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留年回避編
第百十話 留年回避決定!
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「やっ、やっ、やった~~~!!」
後日、ライアンがテストの答案用紙を持って、飛び跳ねる姿が目撃された。
どうやら歴史学で、基準だった百点が取れたらしい。
「よかったね!」
「おう……歴史学以外は追試だけどな!」
「よくない」
それにしても、百点は百点である。
喜びのあまり、他の追試など気にも止めていない様子だ。
「そういえば、アレク君のほうはどうなったの?」
「まだ話してなかったね」
ユリーカに尋ねられたので、アレクは昨日起こった出来事を説明した。
「アレク君、君は留年回避です!」
学園長室を訪ねて早々に、学園長がそう口火を切った。
安心のあまり腰が抜けて、その場に座り込んでしまう。
「よかったぁ……僕、留年じゃないんだ」
「まあ留年したにせよ、アレク君は飛び級で学園に入っていたんだ。大したダメージではなかったよ」
「それでも僕は、みんなとクラスが離れるのが嫌だったんです!」
約束された今後の日常に、アレクは涙が出そうであった。
ふとそこで、双子のことが頭をよぎる。
「兄様と姉様、どうなったんですか?」
「ああ……ちゃんと留年回避したよ」
「そうですか」
「まあでも、君を怒らせたらしいじゃん? まだ生徒会に寝泊まりを続けているとか」
「しばらく許してあげません」
家の敷居すら跨がせないアレクの徹底ぶりに、学園長は若干の寒気を覚えた。
にしても、この件をきっかけに双子が真面目に仕事をするようになったのは、非常に良い傾向である。
どうか一生このままでいてほしい。
「じゃあ僕、失礼しますね」
「ああ。この一ヶ月、お疲れ様」
「……ということなんだ」
「アレク君、ガディさんとエルルさんのこと、家に入れてないのね」
「もうしばらくはね」
ユリーカも少し哀れんだように遠くを見るものだから、心外だとばかりに、アレクは頬を膨らませる。
「だいたい、二人が悪いんだよ。みんなに迷惑ばっかりかけて。ちゃんと反省して家に帰ってこないからいいけど」
「あれ? アレク君、知らないの?」
ここでシオンが口を挟んだ。
嫌な予感がして、シオンのほうへと振り返る。
「……なにを?」
「お二人共、一度は家に帰ろうとしたみたいだよ。でも、ムマちゃんに追い出されたって」
「ああ」
ムマとは、アレクの所持する屋敷に住み着く妖精の名前だ。
どうやらアリスを通して話を聞いていたらしく、きちんとした対応をとったらしい。
帰ったらご褒美としてお菓子をあげよう。
「みんなでさ、留年回避パーティーとかしたくない?」
アレクの提案に、三人はすぐさま食いついた。
「する!」
「うおおおお! 俺、なに持ってけばいい!?」
「ちょっとは落ち着きなさいよライアン。でも、興味あるわね」
手ごたえを感じる反応に、アレクの口角が上がる。
「みんな、今日の放課後に家に来なよ」「行く!」
「楽しみだなー」
こうして、アレク達の留年回避の一ヶ月は、怒涛の勢いで過ぎていきながらも終わりを告げた。
今後はあまり、学園を休まないほうがいいだろう。
◆ ◆ ◆
「ただいま~」
「お邪魔しまっす!」
「アリスちゃんいる?」
「ムマちゃん、こんにちは」
アレクは三人を連れて、放課後家へと帰宅した。
ムマ達がいつものように引っ付いてくるのをあしらいながら、部屋の奥へと進んでいく。
「お兄さん!」
アリスがこちらへ駆けてきた。
勢いあまってよろけそうになったのを支え、その顔を覗き込む。
「どうしたのアリス」
「お兄さんの召喚獣……ユニコーンの手がかり、見つけたの!」
アリスの言葉に、一気に注目が集められた。
ティファンに封印された、ユニコーンのサファ。
それを解放する手立てが、見つかったというのか。
「それってどこ!?」
「ユニコーンの寝床! 洞穴の奥だよ!」
後日、ライアンがテストの答案用紙を持って、飛び跳ねる姿が目撃された。
どうやら歴史学で、基準だった百点が取れたらしい。
「よかったね!」
「おう……歴史学以外は追試だけどな!」
「よくない」
それにしても、百点は百点である。
喜びのあまり、他の追試など気にも止めていない様子だ。
「そういえば、アレク君のほうはどうなったの?」
「まだ話してなかったね」
ユリーカに尋ねられたので、アレクは昨日起こった出来事を説明した。
「アレク君、君は留年回避です!」
学園長室を訪ねて早々に、学園長がそう口火を切った。
安心のあまり腰が抜けて、その場に座り込んでしまう。
「よかったぁ……僕、留年じゃないんだ」
「まあ留年したにせよ、アレク君は飛び級で学園に入っていたんだ。大したダメージではなかったよ」
「それでも僕は、みんなとクラスが離れるのが嫌だったんです!」
約束された今後の日常に、アレクは涙が出そうであった。
ふとそこで、双子のことが頭をよぎる。
「兄様と姉様、どうなったんですか?」
「ああ……ちゃんと留年回避したよ」
「そうですか」
「まあでも、君を怒らせたらしいじゃん? まだ生徒会に寝泊まりを続けているとか」
「しばらく許してあげません」
家の敷居すら跨がせないアレクの徹底ぶりに、学園長は若干の寒気を覚えた。
にしても、この件をきっかけに双子が真面目に仕事をするようになったのは、非常に良い傾向である。
どうか一生このままでいてほしい。
「じゃあ僕、失礼しますね」
「ああ。この一ヶ月、お疲れ様」
「……ということなんだ」
「アレク君、ガディさんとエルルさんのこと、家に入れてないのね」
「もうしばらくはね」
ユリーカも少し哀れんだように遠くを見るものだから、心外だとばかりに、アレクは頬を膨らませる。
「だいたい、二人が悪いんだよ。みんなに迷惑ばっかりかけて。ちゃんと反省して家に帰ってこないからいいけど」
「あれ? アレク君、知らないの?」
ここでシオンが口を挟んだ。
嫌な予感がして、シオンのほうへと振り返る。
「……なにを?」
「お二人共、一度は家に帰ろうとしたみたいだよ。でも、ムマちゃんに追い出されたって」
「ああ」
ムマとは、アレクの所持する屋敷に住み着く妖精の名前だ。
どうやらアリスを通して話を聞いていたらしく、きちんとした対応をとったらしい。
帰ったらご褒美としてお菓子をあげよう。
「みんなでさ、留年回避パーティーとかしたくない?」
アレクの提案に、三人はすぐさま食いついた。
「する!」
「うおおおお! 俺、なに持ってけばいい!?」
「ちょっとは落ち着きなさいよライアン。でも、興味あるわね」
手ごたえを感じる反応に、アレクの口角が上がる。
「みんな、今日の放課後に家に来なよ」「行く!」
「楽しみだなー」
こうして、アレク達の留年回避の一ヶ月は、怒涛の勢いで過ぎていきながらも終わりを告げた。
今後はあまり、学園を休まないほうがいいだろう。
◆ ◆ ◆
「ただいま~」
「お邪魔しまっす!」
「アリスちゃんいる?」
「ムマちゃん、こんにちは」
アレクは三人を連れて、放課後家へと帰宅した。
ムマ達がいつものように引っ付いてくるのをあしらいながら、部屋の奥へと進んでいく。
「お兄さん!」
アリスがこちらへ駆けてきた。
勢いあまってよろけそうになったのを支え、その顔を覗き込む。
「どうしたのアリス」
「お兄さんの召喚獣……ユニコーンの手がかり、見つけたの!」
アリスの言葉に、一気に注目が集められた。
ティファンに封印された、ユニコーンのサファ。
それを解放する手立てが、見つかったというのか。
「それってどこ!?」
「ユニコーンの寝床! 洞穴の奥だよ!」
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