそれすらも覆してみせた。
それから、レガリアの娘である、イリーシャが誕生した。
そこまでは良い。
しかし、レガリアが生まれて間もないイリーシャを連れて庭園を散歩していたところを、俺は見かけた。
何となく声をかけることはせずにそれを見守っていれば、突然物陰からナイフを持った暗殺者が数人飛び出す。
レガリアは咄嗟にそれを躱したが、イリーシャを守りきれないと判断したらしい。
レガリアは自身の杖である、木でできた杖を出現させ、呪文を唱え始めた。
「ウェル・ハレア・カシム・アドバンラン・トールム・フォレア」
よくわからない呪文だった。
そんな呪文聞いたこともないし、何やら詠唱が長い。
彼女は躊躇いながらも、次の呪文を唱え切った。
「イリーシャ・ルンナ・イクストーム!!」
イリーシャの名前だった。
その瞬間、信じられないことが起きた。
地面が揺れて、最初は地震だと思う。
しかし次の瞬間植物が暗殺者を捕らえ、空に暗殺者を放ってしまった。
抵抗する間もなく、一瞬だ。
ポカンとしていれば、レガリアと目があった。
「……あなたは、第一王子のユーグね」
「は、はい。噂はかねがね聞いております、レガリア様」
子供らしくない挨拶に、レガリアは吹き出した。
そうして俺は、レガリアと少しだけ話をした。
「あれはね、禁術なの」
「禁術?」
「そう。私の魔力の6割と引き換えに、対象に起こりうる最も最悪なことを引き起こすことができる魔法。普段は周りの人を巻き込んでしまうから、あまり使わないの」
「最後にイリーシャの名前を叫んでいたのって……?」
それを聞くと、レガリアは嬉しそうに笑った。
本当に綺麗な笑みであった。
「この詠唱の最後には、大切な人の名前を叫ぶの。私はイリーシャが大切だから、イリーシャの名前を呼んだのよ」
「そっか……」
「皮肉なものよね。最悪を引き起こす魔法の最後に、大切な人の名前を呼ぶだなんて」
それが、レガリアとの最初で最後の会話であった。
レガリアは、王宮を出て行った。
これ以上王妃にーー母に命を狙われないためと、イリーシャを巻き込まないためであろう。
王女であるイリーシャは、連れ出すことができないのだから。
そのことにせいせいしたのか、母はイリーシャには手を出さなかった。
しかし、5ヶ月前に父が不治の病に倒れた時、イリーシャは父を治す研究のために王宮を飛び出してしまった。
母は何とかして、自分の子供を王位につけたいようであった。
この人に権力を握らせちゃならない。
代々続いてきた『治癒魔法』の研究を黙認しているのも母だ。
父は何も知らない。母が、裏舞台を操ってきた。
これ以上母の好きにさせてたまるか。
俺は王位争いを魔力不足を理由に離脱した。
イリーシャはどんどん力をつけていったようで、母はイリーシャを目の敵にするようになった。
それこそ、かつてのレガリアのように。
母は父の寵愛が受けられなくなってから、父を恨むようになっていた。
だから父を治すつもりなんて、毛頭なかったのだろう。
父が用意した大臣は不自然な罪で捕らえられ、母の用意した大臣に切り替わった。
リンメイ大臣は、そのような役を任され、困っているようであった。
それを狙っていたかのように、母は兄弟同士で争うよう言ったのだ。
信じられない。
兄弟同士で争わせるなど、鬼畜の所業である。
兄弟殺しはご法度であると言いつつ、再起不能には目を瞑るというのか。
この時、俺は母を止めればよかったのかもしれない。
ただ、そんなことを考える母が恐ろしく、関わることをしたくなかった。
そして、今日。
突然母が、今まで見向きもしなかった俺の元へ訪れた。
「地下の実験動物を王宮に解き放ったわ」
「……は?」
言われた意味が理解できなかった。
唐突に伝えられた情報は、「そうですか」と呑み込んでしまえるほどたやすくはない。
「は、母上……これは、重罪ですよ!? 王宮内の人が死ぬ!! 王族ですらも例外なく!! なぜこのようなことをっ!?」
「いいのよ。あの女の娘が死ねば」
イリーシャが来ているのか。
ということは、父を治す手段を見つけてきたのか。
母は静かに憎悪の炎を燃やしていた。
「他の兄弟、みんなみんないなくなっちゃえばいいの。ミリスはもういいわ。役立たずですもの」
「実の娘になんてことを……!!」
「それですべて死ねば、あなたが王よ」
「俺は、王位など欲しくはない!! それに、きっと事が終わればあなたは死刑になる!! あなたに実権は握らせない!!」
「いいわ。私の血をひくあなたが王になってさえくれれば。私を愛してくれないあの人なんて、死んでくれれば」
狂っている。
母は静かに壊れていた。
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