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ユニコーン編

第百十八話 度胸と根性

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魔物の背にくくりつけられた、最後のカケラ。
その存在を認めた瞬間、アリスはアレク達に叫んだ。

「魔物の背中にあるカケラを回収して!」
「うぇっ!?」
「背中……?」

言われた通り目を凝らせば、確かに魔物の背に、小さなカケラのようなものがある。
アレクは拘束魔法をすぐさま仕掛けた。

「バインド・ロック!」

遺跡の床を利用した拘束魔法。
岩が突出し、魔物の体を複雑に拘束した。

「俺が行く!」

ライアンがすぐさま前に出ると、魔物へと走って近づいていった。
暴れて今にも岩を砕きそうな魔物の横を、掠め取るようにして通過する。

「これか!?」
「そう! それ! ガツさん、早く持ってきて!」
「ガツさん……?」

アリスがライアンを「ガツさん」と呼んだので、不思議そうな顔をして少年がアリスを見つめた。
しかしそれどころではない。

ガシャん!

「がぁあっ!」

とうとう拘束を破壊して、魔物がライアンに襲いかかる。
ライアンが剣を抜いて受け止めたことで、ライアンの手の中にあったカケラが床を滑り、隙間へと落下する。

「あっ!」

アレクとユリーカが、隙間へと駆け込んだ。
ライアンは魔物から受ける圧力を受け止めるので必死だ。

「ディフェンス・バフ!」

シオンがライアンに一点集中して、付与魔法をかける。
その間に、アレク達は顔を見合わせた。
ユリーカがアレクに向かって口を開く。

「アレク君、光魔法で奥まで照らして」
「わかった!」

アレクは指先に光魔法を灯すと、隙間へとその光源を落とす。
はるか奥先に、カケラが引っかかっているのが見えた。

「……私の風魔法でどうにか」

アレクは緻密な魔力操作を苦手とする。
ここはユリーカがやらねばならない。
ユリーカは集中力を高め、隙間に向かって風魔法を使った。
ゆっくり、ゆっくりとカケラがこちらに向かって浮上していく。

「もうそろそろ限界っ……!」

後ろからライアンの、絞り出すようなギブアップ宣言が聞こえてくる。
しかし焦っては失敗する。

「もうちょっと耐えて!」

アレクが叫んだ。
ユリーカは何とか魔法を使いこなし、自身の眼前へとカケラを持ってくる。

「あっ!」

直前で集中力が切れた。
そのまま再びカケラが落下しそうなところをーーすんでのところでアレクが受け止める。

「よしっ。アリス! 取れた!」
「持ってきて!」

アレクはアリスの元へと急ぐと、カケラを少年に手渡した。

「これで最後のはずだ!」

少年は迷うことなく、最後の空いているスペースにカケラを埋め込んだ。

ガララッ

「!」

扉が地鳴りを響かせて開き出す。
アレク達はすぐさまその先へと駆け込んだ。

「シオン! ライアンも早く!」
「おらぁっ!」

最後の力を振り絞り、ライアンは魔物を押し除けて走り出す。
そこにシオンが続いた。
アレク達は扉を閉めながら、ライアン達が来るのを待つ。

「うぉおおおおおっ!」
「うーーーっ」

ライアンとシオンが、こちらに向かって滑り込む。
魔物はすぐそこまで迫っていた。

「ぐるるるるる!」
「やばいって! 間に合わねーよ!」

少年が叫ぶ。
しかし、スレスレのところでアレク達は扉を閉め終えた。

「ふぅ~……なんとかなった」

思わず全員脱力し、その場へと座り込む。
少年は遺跡の天井を見上げると、そこに刻まれた紋様に口を開けた。

「これは……」

ユニコーンと、翼を持つ天使が戯れている紋様であった。
少年は横にいるアリスを揺らして、天井に視線を向けさせた。

「これって」
「こんなのあるなんて聞いてないぞ! 村にも伝わってない!」

少年とアリスの言葉をきっかけに、アレク達も上を見上げる。

「あ……」

その瞬間、アレクの『過去視』が発動した。














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