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アルジェルドside
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「ボクはマルドゥア。その、勇者の末裔の一人です」
おずおずと、言いづらそうに少年は名乗った。
勇者の末裔ーーということは、王族の一人か。
そいつが一体、俺に何の用なのだ。
「あの、降りません? ボク、未熟だから疲れるんですよ」
「……」
「警戒しているのはわかりますけど。絶対あなたの不利になることはしません」
「………」
「約束を破れば、ボクを殺してもらっても構いません」
サラリと、言い淀むことなくそう言い切った。
マルドゥアの目に、怯えは浮かんでいない。
嘘はついていないようだ。
「いいだろう」
『ちょっと。本気かい?』
「手がかりなしで帰るわけにはいかない」
『手がかりならもうあるだろ。とにかく、今はアストロに』
「俺は負けない」
諭してくるルシフェルに一言。
ぐぅと悔しげにルシフェルは黙った。
千里眼を持つルシフェルが何も言わないということは、嘘をつかれていないということだ。
「わかってくれてよかった」
安心したような笑い方は、どこかラティアンカを想起させるものであった。
◆ ◆ ◆
「どうぞごゆっくり!」
店に入り、紅茶を出すと店員はいい笑顔で去っていった。
マルドゥアの顔は晒されたままなのにも関わらず、特にこれといった反応は見せていない。
「顔、知られてないのか」
「ああ。ボク、下から数えたほうが早いんですよ。この国で顔が知られてるのは、上の兄弟ぐらいです」
俺とは違い、氷で冷やされたジュースを頼んだマルドゥアは、カラコロと氷を揺らしていた。
氷は高級品で、それを躊躇なく頼んだところやはり王族らしいと言える。
「お前、空を飛んだな」
「はい」
「どのくらいだ」
「?」
「勇者の末裔は、どのくらい空を飛べるんだ」
「えーっと、ボクを含めてってことですか?」
「そうだ」
「ボクだけですよ。空を飛べるのは、ボクだけです」
まあ、だろうな。
今まで俺とエリクル以外で、空を飛べる魔術師は見たことがなかった。
マルドゥアは天才と持て囃されてきたんだろうなと思う。
なら、もっと国から持ち上げられていそうなものだが。
「ボク、立場がちょーっと複雑なんですよね。だから偉くもなんともないんです」
「ほう」
「兄様が死ねっていったら、多分ボクは処刑されますね」
「そんなこと言われるのか」
「言われませんよ。例え話です」
クスクスと笑って、ジュースを飲んだ。
こいつにペースを乱されてはならない。
「お前の目的はなんだ」
「の前にそれ。なんですか?」
マルドゥアが指を差したのは、俺がテーブルの上に置いた連絡用の水晶。
そこには苦い表情のルシフェルが写っている。
「連絡用水晶だ」
「こんなに小さいのに?」
「俺が独自に開発した」
「へぇ。凄いや。どーも、そちらの人」
『……どうも』
「こいつ、千里眼を持ってるぞ」
俺が釘を刺すように言えば、マルドゥアは納得するように頷いた。
「なるほど。嘘をついて得はないということですね。了解です」
『おい!』
「このほうが話しやすい」
「ということは、あなたはルシフェル・フォルテ様ですか?」
名前を言い当てられたルシフェルは、ギョッとしてマルドゥアを見た。
俺もまあ、驚いた。
「ボク、勉強好きなんですよ。ルシフェル様は有名ですし」
『たかが小国の王子が?』
「千里眼って、あなたが思ってるよりよっぽど危険視されてるんですよ。ボクの頭だって丸見えでしょ?」
『まあそうだ』
「なら、話し合いを進めましょう。ボクの目的は、父様を王座から引き摺り下ろすことです」
早い話、革命ってやつです。
そう続けたマルドゥアの目は笑っていない。
こいつ、何を企んでいるのか。
「どういうことだ」
「ボク、王座が欲しいんですよ。どうしても。でも、今の状況じゃ絶対に手に入らないんです」
「お前なら、王座は勝ち取れるんじゃないか」
王子で、魔術が達者。
上の兄がそれに勝るものをもっていなければ、王座は確実だろうに。
しかしマルドゥアは首を横に振った。
「ダメなんです。ボクは絶対に指名されない。理由は、言えませんけど」
「玉座から引き摺り下ろすとは」
「言葉通りです。父様は人として尊敬できません。国民達、華やかに見えるでしょう? でもあれ、見せかけなんですよ」
背筋が凍るとはこのことか。
情熱の国と呼ばれたロマドが、見せかけとは。
「ボクは知ってます。輝くこの国、ロマドの裏では虐げられる女性がいることを」
「男尊女卑がこの国は顕著だからな」
「それをよしとするこの国のあり方が、許せないんです」
こいつ、珍しいな。
普通の男なら今与えられた状況を謳歌し、一生を終えるというのに。
あえて女性のために立ちあがろうとしている。
「表にいる彼女達も、潰しあって生きてきたんです。働き口がなくて倒れた国民を、ボクは見過ごせない。いや、見過ごしたとしても。近いうちに反乱が起きて、この国は終わります。このままじゃ、おしまいですよ。しかも友好国であるアストロと争ってるじゃないですか。なにやってるんだって話です」
「お前、神子のことは」
「知ってますよ。見たことありますし。でも、それがなんです? ただの女の子でしょう。女神が復活しようが、歴史が間違っていたことを言いふらされようが、その時はその時です。寧ろ男尊女卑がなくなるから、いいと思いますよ」
ーー本当に変な奴だ。
ここまで男尊女卑に嫌悪を抱く男は初めて見た。
するとマルドゥアは不機嫌そうに、「それとも」と。
「あなたも、男尊女卑に賛成するんですか?」
「……別に」
俺はラティアンカが悲しむ世界は嫌だ。
冷たいと思われるかもしれないが、ラティアンカが笑っていればあとはどうでもいいのだ。
だが……ラティアンカは、女だ。
虐げられる立場なのだ。
「俺は、お前の考えに賛同しよう」
「そうですか。世界一の魔術師が味方で、心強いです」
「……俺は名乗っていないが」
「先ほど透明化の魔術を使って、妹達の話を聞いていたでしょう。そこで気付きました」
「なんでわかった」
「消えるところまで見てたからです」
というかこいつ、いつから俺の存在に気づいていたのか。
得体の知れなさに警戒心は高まる。
「ね、いいでしょう。ボクは理想を通したいんですよ。今からロマドの考えてること、全部言いますから」
「俺達が知り得ない情報か」
「保証しましょう」
ルシフェルがいればこいつと協力しなくとも、こいつの心は読めるだろう。
だが、手を組むことによって発生するメリットもある。
……まあ、悪くはないだろう。
長年の勘がそう言っている。
「いいだろう」
「ありがとうございます! では、早速話させていただきますね!」
たちまち上機嫌になったマルドゥアが、現在の状況を語り出した。
おずおずと、言いづらそうに少年は名乗った。
勇者の末裔ーーということは、王族の一人か。
そいつが一体、俺に何の用なのだ。
「あの、降りません? ボク、未熟だから疲れるんですよ」
「……」
「警戒しているのはわかりますけど。絶対あなたの不利になることはしません」
「………」
「約束を破れば、ボクを殺してもらっても構いません」
サラリと、言い淀むことなくそう言い切った。
マルドゥアの目に、怯えは浮かんでいない。
嘘はついていないようだ。
「いいだろう」
『ちょっと。本気かい?』
「手がかりなしで帰るわけにはいかない」
『手がかりならもうあるだろ。とにかく、今はアストロに』
「俺は負けない」
諭してくるルシフェルに一言。
ぐぅと悔しげにルシフェルは黙った。
千里眼を持つルシフェルが何も言わないということは、嘘をつかれていないということだ。
「わかってくれてよかった」
安心したような笑い方は、どこかラティアンカを想起させるものであった。
◆ ◆ ◆
「どうぞごゆっくり!」
店に入り、紅茶を出すと店員はいい笑顔で去っていった。
マルドゥアの顔は晒されたままなのにも関わらず、特にこれといった反応は見せていない。
「顔、知られてないのか」
「ああ。ボク、下から数えたほうが早いんですよ。この国で顔が知られてるのは、上の兄弟ぐらいです」
俺とは違い、氷で冷やされたジュースを頼んだマルドゥアは、カラコロと氷を揺らしていた。
氷は高級品で、それを躊躇なく頼んだところやはり王族らしいと言える。
「お前、空を飛んだな」
「はい」
「どのくらいだ」
「?」
「勇者の末裔は、どのくらい空を飛べるんだ」
「えーっと、ボクを含めてってことですか?」
「そうだ」
「ボクだけですよ。空を飛べるのは、ボクだけです」
まあ、だろうな。
今まで俺とエリクル以外で、空を飛べる魔術師は見たことがなかった。
マルドゥアは天才と持て囃されてきたんだろうなと思う。
なら、もっと国から持ち上げられていそうなものだが。
「ボク、立場がちょーっと複雑なんですよね。だから偉くもなんともないんです」
「ほう」
「兄様が死ねっていったら、多分ボクは処刑されますね」
「そんなこと言われるのか」
「言われませんよ。例え話です」
クスクスと笑って、ジュースを飲んだ。
こいつにペースを乱されてはならない。
「お前の目的はなんだ」
「の前にそれ。なんですか?」
マルドゥアが指を差したのは、俺がテーブルの上に置いた連絡用の水晶。
そこには苦い表情のルシフェルが写っている。
「連絡用水晶だ」
「こんなに小さいのに?」
「俺が独自に開発した」
「へぇ。凄いや。どーも、そちらの人」
『……どうも』
「こいつ、千里眼を持ってるぞ」
俺が釘を刺すように言えば、マルドゥアは納得するように頷いた。
「なるほど。嘘をついて得はないということですね。了解です」
『おい!』
「このほうが話しやすい」
「ということは、あなたはルシフェル・フォルテ様ですか?」
名前を言い当てられたルシフェルは、ギョッとしてマルドゥアを見た。
俺もまあ、驚いた。
「ボク、勉強好きなんですよ。ルシフェル様は有名ですし」
『たかが小国の王子が?』
「千里眼って、あなたが思ってるよりよっぽど危険視されてるんですよ。ボクの頭だって丸見えでしょ?」
『まあそうだ』
「なら、話し合いを進めましょう。ボクの目的は、父様を王座から引き摺り下ろすことです」
早い話、革命ってやつです。
そう続けたマルドゥアの目は笑っていない。
こいつ、何を企んでいるのか。
「どういうことだ」
「ボク、王座が欲しいんですよ。どうしても。でも、今の状況じゃ絶対に手に入らないんです」
「お前なら、王座は勝ち取れるんじゃないか」
王子で、魔術が達者。
上の兄がそれに勝るものをもっていなければ、王座は確実だろうに。
しかしマルドゥアは首を横に振った。
「ダメなんです。ボクは絶対に指名されない。理由は、言えませんけど」
「玉座から引き摺り下ろすとは」
「言葉通りです。父様は人として尊敬できません。国民達、華やかに見えるでしょう? でもあれ、見せかけなんですよ」
背筋が凍るとはこのことか。
情熱の国と呼ばれたロマドが、見せかけとは。
「ボクは知ってます。輝くこの国、ロマドの裏では虐げられる女性がいることを」
「男尊女卑がこの国は顕著だからな」
「それをよしとするこの国のあり方が、許せないんです」
こいつ、珍しいな。
普通の男なら今与えられた状況を謳歌し、一生を終えるというのに。
あえて女性のために立ちあがろうとしている。
「表にいる彼女達も、潰しあって生きてきたんです。働き口がなくて倒れた国民を、ボクは見過ごせない。いや、見過ごしたとしても。近いうちに反乱が起きて、この国は終わります。このままじゃ、おしまいですよ。しかも友好国であるアストロと争ってるじゃないですか。なにやってるんだって話です」
「お前、神子のことは」
「知ってますよ。見たことありますし。でも、それがなんです? ただの女の子でしょう。女神が復活しようが、歴史が間違っていたことを言いふらされようが、その時はその時です。寧ろ男尊女卑がなくなるから、いいと思いますよ」
ーー本当に変な奴だ。
ここまで男尊女卑に嫌悪を抱く男は初めて見た。
するとマルドゥアは不機嫌そうに、「それとも」と。
「あなたも、男尊女卑に賛成するんですか?」
「……別に」
俺はラティアンカが悲しむ世界は嫌だ。
冷たいと思われるかもしれないが、ラティアンカが笑っていればあとはどうでもいいのだ。
だが……ラティアンカは、女だ。
虐げられる立場なのだ。
「俺は、お前の考えに賛同しよう」
「そうですか。世界一の魔術師が味方で、心強いです」
「……俺は名乗っていないが」
「先ほど透明化の魔術を使って、妹達の話を聞いていたでしょう。そこで気付きました」
「なんでわかった」
「消えるところまで見てたからです」
というかこいつ、いつから俺の存在に気づいていたのか。
得体の知れなさに警戒心は高まる。
「ね、いいでしょう。ボクは理想を通したいんですよ。今からロマドの考えてること、全部言いますから」
「俺達が知り得ない情報か」
「保証しましょう」
ルシフェルがいればこいつと協力しなくとも、こいつの心は読めるだろう。
だが、手を組むことによって発生するメリットもある。
……まあ、悪くはないだろう。
長年の勘がそう言っている。
「いいだろう」
「ありがとうございます! では、早速話させていただきますね!」
たちまち上機嫌になったマルドゥアが、現在の状況を語り出した。
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