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アルジェルドside
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「やあ、僕はエリクル。よろしく」
何だこの胡散臭いヤツ。
それが俺の、エリクルに対する第一印象。
エリクルは俺と違ってたくさんの人間に好かれていたし、俺と違って口下手でもなかった。
なのに俺と仲良くしようとした。
たまにはサボらず行ってこい、と父親に放り出された魔術師のみの宴。
そこでエリクルは俺に近づいてきたのだ。
「……よろしく」
「君が噂のアルジェルドだろ? あのマルシム家の」
「やめろ」
家を表に出されるのはムカつく。
何をやっても家の評価にしか繋がらない。
別に家が嫌いなわけじゃないし、家族との仲も良好だ。
だが、俺をそういうブランドとして評価するのは非常に気に食わない。
ポカンとしたエリクルは一泊置き、「ああ……」と言った。
「嫌だよね。ごめんね、アルジェルド」
「………」
「僕、君と友達になりたいんだ」
「友達」
「うん」
「お前みたいなヤツが?」
「どういうこと?」
「胡散臭いんだよ」
知ってるぞ、俺は。
親しくしている人間は、全部己にとって有益な者であるのみということを。
その笑顔は、まさしく作られた芸術品であることも。
ご尊顔が綺麗なだけあって、エリクルは嫌われることはあまりない。
だからこそ、俺はこいつを信用できる気がしなかった。
「……へぇ、僕、胡散臭いんだ」
「ここにいる誰よりもな」
「心外だよ」
エリクルと出会ったのは俺が15の時。
俺より3つ年上のエリクルは、まだまだ成長過程だった俺にはとても大きく見えた。
ちょっとばかり萎縮しているのを見抜いたのか、エリクルは俺に手を差し伸べる。
「わかった、演技はやめよう。僕は、君と友達になりたい。いや、なれ」
「理由は?」
「君はいずれ、世界一の魔術師になるだろう。どんな者も跳ね除けて。だから、今のうちにつてをつくっておきたいのさ」
俺は媚びへつらってくる奴らが嫌いだ。
だからエリクルのようにサラリと本音を言ってくる奴は、嫌いじゃなかった。
それに、エリクルは若いながらも「風の貴公子」と呼ばれるほど風魔法の扱いが達者だ。
こいつから学ぶこともあるだろう。
「わかった。よろしく」
「おっ、いいね。よろしく」
エリクルと握手を交わした。
まるで生涯の悪友をもったような気分であった。
◆ ◆ ◆
俺の読みは当たったようで、エリクルとはよき親友と呼べる間柄となった。
というか俺が周りの空気を読むのが苦手なせいで、ろくな友人がいないことも理由の一つに挙げられるだろう。
エリクルは俺の考えを読むのが上手かった。
「なに悩んでるのさ」
「……俺は、結婚したい人がいる」
「へー、恋バナ? 珍しいね」
本当に珍しがっていたのだろう。
定期的に行われる結界張りを、俺を主軸に行われるようになってから、エリクルはいつも俺を昼飯に誘ってくれるようになった。
労いも込めてだろうが、正直張った後は凄く疲れるので喋りたくない。
最初のうちは断っていたが、回数を重ねるうちにだんだんと慣れてくる。
平気で結界を張れる頃には、俺は17になっていた。
昼食に訪れたのは、街の隅にポツンと置かれた、微妙にウマい飯屋。
名前が売れてきたこの頃、ナジクでは俺がゆっくりできる拠点は減ってきている。
「大将、焼きファンメイ、一つ」
エリクルが爽やかな雰囲気に似合わず、匂いのキツさが有名な食べ物を頼んだ。
まああれ、美味しいんだけどな。
「さあ、話を聞こう」
「……5歳の頃から、好きな人がいる」
「わーお。熱烈な初恋だね。10年も続いてるなんてびっくりだ」
「今は婚約者だ」
「ちなみに定期的に会ってるの?」
「いや」
「会えばいいのに」
「親同士が決めた婚約ということになっている」
「何で?」
「父さんが、面倒なことは全部任せろと」
「痺れるねぇ」
初対面の時のように、上っ面だけの褒め言葉は吐かない。
全てエリクルの本心であろう。
こいつとは仲良くなるまいと思っていた頃が懐かしいくらいだった。
「名前は?」
「なぜ教えなければならない」
「自分から持ち出したんだろ、その話題。おまけにその大事な子の話しをお前がするくらいだ。根暗のお前が。その子のことで、何かあったんだろう」
「根暗言うな」
「本当のことだ」
そうこうしている内に、頼んだファンメイが来た。
それを乱暴に片手で掴み、食べる。
フォークとナイフを使わず食べられるから、こういう異国の料理は好きだった。
「ラティアンカだ。ラティアンカ」
「ラティアンカ……夜明けの花、という意味か」
「いい名前だろう」
「とっても綺麗な名前だね。だが……お前、顔だけはいいだろ? お前と並んで彼女が霞まないか心配だね」
「ラティアンカは、美人だ」
「そんなに言うなら会わせてよ。親友だろ」
「却下する」
「なんで」
「ラティアンカに惚れられたら、困る」
俺がおもむろにそう言うと、エリクルは大爆笑した。
珍しいな、こいつが笑い転げるなんて。
そのくらいしか思っていなかったが、次に意外な発言をされた。
「心配しなくても、僕、恋をする予定はないんだ」
「なぜだ?」
「それより大事なことがあるからね」
何事にもあまり興味を示さない男は、艶やかに笑ってみせた。
エリクルにとっての大切なこと。
それは一体、何だったのだろうか。
「命より?」
「命より」
「絶対だな」
「あは。流石に信用を失いたくはないから、ここで嘘はつかないよ」
「嘘はつくな」
「はいはい。つかないよ。それで、なにがお望みだ?」
「……ラティアンカに、プレゼントをしたい」
「贈り物! いいね、オススメの品があるよ」
そう言って紹介してくれた、宝石のついたネックレス。
それを俺の瞳と同じ色を選び、防護魔術をかければ、エリクルなドン引きしていた。
「独占欲丸出しだ。痛い男は嫌われるよ」
その言葉が頭を過ぎり、結局結婚するまで渡せもしなかった。
だけど、後悔はしていない。
今だってラティアンカは、それを大切にしてくれている。
俺は嘘が嫌いだ。
それはエリクル、お前だって承知しているだろう。
だから、あえて言わせてくれ。
お前との友情を踏みにじられたと思ってもいいんだよな?
築き上げたと思ったものを、壊されたと。
嘆いても、叫んでも、いいんだよな?
なあ、答えろよ、卑怯者め。
エリクルがどこを見ているか。
なにを考えているのか。
それは、俺にはわからない。
何だこの胡散臭いヤツ。
それが俺の、エリクルに対する第一印象。
エリクルは俺と違ってたくさんの人間に好かれていたし、俺と違って口下手でもなかった。
なのに俺と仲良くしようとした。
たまにはサボらず行ってこい、と父親に放り出された魔術師のみの宴。
そこでエリクルは俺に近づいてきたのだ。
「……よろしく」
「君が噂のアルジェルドだろ? あのマルシム家の」
「やめろ」
家を表に出されるのはムカつく。
何をやっても家の評価にしか繋がらない。
別に家が嫌いなわけじゃないし、家族との仲も良好だ。
だが、俺をそういうブランドとして評価するのは非常に気に食わない。
ポカンとしたエリクルは一泊置き、「ああ……」と言った。
「嫌だよね。ごめんね、アルジェルド」
「………」
「僕、君と友達になりたいんだ」
「友達」
「うん」
「お前みたいなヤツが?」
「どういうこと?」
「胡散臭いんだよ」
知ってるぞ、俺は。
親しくしている人間は、全部己にとって有益な者であるのみということを。
その笑顔は、まさしく作られた芸術品であることも。
ご尊顔が綺麗なだけあって、エリクルは嫌われることはあまりない。
だからこそ、俺はこいつを信用できる気がしなかった。
「……へぇ、僕、胡散臭いんだ」
「ここにいる誰よりもな」
「心外だよ」
エリクルと出会ったのは俺が15の時。
俺より3つ年上のエリクルは、まだまだ成長過程だった俺にはとても大きく見えた。
ちょっとばかり萎縮しているのを見抜いたのか、エリクルは俺に手を差し伸べる。
「わかった、演技はやめよう。僕は、君と友達になりたい。いや、なれ」
「理由は?」
「君はいずれ、世界一の魔術師になるだろう。どんな者も跳ね除けて。だから、今のうちにつてをつくっておきたいのさ」
俺は媚びへつらってくる奴らが嫌いだ。
だからエリクルのようにサラリと本音を言ってくる奴は、嫌いじゃなかった。
それに、エリクルは若いながらも「風の貴公子」と呼ばれるほど風魔法の扱いが達者だ。
こいつから学ぶこともあるだろう。
「わかった。よろしく」
「おっ、いいね。よろしく」
エリクルと握手を交わした。
まるで生涯の悪友をもったような気分であった。
◆ ◆ ◆
俺の読みは当たったようで、エリクルとはよき親友と呼べる間柄となった。
というか俺が周りの空気を読むのが苦手なせいで、ろくな友人がいないことも理由の一つに挙げられるだろう。
エリクルは俺の考えを読むのが上手かった。
「なに悩んでるのさ」
「……俺は、結婚したい人がいる」
「へー、恋バナ? 珍しいね」
本当に珍しがっていたのだろう。
定期的に行われる結界張りを、俺を主軸に行われるようになってから、エリクルはいつも俺を昼飯に誘ってくれるようになった。
労いも込めてだろうが、正直張った後は凄く疲れるので喋りたくない。
最初のうちは断っていたが、回数を重ねるうちにだんだんと慣れてくる。
平気で結界を張れる頃には、俺は17になっていた。
昼食に訪れたのは、街の隅にポツンと置かれた、微妙にウマい飯屋。
名前が売れてきたこの頃、ナジクでは俺がゆっくりできる拠点は減ってきている。
「大将、焼きファンメイ、一つ」
エリクルが爽やかな雰囲気に似合わず、匂いのキツさが有名な食べ物を頼んだ。
まああれ、美味しいんだけどな。
「さあ、話を聞こう」
「……5歳の頃から、好きな人がいる」
「わーお。熱烈な初恋だね。10年も続いてるなんてびっくりだ」
「今は婚約者だ」
「ちなみに定期的に会ってるの?」
「いや」
「会えばいいのに」
「親同士が決めた婚約ということになっている」
「何で?」
「父さんが、面倒なことは全部任せろと」
「痺れるねぇ」
初対面の時のように、上っ面だけの褒め言葉は吐かない。
全てエリクルの本心であろう。
こいつとは仲良くなるまいと思っていた頃が懐かしいくらいだった。
「名前は?」
「なぜ教えなければならない」
「自分から持ち出したんだろ、その話題。おまけにその大事な子の話しをお前がするくらいだ。根暗のお前が。その子のことで、何かあったんだろう」
「根暗言うな」
「本当のことだ」
そうこうしている内に、頼んだファンメイが来た。
それを乱暴に片手で掴み、食べる。
フォークとナイフを使わず食べられるから、こういう異国の料理は好きだった。
「ラティアンカだ。ラティアンカ」
「ラティアンカ……夜明けの花、という意味か」
「いい名前だろう」
「とっても綺麗な名前だね。だが……お前、顔だけはいいだろ? お前と並んで彼女が霞まないか心配だね」
「ラティアンカは、美人だ」
「そんなに言うなら会わせてよ。親友だろ」
「却下する」
「なんで」
「ラティアンカに惚れられたら、困る」
俺がおもむろにそう言うと、エリクルは大爆笑した。
珍しいな、こいつが笑い転げるなんて。
そのくらいしか思っていなかったが、次に意外な発言をされた。
「心配しなくても、僕、恋をする予定はないんだ」
「なぜだ?」
「それより大事なことがあるからね」
何事にもあまり興味を示さない男は、艶やかに笑ってみせた。
エリクルにとっての大切なこと。
それは一体、何だったのだろうか。
「命より?」
「命より」
「絶対だな」
「あは。流石に信用を失いたくはないから、ここで嘘はつかないよ」
「嘘はつくな」
「はいはい。つかないよ。それで、なにがお望みだ?」
「……ラティアンカに、プレゼントをしたい」
「贈り物! いいね、オススメの品があるよ」
そう言って紹介してくれた、宝石のついたネックレス。
それを俺の瞳と同じ色を選び、防護魔術をかければ、エリクルなドン引きしていた。
「独占欲丸出しだ。痛い男は嫌われるよ」
その言葉が頭を過ぎり、結局結婚するまで渡せもしなかった。
だけど、後悔はしていない。
今だってラティアンカは、それを大切にしてくれている。
俺は嘘が嫌いだ。
それはエリクル、お前だって承知しているだろう。
だから、あえて言わせてくれ。
お前との友情を踏みにじられたと思ってもいいんだよな?
築き上げたと思ったものを、壊されたと。
嘆いても、叫んでも、いいんだよな?
なあ、答えろよ、卑怯者め。
エリクルがどこを見ているか。
なにを考えているのか。
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